第八九話「楽しい筈の記憶が楽しくない事も有って……前編」
《――マリアの悪戯発言に依り盛大な誤解を受ける事となった主人公とメル。
ともあれ……朝食後
現在過ごして居る、北地域の利点と欠点を探る為
街の探索を開始した一行だったが――》
………
……
…
「それにしても、北地域は寒いね~……
……何か羽織る物を買うべきかも知れないな」
《――と主人公が何気無く発したこの発言に対し
マリアはニヤニヤと何かを企んだ様な表情で主人公に近寄り――》
「いやいや~昨日散々“温め合った”んじゃ無いんですか~? 」
《――と
何とも意地悪げな表情で訊ね――》
「なッ?! ……何もしてないわ!!
たッ、確かに昨日俺の部屋にメルが来てくれたのは事実だけどッ!
夜遅くまで仕事してた俺を心配して
“夜食を持って来てくれた”ってだけでだなッ?! ……」
《――そう必死な表情で弁明した主人公
だが――》
「ほうほう……メルちゃん自身が
“夜食”だったって言いたいんですねぇ?? 」
《――と更に悪ノリを始めたマリア
対する主人公は――》
「だ、だから違うって! ……いや
いくら否定したとしても信じるつもり無さそうだし
これ以上そう言うノリ続けても俺は……無視するからな!
そッ、それでももし止めないって言うんなら
マリアの事、これから先
“おっさん系下ネタ大魔神”って呼ぶぞ?!
……い、良いんだなっ?! 」
《――と、謎な脅し文句でマリアを威圧した主人公
だが、マリアにはこの脅し文句の効果が抜群な様で――》
「お、おっさん系?! ……酷いっ!
もぉ~っ! 照れてる二人を見てたかっただけなのに~
そんな呼ばれ方したくないですし……止めます! 」
「お前なぁ……まぁ、なら普通にマリアって呼ぶけどさ。
俺はまだ良いとしても、メルの“真っ赤っ赤度合い”は
かなり危ないレベルだし……限度、考えような? 」
《――そう言われ
何気無くメルの方を見たマリアは――》
「えっ? ……うわっ?! メルちゃん確り!! 」
「はぅぅぅ……」
《――この後、メルの“真っ赤っ赤”が収まった後
街を散策して居た一行……だが、そんな中
一行の向かう先には大声で誰かを探す男女の姿があり――》
………
……
…
「ユーリ! ……何処に居るの~っ!! 」
「ユーリ! ……ユーリ! ……一体何処に……」
《――見れば我が子を探して居る夫婦の様だが
その様子を遠巻きから見つめて居た一行の中で、唯一人
血相を変え、夫婦の元へと駆け寄った者が居た――》
………
……
…
「と、父さんッ?! ……母さんッ!! 」
《――夫婦に対しそう声を掛けたのは“主人公”であった。
……この瞬間、仲間の誰もが状況を理解出来ず居た中
唯一、マリアだけは
酷く思い詰めた様な表情をして居て――》
「はぁはぁ……ッ! ……父さん、母さんッ!!
何でこの世界に二人が居るんだ?!
って言うか何で二人共生きて……」
《――息を切らしつつ
夫婦に対しそう訊ねた主人公。
だが――》
「……お、仰られる意味が判りかねますが
私共の息子の行方をご存知なのですか? 」
《――“父親”にそう訊ねられ
意味を理解出来ずに居た。
だが、恐る恐る“父親”に対し――》
「あ、あの……息子さんのお名前は? 」
《――そう
訊ね――》
「ユーリと言う、今年八つを迎えたばかりの大切な息子なんです
恐らく、昨日の事が原因で
家出をしたのではと思って居るのですが……」
《――そう返された事で他人の空似かと諦め掛けた主人公
だが、直後“母親”の手首に見覚えのある“ほくろ”を発見した事で
事態は一層、複雑な方向へと向かった――》
「あ、あの……本当にお二人の間にお子さんは一人だけですか?
“主人公”と言う名前の子供に……本当に覚えは無いですか? 」
《――二人に対し
余りにも真剣な表情でそう訊ねた主人公。
……だが、鬼気迫る雰囲気を醸し出す主人公に
恐怖を覚えた二人は、理由をつけ
この場から立ち去ろうとし始め――》
「お願いです、待ってください……
……息子さんを探す協力なら幾らでもします
だから“狂人を見る様な目で”俺を見ず
お願いですから俺の話をちゃんと……」
《――主人公が其処まで言い掛けた瞬間
突如として背後から羽交い締めにされ
夫婦の元から引き剥がされてしまった主人公。
……彼を後ろから羽交い締めにし
彼の耳元に何かを囁くとそのまま連れ去った者
それは、マリアであった――》
「……今は堪えてください
後で幾らでも責めて下さって構いませんから」
《――極度の興奮状態にあった主人公に対し
そう囁いたマリア……そして、暫くの後
どうにか落ち着きを取り戻した主人公を
近くの喫茶店へと連れて行ったマリアは――》
………
……
…
《――席へと座り、心苦しそうに俯いていたマリア
だがこの直後、意を決した様に重い口を開き――》
「主人公さんがこの世界を作られた時
“元の世界にいる人達の顔を持って来て”
……って仰ったじゃないですか?
あの時、急いで居たとは言え私
“ある重大な問題”を主人公さんに説明出来ていなかったんです」
「重大な問題ってなんだ? ……全部話してくれ」
「その、重大な問題と言うのが――
“生者からの複製は出来ず、死者からしか複製出来ない”
――って事だったんです。
私自身、そんな事あの時初めて知りましたし
説明して居る時間も無かったので
私の独断でそれを実行したんです。
これでも……咄嗟に機転を利かせたつもりだったんです。
なのに、それがまさかこんな結果に成るなんて……
本当に……何と言えば良いのか……」
《――そう言い終えると、頭を抱え項垂れたマリア
一方、そんなマリアに対し主人公は――》
「確かに……確認する暇無かったもんな。
と言うか、マリアが悪い訳じゃないのに
俺の方こそ興奮して、酷い態度取って……本当にすまなかった」
《――そう言うと深く頭を下げた主人公
彼は、その姿のまま涙を流して居た。
そして、それを隠す様に――》
「で、でもさ! ……死んだ筈の両親に会えたんだ!
それも、異世界でだよ!? ……な、中々出来る経験じゃないよな!
や、役得って考える事にしとこうかな~ッ! ……」
《――暫くの後
必死で体裁を整え
空元気を演じて見せた主人公。
だが、そんな彼に対しマリアは――》
「……無理しないで下さい主人公さん。
その……お二人が
主人公さんの事を覚えて居ないのは当たり前ですし
間違い無いと思います……けど、それでももし
少しでもお二人の傍に居たいと思うのなら
お二人のお子さんの捜索の手伝い……してみませんか?
……一風変わった“人の良いお兄さん”としてなら
暫くの間なら傍に居ても問題には……」
「マリア、気持ちは嬉しいよ……だけど
俺の個人的なエゴに皆を付き合わせる時間は
正直言って、無いと思う……それに
此処は平和そうな地域だし子供はきっと直ぐに見つかるさ。
……俺の気持ちにしても
父さんと母さんに良く似た別人だって割り切れば
俺も我慢出来る筈だし……そ、それにほら!
小さい頃の記憶に残る両親の顔なんてあやふやだと思うし!
ちょっと見間違えただけだろうし?
……いや~ゴメンゴメン!!
人騒がせだったよな~ッ! アハハ……」
《――そう言うと
苦手である筈のコーヒーを一啜りした主人公。
だが、その発言を聞くなり勢い良く立ち上がったマリーンは
彼の頬を思い切りビンタした――》
「ッ!! ……何するんだよッ?! 」
《――涙目で頬を擦りつつそう言った主人公に対し
マリーンは――》
「主人公、あなたが其処までバカとは思わなかったわ!!
良い? ……あなたは今二つバカを言ったの
二つとも答えられたらもうビンタしないって約束してあげる。
……さぁ、答えなさいッ! 」
《――凄まじい剣幕でそう言い放ったマリーン
主人公はこの質問に答えられなかった、だが――》
「ビンタする前に正解を教えてあげる……その代わり
正解を聞いても未だ“理解”出来てない様子なら
もう、ビンタじゃ済まさないから……」
「わ、分かった……教えてくれ」
「……主人公、あなたは今
“自分のエゴに皆を付き合わせる時間は無い”って言ったわよね?
じゃあ聞くけど……まず一つ目
あなたが私達を連れてるこの“旅”は何?
“エゴ”以外の何があるの?
……いきなり説明も無く政令国家から旅に出た“エゴ”は?
私達がその“エゴ”に反対した?
無理やりあなたが連れて来たとでも言いたい訳? 」
「そ、それは確かに違うけど! ……こ、心の底から感謝してるよ
皆が居なかったら俺一人で……」
「感謝の言葉が聞きたい訳じゃないわよ! 黙ってて!
……二つ目だけど、私も……多分皆もだと思うけど
主人公……あなたの何が気に入って
こんな大変な所で一緒に居ると思ってるの? 」
「ごめん、全く答えられそうに無い……って言うか
ビンタより酷いって何をするつもり……」
「煩い! ……黙って続きを聞きなさいよ!
あなたの強さに憧れて? ……違うわ。
あなたの顔に惚れて? ……確かにカッコいいけどこれも違うわ?
何で皆あなたについて来たと思ってるの?
……此処までヒント出したんだから
せめて自分で答えなさいよ!! ……答えられたら
何で私がこんなに怒ってるかも分かる筈よ……」
「そ、そんな難しい事答えられる訳……」
《――そんなマリーンの発言に困惑して居た主人公
だが、この直後そんな彼の肩に手を置き――》
「主人公よ……吾輩との友情は何故成り立った? 」
《――突如としてそう質問をしたガルド
この質問に対し、主人公は――》
「何故って……お互いに協力したり
お互いに助け合ったり……って、そんなの
“言葉で説明しろ”って方が難しいよ!
大体、ガルドに限らず皆との関係性は俺に取って
何よりも重要で尊くて、決して失いたく無い物だし!
……って」
《――何かを察した様子の主人公
そんな彼に対し、ガルドは微笑みながら――》
「“答え”は理解出来たであろう?
吾輩も是非に、御主の口から聞きたい物だがな? 」
《――と、促してみせた
そんな彼の要求に対し、主人公は――》
「マリーン……正解かどうかは分からないけど
俺の想いをそのまま言うよ。
……皆の為なら何でも出来るし
命すら掛ける覚悟が在る。
誰かが悲しんで居たら原因を全力で取り除きたいし
そう出来るなら精一杯の努力を惜しまない
心から皆の事を信じ、大切に想ってるし
何者にも代えられない唯一無二の存在だ。
そして……恐らくだけど
俺が“自分の心に嘘ついてる”って完全にバレてる上
“皆に頼ろうとしてない”から怒ってる……のか? 」
《――恐る恐る、そう訊ねた
すると――》
「ええ、その通りよ……辛い時は全力で甘えなさい?
分かった? 」
「ああ、確り理解したよ……ごめんな、マリーン
皆もごめん……そして、有難う」
「良い返事じゃない! ……って言うかビンタしてごめん
私の事……嫌いにならないわよね? 」
「正直……ちょっと怖かったけど
これは愛に溢れたビンタだったんだろ?
嫌いになんか成らないよ……けど」
「け、けど何よ?! 」
《――この思わせ振りな主人公の言葉尻に
大層慌てたマリーン、だが――》
「も、もうビンタしないでね……すっげぇ痛かったから
アーイテテ……」
《――と、頬を擦りながら
涙目でそう言った主人公の“コミカル”な姿に
思わず吹き出しホッと胸を撫で下ろしたマリーンなのであった。
ともあれ、暫くの後――》
………
……
…
「取り敢えず“顔が一緒”云々以前に
“子供の行方不明”とか正直、無視しちゃ駄目な奴だよな。
……でも、さっきの俺の“言動と態度”の所為で
二人にはかなり警戒されてそうだし
協力自体、断られる気がしてるんだけど……」
《――そう思い悩んで居た主人公に対し
マグノリアは――》
「でしたら、お二人はワタシが連れて来ますわネ♪ 」
《――そう言い残し喫茶店を後にした後
付近を捜索して居た夫婦を連れて戻った彼女であったが
主人公の存在に気付いた夫婦は
僅かに警戒心を顕にした。
だが――》
………
……
…
「……先程は本当に申し訳有りませんでした!
俺、小さい頃に両親を亡くしておりまして
そ、その……お二人がその両親に余りにも雰囲気が似て居た物で
つい取り乱してしまって……怖い思いをさせてしまって
本当に……申し訳有りませんでしたッ!! 」
《――“両親”に対しそう謝罪をした主人公。
……直後、幸いにも理解を示し
彼の謝罪を受け入れた様子の両親は――》
「いえ、此方も配慮が足らず……
そ、それでその……此方の女性からお聞きしたのですが
息子の捜索にご協力頂けると言うのは本当ですか? 」
《――と
“父親”に訊ねられ――》
「ええ、本当です! ……そ、その早速ですが
息子さんの特徴、居なくなった時の服装など
分かる限りの事を教えて頂けませんか? 」
《――そう応えた主人公に対し
両親は失踪した息子“ユーリ”の特徴を説明した。
“痩せ型で身長は平均的
髪色は濃い茶色で瞳は茶褐色
最後に見た服装は革のベスト”
……との事であった。
だが、一通りの情報を得た主人公は
早速捜索を開始“せず”――》
「所で、今聞いて居て思い出したのですが
先程お父様は――
“昨日の事が原因で家出をしたのでは”
――と、仰られてましたよね?
失礼ですが、その原因と思われる事をお聞きしても? 」
《――そう訊ねた主人公
すると、父親は――》
「その……お恥ずかしい話なのですが
息子はどうやら“反抗期”と言う時期の様でして
幾ら叱っても効果が無く、つい勢いで――
“出ていけ! ”
――と言ってしまったのです。
その時は息子が黙って居たので
流石に反省したのだろうと思っていましたが
まさか、本当に家出をするとは……」
「成程、そう言う事でしたか……
……取り敢えず俺達は捜索を始めますが
お二人はご自宅に居て下さい
息子さんを見つけたらご自宅にお連れしますので。
って……ご自宅はどちらに? 」
「あちらに見えるあの“赤い屋根の家”ですが
それよりも……初めて会った私達夫婦に対し
この様に良くして頂き、本当に有難うございます」
《――そう言うと両親は深々と頭を下げ
そんな彼らを見つめて居た主人公は複雑な表情を浮かべて居た。
……この後、両親の情報を頼りにユーリの捜索を開始した一行は
食事処・飲み屋・宿屋など……手当たり次第に捜索し続けたが
どの店に訊ねても目ぼしい情報は得られず
その後もひたすらに捜索を続けた一行……だが
やはり、役立つ情報は得られず……次第に日も落ち始め
夕暮れ時と成り始めた頃、主人公は
ある事を思い出して居た――》
………
……
…
(……そう言えば、俺が昔見たアニメに
“家出した子供が土管の中で夜を越す”
……みたいなシーンがあった様な?
まぁ、この世界に“土管”は無いだろうけど
それに似た様な場所が何処かにあれば
そのユーリって子ももしかしたら……あッ!!
そうだ! …… “秘密基地”だッ! ――)
「――み、皆ッ!!
日除け雨避けが出来そうで、子供なら入れる位の場所を探そう!
子供が“秘密基地”みたいな使い方をする場所を探すんだ!
恐らく、そう言う所に居る筈だよ! 」
《――直後
主人公の発案に依り、街行く人々に対し
子供が集まりそうな“秘密基地”を訊ねて回る事と成った一行。
……そんな中、ある親子連れの子供は
何か言いたげな様子で“モジモジ”として居て――》
………
……
…
「ねぇ、君……何か知って居るのなら教えてくれるかい? 」
《――そう訊ねた主人公
だが、子供は――》
「でっ、でもっ……“秘密結社ジークフリート”の隊員以外には
絶対に教えちゃ駄目だって隊長が……あっ!! 」
《――其処まで言い掛け
慌てて口を押さえ黙り込んだ子供。
だが、そんな子供に対し主人公は――》
「成程……まず一つ君に言っておこう
俺は君達を付け狙う敵じゃない。
その“秘密結社ジークフリート”の存在と
本拠地の場所は絶対に誰にも言わないって約束するよ。
これは、俺が君達の味方だと言う証だと思って貰いたい
それと……“秘密結社ジークフリート”は
この街を護るとても良い存在だと信じたいんだ
だから、困ってる男の子を助ける為
その場所の事、教えてくれないかな? 」
《――この瞬間
そう、真剣な表情で訊ねた主人公。
……暫く悩んで居た子供であったが
意を決し――》
「えっと……今ね、本部で“ほご”してる
“みんかんじん”の男の子が居るの、それでね
皆でお菓子とか、ご飯を少しずつ持って行ってて! ……」
「な、何だって!? ……そ、その“民間人の男の子”は
革のベストを着て居て、茶色い髪と目をして居るかい?! 」
「うん……でも、ずっと泣いてたよ?
僕もあの子にお菓子あげたんだけど、泣きながら食べてた……」
「そっか……早く助けてあげないとだね!
じゃあ一つお願いを聞いて欲しい……今だけで良いんだ
俺達に……本部に入る許可を貰えるかい? 」
「良いよ! ……ついて来て! 」
《――直後
子供に連れられ、急ぎ
“秘密結社ジークフリートの本部”へと向かう事と成った一行は
子供の案内に依って小さな森へと辿り着いて居た。
暫く進んだその先に見えて来たのは
崩れ掛けた洋館、その割れた窓の隙間からは
蝋燭の物と思われる明かりが見えて居て――》
………
……
…
「彼処! ……彼処に“みんかんじん”の男の子が居る筈だよ! 」
「有難う、君のお陰で助ける事が出来そうだ! 」
《――直後
ゆっくりと洋館へと近付いた一行……だが、この直後
突如として洋館から現れたのは
手製の“武器”を持った子供達で――》
「お……お前達は何者だっ?! 」
「こっ、此処は我らジークフリートの秘密本部……だっ! 」
《――僅かに緊張した様子でそう言い放ったのは
二人の“幼き兵士”……だが
一人の“兵士”は何かを勘違いし――》
「あっ、でも……ねぇミゲル
この人達、もしかしたらこのお家の持ち主かも知れないよ? 」
「バ、バカッ! 名前言うなよ!? け、けど確かに……」
《――と、少し慌てた様子の“兵士達”に対し
主人公は――》
「大変失礼を、この洋……いえ、此方の本部にて
“民間人の男の子を保護して居る”と、此方の隊員からお聞きした物で
今日は、その民間人の保護の為
お伺いしたのですが……」
《――そう言うと
“兵士達”は――》
「へっ? ……そ、そういう事であったのか!
な、ならば今直ぐに……つれてくるねっ! 」
《――そう言うや否や
“兵士”の一人は勢い良く走り去り……暫くの後
ユーリと思われる子供を連れ、一行の元へと舞い戻った。
そして――》
………
……
…
「こ、これで我が秘密結社の任務はしゅ……終了だ!
ユーリ君……じゃなかった……みっ、みんかんじんの男の子よ!
今度は迷わない様にな! ……バイバイ! 」
《――ユーリに対しそう言った“兵士”だったが
当のユーリは――》
「こっ、この人達誰だよ!? ……お、おれをここに居させてくれよ!
ま、まさかおれ……何処か変な所に売られるんじゃ!? 」
《――と、盛大な勘違いをしている様子のユーリに対し
主人公は――》
「いや、売らない売らない……取り敢えず。
……君がユーリ君で間違い無いね?
君も分かってると思うけど、二人共心配してるよ?
早く家に……」
《――そう言い掛けた主人公
だが――》
「なっ?! ……何でだよ!!!
何で父さんと母さんが来ないで見た事無い人達が来るんだッ!!
き……きっと父さんも母さんも
おれを探すのが面倒だったからアンタ達に任せたんだ!
二人はきっとおれの事より自分達の方が大切なんだ!
だから……絶対に帰らないっ!! 」
《――そう言うと踵を返し
洋館へ戻り掛けたユーリ、だが主人公は――》
「そう言う訳には行かない……ユーリ君。
今から俺は君に対し“エゴの塊”をぶつける
黙って最後まで聞いた上で、それでも帰らないと言うのなら
その選択も含めて……喜びも悲しみも怒りも後悔も
全部“自分の責任で”受け入れたら良い」
《――そう言い放った。
この瞬間、彼の顔には全くと言って良い程に優しさらしき物は無く
その様子に恐怖を覚えたユーリは――》
「な、何するつもりだよ?! 」
《――主人公に対しそう訊ねた
そんな彼に対し、主人公は――》
===第八九話・終===




