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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝16万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第三章

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第八九話「楽しい筈の記憶が楽しくない事も有って……前編」

マリアの悪戯(いたずら)発言に()

盛大な誤解を受ける事となった主人公とメル。


ともあれ……朝食後

現在過ごして居る、北地域の利点と欠点を探る(ため)

街の探索を開始した一行だったが……


◆◆◆


「それにしても、北地域は寒いね~……


……何か羽織(はお)る物を買うべきかも知れないな」


と主人公が何気無(なにげな)く発したこの発言に対し

マリアはニヤニヤと何かを(たくら)んだ様な表情で

主人公に近寄り……


「いやいや~昨日散々“温め合った”んじゃ無いんですか~? 」


何とも意地悪げな表情で(たず)ね……


「なッ?! ……何もしてないわ!!

たッ、確かに昨日俺の部屋にメルが来てくれたのは事実だけどッ!

夜遅くまで仕事してた俺を心配して

“夜食を持って来てくれた”ってだけでだなッ?! ……」


そう必死な表情で弁明した主人公

だが……


「ほうほう……メルちゃん自身が

“夜食”だったって言いたいんですねぇ?? 」


と更に悪ノリを始めたマリア

対する主人公は……


「だ、だから違うって! ……いや

いくら否定したとしても信じるつもり無さそうだし

これ以上そう言うノリ続けても俺は……無視するからな!

そッ、それでももし止めないって言うんなら

マリアの事、これから先

“おっさん系下ネタ大魔神”って呼ぶぞ?!


……い、良いんだなっ?! 」


と、謎な脅し文句でマリアを威圧した主人公

だが、マリアにはこの脅し文句の効果が抜群な様で……


「お、おっさん系?! ……(ひど)いっ!

もぉ~っ! 照れてる二人を見てたかっただけなのに~

そんな呼ばれ方したくないですし……止めます! 」


「お前なぁ……まぁ、なら普通にマリアって呼ぶけどさ。


俺はまだ良いとしても、メルの“真っ赤()()度合い”は

かなり危ないレベルだし……限度、考えような? 」


そう言われ

何気無(なにげな)くメルの方を見たマリアは……


「えっ? ……うわっ?! メルちゃん(しっか)り!! 」


「はぅぅぅ……」


この後、メルの“真っ赤()()”が収まった後

街を散策(さんさく)して居た一行……だが、そんな中

一行の向かう先には大声で誰かを探す男女の姿があり……


◆◆◆


「ユーリ! ……何処に居るの~っ!! 」


「ユーリ! ……ユーリ! ……一体何処に……」


見れば我が子を探して居る夫婦の様だが

その様子を遠巻きから見つめて居た一行の中で、(ただ)一人

血相を変え、夫婦の元へと駆け寄った者が居た……


◆◆◆


「と、父さんッ?! ……母さんッ!! 」


夫婦に対しそう声を掛けたのは“主人公”であった。


……この瞬間、仲間の誰もが状況を理解出来ず居た中

唯一(ゆいいつ)、マリアだけは

(ひど)く思い詰めた様な表情をして居て……


「はぁはぁ……ッ! ……父さん、母さんッ!!

何でこの世界に二人が居るんだ?!

って言うか何で二人共生きて……」


息を切らしつつ

夫婦に対しそう(たず)ねた主人公。


だが……


「……お、(おっしゃ)られる意味が判りかねますが

私共の息子の行方をご存知なのですか? 」


“父親”にそう(たず)ねられ

意味を理解出来ずに居た。


だが、恐る恐る“父親”に対し……


「あ、あの……息子さんのお名前は? 」


そう

(たず)ね……


「ユーリと言う、今年八つを迎えたばかりの大切な息子なんです

恐らく、昨日の事が原因で

家出をしたのではと思って居るのですが……」


そう返された事で他人の空似かと諦め掛けた主人公

だが、直後“母親”の手首に見覚えのある“ほくろ”を発見した事で

事態は一層、複雑な方向へと向かった……


「あ、あの……本当にお二人の間にお子さんは一人だけですか?

“主人公”と言う名前の子供に……本当に覚えは無いですか? 」


二人に対し

余りにも真剣な表情でそう(たず)ねた主人公。


……だが、鬼気(きき)迫る雰囲気を(かも)し出す

主人公(かれ)に恐怖を覚えた二人は、理由をつけ

この場から立ち去ろうとし始め……


「お願いです、待ってください……


……息子さんを探す協力なら(いく)らでもします

だから“狂人を見る様な目で”俺を見ず

お願いですから俺の話をちゃんと……」


其処そこまで言い掛けた瞬間

突如として背後から羽交い締めにされ

夫婦の元から引き剥がされてしまった主人公。


……彼を後ろから羽交い締めにし

彼の耳元に何かを(ささや)くとそのまま連れ去った者

それは、マリアであった……


「……兎に角、今は(こら)えてください

後で(いく)らでも責めて下さって構いませんから」


極度(きょくど)の興奮状態にあった主人公(かれ)に対し

そう(ささや)いたマリア……そして、(しばら)くの後

どうにか落ち着きを取り戻した主人公を

近くの喫茶店へと連れて行ったマリアは――


◆◆◆


――席へと座り、心苦しそうに(うつむ)いていた。

だがこの直後、意を決した様に重い口を開き……


「主人公さんがこの世界を作られた時

“元の世界にいる人達の顔を持って来て”

……って(おっしゃ)ったじゃないですか?


あの時、急いで居たとは言え私

“ある重大な問題”を主人公さんに説明出来ていなかったんです」


「重大な問題ってなんだ? ……全部話してくれ」


「その、重大な問題と言うのが――


“生者からの複製は出来ず、死者からしか複製出来ない”


――って事だったんです。


私自身、そんな事あの時初めて知りましたし

説明して居る時間も無かったので

私の独断でそれを実行したんです。


これでも……咄嗟(とっさ)機転(きてん)()かせたつもりだったんです。


なのに、それがまさかこんな結果に成るなんて……


本当に……何と言えば良いのか……」


そう言い終えると、頭を抱え項垂(うなだ)れたマリア

一方、そんなマリアに対し主人公は……


「確かに……確認する暇無かったもんな。


と言うか、マリアが悪い訳じゃないのに

俺の方こそ興奮して、(ひど)い態度取って……本当にすまなかった」


そう言うと深く頭を下げた主人公

彼は、その姿のまま涙を流して居た。


そして、それを隠す様に……


「で、でもさ! ……死んだ(はず)の両親に会えたんだ!

それも、異世界でだよ!? ……な、中々出来る経験じゃないよな!

や、役得(やくとく)って考える事にしとこうかな~ッ! ……」


(しばら)くの後

必死で体裁(ていさい)(ととの)

空元気(からげんき)(えん)じて見せた主人公。


だが、そんな彼に対しマリアは……


「……無理しないで下さい主人公さん。


その……お二人が

主人公さんの事を覚えて居ないのは当たり前ですし

間違い無いと思います……けど、それでももし

少しでもお二人の(そば)に居たいと思うのなら

お二人のお子さんの捜索の手伝い……してみませんか?


……一風変わった“人の良いお兄さん”としてなら

(しばら)くの間なら(そば)に居ても問題には……」


「マリア、気持ちは嬉しいよ……だけど

俺の個人的なエゴに皆を付き合わせる時間は

正直言って、無いと思う……それに

此処(ここ)は平和そうな地域だし子供はきっと直ぐに見つかるさ。


……俺の気持ちにしても

父さんと母さんに良く似た別人だって割り切れば

俺も我慢(がまん)出来る筈だし……そ、それにほら!

小さい頃の記憶に残る両親の顔なんてあやふやだと思うし!

ちょっと見間違えただけだろうし?


……いや~ゴメンゴメン!!

人騒がせだったよな~ッ! アハハ……」


そう言うと

苦手である筈のコーヒーを一(ひとすす)りした主人公。


だが、その発言を聞くなり勢い良く立ち上がったマリーンは

彼の(ほほ)を思い切りビンタした。


「ッ!! ……何するんだよッ?! 」


涙目で頬を(さす)りつつそう言った主人公に対し

マリーンは


「主人公、あなたが其処(そこ)までバカとは思わなかったわ!!

良い? ……あなたは今二つバカを言ったの

二つとも答えられたらもうビンタしないって約束してあげる。


……さぁ、答えなさいッ! 」


凄まじい剣幕でそう言い放ったマリーン

主人公はこの質問に答えられなかった、だが……


「ビンタする前に正解を教えてあげる……その代わり

正解を聞いても()だ“理解”出来てない様子なら

もう、ビンタじゃ済まさないから……」


「わ、分かった……教えてくれ」


「……主人公、あなたは今

“自分のエゴに皆を付き合わせる時間は無い”って言ったわよね?


じゃあ聞くけど……まず一つ目

あなたが私達を連れてるこの“旅”は何?

“エゴ”以外の何があるの?


……いきなり説明も無く政令国家から旅に出た“エゴ”は?

私達がその“エゴ”に反対した?

無理やりあなたが連れて来たとでも言いたい訳? 」


「そ、それは確かに違うけど! ……こ、心の底から感謝してるよ

皆が居なかったら俺一人で……」


「感謝の言葉が聞きたい訳じゃないわよ! 黙ってて!


……二つ目だけど、私も……多分皆もだと思うけど

主人公……あなたの何が気に入って

こんな大変な所で一緒に居ると思ってるの? 」


「ごめん、全く答えられそうに無い……って言うか

ビンタより(ひど)いって何をするつもり……」


(うるさ)い! ……黙って続きを聞きなさいよ!

あなたの強さに憧れて? ……違うわ。

あなたの顔に()れて? ……確かにカッコいいけどこれも違うわ?

何で皆あなたについて来たと思ってるの?


……此処(ここ)までヒント出したんだから

せめて自分で答えなさいよ!! ……答えられたら

何で私がこんなに怒ってるかも分かる筈よ……」


「そ、そんな難しい事答えられる訳……」


そんなマリーンの発言に困惑して居た主人公

だが、この直後そんな彼の肩に手を置き……


「主人公よ……吾輩(わがはい)との友情は何故(なにゆえ)成り立った? 」


突如としてそう質問をしたガルド

この質問に対し、主人公は……


何故(なにゆえ)って……お互いに協力したり

お互いに助け合ったり……って、そんなの

“言葉で説明しろ”って方が難しいよ!

大体、ガルドに限らず皆との関係性は俺に取って

何よりも重要で(とうと)くて、決して失いたく無い物だし!


……って」


何かを察した様子の主人公

そんな彼に対し、ガルドは微笑(ほほえ)みながら……


「“答え”は理解出来たであろう?

吾輩(わがはい)も是非に、御主の口から聞きたい物だがな? 」


と、(うなが)してみせた

そんな(ガルド)の要求に対し、主人公は……


「マリーン……正解かどうかは分からないけど

俺の(おも)いをそのまま言うよ。


……皆の(ため)なら何でも出来るし

命すら掛ける覚悟が()る。


誰かが悲しんで居たら原因を全力で取り除きたいし

そう出来るなら精一杯の努力を惜しまない

心から皆の事を信じ、大切に(おも)ってるし

何者にも代えられない唯一無二(ゆいいつむに)の存在だ。


そして……恐らくだけど

俺が“自分の心に嘘ついてる”って完全にバレてる上

“皆に頼ろうとしてない”から怒ってる……のか? 」


恐る恐る、そう(たず)ねた

すると……


「ええ、その通りよ……(つら)い時は全力で甘えなさい?

分かった? 」


「ああ、(しっか)り理解したよ……ごめんな、マリーン

皆もごめん……そして、有難う」


「良い返事じゃない! ……って言うかビンタしてごめん

私の事……嫌いにならないわよね? 」


「正直……ちょっと怖かったけど

これは愛に(あふ)れたビンタだったんだろ?

嫌いになんか成らないよ……けど」


「け、けど何よ?! 」


この思わせ振りな主人公(かれ)の言葉尻に

大層慌てたマリーン、だが……


「も、もうビンタしないでね……すっげぇ痛かったから

アーイテテ……」


と、頬を(さす)りながら

涙目でそう言った主人公(かれ)の“コミカル”な姿に

思わず吹き出しホッと胸を撫で下ろしたマリーンなのであった。


ともあれ、(しばら)くの後……


◆◆◆


「取り敢えず“顔が一緒”云々以前に

“子供の行方不明”とか正直、無視しちゃ駄目な奴だよな。


……でも、さっきの俺の“言動と態度”のせいで

二人にはかなり警戒されてそうだし

協力自体、断られる気がしてるんだけど……」


そう思い悩んで居た主人公(かれ)に対し

マグノリアは……


「でしたら、お二人はワタシが連れて来ますわネ♪ 」


そう言い残し喫茶店を後にした後、直ぐに

付近を捜索して居た夫婦を連れて戻った彼女であったが

主人公(かれ)の存在に気付いた夫婦は

(わず)かに警戒心を(あらわ)にした。


だが……


◆◆◆


「……先程は本当に申し訳有りませんでした!

俺、小さい頃に両親を亡くしておりまして

そ、その……お二人がその両親に余りにも雰囲気が似て居た物で

つい取り乱してしまって……怖い思いをさせてしまって

本当に……申し訳有りませんでしたッ!! 」


“両親”に対しそう謝罪をした主人公。


……直後、(さいわ)いにも理解を(しめ)

彼の謝罪を受け入れた様子の両親は……


「いえ、此方(こちら)配慮(はいりょ)()らず……

そ、それでその……此方(こちら)女性(かた)からお聞きしたのですが

息子の捜索にご協力頂けると言うのは本当ですか? 」


“父親”に(たず)ねられ……


「ええ、本当です! ……そ、その早速(さっそく)ですが

息子さんの特徴、居なくなった時の服装など

分かる限りの事を教えて頂けませんか? 」


そう(こた)えた主人公(かれ)に対し

両親は失踪した息子“ユーリ”の特徴を説明した。


()せ型で身長は平均的

髪色は濃い茶色で瞳は茶褐色(ちゃかっしょく)

最後に見た服装は革のベスト】


……との事。

だが、一通りの情報を得た主人公は

早速(さっそく)捜索を開始“せず”……


「所で、今聞いて居て思い出したのですが

先程(さきほど)お父様は――


“昨日の事が原因で家出をしたのでは”


――と、(おっしゃ)られてましたよね?

失礼ですが、その原因と思われる事をお聞きしても? 」


そう(たず)ねた主人公

すると、父親は……


「その……お恥ずかしい話なのですが

息子はどうやら“反抗期”と言う時期の様でして

(いく)(しか)っても効果が無く、つい勢いで――


“出ていけ! ”


――と言ってしまったのです。


その時は息子が黙って居たので

流石(さすが)に反省したのだろうと思っていましたが

まさか、本当に家出をするとは……」


成程(なるほど)、そう言う事でしたか……


……取り敢えず俺達は捜索を始めますが

お二人はご自宅に居て下さい

息子さんを見つけたらご自宅にお連れしますので。


って……ご自宅はどちらに? 」


「あちらに見えるあの“赤い屋根の家”ですが

それよりも……初めて会った私達夫婦に対し

この様に良くして頂き、本当に有難うございます」


そう言うと両親は深々と頭を下げ

そんな彼らを見つめて居た主人公(かれ)は複雑な表情を浮かべて居た。


……この後、両親の情報を頼りにユーリの捜索を開始した一行は

食事処・飲み屋・宿屋など……手当たり次第(しだい)に捜索し続けたが

どの店に(たず)ねても目ぼしい情報は得られず

その後もひたすらに捜索を続けた一行……だが

やはり、役立つ情報は得られず……次第(しだい)に日も落ち始め

夕暮れ時と成り始めた頃、主人公(かれ)

ある事を思い出して居た。


◆◆◆


(……そう言えば、俺が昔見たアニメに

“家出した子供が土管(どかん)の中で夜を()す”


……みたいなシーンがあった様な?

まぁ、この世界に“土管(どかん)”は無いだろうけど

それに似た様な場所が何処(どこ)かにあれば

そのユーリって子ももしかしたら……あッ!!

そうだ! …… “秘密基地”だッ! ――)


「――み、皆ッ!!

日除(ひよ)雨避(あまよ)けが出来そうで、子供なら入れる位の場所を探そう!

子供が“秘密基地”みたいな使い方をする場所を探すんだ!

恐らく、そう言う所に居る筈だよ! 」


直後


主人公(かれ)の発案に()り、街行く人々に対し

子供が集まりそうな“秘密基地”を(たず)ねて回る事と成った一行。


……そんな中、ある親子連れの子供は

何か言いたげな様子で“モジモジ”として居て……


◆◆◆


「ねぇ、君……何か知って居るのなら教えてくれるかい? 」


そう(たず)ねた主人公

だが、子供は……


「でっ、でもっ……“秘密結社ジークフリート”の隊員以外には

絶対に教えちゃ駄目だって隊長が……あっ!! 」


其処(そこ)まで言い掛け

慌てて口を押さえ黙り込んだ子供。


だが、そんな子供に対し主人公は……


成程(なるほど)……まず一つ君に言っておこう

俺は君達を付け狙う敵じゃない。


その“秘密結社ジークフリート”の存在と

本拠地の場所は絶対に誰にも言わないって約束するよ。


これは、俺が君達の味方だと言う(あかし)だと思って貰いたい

それと……“秘密結社ジークフリート”は

この街を(まも)るとても良い存在だと信じているんだ

だから、困ってる男の子を助ける(ため)

その場所の事、教えてくれないかな? 」


この瞬間

そう、真剣な表情で(たず)ねた主人公。


……(しばら)く悩んで居た子供であったが

意を決し……


「えっと……今ね、本部で“ほご”してる

“みんかんじん”の男の子が居るの、それでね

皆でお菓子とか、ご飯を少しずつ持って行ってて! ……」


「な、何だって!? ……そ、その“民間人の男の子”は

革のベストを着て居て、茶色い髪と目をして居るかい?! 」


「うん……でも、ずっと泣いてたよ?

僕もあの子にお菓子あげたんだけど、泣きながら食べてた……」


「そっか……早く助けてあげないとだね!

じゃあ一つお願いを聞いて欲しい……今だけで良いんだ

俺達に……本部に入る許可を貰えるかい? 」


「良いよ! ……ついて来て! 」


直後


子供に連れられ、急ぎ

“秘密結社ジークフリートの本部”へと向かう事と成った一行は

子供の案内に()って小さな森へと辿(たど)り着いて居た。


(しばら)く進んだその先に見えて来たのは

崩れ掛けた洋館、その割れた窓の隙間(すきま)からは

蝋燭(ろうそく)の物と思われる明かりが見えて居て……


◆◆◆


彼処(あそこ)! ……彼処(あそこ)に“みんかんじん”の男の子が居る筈だよ! 」


「有難う、君のお陰で助ける事が出来そうだ! 」


直後


ゆっくりと洋館へと近付いた一行……だが、この直後

突如として洋館から現れたのは

手製の“武器”を持った子供達で……


「お……お前達は何者だっ?! 」


「こっ、此処(ここ)は我らジークフリートの秘密本部……だっ! 」


(わず)かに緊張した様子でそう言い放ったのは

二人の“(おさな)き兵士”……だが

一人の“兵士”は何かを勘違いし……


「あっ、でも……ねぇミゲル

この人達、もしかしたらこのお家の持ち主かも知れないよ? 」

「バ、バカッ! 名前言うなよ!? け、けど確かに……」


と、少し慌てた様子の“兵士達”に対し

主人公は……


「大変失礼を、この洋……いえ、此方(こちら)の本部にて

“民間人の男の子を保護して居る”と、此方(こちら)の隊員からお聞きした物で

今日は、その民間人の保護の(ため)

(うかが)いしたのですが……」


そう言うと

“兵士達”は……


「へっ? ……そ、そういう事であったのか!

な、ならば今直ぐに……つれてくるねっ! 」


そう言うや否や

“兵士”の一人は勢い良く走り去り……(しばら)くの後

ユーリと思われる子供を連れ、一行の元へと舞い戻った。


そして……


◆◆◆


「こ、これで我が秘密結社の任務はしゅ……終了だ!

ユーリ君……じゃなかった……みっ、みんかんじんの男の子よ!

今度は迷わない様にな! ……バイバイ! 」


ユーリに対しそう言った“兵士”だったが

当のユーリは……


「こっ、この人達誰だよ!? ……お、おれをここに居させてくれよ!

ま、まさかおれ……何処(どこ)か変な所に売られるんじゃ!? 」


と、盛大な勘違いをしている様子のユーリに対し

主人公は……


「いや、売らない売らない……取り敢えず。


……君がユーリ君で間違い無いね?

君も分かってると思うけど、二人共心配してるよ?

早く家に……」


そう言い掛けた主人公

だが……


「なっ?! ……何でだよ!!!

何で父さんと母さんが来ないで見た事無い人達が来るんだッ!?

き……きっと父さんも母さんも

おれを探すのが面倒だったからアンタ達に任せたんだ!

二人はきっとおれの事より自分達の方が大切なんだ!

だから……絶対に帰らないっ!! 」


そう言うと(きびす)を返し

洋館へ戻り掛けたユーリ、だが主人公は……


「そう言う訳には行かない……ユーリ君。


今から俺は君に対し“エゴの塊”をぶつける

黙って最後まで聞いた上で、それでも帰らないと言うのなら

その選択も含めて……喜びも悲しみも怒りも後悔も

全部“自分の責任で”受け入れたら良い」


そう言い放った。


この瞬間、彼の顔には全くと言って良い程に

優しさらしき物は無く、その様子に恐怖を覚えたユーリは……


「な、何するつもりだよ?! 」


主人公に対しそう(たず)ねた

そんな(ユーリ)に対し、主人公は……


===第八九話・終===

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