はじまり
ー声が聞こえる。
これは誰かの記憶だろうか。
「結界、突破されました!すぐこちらにも魔の手が迫ってきてー」
近衛兵かと思われる人物が危険を伝え切る前に、後ろから伸びてきた手で口を塞がれた。
「何者だ!」
兵士たちが入り口を塞ぐ様に集まっていく。兵士の視線の先ー危険を知らせようとしていた兵士の後ろに"誰か"がいる。そこからは瘴気の様なものが溢れてきていた。
「残りはこれで全員かしらぁ?最強と名高い帝国の軍隊には少し期待していたのだけどぉ、ちょっと奇襲を掛けたくらいでこの様じゃあねぇ。」
女はそう言うと、少し大きめのナイフの様なもので口を塞いでいた兵士の首をあっさり切り落とした。
「王!ここはお逃げください!恐らくこのものは魔族、それも上位魔人です!せめて時間稼ぎくらいはー」
「させない。」
声と共に入り口にいた兵士たちが、声の主が発したと思われる魔法によって一層された。
「なっなぜ上位魔人が二人もこの国に!?」
「今から死ぬ貴方に教える必要はないわぁ」
女はそう言い、男の首を取った。これで残るは王のみとなった。
「流石は上位魔人、たった二人で我が軍が全滅とはな。いやはや恐れ入った。それでこれからどうするつもりだ?」
「さっきも言ったけれど貴方達は全員死ぬのよぉ。貴方で最後だし特別に教えてあげるわぁ。私達がしようとしていることを―――」
ーーーそんなことをすれば世界はまた...