闇ギルドとトード
フレデイア伯爵は、また厄介な事が起きるだろうと予想し、運営を任せる事にした。上手い利益だけ吸えればいいのだ。
そこで、幾つか付き合いのある商会から『ブラッド商会』を選んだ。この商会は、表の商売よりも裏の商売の方が上手かった。盗品の買い取り、闇オークション、奴隷売買など、直接犯罪に加担はしないが、儲かることならなんでもやっていた。
商会の会頭を呼び、密談の上、利益の配分の約束を行う。鉱石売買額で高額な割合を払うと言う、ブラッド商会にとって、あまりうまみのない話だったが、やり方次第で利益を出せそうな話だった。
権利を買い取ったブラッド商会は、領主から畑を借りると街道に造り替え、丘の鉱山開発に乗り出します。
隣の領主との関係を聞いていたブラッド商会は、刺激しないように発掘していました。
鉱山開発が上手くいきはじめると、やはり利益が少ない。そこでブラッド商会は、かねてから準備していた奴隷売買を始めます。もう、役人も門番も買収してありました。
それは、労働給金の著しい減少となって現れた。金を払わない奴隷を生かしておけば、経費が少なくなりその分利益が増えました。その増えた利益は、伯爵に納める事がないのです。
伯爵がそれに気付いたのは、町の噂を伝えてくれたトード。隣の領地の村から出稼ぎに来ていた彼は、鉱山技師の助手としてはたいていました。
奴隷への酷い扱いに、心を痛めていたトードは領主へ直談判しようとするが、平民と貴族では接点がありませんでした。
トードは結婚後、助手を辞め鉱山とフォーレンを往復する御者となっていた。片道丸一日かかるので、鉱山では社宅を借り、フォーレンには老後用にと小さな家を買っていた。交代で行う仕事の都合で、鉱山で休みになる時も、フォーレンの時もあったからです。
ある日、フォーレンで町を散策していた時、トードは教会が行う炊き出しとその脇に立っている伯爵夫人を見ました。
伯爵には、3人の婦人がいた。
第一夫人は、貴族同士の結婚、いわゆる政略結婚である。主に、貴族の付き合いなど外交担当。
第二夫人は、妖艶な女性。屋敷の外で見る事は無く、屋敷でのパーティーでも出席する事はない。夜の姫だと噂されていた。
第三夫人は、教会のシスターだった娘を強引に夫人にした。神からの略奪婚と噂になった。
庶民的な彼女は、夫人となった後でも教会の奉仕活動に参加していた。その姿は、町の住人から指示され伯爵の評価を上げる一因となっていた。
ある情報通の言葉だが、伯爵が愛してるのは第三夫人だけで、彼女の言葉で教会への接し方が変わったと言う。
伯爵は、敬虔な信者では無かったが、教会への寄付は行っていた。町一番の教会で、色々噂のあった所でもある。その実態は、伯爵からの寄付は、教会と自分を飾り立てる事、豪華で厳かこそが神の啓示を見せる事と考えていた。教会の神官にも、階級がある。それを上げるのも、教会の大事な務めと考えていた。上層部への献金に使う金に糸目をつけない、そんな教会だった。
第三夫人は、町への奉仕を教会に申し出たが『神の祝福を民に与えてもらう、その為、慈善事業に回す資金が無いのです。ぜひ、領主様に寄付の増額をお願いしてください。』と、返事が返ってきた。
それに対する夫人の返答は、伯爵の寄付していた教会(裕福な商人が集まる)から町の複数の教会(町の住民が利用する)への寄付の変更でした。
慌ててた教会は、伯爵にお願い(抗議)をしますが、一向に取り合ってもらえません。(夫人の言葉に従ったと噂されました、尻に敷かれたとも言う。)
夫人は、寄付を貰う教会に働きかけ毎日炊き出しを出してもらいました。朝と夕方、但し条件があります。町への奉仕を行う事(伯爵から、家の名声を上げる事が寄付の条件だった、と噂された)でした。
町は、綺麗になりスラムで飢える事も無く(それは犯罪の減少となった)、住民の支持を得ていました。
トードは、手紙を書くと自分が通う教会に頼み伯爵夫人へと渡してもらいます。
手紙を呼んだ伯爵は、思いもしない内容に驚きました。これが本当で他の貴族に知れたら、一気に自分の評価が下がってしまう。それは絶対に避けたい事でした。
伯爵は、すぐに『闇ギルド』の行商人を呼びます。闇ギルドは、自分の保身の為、ブラッド商会とは付き合いが無いと知っていました。
暗殺依頼を考えれば、自分の都合の悪い人を消す。暗殺された者が、暗殺されてもさほど騒がれない人物か、徹底した調査をされる人物か、この後者であった場合、闇ギルドが公になる恐れがあります。
ブラッド商会がそんな依頼をする恐れがある以上、”闇ギルドとして距離をおいている。”と聞いていました。
調査はすぐに帰ってきました。結果、トードの手紙の内容に間違いはありませんでした。
調査結果を持ってきた行商人に聞きます。
「ブラッド商会に、奴隷売買をやめる様に言えば済むだろう?」
「その証拠が一切ない、商会に問い合わせてもそんな事実はないと言でしょう。」
「では、この役人と門番を処分し、スラム住人を集めた連中を処罰したらいいだろう?」
「一時的な対処となり、すぐに違う方法で始めるでしょう。」
「では、どうすればいいと思う。」
「内部を探らせ、実態を把握されてから動くのが一番かと思います。」
「・・・・。分った、そのようにしよう。」
「それから、お前を気にいった。町の中に私の別邸がある、そこの専属行商人としよう。毎日、誰でも良い、誰かをよこしてくれ。何かあったら、すぐに対応出来るように。」
「かしこまりました。今後もごひいきにお願い致します。」
夫人に手紙を持たせます。トードに会い屋敷に来るようにと。




