第二八九話「何が何でも楽しく居て欲しくて」
<――この瞬間
メアリさんから突如として伝えられた情報
“ソーニャの危篤”を伝えるこの情報は……直後、俺だけでは無く
隣に居るエリシアさんの精神までも容易に乱した――>
………
……
…
「どう言う事? ……ソーニャは生きてるの?
今ソーニャは何処に居るのっ?! ……答えて、メアリっ!! 」
<――血相を変え
そう問い糾したエリシアさん。
無論、俺も冷静で居られる訳は無く――>
「か……彼女は生きてるんですよねッ?!
もし生きてるなら、助ける方法はッ?!
俺に出来る事があるなら何でも言って下さいッ!!
と、兎に角ッ!! ……先ずは彼女の所に案内をッ!! 」
「お二人共落ち着いて下さいっ!! ……彼女は今、第三研究室にて
増幅器に依る“魔導増幅法”を受け続けています。
……自らを顧みない魔導移譲に依って
彼女の体には重篤な障害が発生してしまった。
現在、魔導を保持する力を殆ど失ってしまって居る彼女に対し
仮に主人公さんの魔導力を全て流し込んだ所で
その行為には何の意味も無く
ただ悪戯に双方が消耗してしまうだけなのです。
不甲斐ない話ではありますが……現状では、増幅器だけが
純粋な彼女の魔導力を生成出来る、唯一の力なのです……」
「そ、そんな……他に何か方法は……」
「残念ですが、今彼女を救えるのは……主人公さん、貴方でも
エリシアさんでも……私でも無いのです」
<――取り乱す俺達に対し
そう、残酷な現実を語ったメアリさん。
だが……この直後、それでも諦めきれず
唯の我儘とさえ思える程頑なに
エリシアさんは続けた――>
「成程ねぇ~……私達じゃ何の役に立たないのは良ぉ~く分かった。
けど……そんな状況を聞いて黙って此処で待ってられる程
私が不義理な人間じゃ無い事位、知ってるよね? 」
「ええ、ですが……」
「私は確かに約束した……あの毒蛇女に約束したんだっ!!
“弁償させるまでは何が遭っても死なせない”……って。
メアリ……勝手な事を言ってるのは分かってる。
だけど、一目で良いから……あの女に会わせて。
今すぐ……私と主人公っちの事をあの女の所に連れて行って」
<――彼女と顔を突き合わせた所で何が変わる訳でも無い事は
きっと、エリシアさん自身が最も良く分かって居た事だろう。
だが……それでも。
この瞬間、病み上がりの身でありながらも
それを微塵も感じさせない程に強く
真っ直ぐな眼でそう言い切った彼女を止められる様な人は
恐らく、何処にも居ない事だろう――>
「……分かりました。
ですが……今の彼女の姿を直視すれば必ず傷になります。
言うまでも無いでしょうが……お覚悟を」
<――直後
何かを思い出した様に、そう悲しげな眼差しで言ったメアリさんと共に
研究機関へと向かう事と成った俺達は……其処で
余りにも凄まじいソーニャの姿を目撃する事と成った――>
………
……
…
「ッ゛……グ……ッ……」
<――普段の彼女の声からはかけ離れた
声と呼ぶ事が不適当な程のうめき声……そして。
“間に合わせ装備”の脆さ故に
“魔導感知系”の技を一切使えない現状の俺でさえ容易に理解出来る程
研究室に充満した彼女の物と思しき大量の魔導力は
俺の精神と肉体に、強い“息苦しさ”を感じさせ――>
「ソーニャさん……何で……こんな……ッ!! ……」
<――メアリさんの“忠告”通り
俺の心にあまりにも大きな“傷”を付けた――>
「彼女に触れてはなりませんッ!! ……
……拷問の様な状況に置かれた彼女を救えるのは
先程も申し上げた通り、増幅器だけなのです。
確かに……今の速度では回復までに数年は掛かるでしょう。
ですが、主人公さんの装備が復活すれば……」
「“しなければ”……このまま
彼女は……ソーニャは何年も苦しみ続けるって事ですか? 」
「……ええ。
現状、生きているだけでも奇跡的なのです……言う為れば
彼女はエリシアさんの死を肩代わりしようとしたのですから。
……人の身には過ぎた望みを無理に叶えたのです。
直前まで彼女を疑って居た私達には何とも皮肉な話ですが……
……彼女はあの瞬間、最も清い存在だった」
「……本当に何も方法は無いんですか? 」
「ええ……少なくとも、今は」
<――俺の焦りは
とんでも無く周囲の人々を傷つけて居た。
この瞬間、何一つ手立ての無い状況に肩を落としたメアリさん越しに
そっと拳を握り締めたエリシアさんの姿は……
……この状況全てが俺の所為だと強く感じさせた。
ソーニャ……彼女は何故、その身を賭してまで
犬猿の仲であるエリシアさんを救う決意をしたのか。
……其処にどんな考えがあったにせよ
俺の大切な存在を救う為、命を掛けた彼女の行動は――>
「……分かりました。
なら……俺がその方法を見つけ出します。
必ず見つけて、必ず助ける……全ては俺が取るべき責任です」
<――俺の心に
そう、強く揺るがぬ決意をさせ――>
「確かに、責任は主人公っちにあるかもね~……でも。
救って貰った恩は私にある……だから、私も全力で手伝うよ」
<――エリシアさんの心にも
強く揺るがぬ想いの炎を灯した――>
「お二人共何をっ?! ……第一、貴方達はまだ病み上がりであり
派手に動ける様な状態ではっ! ……」
「安心して、メアリ……派手には動かないから。
唯、一つだけ“頼る宛てがある”事を思い出しただけ」
「頼る宛て? 一体何を……」
<――この瞬間
良案を思いついたのか、笑みを浮かべたエリシアさんは
直後――>
「いや~……そこそこ長い間、この国の民達と
獣人王国の民達から祈りを捧げて貰ってる例の“婆様”に
今回の件を訊ねてみるのも手かな~って思ってさ!
だって……マリアちゃんの復活に必要な力は“宙ぶらりん”のままじゃん? 」
<――そう
“古の精霊女王八重桜”の事を口にした。
そして――>
「た、確かに……彼女なら何か方法を知っている筈!!
流石です! エリシアさんッ!! ……そうと決まれば、早速行きましょう! 」
「褒めてくれてありがとねぇ~……でも、ちょ~っと待ったぁぁぁぁっ!
……私にしても、主人公っちにしても
現状、魔導技を使用するのはかな~り危ないし
それなら、護衛にも成って“移動手段”も持ってる様な“お仲間”を
一人、同行させた方が良くな~い? 」
「へッ? ……って言ってもマリアだって病み上がりですし
マリアは強いですけど“転移魔導は”使えませんし
メルは回復術師ですから同じく無理ですし、ガルドは物理職ですし
マリーンは魔族系の技を沢山持っていますが
確か、転移系の技は使えなかった筈で……」
「……あ~らら、主人公っちって結構薄情なんだねぇ~っ?
ねぇ、主人公っち……君の仲間って、本当に“それだけ”だったっけ? 」
「え゛ッ?! ……い、いや……ディーン隊の皆は日之本皇国ですし
中でもライラさんは絵師のクロエさんと旅をしてる真っ最中ですし!
リーアはそもそも精霊女王としての仕事がとても忙しくて! ……」
「はぁ~っ……“本人”は相当傷つくだろうなぁ~っ
仲間として数に入れられてなかった事……ぜんぜん違うよ。
私が言ってるのは“君の旅の同行者”の話じゃなくて! ……」
<――直後
予想だにしていない人物の名前を口にしたエリシアさん――>
「時間も惜しいし、仕方無いから正解言うよ~っ?
私が言ってるのは……淫魔族の“ロベルタ”の事っ! 」
「は? ……」
「うわ~……その反応が一番本人は傷つくと思うよ?
兎も角……ロベルタなら忙しくも無いだろうし、そもそも本人も
主人公っちに“恩返しがしたい”ってずっと言ってたから
今回の条件にピッタリじゃないかな~って思ったって訳っ♪ 」
「ロ、ロベルタさんが俺に恩返し? 一体何の……」
「うわ~……主人公っち、自分の行動忘れ過ぎじゃない?
“耄碌”するにはかな~り早い気がするけど……本気で言ってる? 」
「い、いや……本当に分からなくて……」
「いや君……ロベルタの命救ったよね? 」
「え? そんなの別に普通の事ですし、恩って程の事では……」
「うわ……何それ、超カッコ良いじゃん
主人公っちってやっぱりいい男だねぇ~っ♪ 」
「い゛ぃッ?! ……と、兎に角ッ!!
ロベルタさんが“条件に合う”って一体どう言う……」
「えっ? ……いやいや、めっちゃ強いし
転移は勿論、相手を惑わせる能力が桁違いなのは
“種族的特徴”で言うまでもない話でしょ~っ?
てか、知らないっぽいから教えとくけどぉ~……
……“二対魔王アイヴィー”の次位に強いんだよ? ロベルタって」
「え゛ッ? ……そ、そうなんですか? 」
<――この瞬間
そんな衝撃の事実を聞かされた俺は……この後
エリシアさんと共に、第二城地域魔族居住区の奥
“淫魔館”へと向かう事となり――>
………
……
…
「……あら♪ お久し振りね主人公さん♪
でも、残念……その様子だと“遊び”に来てくれた訳じゃ無いみたいね? 」
「ええ……そ、その……長らく顔を見せられてなくてすみません……」
「良いのよ謝らないで? ……貴方が逢いに来てくれるだけで
私はとても嬉しいのだから……それで、私に何か相談事かしら? 」
「え、ええ……その……」
「……はいは~いっ!
奥手な主人公っちの“可愛い時間”は長くなるからそこまでぇ~っ!
てか、状況的に余り時間を掛けたくないから単刀直入に言うね。
……ロベルタ。
今日、貴女には主人公っちへの恩返しと
人助けの為、力を貸して貰いに来たんだ……お願い」
<――飾りっ気など一切無く
この瞬間、そう言って頭を下げたエリシアさん。
直後、ロベルタは詳細を訊ねる事さえもせず
唯一言――>
「ええ、良いわ」
<――そう言った。
そして――>
「快い返事ありがとぉ~っ! ……っと。
……これ位なら魔導力的に大丈夫そうかな?
主人公っち、チビコーンか八重桜に通信を繋いで。
ロベルタは“映像通信”を目標に、転移の発動をお願い」
<――この瞬間
そう指示を出したエリシアさんに従う様に、恐る恐る
八重桜へと通信を繋いだ俺は――>
………
……
…
「ん? ……久し振りだな小童。
暫く見ねえ間にちぃとばかり痩せた様だが……どうしただ? 」
「お、お久し振りです……そ、その本日は……」
<――そう、僅かな緊張感に包まれながら
久々の会話を交わして居た俺に、小さく触れた“ロベルタ”は――>
「……成程、位置は分かったわ。
行くわよ――」
<――言うや否や
転移を発動させたのだった――>
………
……
…
「何だ? ……まさか、おらの森さ攻め入る積もりじゃ無えだろうな? 」
「い゛ぃッ?! ち、違いますからッ!!
兎に角先ず槍を置いてくださいッ!
そ、その……きッ、今日はお願いがあって!! ……」
<――事情説明が終わらぬ内から“真横に転移”などすれば
そりゃあこんな誤解も受ける事になるだろう。
……この瞬間、鋭く尖った槍を片手に
凄まじい闘気を纏った八重桜の誤解を解く為
慌てて弁明をしようとして居た俺……だが。
彼女の興味は既に“誤解”には無かった様で――>
「……ん?
暫く見ねえ内に痩せたと思ってたら……
……おめぇ、またえらく“懐かしい物”さ宿したんだな? 」
<――この瞬間
俺の眼を真っ直ぐ見つめ、そう言った八重桜
直後、彼女が俺に宿った“古代龍の力”を指して居る事に気付き――>
「え、ええ……不本意と言うか、想定外と言うか……何れにせよ
望んで得た訳では無いんですけど……その……」
<――困惑の中、そんなスッキリとしない返答をした俺。
直後、そんな俺に対し
“贅沢な事を”……と
嘲笑った八重桜は――>
「……おめぇがもし、その力さ“捨ててぇ”と願いに来たなら
残念だがおらには叶えられねえ話だ……だが、その様子
そう言う“話”では無え様だ……何故、おらの所さ直接訪ねて来た?
そもそも、おめぇ……装備さ何処へやっただ? 」
「装備は……今は、修繕中です。
今日は、その……貴女に頼みがあって来ました」
「ふむ……例のマリアって女の事か? 」
「いえ、彼女の事では……でも、人命に関わる話ではあります。
八重桜さん、どうか……」
<――この瞬間
懇願する様にそう頼み掛けた俺の言葉に被せる様に――>
「無理だ……おめぇ達に協力はしてやりてえ、だが今は絶対に無理だ」
<――彼女は流れを断ち切る様にそう言った。
そして……この直後、拒否の理由を問おうとした俺に対し
更に――>
「……残念だが、未だおらの力は足りてねえ。
そもそも、おらが“持ち分”と成ったこの森さ盛り立てるだけでも
おめぇ達が考えて居る程甘くは無え。
……森の安寧さ護る為、一角獣の力さ更に強め
おら自身も強くならねば、おめぇ達には勿論
他の“精霊女王達”の力にも成れねえ……それだけじゃ無えど?
其処で不満げに腕さ組んでる娘の“親友”さ罪は
今現在、あの娘さ“母親”とでも言うべき立場と成ってる
おら自身も一緒に被ってるだ。
……“滅びの村”の住人達からあの娘に齎される禍禍しき怨念は
そう簡単に浄化出来る代物じゃ無えだ。
今も尚、彷徨ってる強い恨みを持った魂達に対し
娘が一人ずつ許しさ乞うて、墓さ立てて
おらも力さ込めて、一人ずつ彼の世さ向かわせねば成らねえ。
少なく見積もっても後四九人は居る悪霊が如き亡霊達から
全て赦されねば成らねえ……それは、とんでも無く力を必要とする話だ。
言う為れば、おらは自分の森と……本来なら“フリージア”の管轄である
“滅びの村”の両方さ管理してる様な物だ。
それに……おめぇ達の所さ授けた、おらの力さ籠もった“武具”だって
おらの力さ定期的に取って行っちまってる……残念だが
おめぇ達に力さ貸してやれる余力は、一切無え……」
<――“無い袖は振れない”
この瞬間、そう言ったに等しい状況を語った八重桜は
古代種としての絶大な力でさえ及ばない程の激務を教えてくれた。
そして――>
「いきなり訪ねて来た挙げ句、酷い態度だったよね……
……色々とごめん、八重桜。
ヴィオレッタの事、本当に感謝してる……ありがと」
<――そんな彼女に対し、そう謝意を口にしたエリシアさん。
だが――>
「何言ってる……“武具も”だど?
とは言え、おらが好きでやってるんだ……
……感謝なんて必要無ぇ、娘っ子さ出来るのは嬉しい話だ。
あの娘はお転婆だが、良い娘っ子だ……感謝するとすればおらの方だど? 」
「えっ? ……な、なんで八重桜が……」
「何れあの娘は強くなる……
……あの娘は絶対にいち精霊族では終わらねえ筈だ。
いや……少々“親馬鹿”が過ぎているかも知れねぇだなっ!
まぁ、たまには良い……ともあれ、おらの所さ“祈り”に来て
何も持たせず帰られてはおらも心苦しい。
小童……おめぇが望むか否かは兎も角、せめて一つ
おめぇの力ば咲かせる為の“糸口”さ伝えておく。
良いか? 忘れるで無えど? ――
“真の実りへと通ずる道は、禍禍しき物が過去に在る”
――分かっただか? 」
<――と“なぞなぞ”の様な事を口にした。
だが……当然
この言葉だけで全てを理解出来る訳も無く――>
「お、仰る意味が全く分からないんですが……」
「何だと!? ……全く。
時が来れば分かる筈だ……今は食い物さ拘れ
龍の欲する物さ食えば、自ずと龍の力は育つ……分かったか? 」
「え、ええ……一応は……」
「なっ……全く。
……おめぇには龍との結び付きが出来た。
龍の力さ強めるならば、同じ立場の者に話しさ通せ……分かったか? 」
「同じ立場……ま、まさか……俺に“竜系種族”と話せと? 」
「ん? ……知り合いさ居るだか? 」
「へッ!? ……あッ、いッ……いやその……居る様な居ない様な……」
<――この瞬間
俺が口籠ったのは“集落の存在”についての約束を思い出したから。
そして、この直後……そんなバレバレな慌てっぷりに
見て見ぬ振りをしてくれた八重桜は――>
「……おらは別におめぇさ困らせようとは思って無ぇ。
知り合いさ居るってんなら、その知り合いの好物さ教わって
同じ物さ食えば力は強くなる筈だと言いたかっただけだ。
……とは言え、古代龍の血筋は同系種族からも恐れられる力だ。
余り大っぴらに、その知り合いに自慢さするのは頂けねえど? 」
<――そう、忠告をした。
そして――>
「まぁ良い……元気そうで何よりだ。
これからは時々……エリシア、おめぇも顔さ見せに来い。
それと、そっちの魔族の娘……おめぇもたまになら来ても構わねぇ
その証だ、これをやる……取っとけ。
良いか? おめぇの他にはモナークとアイヴィーしか持ってねえ品だ
誰彼構わず見せびらかすんじゃねえど? ……」
<――そう言ってロベルタさんに対し
小さな木の枝らしき物を手渡した八重桜。
受け取った瞬間、ロベルタさんは深々と頭を垂れ――
“感謝致します”
――そう、静かに厳かに言った。
直後、そんな彼女の態度に満足した様に
静かに、だが力強く――
“うむ”
――と、発した
八重桜は――>
「……さて。
そろそろおらは仕事さ戻る……おめぇ達は帰れ。
しかし……魔族さ三人も受け入れるとは
おらも焼きが回り始めてるかも知れねぇだな?
とは言え……長く生きると面白え事もある物だ! 」
<――帰り際
嬉しげに、笑みを浮かべながらそう言った彼女に見送られ
政令国家へと帰還する事となった俺達は
この後――>
………
……
…
「……さて、と。
“宛が外れた”事は兎も角として
収穫もあった訳だけど……先ずは情報を整理しとこっか。
……取り敢えず主人公っちは龍と同じ物を食べて
仮に装備の修理に時間が掛かったとしても
それなりに戦えるだけの力を付けておくべき。
それと私は、これまで以上に……チビコーンの為にも、八重桜の森に協力する。
……って感じかな? 」
<――帰還直後
淫魔館の前で決意表明の様にそう言ったエリシアさん。
だが、その一方で俺は……龍の好物が何なのか
さっぱり理解出来ずに居て――>
「……そう言われても、龍の好物なんて俺には全く分かりませんよ。
ライラさんの“暁光”にしても雑食って言える位には
割と何でも食べてましたし……」
「う~ん……じゃあ、主人公っちの中で
“食べたら力が湧いて来る気がする”みたいな物って何か無いの? 」
「そんな事聞かれても……って?!
……そうだ。
あった!! ……“あれ”だッ!! 」
<――この瞬間
第二城地域に響き渡る程の大声でそう叫んでしまった俺は――>
「……エリシアさん、一度ヴェルツに戻りましょう!!
あれを……“龍乳”を試してみる為にもッ!! 」
<――少なくとも
エリシアさんに取っては嫌な記憶だろう物を思い浮かべながら
そう、言った――>
===第二八九話・終===




