01 プロローグ
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ーーゴホ!血が・・・っ血が・・・っ!
胸に根深く刃が突き刺さり、血は勢いよく噴き出す。
気が付けば自分の足元一帯は血の海が広がり、その光景を目にするなり、俺は取り乱してしまう。
--クソ、ヒール・・・っ!ヒール・・・っ!
必死に回復魔法を使うが、全く効果を成さない。
それどころか、受けたダメージ口が深くなっている気がした。
どうやら、『相反』によるものだろう。
『相反』は、効力を全て反対として扱うーーいわば回復封じで作られたものだ。
回復をしたいのならその身を蝕む代償魔法を使えば良いのだが、『相反』は簡単に解除できてしまう。
なぜ俺が効能から解除までの方法を知り得ているのか?
何を隠そう、この魔法を開発したのはこの俺だからだ。
だからこそ、この状況を誰よりも把握している。
何をしても無駄だということを。
未だ血は止まらず流れ出ている。
ーー『相反』はある魔法師に渡した魔法なんだが・・・?どうしてよりにもよってお前が・・・『魔王』が持っているんだ・・・?
魔法の複製は、魔法を愛し、知り尽くしたベテラン魔術士にしか成しえない行為だ。
それができる魔王はベテラン魔術士と同等かそれ以上の力を手に入れているということになる。
要するに、俺と同等かそれ以上だということだ。
ーーやばい、声がでない・・・。
全身に血が行き届いていないせいで口も使い物にならなくなってきた。
それだけじゃない、なんだか眠くなってきた。
全身は寒いのに、傷口だけはなんだか暖かい。
不思議なものだ。なぜこのような感覚に陥るのだろうか?
心臓の鼓動と同期するように血は流れ続け、胸に突き刺さる刃は魔王の手によって引き抜かれた。
血の流れを刃が栓していたようなものだ。
それが除かれれば、当然今まで以上に血が溢れ出てくる。
--とうとうまずいな、意識が・・・朦朧と・・・ったく、剣士隊は一体何をやっているんだ?
俺は朦朧とする意識の中で、必死に魔王討伐で編成された剣士隊の安否を確認する。
ぼやけていてよくわからないが、恐らく残念な結果に終わってしまったようだ。
血まみれで倒れている剣士隊に一言言ってやりたかった。
--お前らが粘ってくんなきゃ・・・意味ねーんだよ・・・。
魔法は完全な遠距離攻撃だ。
近距離攻撃があってこその遠距離攻撃のはずなのに、肝心な近距離攻撃があっけなく散ってしまったら、この日のために開発した最大火力魔法も使えなくなってしまう。
まあ剣士隊に何を思おうとも、全て水の泡になってしまった結末に変わりはない。
--もう少し・・・頑張って・・・くれて・・たら・・・
とうとう足に力が抜け、俺はその場に溜まった自分の血の湖へと緩衝材なしにダイブした。
血が飛び散り、俺の服も顔も血まみれ状態。
--ああ、意識が・・・遠のいて・・・。
そして、この世界で魔法開発の第一人者であった世界最強の魔術士ーーイノセ・アグリアーノは命を落としたのだった。