二人の領主
ギニア子爵にすぐ報告が入る。
『何者かが、鍾乳洞の瓦礫を爆破した模様。それを抜けたトカゲが逃亡しました。追跡は不可能です。』
子爵は、すぐに中の調査を命じる。
鉱山でのトカゲ騒動は知っていたが、それが鍾乳洞のトカゲだとは思っても居なかった。しかし、爆破と聞いて嫌な予感があった。
村人が、危険な事をするはずがない、ただ監視に行っている者(伯爵に買収された村人)の話だと、中にいるトカゲはまだ生きている。洞窟に餌になる物があるのかもしれないと考えていた。
予感は的中する。『鉱山からトンネルが掘られていて、鍾乳洞につながっていた。』この報告が意味するのは何だろう?
一連のトカゲ騒動は、トカゲ村のトカゲだとすると、誰が穴を掘ったのだろう?
フレデイア伯爵だとしても、やる理由が分からない。
ブラッド商会が、自分を苦しめるとは思えない。
とりあえず、実害はなかった。放置して推移を見る事にした。
一方、フレデイア伯爵。
まんまと、トカゲ騒動が始まった。ブラッド商会が冒険者達を集めて、討伐しようとするがうまくいかなかった。
フレデイア伯爵の計画は、ブラッド商会を弱体化させる事。その後、資金を出し会頭を交代さえるか、自分が実効支配する。
トードからの報告の一文が気にんなる。
『鎧トカゲは、自分で気配を無効化出来ますが、魔素を使う為、魔素感知の優秀な者ならトカゲの位置を特定できます。鉱山技師が、魔素を探知できるので調査に加わる様になりました。』
狭い鉱山の中で、位置特定できれば、いつかは討伐されてしまう。
そこで一考を考えた、魔物が近づかないアイテムがある、冒険者が野宿する時に使っているアイテムだ、アイテムで自分の周囲の魔素を乱し獣に魔素を感じさせないという効力がある。
子飼いの職人を集め、大急ぎで作らせる。トカゲの革は、鉄では歯が立たない、ミスリルでも難しいかもしれない。それならばと、秘蔵品のアダマンタイト(かなり高価)を使う事にした。
弩級を作らせて矢の先にアダマンタイトの針(先が細いが次第に太くなっていて内部に空洞)、それの内部に魔核を削った魔物除けのアイテムを入れる。極小で効果のあるアイテムを造るのも安くはなかった。
出来上がった針を闇ギルドに渡し、トカゲの寝込みを襲わせた。
ここまでは、上手くいった。
ブラッド商会は、次第に弱体化していった。みるみるうちに資金が枯渇していく。
ところが、闇ギルドより、また心配させる報告が入る。
『ドラゴンの巣のメンバー、ジャックという者に鎧トカゲ討伐の依頼がされた。本人が依頼を受けるかはまだ未定。ただ、フォーレンには向かう様子。』
まだ、望むほどブラッド商会は弱体化していない。
ジャックがフォーレンに行かない様にしなければいけない。しかし、これから準備しても間に合わない。仕方なく、また闇ギルドを使うしかなかった。
依頼は、『ジャックに警告し、フォーレンに向かわせない事。』殺しまでやれば、誰の指示かと調べられる恐れがある。とりあえずこれでいいだろう。
急な依頼になったので、かなり無理をしたようだ。当然、依頼料も安価な金額では、無い。
結果、フォーレン行は失敗した。ただ、警告は行ったので、依頼料は安いものになったのが救いか。
フォーレンに入った以上、これ以上手を出せば、誰がやっているのか探られる。しばらく様子をみる事にした。
数日後、トカゲが消えたと鉱山から報告があった。
坑道から出て来て、山に消えたと言う。本当に坑道に居ないか、調査中とあった。
迷う事は無かった、闇ギルドに鉱山技師の殺害を依頼した。
坑道調査から、誰が掘ったか分からないトンネルが発見された。その犯人はすぐに分かったのだが、その時には、鉱山技師は殺害されていた。結局、誰かの依頼で鉱山技師が掘ったのだが、誰が掘らせたのかは分からない。
ブラッド商会に多少の損害を与えただけで、事件は幕を引く。しかし、それでは伯爵の気持ちは収まらない。
奴隷売買は違法ではない、自分も買っているのだからそれを否定はしない。
ただ、ブラッド商会のやり方は不味い、他の貴族に知れれば伯爵を貶める格好の材料を与えてしまう。
次の手を考える必要があった。




