HELLTAKER☆.SZDIYUSI
宴おばさんとムイミの専用武器Lv190まで上げたらマナ枯渇したわ。
門を出て丘に向けて歩いていく。途中に木立がある程度で開けた地形故奇襲の心配もなくのんびりとしている。
丘の麓に篝火があるのでそれに点灯するとワープが使用可能になった事が確認できた。
緑色の原野に丘といった風情の風景は、風と共に草ずれの音が聞こえてくる爽やかな場所だ。
そんな場所に所々冒険者達が狩りをしている風景が見える。
「悪くない」
感想が自然と口から出る。
目の前の光景から出た俺の感想だ。VRでピクニックでも出掛けるのなら最適な光景だろう。
斧槍を手に持ち、広い丘を探索する。
警戒しながら歩いていけば、最初に出会ったのは大きな猪が二体である。
此方を発見した猪は二体ともほぼ同時に方向転換すると、全速力で此方に向かって突撃してきた。
正面から猪のような筋肉の塊の突撃を受けたら大きな被害は免れない。
突撃してくる猪の頭部に振り下ろす形で斧槍を直撃させる。これで一頭は目を回して倒れた。
そして残った一頭がそのままぶつかってきそうになったタイミングで跳躍、相手の攻撃をかわす。
突撃が外れた猪は直後に減速し、再度方向転換の為に身体を揺らし此方へと向き直ろうとした。
そこに空中での身体制御の為に地面に斧槍を突きさして挙動を調整、猪への攻撃範囲内へと降り立つように着地する。
「とうっ」
軽く息を吐きながら着地して直ぐに横薙ぎの一撃を猪の頭部へと振るう。
それがしっかりと避けようもなく命中し、猪の意識を刈り取った。
二体とも戦闘不能になった所でリザルトが表示されドロップアイテムが獲得できた。
貰えるのは毛皮と猪肉か、特に珍しい物でもないだろう。街に帰ったら換金だな。
そして次に探索をしていると野牛の咆哮と狼の遠吠えが聞こえて来た。
モンスター同士で戦っているのかな?とりあえず狼は討伐目標だし見に行くとするか。
音が聞こえるところまで近づいた結果、どうやらモンスター同士の戦いではなく冒険者と野牛に狼の組み合わせだった。
他人の狩りを横取りするのはマナー違反だし離れるか、と思っていたら想定より状況は良くないらしい。
前衛の戦士が一人野牛の体当たりを諸に喰らって弾き飛ばされて気絶しており、狼が襲ってくる後衛の魔術師と僧侶の護衛に斥候が付き、
残った前衛の一人が必死に数頭の牛を抑えている現状だ。
あれでは前衛が牛に押し潰されてそのまま全滅するのも時間の問題だろう。狼の追撃で逃げる事も出来まい。
「助けは必要か?」
「ッ!すまないが助けてくれ!」
「分かった」
斥候の男が必死に狼の噛みつきを捌きながら此方の声掛けに応答する。
どうやらマーカーが表示されない所を見ると現地人の冒険者達らしい。目の前で死なれるのも目覚めが悪い。
この場で最も緊急性が高いのが野牛を相手にしている前衛の女戦士の救援だろう。
斧槍を構えながら突進するようにして、野牛たちの側面から大振りの一撃を手近な野牛の頭へと振り下ろした。
野牛は威力のある一撃を受けてその場に崩れ落ちるように倒れ伏す。
「助かる!」
それによって片翼が崩れ、なんとか野牛たちの半包囲から脱した女戦士が盾と長剣を構えて態勢を立て直した。
「このまま片付けよう。君は後衛の支援に向かいたまえ」
「すまない任せるぞ!」
そう言って仲間の助けに向かった女戦士を横目に、押し寄せる野牛の群れに対して細かく斧槍を振るう。
野牛の群れ全体からヘイトを調整すると、押し寄せる波のようにやってくるのを捌く。
斧槍の遠心力からの一撃を与えるとステップを踏んですぐさま距離を開け、再度一撃を加える。
舞踏のように体と武器を振り回して一体ずつ、脚や頭を狙ってダメージを蓄積させていく。
距離を付かず離れずを維持し、常に斧槍の間合いを維持して包囲されないように立ち回る。
長物の極意は間合い管理にあると俺は考えている。自分に有利な距離を維持し如何に攻撃を当て続けるか、それが出来るならまず負けない。
舞うように薙ぎ払い、叩き付け、突き刺しを繰り返している内に野牛たちは殆どが倒れ伏した。
男の舞など需要が無いと思うが剣舞なら格好がつくと言うものだ。
そうしていたら冒険者達の方も決着がついたのか、狼を倒して追い払う事に成功したらしい。
戦いながらそちらにも気を払っていたのである程度は把握していたが、腕は悪くないようだ。
「ありがとう。御蔭であやうく全滅する所を助けられたな」
「気にするな。流石に見捨てるのは寝覚めが悪い」
胸甲と部分鎧に盾と長剣を装備した女戦士が、血に濡れた剣を払いながら此方に歩いて来る。
元は騎士階級の人間だろうか、どうやら剣と盾はしっかりとした拵えのようだ。
「それよりも吹き飛ばされた仲間はどうだ、起きれそうか?」
「あぁ、気絶していただけだ。幸い重傷ではない」
見れば倒れていた同じようにやや重装の戦士の男が、身体を起こして意識を取り戻すところだ。
「何かお礼をしたいのだが、希望はあるか?我々もあまり余裕は無いので聞ける願いに限度はあるがな」
別に返礼には期待していないが、貰えるなら貰っておくのが関係を円滑にするところだろう。
「そうだな。俺はもっぱら一人で戦うのが性に合うが、一人だと面倒な時に手を貸してくれ。礼はそれでいい」
「さっきのような戦いをする貴方が早々苦戦するとは思わないが・・・。そういう事にしておこう」
女戦士がそう言って納得するように頷いた。そうして右手を差し出す。
「自己紹介が遅れたな。私がこのパーティのリーダーをやらせてもらっているシェリルだ」
それに対してこちらも右手を差し出して握手する。
改めてシェリルの容姿を確認すると、赤毛の長い髪が特徴的な若い女性で、まだ歳は15.6くらいだろうか。駆け出しの年齢だろう。
ついでに言うと胸部装甲はたっぷりと盛られている。
「ソロ活動をしているグレッグだ。異邦人だから死んでも安い、気軽に接してくれ」
まぁこれも何かの縁だろう。現地人とのコミュニケーションは取って行くと決めているんだ、多少増えても構うまい。
石も大量に使っちまったぜHAHAHA