第四十七話「楽では無い村に幸運を」
《――バルン村に帰還した一行を感謝で迎えた村人達。
その一方で……この村のさらなる繁栄を考えて居た主人公は
村人達に対し、村を発展させて行く為の方法について話して居た――》
………
……
…
「……まさか僅か一日でこの様な大金を目にする事に成るとは。
皆様には感謝してもしきれませんですじゃ……
一体どう御礼をして良い物か……」
《――彼らに手を合わせ感謝の言葉を述べ続けていた村長。
だが、主人公は――》
「いえいえ……お礼なんて大丈夫です。
俺らが何か御礼をして貰うよりも
皆さんの生活が安定する事の方が俺達には余程嬉しいですから!
……と言うかその為に、俺らの出身地である政令国家と
この村が友好関係に成って頂けたら……って話を皆でしてた位です。
仮に友好関係を築く事が出来れば、適正な価格で
この村は水を……政令国家からは適正な価格で
この村が自活出来るだけの作物の種や苗
その他、畜産に使用する動物なども融通しやすいでしょうし……
……それこそ、お嫌でなければ
村を政令国家に編入するって言うのも有りかと思っています」
「何と?! ……勿論ですとも! 皆さんの様な方々の出身国です!
寧ろ此方からお願いする程ですじゃ! 」
「良かった……では、そうと決まれば早速
政令国家の長であるラウド大統領に連絡を入れますので、少々……」
<――と、連絡を取り掛けた俺を何故か止めたガルド。
その上で――>
「……待つのだ主人公。
そもそも吾輩達はこの村が何処の国へ属しているのかを知らんだろう?
幾ら相手が村長とはいえ、村の一存で勝手に国への編入など
ここを治めている領主が聞けば戦争が起きかねんぞ? 」
「あ~……そう言う事まるで考えてなかった。
危ない所だったよ……有難うガルド」
「構わん……吾輩も良案だとは思っている」
「良かった……それで村長さん、この村って何処の国に所属を? 」
「それが……かつては“帝国”と言う国に属しておりましたが
我が村に“価値が無い”……と、ある日突然一方的に追放されましてな。
我が村が貧乏なのはその所為でも有るのですじゃよ……」
「……えっ?! そ、その“帝国”は……無くなりましたよ? 」
「な、何ですとぉ?! ……帝国が無くなった?!
う゛っ! ……ゲホッゲホッ! 」
「そ、村長さん?! ……完全回復ッ!!
っと……信じられないのは分かりますが事実ですし
正直、帝国と手が切れて居た事はこの村にとって不幸中の幸いでした。
旅の途中に帝国跡地を訪れましたが、見るも無残な状況でしたし
もしこの村が今も帝国領で有ったなら
恐らく、無事では済まなかったかと……」
《――主人公のこの説明に
村人達は安堵とも、恐怖とも取れない表情を浮かべつつ
口々に――
“信じられない”
“あれ程強大な国家が崩壊したのか? ”
――と、その事実を受け入れられずに居た。
ともあれ、暫くの後――》
………
……
…
「取り敢えず……この村は何処の国にも属していないと言う事ですし
一度ラウド大統領に連絡を入れ、最低でもこの村との友好関係を
可能ならば編入と言う形を取って頂こうかと思っていますが……
……構いませんか村長さん? 」
「勿論ですとも! 」
「良かったです! ……では早速。
魔導通信、ラウドさん――」
………
……
…
「……ラウドさん、度々お願いばかりしてしまって
本当に申し訳ないのですが……」
「ん? ……次は何じゃね?
まさかメル殿との間に子供でも出来た訳では無かろうのぉ? 」
「……はわわわっ?!
主人公さんと私に……子供っ?! はうぅぅ……」
「なっ?! ……メル落ち着いて!!
ラウドさんッ!! ……だから違いますって!!
毎回毎回……どう言う流れでそう言う発想に至るんですか!?
そうではなくてですねッ?!
ゴホンッ! ……旧帝国領から然程離れて居ない距離に
バルンと言う名の村がありまして、旅の途中に大変お世話になったのですが
聞く所によると帝国が崩壊した事でこの村の所属する国は無くなり……」
「……“我が国で助けて欲しい”と言うつもりなんじゃろう? 」
「はいその通りです! ……って、何で分かったんですか?! 」
「前回の事と言い、主人公殿の考える事は分かりやすいからのぉ!
それに村を一つ編入する程度ならば何の問題も無いぞぃ? 」
「良かった~……因みに、バルン村には名産が有りまして
これが、半端無く美味しい水なんですが……
……間違い無く政令国家でも流行ると思います。
ただ、政令国家内だけで消費するだけに収めず
行く行くは他国への輸出による外貨獲得手段とも成り得る産業として
この村の経済的な柱と出来る程の品質は俺達が保証します。
……なので、政令国家からはこの村に対し
少しでも豊かな生活が出来る様に各種作物の苗や種
畜産用の動物等を支援し、更に家屋と防衛に関する不安も取り去る為
政令国家水準の家屋や防壁等を建築する等して
この村を発展させて頂ければと思います」
《――と、真面目に説明していた主人公。
だが、その直ぐ横でマリーンは――》
「……あと、主人公が村娘を襲いかねないから
早急に衣服の手配もお願いしたいわ? ……出来る限り早くお願いね! 」
「ちょっマリーン?! ……ゲホッゴホッ!!
俺が襲うとかそんなのは別としまして……とっ兎に角!
むっ、村人の衣服も大至急お願いします……」
「ふむ、此方は構わんが……主人公殿?
やはり“外交大臣”の職が板についておる様じゃのう? 」
「い、いえその……引き継ぎも満足にせず旅立っておきながら
お願いばかりしてしまって本当に申し訳有りません……」
「いや、責めた訳ではないんじゃが……兎に角
全て主人公殿の希望通りに進める事を約束するぞぃ!
ただ……現在は旧帝国城を政令国家第の二城として活用する為
結構な人員を割いておるんじゃが……それ故に
その村の建築もと成ると少々時間は掛かるじゃろうと思う。
“間に合わせ”と言っては何じゃが
防衛用の魔導師や兵士等を二〇名程そちらに送り
完成までの間、護衛をさせておくのはどうじゃろうか? 」
「……ええ、それが良いかと。
あと冒険者が数名“例の国”から逃亡した後
バルン村に対し盗賊行為を行って居たので捕まえはしたんですが……
……此奴らの処遇はどうすれば良いですかね?
やはり、政令国家の法律で裁くべきでしょうか? 」
「ふむ……村は政令国家に編入と言う形を取る訳じゃし
此方で預かり裁きに掛け、然るべき……」
<――そう話していると
突如として村長さんが慌てた様子で近づいて来て――>
「……待ってくだされ。
あの者達も食うに困ってやった事、不躾なお願いとは思いますが
あの者達に対する罪は今回に限り追及せぬ事……叶いませんじゃろうか?
勿論、無理にとは言いませんが……この通りですじゃ」
<――直後
魔導通信の仕組みを知らない村長さんは
魔導通信越しで顔の見えぬラウドさんに対し
深々と頭を下げながらそう言った……だが
そんな村長さんの姿にジンさんは納得が行かなかった様で――》
「あの様な者達の為に頭まで下げるなど……何故です村長?! 」
「ジンよ……諄い様じゃが、飢えが悪いのじゃ。
それに、恨みの連鎖では何も生まれん……理解するのじゃ」
「承知しました……」
<――ジンさんは少し納得が行かない様子だったが
一応は村長さんの決定に従った――>
「ふむ……加害者が言うなら兎も角
被害者側が庇っておるのであれば此方から何も言う事は無いぞぃ? 」
「助かります……所でこの村の位置って分かります?
地図にも載ってないので、少々分かりづらい位置かと思うのですが……」
「ん? ……主人公殿が居る辺りが村じゃろう? 」
「えっ?! ……俺の位置が見えてるんですか? 」
「いや、正確にでは無いぞぃ? ……じゃがある程度は把握出来て居る。
っと……主人公殿、もしや知らんのじゃな? 」
「知らないって……何をです? 」
「……魔導通信はある程度距離が離れた場合
相手の大凡の位置が分からぬと
通信の維持に余分な魔導力を必要とするんじゃよ?
まぁ、主人公殿には痛くも痒くもない程度かも知れんが……」
「えっ?! ……そんなの全く知らずに通信してました」
(ある意味“国際電話”みたいだな……)
「やはりか……では主人公殿
わしの居る位置を“知りたい”……と頭で念じてみるのじゃよ! 」
「はいっ! ……ってうわっ?!
凄くぼんやりですけど……執務室が見える?!
それに……執務室の壁紙が和風になってる?!
和洋折衷って感じで素敵ですけど……」
「……ぼんやりとは言え本人以外まで見えるとは流石じゃのぉ。
まぁ……そう言う事じゃ、村の位置は地図に記したから
数日中にその村へ物資と人員を送るぞい。
しかし……主人公殿が動くと国の形がどんどん変わっていくんじゃのぉ」
「ええ、スライムの草原も復興が不可能な程に形が……」
「わ゛ーーーっ……マリア! その話はもう忘れろってば!
と、取り敢えず! そう言う方向でお願いします。
何か問題があったら直ぐに駆けつけますので! 」
「うむ……では良い旅をのぉ! 」
「はい! ……通信終了」
………
……
…
「――っと、これでこの村は正式に
政令国家へと編入される事が決定しました。
改めて……宜しくお願いします」
「此方こそ……宜しくお願いしますぞぃ!
しかし……何から何まで本当に……」
<――そう言ってとても感謝してくれた村長さん。
この瞬間……俺の心は晴れやかな物に変わった。
今回はちゃんと人を“救えた”……鬱屈としていた俺の心も
少しずつ良い方へと導かれた気がする。
……だが、そう出来たのは全て
この村の名産品である、美味しい水のお陰だ。
正直少しだけ“キザな台詞”だとは思ったが
尚も感謝を続けて居た村長さんに対し
俺は――>
………
……
…
「いいえ……美味しいお水の御礼です」
<――と、少し微笑みながらそう伝えた。
の、だが――>
………
……
…
「……ぶっっ!
主人公さんったら何格好つけてるんですか?!
“美味しい水の御礼です”……“キリッ! ”
とか!! ……ア~ッハッハッハッハ!!! 」
「……ぐっ! マリアお前っ! そんな風に茶化すなよ?!
実際この村の水は美味いだろ?!
……って言うか
だんだん恥ずかしく成って来た……やっぱり今の無しッ!
今の言葉無しぃぃぃッ!!! ……」
………
……
…
《――こうして
正式にバルン村を政令国家へ編入させた主人公。
数日後……無事に物資も届き、村人達の服は新調され
それに依って主人公が少々残念な表情を見せた事で
女性陣に白い目で見られ……その後
彼がビンタを食らう事に成ったのは言うまでも無いが……ともあれ。
……それからさらに数日後の事
村人達は政令国家からの豊富な物資を活用し、荷馬車を完成させ
ついに“ミネラルウォーター”を
政令国家や他国へと輸出する準備を整えた。
……この、僅か一週間程の間で
村人達の生活が一行が訪れた時よりも格段に豊かになり始めていた頃。
その様子を満足気に見つめていた一行は
本の情報を探す旅に戻る為、バルン村を旅立つ事を決めた――》
………
……
…
「皆様どうかご無事で……実り有る旅と成ります事を祈っております」
<――そう言うと俺達に対し深々と頭を下げたジンさん。
感謝されるとむず痒いけど、同時に凄く嬉しくも有る。
“人に喜んで貰える”って嬉しいな!
……と、そんな事を考えていたら
村長さんは――>
「皆様に我が村の水を大樽で人数分用意しましたぞぃ! ……
……旅の最中に楽しんでくだされ! 」
<――直後
村長さんの合図で俺達の前に運ばれて来た大樽
これを見るなりマリーンは――>
「えっ、嬉しいっ!! ……私、暫くこれしか飲まないわ! 」
<――それこそ俺の分も取りそうな勢いでそう言ったマリーン。
そう言えば一番ハマってたもんな――>
「ハハッ! ……その様子だとあっという間に無くなりそうだね!
っと……村長さん、有難うございます!
皆さんもどうかお元気で! ……」
<――と、別れの挨拶をしていたら
突如として村長さんに近付いたメル。
どうしたのだろうと様子を見ていると――>
………
……
…
「その……特に村長さんはお体ご自愛下さいね。
私が掛けた治癒魔導は完璧な物では有りませんから
もしも体調に不安がある時は、派遣された魔導師さんの誰かにお願いして
政令国家本国で治療を受けてください。
勿論、お金は掛かりませんから
我慢したり、無理したりしないでくださいねっ! 」
「ふむ……心得ておきますじゃ!
……メル様も怪我などされぬ様祈っておりますぞぃ! 」
「はいっ! ……どうかお元気で! 」
<――この瞬間
笑顔で別れを告げたメルが
“白衣の天使”に見えたのは俺だけだったのだろうか?
……ともあれ
そんな事を考えて居た俺の横でガルドは――>
………
……
…
「旅が終わり、また此処を訪れた時
今よりも尚豊かな村へ成長している事を吾輩は願っている……」
「お心遣い感謝しますじゃ……しかし、別れとは寂しいものですのぉ」
「なに、必ずまた会えるとも……所で主人公。
また会える様にする為に使える“フラグ”は……何か無いのか? 」
「へっ? そ、そうだなぁ……」
(……なっ?!
ガルドが“フラグ”の使い方をマスターしてる……だと?! )
………
……
…
「じ、じゃあ……
“絶対会えないと思うわ~
なんか忘れ物してて取りに来る為とかも絶対に無いと思うし! ”
っと……こんな感じじゃないかな! 」
<――と、自信満々でそう答えた俺に対し
マリアは――>
「うわぁ……引く程下手なフラグの立て方しますね主人公さん。
で“忘れ物”って言いましたけど……何を忘れていくんですか? 」
「あっ……何を忘れていくかまでは考えてなかった。
何か有ったかな……う~ん。
……あっ!!!
この服を……“忘れて”いこう! 」
《――そう言って主人公が取り出した服は
“引きちぎられてから”ずっと仕舞い込んでいた一着であった。
この瞬間、一瞬女性陣の顔が引き攣ったのは言う迄もないが
事情を知らぬ村人達はこれを喜び、再び一行がバルン村に訪れる事を
楽しみにする声を其処彼処から挙げたのだった――》
………
……
…
「では……皆様がまたこの村にお帰りになる時まで
この服を我が村の守り神の様に大切に祀っておきますじゃ! 」
「……まぁ、大切な部分が全く“守られて”ないんですけどね~」
「え~っと……誰の所為だったっけ? マリア」
「うっ……ごめんなさい」
「わ、私もっ……ごめんなさいっ! 」
「私もね……ごめん……」
「い、いや三人とも……其処まで反省されると
逆にこっちが申し訳無いと言うか……」
………
……
…
「さて……これでまた会える“フラグ”とやらが立ったのだろう?
漸く気兼ね無く旅立てると言う物だ」
「そうだねディーン……
……それじゃそろそろ俺達は旅に戻ります。
俺も楽しみにしてます、皆さんに……また会える日を! 」
<――と、バルン村の皆さんに別れを告げたら
元気な声で“また会える日まで!! ”……と返事が帰って来た。
だがこの時、俺は“別れの寂しさ”を一切感じていなかった……何故なら
元気良く返事を返してくれた村人達の血色が
出会った当初よりも格段に良くなってる事に気付いたからだ。
……俺は、少しでも役に立てたのだろうか?
願わくば、この先この村で生まれてくる子供達も
その子供達の子供達も……毎日、栄養満点な食事を取る事が出来る
いや、出来続ける世代であって欲しい。
……そんな事を願いつつ
俺は、村人達に手を振って居たのだ――>
………
……
…
「ギュンター……オベリスクを」
「ええ、ディーン様……では皆様。
私めも皆様にまた会える日を楽しみにしております。
甦れ、オベリスクよッ!! ――」
《――この時
敢えてオベリスクの“真の姿”を村人に目撃させたギュンター
彼なりに村人達へ安心感を与える為のある種の“示威行動”として。
直後……彼の思惑通り、村人達は感嘆の声を上げ
オベリスクに乗り込む主人公達を一際大きな声援で見送った。
声援を背に受け
次の目的地へと向かう事と成った一行。
彼らの次なる目的地は――》
===第四十七話・終===




