第八九話「楽しい筈の記憶が楽しくない事も有って……前編」
マリアの悪戯発言に依り
盛大な誤解を受ける事となった主人公とメル。
ともあれ……朝食後
現在過ごして居る、北地域の利点と欠点を探る為
街の探索を開始した一行だったが……
◆◆◆
「それにしても、北地域は寒いね~……
……何か羽織る物を買うべきかも知れないな」
と主人公が何気無く発したこの発言に対し
マリアはニヤニヤと何かを企んだ様な表情で
主人公に近寄り……
「いやいや~昨日散々“温め合った”んじゃ無いんですか~? 」
と
何とも意地悪げな表情で訊ね……
「なッ?! ……何もしてないわ!!
たッ、確かに昨日俺の部屋にメルが来てくれたのは事実だけどッ!
夜遅くまで仕事してた俺を心配して
“夜食を持って来てくれた”ってだけでだなッ?! ……」
そう必死な表情で弁明した主人公
だが……
「ほうほう……メルちゃん自身が
“夜食”だったって言いたいんですねぇ?? 」
と更に悪ノリを始めたマリア
対する主人公は……
「だ、だから違うって! ……いや
いくら否定したとしても信じるつもり無さそうだし
これ以上そう言うノリ続けても俺は……無視するからな!
そッ、それでももし止めないって言うんなら
マリアの事、これから先
“おっさん系下ネタ大魔神”って呼ぶぞ?!
……い、良いんだなっ?! 」
と、謎な脅し文句でマリアを威圧した主人公
だが、マリアにはこの脅し文句の効果が抜群な様で……
「お、おっさん系?! ……酷いっ!
もぉ~っ! 照れてる二人を見てたかっただけなのに~
そんな呼ばれ方したくないですし……止めます! 」
「お前なぁ……まぁ、なら普通にマリアって呼ぶけどさ。
俺はまだ良いとしても、メルの“真っ赤っ赤度合い”は
かなり危ないレベルだし……限度、考えような? 」
そう言われ
何気無くメルの方を見たマリアは……
「えっ? ……うわっ?! メルちゃん確り!! 」
「はぅぅぅ……」
この後、メルの“真っ赤っ赤”が収まった後
街を散策して居た一行……だが、そんな中
一行の向かう先には大声で誰かを探す男女の姿があり……
◆◆◆
「ユーリ! ……何処に居るの~っ!! 」
「ユーリ! ……ユーリ! ……一体何処に……」
見れば我が子を探して居る夫婦の様だが
その様子を遠巻きから見つめて居た一行の中で、唯一人
血相を変え、夫婦の元へと駆け寄った者が居た……
◆◆◆
「と、父さんッ?! ……母さんッ!! 」
夫婦に対しそう声を掛けたのは“主人公”であった。
……この瞬間、仲間の誰もが状況を理解出来ず居た中
唯一、マリアだけは
酷く思い詰めた様な表情をして居て……
「はぁはぁ……ッ! ……父さん、母さんッ!!
何でこの世界に二人が居るんだ?!
って言うか何で二人共生きて……」
息を切らしつつ
夫婦に対しそう訊ねた主人公。
だが……
「……お、仰られる意味が判りかねますが
私共の息子の行方をご存知なのですか? 」
“父親”にそう訊ねられ
意味を理解出来ずに居た。
だが、恐る恐る“父親”に対し……
「あ、あの……息子さんのお名前は? 」
そう
訊ね……
「ユーリと言う、今年八つを迎えたばかりの大切な息子なんです
恐らく、昨日の事が原因で
家出をしたのではと思って居るのですが……」
そう返された事で他人の空似かと諦め掛けた主人公
だが、直後“母親”の手首に見覚えのある“ほくろ”を発見した事で
事態は一層、複雑な方向へと向かった……
「あ、あの……本当にお二人の間にお子さんは一人だけですか?
“主人公”と言う名前の子供に……本当に覚えは無いですか? 」
二人に対し
余りにも真剣な表情でそう訊ねた主人公。
……だが、鬼気迫る雰囲気を醸し出す
主人公に恐怖を覚えた二人は、理由をつけ
この場から立ち去ろうとし始め……
「お願いです、待ってください……
……息子さんを探す協力なら幾らでもします
だから“狂人を見る様な目で”俺を見ず
お願いですから俺の話をちゃんと……」
其処まで言い掛けた瞬間
突如として背後から羽交い締めにされ
夫婦の元から引き剥がされてしまった主人公。
……彼を後ろから羽交い締めにし
彼の耳元に何かを囁くとそのまま連れ去った者
それは、マリアであった……
「……兎に角、今は堪えてください
後で幾らでも責めて下さって構いませんから」
極度の興奮状態にあった主人公に対し
そう囁いたマリア……そして、暫くの後
どうにか落ち着きを取り戻した主人公を
近くの喫茶店へと連れて行ったマリアは――
◆◆◆
――席へと座り、心苦しそうに俯いていた。
だがこの直後、意を決した様に重い口を開き……
「主人公さんがこの世界を作られた時
“元の世界にいる人達の顔を持って来て”
……って仰ったじゃないですか?
あの時、急いで居たとは言え私
“ある重大な問題”を主人公さんに説明出来ていなかったんです」
「重大な問題ってなんだ? ……全部話してくれ」
「その、重大な問題と言うのが――
“生者からの複製は出来ず、死者からしか複製出来ない”
――って事だったんです。
私自身、そんな事あの時初めて知りましたし
説明して居る時間も無かったので
私の独断でそれを実行したんです。
これでも……咄嗟に機転を利かせたつもりだったんです。
なのに、それがまさかこんな結果に成るなんて……
本当に……何と言えば良いのか……」
そう言い終えると、頭を抱え項垂れたマリア
一方、そんなマリアに対し主人公は……
「確かに……確認する暇無かったもんな。
と言うか、マリアが悪い訳じゃないのに
俺の方こそ興奮して、酷い態度取って……本当にすまなかった」
そう言うと深く頭を下げた主人公
彼は、その姿のまま涙を流して居た。
そして、それを隠す様に……
「で、でもさ! ……死んだ筈の両親に会えたんだ!
それも、異世界でだよ!? ……な、中々出来る経験じゃないよな!
や、役得って考える事にしとこうかな~ッ! ……」
暫くの後
必死で体裁を整え
空元気を演じて見せた主人公。
だが、そんな彼に対しマリアは……
「……無理しないで下さい主人公さん。
その……お二人が
主人公さんの事を覚えて居ないのは当たり前ですし
間違い無いと思います……けど、それでももし
少しでもお二人の傍に居たいと思うのなら
お二人のお子さんの捜索の手伝い……してみませんか?
……一風変わった“人の良いお兄さん”としてなら
暫くの間なら傍に居ても問題には……」
「マリア、気持ちは嬉しいよ……だけど
俺の個人的なエゴに皆を付き合わせる時間は
正直言って、無いと思う……それに
此処は平和そうな地域だし子供はきっと直ぐに見つかるさ。
……俺の気持ちにしても
父さんと母さんに良く似た別人だって割り切れば
俺も我慢出来る筈だし……そ、それにほら!
小さい頃の記憶に残る両親の顔なんてあやふやだと思うし!
ちょっと見間違えただけだろうし?
……いや~ゴメンゴメン!!
人騒がせだったよな~ッ! アハハ……」
そう言うと
苦手である筈のコーヒーを一啜りした主人公。
だが、その発言を聞くなり勢い良く立ち上がったマリーンは
彼の頬を思い切りビンタした。
「ッ!! ……何するんだよッ?! 」
涙目で頬を擦りつつそう言った主人公に対し
マリーンは
「主人公、あなたが其処までバカとは思わなかったわ!!
良い? ……あなたは今二つバカを言ったの
二つとも答えられたらもうビンタしないって約束してあげる。
……さぁ、答えなさいッ! 」
凄まじい剣幕でそう言い放ったマリーン
主人公はこの質問に答えられなかった、だが……
「ビンタする前に正解を教えてあげる……その代わり
正解を聞いても未だ“理解”出来てない様子なら
もう、ビンタじゃ済まさないから……」
「わ、分かった……教えてくれ」
「……主人公、あなたは今
“自分のエゴに皆を付き合わせる時間は無い”って言ったわよね?
じゃあ聞くけど……まず一つ目
あなたが私達を連れてるこの“旅”は何?
“エゴ”以外の何があるの?
……いきなり説明も無く政令国家から旅に出た“エゴ”は?
私達がその“エゴ”に反対した?
無理やりあなたが連れて来たとでも言いたい訳? 」
「そ、それは確かに違うけど! ……こ、心の底から感謝してるよ
皆が居なかったら俺一人で……」
「感謝の言葉が聞きたい訳じゃないわよ! 黙ってて!
……二つ目だけど、私も……多分皆もだと思うけど
主人公……あなたの何が気に入って
こんな大変な所で一緒に居ると思ってるの? 」
「ごめん、全く答えられそうに無い……って言うか
ビンタより酷いって何をするつもり……」
「煩い! ……黙って続きを聞きなさいよ!
あなたの強さに憧れて? ……違うわ。
あなたの顔に惚れて? ……確かにカッコいいけどこれも違うわ?
何で皆あなたについて来たと思ってるの?
……此処までヒント出したんだから
せめて自分で答えなさいよ!! ……答えられたら
何で私がこんなに怒ってるかも分かる筈よ……」
「そ、そんな難しい事答えられる訳……」
そんなマリーンの発言に困惑して居た主人公
だが、この直後そんな彼の肩に手を置き……
「主人公よ……吾輩との友情は何故成り立った? 」
突如としてそう質問をしたガルド
この質問に対し、主人公は……
「何故って……お互いに協力したり
お互いに助け合ったり……って、そんなの
“言葉で説明しろ”って方が難しいよ!
大体、ガルドに限らず皆との関係性は俺に取って
何よりも重要で尊くて、決して失いたく無い物だし!
……って」
何かを察した様子の主人公
そんな彼に対し、ガルドは微笑みながら……
「“答え”は理解出来たであろう?
吾輩も是非に、御主の口から聞きたい物だがな? 」
と、促してみせた
そんな彼の要求に対し、主人公は……
「マリーン……正解かどうかは分からないけど
俺の想いをそのまま言うよ。
……皆の為なら何でも出来るし
命すら掛ける覚悟が在る。
誰かが悲しんで居たら原因を全力で取り除きたいし
そう出来るなら精一杯の努力を惜しまない
心から皆の事を信じ、大切に想ってるし
何者にも代えられない唯一無二の存在だ。
そして……恐らくだけど
俺が“自分の心に嘘ついてる”って完全にバレてる上
“皆に頼ろうとしてない”から怒ってる……のか? 」
恐る恐る、そう訊ねた
すると……
「ええ、その通りよ……辛い時は全力で甘えなさい?
分かった? 」
「ああ、確り理解したよ……ごめんな、マリーン
皆もごめん……そして、有難う」
「良い返事じゃない! ……って言うかビンタしてごめん
私の事……嫌いにならないわよね? 」
「正直……ちょっと怖かったけど
これは愛に溢れたビンタだったんだろ?
嫌いになんか成らないよ……けど」
「け、けど何よ?! 」
この思わせ振りな主人公の言葉尻に
大層慌てたマリーン、だが……
「も、もうビンタしないでね……すっげぇ痛かったから
アーイテテ……」
と、頬を擦りながら
涙目でそう言った主人公の“コミカル”な姿に
思わず吹き出しホッと胸を撫で下ろしたマリーンなのであった。
ともあれ、暫くの後……
◆◆◆
「取り敢えず“顔が一緒”云々以前に
“子供の行方不明”とか正直、無視しちゃ駄目な奴だよな。
……でも、さっきの俺の“言動と態度”のせいで
二人にはかなり警戒されてそうだし
協力自体、断られる気がしてるんだけど……」
そう思い悩んで居た主人公に対し
マグノリアは……
「でしたら、お二人はワタシが連れて来ますわネ♪ 」
そう言い残し喫茶店を後にした後、直ぐに
付近を捜索して居た夫婦を連れて戻った彼女であったが
主人公の存在に気付いた夫婦は
僅かに警戒心を顕にした。
だが……
◆◆◆
「……先程は本当に申し訳有りませんでした!
俺、小さい頃に両親を亡くしておりまして
そ、その……お二人がその両親に余りにも雰囲気が似て居た物で
つい取り乱してしまって……怖い思いをさせてしまって
本当に……申し訳有りませんでしたッ!! 」
“両親”に対しそう謝罪をした主人公。
……直後、幸いにも理解を示し
彼の謝罪を受け入れた様子の両親は……
「いえ、此方も配慮が足らず……
そ、それでその……此方の女性からお聞きしたのですが
息子の捜索にご協力頂けると言うのは本当ですか? 」
と
“父親”に訊ねられ……
「ええ、本当です! ……そ、その早速ですが
息子さんの特徴、居なくなった時の服装など
分かる限りの事を教えて頂けませんか? 」
そう応えた主人公に対し
両親は失踪した息子“ユーリ”の特徴を説明した。
【痩せ型で身長は平均的
髪色は濃い茶色で瞳は茶褐色
最後に見た服装は革のベスト】
……との事。
だが、一通りの情報を得た主人公は
早速捜索を開始“せず”……
「所で、今聞いて居て思い出したのですが
先程お父様は――
“昨日の事が原因で家出をしたのでは”
――と、仰られてましたよね?
失礼ですが、その原因と思われる事をお聞きしても? 」
そう訊ねた主人公
すると、父親は……
「その……お恥ずかしい話なのですが
息子はどうやら“反抗期”と言う時期の様でして
幾ら叱っても効果が無く、つい勢いで――
“出ていけ! ”
――と言ってしまったのです。
その時は息子が黙って居たので
流石に反省したのだろうと思っていましたが
まさか、本当に家出をするとは……」
「成程、そう言う事でしたか……
……取り敢えず俺達は捜索を始めますが
お二人はご自宅に居て下さい
息子さんを見つけたらご自宅にお連れしますので。
って……ご自宅はどちらに? 」
「あちらに見えるあの“赤い屋根の家”ですが
それよりも……初めて会った私達夫婦に対し
この様に良くして頂き、本当に有難うございます」
そう言うと両親は深々と頭を下げ
そんな彼らを見つめて居た主人公は複雑な表情を浮かべて居た。
……この後、両親の情報を頼りにユーリの捜索を開始した一行は
食事処・飲み屋・宿屋など……手当たり次第に捜索し続けたが
どの店に訊ねても目ぼしい情報は得られず
その後もひたすらに捜索を続けた一行……だが
やはり、役立つ情報は得られず……次第に日も落ち始め
夕暮れ時と成り始めた頃、主人公は
ある事を思い出して居た。
◆◆◆
(……そう言えば、俺が昔見たアニメに
“家出した子供が土管の中で夜を越す”
……みたいなシーンがあった様な?
まぁ、この世界に“土管”は無いだろうけど
それに似た様な場所が何処かにあれば
そのユーリって子ももしかしたら……あッ!!
そうだ! …… “秘密基地”だッ! ――)
「――み、皆ッ!!
日除け雨避けが出来そうで、子供なら入れる位の場所を探そう!
子供が“秘密基地”みたいな使い方をする場所を探すんだ!
恐らく、そう言う所に居る筈だよ! 」
直後
主人公の発案に依り、街行く人々に対し
子供が集まりそうな“秘密基地”を訊ねて回る事と成った一行。
……そんな中、ある親子連れの子供は
何か言いたげな様子で“モジモジ”として居て……
◆◆◆
「ねぇ、君……何か知って居るのなら教えてくれるかい? 」
そう訊ねた主人公
だが、子供は……
「でっ、でもっ……“秘密結社ジークフリート”の隊員以外には
絶対に教えちゃ駄目だって隊長が……あっ!! 」
其処まで言い掛け
慌てて口を押さえ黙り込んだ子供。
だが、そんな子供に対し主人公は……
「成程……まず一つ君に言っておこう
俺は君達を付け狙う敵じゃない。
その“秘密結社ジークフリート”の存在と
本拠地の場所は絶対に誰にも言わないって約束するよ。
これは、俺が君達の味方だと言う証だと思って貰いたい
それと……“秘密結社ジークフリート”は
この街を護るとても良い存在だと信じているんだ
だから、困ってる男の子を助ける為
その場所の事、教えてくれないかな? 」
この瞬間
そう、真剣な表情で訊ねた主人公。
……暫く悩んで居た子供であったが
意を決し……
「えっと……今ね、本部で“ほご”してる
“みんかんじん”の男の子が居るの、それでね
皆でお菓子とか、ご飯を少しずつ持って行ってて! ……」
「な、何だって!? ……そ、その“民間人の男の子”は
革のベストを着て居て、茶色い髪と目をして居るかい?! 」
「うん……でも、ずっと泣いてたよ?
僕もあの子にお菓子あげたんだけど、泣きながら食べてた……」
「そっか……早く助けてあげないとだね!
じゃあ一つお願いを聞いて欲しい……今だけで良いんだ
俺達に……本部に入る許可を貰えるかい? 」
「良いよ! ……ついて来て! 」
直後
子供に連れられ、急ぎ
“秘密結社ジークフリートの本部”へと向かう事と成った一行は
子供の案内に依って小さな森へと辿り着いて居た。
暫く進んだその先に見えて来たのは
崩れ掛けた洋館、その割れた窓の隙間からは
蝋燭の物と思われる明かりが見えて居て……
◆◆◆
「彼処! ……彼処に“みんかんじん”の男の子が居る筈だよ! 」
「有難う、君のお陰で助ける事が出来そうだ! 」
直後
ゆっくりと洋館へと近付いた一行……だが、この直後
突如として洋館から現れたのは
手製の“武器”を持った子供達で……
「お……お前達は何者だっ?! 」
「こっ、此処は我らジークフリートの秘密本部……だっ! 」
僅かに緊張した様子でそう言い放ったのは
二人の“幼き兵士”……だが
一人の“兵士”は何かを勘違いし……
「あっ、でも……ねぇミゲル
この人達、もしかしたらこのお家の持ち主かも知れないよ? 」
「バ、バカッ! 名前言うなよ!? け、けど確かに……」
と、少し慌てた様子の“兵士達”に対し
主人公は……
「大変失礼を、この洋……いえ、此方の本部にて
“民間人の男の子を保護して居る”と、此方の隊員からお聞きした物で
今日は、その民間人の保護の為
お伺いしたのですが……」
そう言うと
“兵士達”は……
「へっ? ……そ、そういう事であったのか!
な、ならば今直ぐに……つれてくるねっ! 」
そう言うや否や
“兵士”の一人は勢い良く走り去り……暫くの後
ユーリと思われる子供を連れ、一行の元へと舞い戻った。
そして……
◆◆◆
「こ、これで我が秘密結社の任務はしゅ……終了だ!
ユーリ君……じゃなかった……みっ、みんかんじんの男の子よ!
今度は迷わない様にな! ……バイバイ! 」
ユーリに対しそう言った“兵士”だったが
当のユーリは……
「こっ、この人達誰だよ!? ……お、おれをここに居させてくれよ!
ま、まさかおれ……何処か変な所に売られるんじゃ!? 」
と、盛大な勘違いをしている様子のユーリに対し
主人公は……
「いや、売らない売らない……取り敢えず。
……君がユーリ君で間違い無いね?
君も分かってると思うけど、二人共心配してるよ?
早く家に……」
そう言い掛けた主人公
だが……
「なっ?! ……何でだよ!!!
何で父さんと母さんが来ないで見た事無い人達が来るんだッ!?
き……きっと父さんも母さんも
おれを探すのが面倒だったからアンタ達に任せたんだ!
二人はきっとおれの事より自分達の方が大切なんだ!
だから……絶対に帰らないっ!! 」
そう言うと踵を返し
洋館へ戻り掛けたユーリ、だが主人公は……
「そう言う訳には行かない……ユーリ君。
今から俺は君に対し“エゴの塊”をぶつける
黙って最後まで聞いた上で、それでも帰らないと言うのなら
その選択も含めて……喜びも悲しみも怒りも後悔も
全部“自分の責任で”受け入れたら良い」
そう言い放った。
この瞬間、彼の顔には全くと言って良い程に
優しさらしき物は無く、その様子に恐怖を覚えたユーリは……
「な、何するつもりだよ?! 」
主人公に対しそう訊ねた
そんな彼に対し、主人公は……
===第八九話・終===




