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鍾乳洞と鎧トカゲ

 一方、ギニア子爵にも転機が訪れる。


 交渉に負けても、諦めていなかった。トカゲの鎧でためた資金を使い、山一つ離れたトカゲ村から鉱山に試掘をさせていた。

 トカゲ村は、火山の冷えた溶岩の上に出来た村。いくら掘り進んでも出てくるのは、溶岩から出来た火成岩だけだった。


 その試掘が洞窟に行き当たる。密閉された空間は、山の中に出来たマグマが抜けた巨大な空洞だろう。トカゲ村にある湖の水がしみ出したのか、その洞窟は鍾乳洞となっていた。

 ギニア子爵は、思案する。この洞窟は、自領の山の中だが、結構おおきな洞窟になっている。このまま掘り進めれば、鉱石のある部分にたどり着くのでは?


 しかし、それは危険だと言われる。

 優秀な魔素使いは、鉱山技師となる。彼らは、魔素爆弾で発生する魔素の反応を関知出来る。奥に空洞があるのか、新に道となる空洞が出来たのか分かると言うのだ。


 それならばと、鉱山技師を買収した。幸いギニア子爵領方面への調査試掘は、もう済んでいて鉱石の発掘量も境界までの距離も測量されていた。さらに、それは未報告となっていた。

 そこで、ギニア子爵領に近い所を掘っている坑道の鉱石量の報告を変えさせた。少なく報告させ、反対の採掘量を増やした。


 しばらくすると、採掘はギニア子爵領から遠い坑道で行われるようになった。


 フレデイア伯爵領への坑道を掘り始めた。最初に、洞窟迄のトンネルの拡幅が行われ。鉱石運搬の為のトロッコの新設と鉱山へ向けての坑道掘削の準備が始まった。違法採掘が発覚したら、坑道を爆破して隠蔽するように合わせて準備を進める。


 それと同時期に、予期せぬ事件が起きた。


 トカゲ村は、鎧造りで出来た村。今でもわずかだがトカゲを狩り、鎧を作っていた。もっとも、今もギニア子爵が厳重に管理しトカゲや鎧が流出する事はない。鎧は、全てギニア子爵が買い取っていた。

 そんな村で、久しぶりにトカゲが捕縛された。村に運び込まれたトカゲは、一旦檻に入れて餌を与えない。弱ったトカゲに魔素爆弾を咥えさせ爆破する。


 ただ、長期にわたって使っていた檻は、内部から腐っていた。一見丈夫な丸太で組まれた檻だが、組み合わされた部分が腐っていたのだ。

 麻痺から回復したトカゲは、暴れた。何度も檻にぶつかり、ついに破壊してしまった。


 慌てる村人、その脇を走り抜けるトカゲ。逃げない様に村の周囲につくられた塀、出入りする門はトカゲ捕縛中は閉めらている。

 逃げ場を失ったトカゲは、採掘している穴へと逃げ込む。広い洞窟では、気配を消したトカゲを捜す事は出来ない。

 餌がないトカゲが弱るのを待つように、採掘は中止された。あいては猛獣、逃げない様に鍾乳洞壁を爆破しトンネルを隠しておいた。これで、村に来ることも無いだろう。


 トードは、トカゲ村の出身である。そんな話が伯爵に報告された。

 これを使い、ブラッド商会の奴隷売買をやめさせることは出来ないかと考えた。


 そこで、トードと一緒に働いていた鉱山技師を呼び寄せる。


 この技師、ギニア子爵に買収された鉱山技師だった。休みの日、トカゲ村に行き、坑道の準備や採掘の方法を教えていたのだが、トカゲ騒動で中止になった。


 そこにフレデイア伯爵から声がかかった。


 高額の報酬に、技師は準備を始める。


 ギニア子爵の掘削は、長期作業中断として、新たに買い入れた道具、工具を以前掘った坑道に隠しておく。

 子爵が集めていた鉱夫が解散しようとしていたので、技師が作業員として雇い入れた。

 鉱山の高炉とトロッコの従業員(操作は奴隷だが監督はいる)の買収をする。


 技師は、少しずつ鉱山に子飼いの鉱夫を潜りこませる。大量の奴隷は消耗品、名前の管理も生存の管理もしていない。人数さえいれば問題ないのだ。鉱山内部の奴隷派遣と割り振りは技師の仕事、一旦潜り込ませれば、飲食も寝床も鉱山がやってくれる。道具は、鉱山に腐る程ある。


 こうして、鍾乳洞へ坑道が掘り進められて行った。


 ここで、一つ問題ができた、トカゲの餌である。トカゲ村は、飢えるのを待っている。しかし、それでは困った事になる。村に黙って餌をあたる事は出来ない、そこで、村人を買収した。

 夜、鉱山から村へ餌を運ぶ。村の外柵から中に、餌になる獣を置くとその村人が鍾乳洞の隙間から投げ入れてくれる。当面は、これで何とかなるだろう。


 鉱山から鍾乳洞への坑道トンネルは、狭くてもいいので発掘した鉱石は、袋に入れ何度も運び出す、それをトロッコにいれれば、後は、高炉とトロッコ担当に任せておけばいい。

 狭い坑道は、かなり早く掘り上げる事が出来た。そして、最後の貫通の魔素爆弾だが奴隷にやらせる。魔力持ちの奴隷に、技師達が立ち去った後に握らせれば爆発する。


 爆音に驚いたトカゲ、最初は近寄らないでいたが・・空腹は抑えきれない。血と肉の匂いに誘われる。

 餌不足のトカゲは、人の肉の味を覚える。但し、腹は食わない、腹を食ってから捕縛された苦い経験があるからだ。


 トカゲは、違う空気の匂いに戸惑いながら、鉱山へと入っていった。


 腹が減れば、餌を求めて鉱山をさまよう。抵抗しない餌だけではなかったが、皮膚を斬る力もない者に脅える必要も無い。

 それでも本能が警戒する餌もいる、幾度か危ない目に合いながらも生きてこれた。


 ある日、餌を求めて鉱山の奥に行くと餌の群れがいた。その1体を確保したがそれでは足りない。急に出来た土壁の向こうに居るのは分かっている。なんとか壊そうとしていると、入って来た入口から、新たな餌の群れがやってきた。


 しかし、今日の本能は関わるなと警告をだしている。いつもの餌だろうに、そう思っていた。


 それが少し違っていた。危険な物が、今、身体の脇を通り過ぎた。その速さに目が付いていけない。


 まだ体が覚えている。それは幾分昔、寝床で寝ていた時に飛んできた物がある。背中の首の辺り、前足の届かない場所に飛んできた矢が皮膚を貫通した、それはまだ首に残っていた。その忌々しいそれは、体の感覚を狂わせて時々フラッとさせる。掻きむしって取りたいが出来ない、岩にこすり付けても逆に食い込んでいく、忌々しい奴だ。


 嫌な記憶がよみがえった。今、目に見える物を破壊しなければ殺される。それに近づくが急に壁が現れ邪魔をする。しかし、その壁よじ登っていくと消えた。

 消えた壁からそれは飛んできた、しかし、それは皮膚を滑っていく。一瞬なにが起きたのが分からなかった、我に返って理解する・・命拾いをした、目の前のこの危険な物はすぐに破壊しなければいけない。


 破壊により一つの脅威が消えたが、まだ脅威は残っている。トカゲの前に、その警告の元凶だろう奴がいる・・トカゲの経験はこんな奴、爪で引っかけばすぐに死ぬ、と言うが、本能はすぐに立ち去れと言う。


 お互い殺気は、出していない。しかし、背筋に冷たいものを感じたトカゲは、その脅威に背を向け先ほど逃げて行った人肉を追いかける。不安と対峙する、そんな事より腹が減った。


 いくつかの穴を見てみたが、餌の群れは居なかった。

 坑道を出て、空が見える所にいる餌は、硬いこうろに入って食えない。空を見えていると、もうここは安全ではないと思う、今まで住んでいた所に帰りたくなった。


 ねぐらに帰る事にして、トンネルに入る。普段しない匂いがする、あの脅威の匂いだ。何だろう、少し前の希薄な匂いと今居たような濃い匂いがする。

 その匂いは、奥に向かって歩いていったようだ。引き返そうかと思ったが、何故か何をしているのか興味がわいてきた。そのまま中に入って見に行く。


 それは居た。この大穴に入って来た時の穴、崩れてもう通れないがまだ上が開いている。以前は、そこから餌が飛んできた。そこに脅威がいた。何をしているのだろう?


 耳が壊れる程の爆音、急いで物陰に隠れる。


 静かになると、脅威は消えていた。そして、穴が開いていた。

 本能が言う『帰れる』。


 穴に飛び込むと、餌の村を走り抜け、前に住んでいた場所を目指す。

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