第九十三話「皆を幸せにするって楽勝ですか?……中編」
《――エドに対し挑発的な態度で微笑んでみせた主人公。
そんな主人公の姿に、更に激昂したエドは――》
………
……
…
「……い、良いだろう!
散々私を愚弄した貴様のその甘過ぎる考え……
“敗北”の二文字で塗り潰してやる!!
……ついて来いっ!!! 」
《――と、憤慨しつつサーブロウ伯爵邸を出たエド。
主人公も彼に同行し敷地内の開けた場所へと向かった。
……そして、この騒動の顛末を見守る為か
皆も緊張の面持ちで決闘場所へと移動し――》
………
……
…
「さあ、戦いの準備は整った……そっちはどうだ田舎者っ?!! 」
《――そう挑発したエド
だが主人公は意に介さず――》
「……固有魔導以外に制限が無いとは聞きましたけど
流石に危ないので減衰装備だけはつけておきます」
《――と、気遣いさえ見せた。
だが、これに大層不服な様子のエドは、更に――》
「何? ……それを言い訳にされても面倒だ。
減衰だか“元帥”だか知らんが
言い訳の元に成る様な物は全て外せ!!! 」
《――と、言い放った。
直後“本当に良いんですか?”と訊ねた主人公……だが
この質問に更に激昂したエドに――》
「重ね重ね失礼を致しました、では……全力でお相手致します」
《――そう言うと減衰装備を一つずつ外し始めた主人公。
だが、彼が一つ外す度にエドの様子はおかしく成り始め――》
………
……
…
「お、おい……おいっ!!! ……待て田舎者っ!! 」
《――冷や汗を垂らしながらそう言い放ったエド。
彼は……主人公から漏れ出る規格外な魔導力に慄き、腰が引けていた。
だが、言われた通りに減衰装備を外したにも関わらず
“理不尽に暴言を吐かれた”と感じてしまった主人公に取っては
この“対応”が気に入らなかった様で――》
「……確かに俺もエドさんに対して
相当無礼な態度を取ってしまったとは思いますけど
せめて名前で呼んで頂けま……」
「……そ、その要求は飲んでやるッ!
飲んでやるから! ……減衰装備とやらを全て装着しろっ!!! 」
《――先程までの威勢の良さが嘘の様に
冷や汗を拭いながらそう言ったエド……一方、この発言に全てを察し
大層呆れた様子の主人公だったが――》
「と言う事は……私はあれで手加減をされていたのか。
全く……恐ろしい男だね、君は」
《――と、少し落ち込んだ様子でそう言ったのはミカドであった。
一方、主人公はミカドの発言に少しオロオロとしていたが
そんな主人公に対し、ミカドは――》
「……彼なりに恥を忍んで要求した様に思う。
それに君は“それ”を付けたままでも十分に強い筈だし
傍から見ていても……外せば“勝負にすら成らない”様に感じる。
だから……エドの要求を飲んでやっては貰えないだろうか? 」
《――と、ミカドが続けた事で減衰装備を再び装着した主人公は
落ち込んだ場の空気を盛り上げようと気を遣ったのか――》
「とっ……取り敢えず、技に制限が無いのだけが救いですかね!
エドさんはとってもお強いんでしょうし!
……いや~厳しいな~! 」
《――と、妙な空気に包まれたこの場を盛り上げようと
……したつもりでは有った様だが。
エドにはとんでも無い“嫌味”に聞こえたらしく――》
「ぐっ……良かろう!
“それ”を付けさせた手前、此方も手加減をしてやろうと思っていたが
全力を以て貴様を叩き伏せてやろう!!!
……何時でも来いっ!! 」
《――と、酷く憤慨した様子のエドは
主人公に対し剣と盾を構えると挑発する様な素振りを見せた。
一方……冷静に息を整え、開始の合図を待っていた主人公。
……審判を務めるのは天照。
暫しの静寂が流れた後……彼女は、合図となるコインを空中に投げた。
そして、コインが地面に落ちた瞬間――》
………
……
…
「眠れ……永久に……」
《――主人公はエドに対し睡眠の魔導を
敢えて少し“遅く”詠唱し放った……だが、それすら避ける事が出来ず
この技をまともに食らったエドは――》
「な……んだと……ZZZ」
《――このあっけない結果に
場の空気は信じられない程に凍り、そして――》
「……勝者は主人公さんですね。
さて、お手数をおかけしますが主人公さん……エドを起こして頂けますか? 」
《――と、些か呆れた様子の天照に
そう頼まれ――》
「あ、はいッ! ……目覚めのベルッ! 」
《――主人公がそう詠唱すると飛び起きる様に目覚めたエド。
そして、起きるや否や主人公に対し――》
「い、今の技は……ぶ、無礼だッ!! もっと正々堂々と勝負を! ……」
「……俺は構いませんが“回数こなす”のは大変なので
先に使っても良い系統の技を教えておいて頂けると助かります」
《――主人公のこの返答にに再び憤慨するエドで有ったが
そんなエドに対し、天照は――》
「おやめなさい! ……貴方は確かに平均的な者よりも遥かに強い。
ですが……貴方自身が知っている筈です“お金で得た地位”の意味を」
「なっ?! ……何故天照様が“それ”をご存知なので?! 」
《――エドの反応を見れば“語るに落ちた”のであろう。
この直後、天照は彼がひた隠しにしていた筈の
ある“秘密”を話し始めた――》
………
……
…
「エド……私は人の過去も視えるのですよ?
エド……貴方は元々、裕福な家庭の生まれで有るにも関わらず
それに決して驕る事無く、しっかりと精進し剣術の腕を磨いていた。
ですが、悪友との付き合いを重ねる内に卑怯な技を沢山覚えましたね?
……勿論、戦と成ればその様な技も必要と成る事が有るでしょう
ですが……貴方はついに長を決める為の重要な場でもその様な技を多用し始めた。
それでも勝てない相手に対しては
勝負の前に様々な工作をした上で不戦勝を勝ち取り、お金で動く相手に対しては
自らの財力に物を言わせ“八百長”をした上で勝ち進んだ。
……けれど、貴方が決勝戦で見せた動きには一切の偽りなど無かった筈。
少なくとも私の眼にはそう“視えて”いましたよ?
それが謀られた物で有ったのかどうかは今となっては判りませんが……」
《――そう悲しげな表情を浮かべつつ語った天照
一方のエドは……暫しの沈黙の後
そんな天照の疑問に答える為、静かに口を開いた――》
………
……
…
「ええ……天照様の“眼”は
間違い無く私の本気を見抜いておりましたとも。
決勝戦、私と対戦した相手は……幼馴染の友達でした。
決勝戦の直前、私は彼に対し――
“互いの全力の一撃で結果を出したい、一撃勝負にしてくれないか? ”
――そう頼んだのです。
彼は快く私の提案を受け入れ、決勝戦を迎えました。
天照様……それまで汚い手を使って勝ち進んだ私が
地元でも“名手”と言われた彼に何故勝てたのか……
……魔導適性の無い純粋な物理職で有れば魔導技は使用出来ない筈。
ですが……私には特殊な力が備わって居るのです。
……受けた技をそのまま模倣し
威力を倍増させた上で即座に相手に返す事の出来る特殊な技――
“鸚鵡返し”
――魔導適正など殆ど無い、物理職な筈の私が
一ヶ月に一度だけ使う事の出来る唯一の“固有魔導”なのです。
……もうお分かりでしょう?
彼に対し一撃勝負を申し込んだ理由も、私の決勝戦での動きの秘密も……
……私は、最初から最後まで
卑怯な技で今の地位を築いた愚か者なのですよ」
《――全てを語り終えたエドは全てを投げ出したかの様な
ある意味清々しい程の表情を浮かべていた。
だがそんなエドに対し、天照はゆっくりと近づくと――》
「……エド、貴方はとても大きな可能性を秘めていたのですよ?
真面目に鍛錬を積んでいれば
純粋な実力で今の地位を勝ち得ていた程に。
……今からでも間に合う筈です、貴方が決勝戦で用いた技は
本来の貴方にとって“奥義”とも成り得る物です。
私は……貴方から長の地位を奪いたくは有りません
ですが、今の貴方は長を任せられる実力を有しては居ません。
それは……貴方が長としての立場を利用し
今まで行ってしまった悪行への償いをも考えての事です。
武だけでは無く、心も……再び鍛錬を積み
改めて長と成る為の力をつけるのです……良いですね? 」
《――そう優しく諭した。
直後、天照の愛ある言葉に泣き崩れたエドは
自らの腐敗した為政者としての悪事をこの場で全て暴露し
全ての地位を手放すと皆の前で誓うと、この場から立ち去る事を選んだ。
だが、そんなエドに対し――》
………
……
…
「待って下さいエドさん!
……天照様、どちらにしても引き継ぎとか色々有る筈ですよね? 」
《――そう引き留めたのは主人公だった。
そしてこの直後
彼の質問を肯定した天照に対し、彼は続けて――》
「その……これだけ反省してるエドさんが
引き継ぎまでの間に悪さをするとは俺には思えませんし
天照様の仰られる様に鍛錬を積み直し
後々元の地位に戻る事が出来たとしても
もう二度と悪事に手を染める様には見えないんです。
……なので、直ぐに“クビ”じゃなくても良いのでは?
寧ろ、もし俺達の“案”に協力をして下さるなら
色んな説明をし終えてる分スムーズに進みますし
それと同時進行で改めて西地域担当の長を探せば良いのではと……」
《――エドを庇うかの様にそう言った主人公
天照はこれに対し――》
「私は主人公さんの意見に賛成ですが……エド、貴方はどうです? 」
《――そう訊ねた
直後……天照の眼を確りと見つめたエドは
真剣な面持ちで――》
「ご信頼を裏切らぬ様、次なる長に引き継ぐその時までの間
……誠心誠意勤め上げさせて頂きますッ!! 」
《――と、この要求を快諾した。
そして、主人公へと近付き――》
「……再び長と成れる様、鍛錬を積み直した暁には
もう一度貴方と勝負をしたいと思って居る。
……受けて貰えるだろうか? 」
《――と、憑き物の取れた様な清々しい表情でそう訊ねたエド。
対する主人公は、そんな彼に微笑むと大きく頷き
共に固い握手を交わしたのだった――》
「ええ! ……必ずッ! 」
………
……
…
《――この後
紆余曲折は有ったものの、決闘に依り全てが丸く収まった。
……かに見えた話し合いの場で
南地域の長“宗次”は妙に興奮した様子で――》
「……なぁ、俺は別にこの案に反対する気もねえんだけどよぉ?
それとは別に主人公……おめえと戦ってみてえんだが」
「えっ? ……良いですけど
仮に俺が負けても何の要求も飲みませんよ? 」
「ああ、勿論何の要求もしねえと誓うぜ! ……よしっ!!
そうと決まれば用意してくるから待ってな!! ……」
《――と、興奮冷めやらぬ様子で何処かへと走り去った宗次
一方、この行動に頭を抱えていたのは天照で――》
「主人公さん……何故あの子との戦いを受けてしまったのです……」
「えっ? いや、特に深い意味は無いのですが……」
《――そう答えた主人公に対し
天照は――》
「あの子は魔導師に取ってとんでも無く厄介な装備を持っているのですよ? 」
《――そう答えた天照
その答えに首を傾げた主人公であったが……
直後、とんでも無く“派手な”甲冑姿で現れた宗次に
主人公率いる仲間達は皆、自らの眼を疑った――》
………
……
…
「……待たせたな主人公!!
待たせた詫び代わりと言っちゃあ何だが……ハンデとして
そっちが一撃当てるまで、俺は動かねえぜ!! 」
《――そう言い放った宗次。
……だが、彼の着用している装飾の“ド派手な”甲冑に目を奪われ
あまり話を聞いていなかった主人公は宗次に対し――》
「あ、あの……“全身金ピカ装備”で現れるって
何処の重課金装備……い、いえっ!
と言うかその装備はその……どう言う“おつもり”ですか? 」
《――と、宗次に対し少々無礼な態度で訊ねた主人公。
だが、宗次はこれに対し――》
「ん? ……ああ、“金獅子装備”は初めてか?
……珍しい装備だろう?
これを手に入れる為には相当な金が掛かるのだぞ? 」
「い、いやあのそう言う事では無く……ああもうっ!
……見た目優先の装備っぽいですけど
傷とか付いても文句言わないでくださいね? 」
《――そう訊ねた主人公に対し
宗次はニヤリと笑うと――》
「ほう……傷付ける事が出来れば褒めてやろう」
《――そう答えた。
再び決闘をする事と成った主人公……その一方
天照は渋々と言った様子でコインを投げ――》
………
……
…
《――コインが地面に落ちた瞬間
宗次に対し水珠を放った主人公。
だが――》
………
……
…
「なあおい主人公……減衰装備とやらを外した方が良いんじゃねえか? 」
「なっ?! 何で……」
《――驚きを隠せなかった主人公
それもその筈……主人公の放った水珠は
宗次の甲冑に当たった瞬間、吸い込まれる様に“消滅”したのだ。
状況が理解出来ない主人公に対し、宗次は――》
「……一撃は待つって言ったが
減衰装備とやらを外してから一撃って事にしてやるよ」
《――と、余裕の表情を浮かべつつそう言った。
直後、言われるがままに全ての減衰装備を外し
ありったけの力を込めた水珠を
宗次の甲冑目掛け思い切り放った主人公。
だが――》
………
……
…
「大きさこそ恐ろしいが……おめえさんの本気はこんなもんか?
……次はこっちが行くぞ!! 」
《――言うや否や主人公の眼前から消えた宗次
彼は、一瞬で主人公の背後を取っていて――》
………
……
…
「……さん! ……主人公さんっ!!! ……」
《――直後
倒れた主人公の側に寄り添い必死に声を掛け続けていたメル……そう。
主人公は宗次の攻撃に反応出来ず
決闘に於ける初めての“敗北”を味わったのだ――》
「痛ててっ……俺、負けたのか? 」
《――そう訊ねた主人公
だが、答えたのはメルでは無く――》
「……油断し過ぎだぜ主人公とやら!
まぁ……種明かししてやるがよぉ?
この装備はな、ネジ一本に至るまで全部が“黄金”で出来てんだ。
まぁ、物理攻撃相手ならあっと言う間に破壊されちまうだろうが
魔導技相手なら別だ……黄金ってのは魔導を“よく通す”って
おめえさんもトライスターなら知ってる筈だが……
……よく通すって事は、言い換えりゃ完全に吸収するって事でもある。
つまり……おめえさんが幾ら“名うて”の魔導師だったとしても
魔導系の技である限り、俺には一切攻撃が通らねえって事だ!
因みに“御守り”も意味を為さねぇよ?
全部……吸い取っちまったからな」
《――宗次の説明通り、彼の装着している甲冑は
全てがトライスター装備と同じく黄金で出来ていた。
その上――》
「しかし……おめえさんとまともに殺り合ったら
命が幾つあっても足りねぇだろうな……
……高々一発で此処まで“溜まる”とはよ。
お陰で尋常じゃねぇ位“強化”されちまって
手加減が難しかったぜ……すまなかったな」
《――“金獅子装備”の由来通り
肩に施された獅子の瞳に目をやりつつそう言った宗次
彼の視線の先では、獅子の瞳が赤く光り輝いていた――》
「……そう言う事でしたか、情けない限りです。
俺には物理適正が恥ずかしい程に無いので
そう言う装備が有る事は知っておくべきでした……正直今
悔しさより情けなさが勝ってます……」
《――初めての敗北に酷く落ち込んだ様子の主人公
一方、そんな主人公の姿をじっと見つめていたマリアは……直後
何かを思いついた様な表情を浮かべたかと思うと
大きく息を吸い――》
………
……
…
「やーいやーい! ……卑っ怯な装備で♪ 卑っ怯な勝負のっ♪
卑怯な男っ♪ ……ソ・ウ・ジっ♪ 」
《――と、宗次に対し煽る様な態度をしてみせたマリア。
当然、これには宗次も――》
「……よく見れば嬢ちゃんは物理職の様だが
ありありと俺を挑発した位だ……俺と戦いてえって事で良いんだな?
一応警告しておくが、勝負に関しては女子供相手でも一切手加減はしねぇぞ? 」
《――そう返した
だがマリアは一切これに臆さず――》
「ええ……主人公さんを“騙し打ち”で倒した位ですし?
本当に実力があるかどうかも怪しいですし?
御託は良いので……掛かって来て下さい」
《――何時もとは明らかに違うマリアの真剣な表情に
主人公は慌ててマリアを制止しようとするが――》
「主人公さん……止めるなら泣きますよ? 」
「えっ?! い、いやそんな古典的な……」
「……本当に泣きますよ? 」
「う゛っ……分かったよ!!
マリアが今、何でそんなに“本気の顔”してるのか俺には分からない。
だけどさ……宗次さんは恐らく
俺に対する攻撃を、これでもかなり手加減してくれてた様に感じるんだ。
だから……もし俺の為に怒ってくれてるなら
そこを考えた上で戦ってくれ……頼む」
「えっ? ……別に戦いたいだけですけど?
……って言うのは半分冗談です。
さっきまでの主人公さんの格好良さに泥を塗る様な行動を取った
あのデリカシーの無さにムカついてるだけですから……まぁ。
……見てて下さい! 」
《――直後、主人公に対し天使の様な微笑みを見せると
彼に背を向け、宗次の元へと向かったマリア――》
………
……
…
「……何時でもどうぞ」
《――そう言って双之斧を構えると宗次を見据えたマリア。
宗次もこれに呼応する様に深く構え……
……三度コインを投げる羽目に成ってしまった天照は
うんざりとした表情のままコインを投げ……
……コインが地面に落ちた
瞬間――》
………
……
…
「純金は……柔らかいんですよっ!!!
……どおりゃああああああああああぁぁぁっっっ!!! 」
「何っ?! ……」
………
……
…
《――勝負は一瞬で終わった。
マリアの振り抜いた双之斧は黄金の盾を真っ二つに切り裂き
その下に有る籠手にまで傷を付け――》
「ぐぅぁぁっっっ?! ……」
《――直後
この桁違いの威力に宗次は吹き飛ばされ壁に激突し、気絶……
……その後、意識を取り戻した宗次は
ゆっくりと立ち上がりながら――》
………
……
…
「痛えなぁおい……なんて女だ全く、嫁に欲しく成る位だぜ。
……おい、主人公!
お前……良い仲間を持ってるじゃねえか! 」
《――そう言った宗次の顔は清々しく
そんな宗次に対し、主人公も――》
「ええ! なんたって彼女は……“マリアーバリアン”ですから! 」
「……ほう、これまた“名うて”の姉ちゃんだったのか!
通りで強ぇ訳だ! ……この盾がこんなに成る程強えとはな!
しかし……まさか“財布にまで”ダメージを入れられるとは思ってなかったぜ!!
まぁ、戦えて光栄だったぜ“マリアーバリアン”とやら! 」
《――そうマリアを讃えた宗次であったが
例に依ってマリアは――》
「ご……語呂が悪いっ!!!
もぉ~……主人公さんも何でその名前を言っちゃうかなぁっ?! 」
「アハハハッ! ……ゴメンゴメン!
相変わらず本気のマリアは規格外に強いなと思ってさ! 」
「もぉ~……この国でも噂になったらどうするんですか! 」
《――この日から暫くの後
マリアの不安は無事“的中”し……
……日之本皇国にも
“マリアーバリアン伝説”が轟いたのは別のお話である。
ともあれ……一応の決着がついた事で
四地域の長達は全面的に主人公の“案”に賛同する事と成った。
この後、改めて貴賓室へと戻った一行は
主人公の“案”に関する細かな擦り合わせを行う為、話し合いを始めた。
彼が仲間と共に仕上げた改定案
その改定案を長達を交えて更に良い物へと仕上げて行く作業。
無論、一日で終わる筈も無く――》
………
……
…
「ふぅ……取り敢えず今日はこの位にして
後日また細かな内容の擦り合せを行いませんか? 」
《――そう提案した主人公。
一方……皆その発言を待っていたかの様に
それぞれが背伸びをしたりあくびをしたりと疲労困憊の様子で――》
「私も賛成です……今日の所は解散としましょう。
後日引き続き、今日の様に建設的な話し合いが出来る様
私も祈っております……では、今日の所は解散です」
《――天照の解散宣言に依り
各地域の長達はそれぞれの地域へと帰って行き……そして
主人公一行も天照と共に、南地域の“御休所”へと戻ったのであった――》
………
……
…
《――到着後
明日の準備を済ませると全員倒れる様に眠りへと落ちた一行。
その一方で主人公は――》
「……さっきの負けは駄目だな。
疲れてたとは言え天照様の“ヒント”もあったし
良く考えれば分かった筈なのに……どう考えても迂闊過ぎた。
それにしても“金獅子装備”か……嫌な装備も有った物だけど
宗次さんの話し振りだと
大金さえ払えば手に入れられる感じの装備っぽいし
仮にあれを敵が全員装備してたら俺は確実に負けるって事か……まぁ
幾ら悩んだ所で俺に取っての“天敵”みたいな装備である事に変わりないか。
それこそ“獅子”にでも成ったつもりで汎ゆる物に対して気を抜かず
どんなに弱そうな相手に対しても全力で居なきゃダメって事かも知れない。
そうしてみると……命の掛かって無い状況で
こう言う経験が出来たのは逆に良かったのかも知れないな!
けど、今日は本気で疲れた……ふわぁぁぁっ……眠っ……」
《――主人公は戦いの反省をしつつ
眠りへと落ちたのだった――》
===第九十三話・終===




