第二六三話「“決意”は楽勝ですか? ……後編」
<――この日
仮にも“警戒対象”である彼女に対し
最高機密と呼ぶべき増幅器を見せ、彼女の覚悟に応えたエリシアさん。
……そんな互いの覚悟に呼応する様に
この瞬間、二人の間に交わされた堅い約束は――>
………
……
…
「分かった……でも、安心して。
“全額弁償”させるまで、アンタには傷一つ付けさせないから」
<――“まだ言うか”
そんな感覚を思わせる様な
エリシアさんの不器用な気遣いに依って、堅く交わされる事と成った。
そして――>
………
……
…
「……兎に角、アンタの血液をどうこうする前に先ず
念の為、検査をするから……悪いんだけど主人公っち
一旦、部屋に帰っててくれるかな? 」
「へっ? べ、別に良いですけど……何で俺だけ……」
「……正確な検査結果を得る為には
汎ゆる“装着品”は外すのが望ましくてさ……だから既に
“男の研究員”は全員退出させてる……此処まで言えば分かるよね?
それとも……“分かってて居座る”つもりじゃ無いよね? 」
<――冷気を感じさせる様な威圧感と共にそう言ったエリシアさん。
だが――>
「ふむ……我が身は急に不安を感じ始めた
主人公よ……検査の間、我が身の傍に居ては貰えぬか? 」
<――妖艶に微笑みながらそう言ったソーニャの所為で
言うまでも無く、状況は“ややこしい方向”へと向かい始めてしまって――>
「黙れ毒蛇女ッ! ……って言いたい所だけど、不安なのは確かだよね。
……ねぇ、主人公っち
“絶対に振り向かない”って約束出来るなら居ても良いけど、どうする?
勿論、約束を破って振り返ったら唯じゃ置かないけど……」
「え゛ッ? ……で、あれば目を瞑った上で目隠しをして頂いて
更に後ろを向くって言うのでどうでしょうかッ?! ……」
「う~ん……何かそれはそれで逆に下心を感じるけど
まぁ、見えないならそれで良いよね~……ってぇ事で!
……サラちゃん、主人公っちに目隠し宜しく~っ! 」
<――直後
サラさんからこれでもかと言う程頭部を包帯でぐるぐる巻きにされた俺は
息苦しさの中……まるでミイラか何かかの様な状態で
ソーニャに背を向け、検査が終わるのを待って居た。
だが――>
………
……
…
「……醜い傷跡であろう?
我が身の背に刻まれし痕は……」
「……アンタが望んで居ない傷跡なら
研究機関の技術で消す事は出来るし
そんな事でお金を取ったりはしないよ? ……」
「ふむ、それは何とも嬉しい知らせじゃ……とは言え、気を遣わせた」
「別に? ……心にしろ身体にしろ
治せる傷なら治したいって思うのが普通でしょ? 」
<――エリシアさんとソーニャの間に交わされて居た静かな会話。
彼女の背に何が“刻まれて”居たのか、俺に知る事は出来ないが……
……少なくとも、そんな彼女の傷を癒やす様なエリシアさんの心遣いは
彼女の心の奥深くに刻み込まれて居た、余りにも酷い真実を
詳らかにさせた――>
「……我が身の傷は消えぬと思うておった。
エリシアよ……御主が優しき心遣いに甘え
もう少しばかり、我が身の傷を話しても構わぬか? ……」
「良いよ、まだ時間は掛かるから……その間だけでも聞いてあげる」
「……では。
その昔……我が身は、自らの抱えし民が為
御主らもよく知る、あの“者”へと縋った……じゃが。
奴の誓いが、我が身を得るが為の奴の偽言であったと理解したのは
我が身の身体に眠りし呪いを得るが為、我が身を慰み者の様に
甚振った奴の……身の毛もよだつ笑い声を耳にした時であった。
あの、地獄にも等しい日々の中……
……我が身に与えられた唯一の幸運は、あの者の子を孕まなんだ事じゃ」
「……そっか。
ま、少しは安心して良いよ……少なくとも、もう
アンタにそんな思いをさせる様なクズは居ないからさ……」
「そうじゃな……ともあれ、我が身は良い国に出会った物よ。
……我が身の様な、穢れた女子を大切じゃと言い切った
愚かしい程に清い男の居る、清い国にのう……」
<――悪逆非道の限りを尽くした暴君の妻。
その、恐ろしい肩書とは裏腹に……彼女は
悲運の中に遭っただけの、極普通の感覚を持った一人の女性だった。
……あの国で生きる為、彼女がどれ程辛い日々を過ごして居たのか
俺に想像は出来ない……だが。
今、俺の耳に聞こえる彼女の声からは――
“漸く救われた”
――そう言ったに等しい、余りにも大きな苦しみを感じた。
彼女から呪いにも等しい力を抜き取り、利用する事が
本当に正しい行いなのか……そもそも。
彼女は本当に……エリシアさんの提案した方法を
自らに危険が及ばない方法と考え
納得した上で、決意を口にしたのだろうか? ……もしも。
もしも……未だ彼女が自らを無価値な人間と考え
俺の為に、身を捧げようと考えていたのだとしたら……
……俺の考える最良の結果
“彼女を呪いから開放し、マリアをも目覚めさせる”と言う目標から
逸脱したかの様な最低最悪の結果を
招いてしまうのでは無いのだろうか? ――>
………
……
…
「……エリシアさん、まだ掛かりそうですか? 」
「うん……サラちゃんと協力してるから早い方だけど
それでも“手を繋いだまま”だからね~……それなりに時間は掛かるけど
あっ! でも、主人公っちが迷惑とかそんなのは無いから! ……」
「誤解させたならすみません、急かすつもりは無いんです……唯
本当に、エリシアさんの言う方法が安全なのか……
……生きて、ソーニャさんが幸せを手に出来るだけの時間を
万が一得られないかも知れないのなら! ……」
「……大丈夫。
主人公っちが今思い浮かべたんだろう最低な結果だけは
何が遭ろうと、絶対に実現させないから。
そもそも……魔導服の弁償もさせないとでしょ?
……ま、取り敢えず
今回の方法に問題が生じる様な呪いや傷は無いみたいだし
後は、汎ゆる意味で時間が解決する問題みたいだしさ。
さてと……ソーニャ。
この服は脱ぎ着が面倒な感じだから
此方の簡単な服に着替えて貰うぞ~っ! 」
「……ふむ、何とも色気の無い服よのう? 」
「なっ……この治療に色気は必要ないんじゃボケェェェィ!! 」
<――唯の杞憂ならそれが一番良い。
この瞬間、断言を切ってくれたエリシアさんと
俺の不安な問いなど聞かなかったかの様に
独特なテンションでエリシアさんをからかってみせたソーニャに
俺は――>
「俺は……手術が成功する事だけを祈っています。
エリシアさん、サラさん……研究員の皆さんも
どうか、ソーニャさんの事を救って下さい。
それから……ソーニャさんにもお願いします。
手前勝手なお願いだとは分かっています、でも……」
<――そう、不安が故に言葉を投げ掛けた。
だが――>
………
……
…
「ふむ……では主人公よ、我が身と一つ“契って”は貰えぬか?
……もし、御主がこの願いを聞き届けると言うのならば
我が身は“自らの身体と幸せを第一に考える”と誓うぞぇ? 」
「へっ? 一体何を……」
「もう、振り向いて構わぬ……受け入れてくれるのならば
我が身の目を見て誓っては貰えぬか? 」
「え、ええ……」
<――そう促された直後
サラさんに“ぐるぐる巻きの包帯”を解かれた俺は
恐る恐る、ゆっくりと振り返った。
そして――>
………
……
…
「……我が身の身体から呪いが消え去り、我が身が無事に生き永らえたならば
我が身を……御主の“側室”にしては貰えぬか? 」
「そ、側室って……な゛ッ?!
そんなの駄目に決まってるじゃないですかッ!! 」
<――そう
とんでも無い要求を突きつけられる羽目に成って居た。
だが――>
「ふむ……残念じゃ。
“吹っ掛ける”なら今を於いて他には無いと思うたのじゃが
流石に緩みは無かったか……まぁ良い。
流石の我が身も其処まで卑怯者では無い……じゃが。
せめて、我が身と“逢引”位はして貰わねば
生きる決心は出来ぬのう? ……」
「へっ? ……デ、デートですか? 」
「何じゃ? ……それすらも断ると言うつもりではあるまいな? 」
「い……いやそうでは無くッ!!
……ほ、本当に
俺とのデート程度で良いんですか? ……」
「ん? ……“その先”を求めておるのならば、我が身は受け入れるが……」
「な゛ッ?! ち、違いますそうじゃなくてッ!! ……」
<――“手玉に取られて遊ばれて居るだけ”かも知れない。
だが、この瞬間……楽しそうに笑みを浮かべたソーニャの姿に
俺は……強い安心を感じて居た。
彼女が生きる事に……何よりも
幸せを掴み取る事に貪欲で居てくれるのならば……きっと
彼女の人生は安泰だと思えたから。
ともあれ……この後、女性だらけの状況の中で
何とも不甲斐ない姿を晒し続ける羽目に成って居た俺は――>
………
……
…
「とッ……兎に角ッ!!
そ、その……俺で良ければ、喜んでお受けしますッ!! 」
<――そう、彼女の願いを受け入れた。
直後跳ね上がったエリシアさんの“握力”……そして
何とも嬉しそうな表情を浮かべたソーニャの様子に
ほんの一瞬、胸を締め付けられる様な感覚を覚えた俺は――>
「そ、その……もっと――
“高級品を奢れ! ”とか“金銀財宝を寄越せ! ”とか
――そ、そう言う要求をしても良いんですよッ?! 」
<――そんな感覚を誤魔化す為かの様に
この瞬間、そう必死に思い浮かべた“派手な要求のお手本”を口にしていた。
だが、そんな俺の事を微笑ましく見つめたかと思うと――>
「何を言う? ……如何なる金銀財宝であろうとも
御主と釣り合う物など在る訳が無かろう? 」
<――至極当然の事かの様にそう答えたソーニャ。
直後――>
「……はいは~い!
純粋無垢な主人公っちの事を、よりにもよって
私の眼の前で誑かすと言う自殺行為は其処までにしとこうね~?
さてと……ソーニャ。
これからアンタが受ける事に成る術式は
さっきも言った通り、安全に安全を重ねた方法ではある……だけど。
アンタに一切の苦痛が無い訳では無いし
それなりの時間アンタは苦しむ事に成る……全ては
アンタの身体から呪いを完全に取り去る為であり
アンタが……アンタの思う幸せを勝ち取る為の時間を得る為でもある。
諄い様だけど……心の準備は良い? 」
<――流れを断ち切るかの様に、そう真剣な表情で問うたエリシアさん。
……直後、静かに頷いたソーニャの姿を確認すると
術式開始の為、研究員達は慌ただしく動き始めた――>
………
……
…
「最終確認するよ~……各自、準備に不備は無い? 」
<――全ての準備を終え
整然と並んだ研究員達に対しそう問うたエリシアさん。
……直後、研究員達から次々と上がった
“異常無し! ”の声に――>
「……よぉ~し!
じゃあ……ソーニャ、術式完了まで暫くの間眠っててね。
睡眠の魔導――」
<――彼女の肩に手を当て、そう優しく詠唱したかと思うと
直後、眠りについたソーニャの頬を軽く叩いた。
“な、何を?! ”
……そう思ったのも束の間
エリシアさんは――>
「……大丈夫、睡眠の魔導もちゃんと掛かってるみたいだね。
正直、最初が一番怖いんだ……お願いだから
夢でも見て動いたりしないでよねソーニャ……それじゃ。
行くよッ!! ――
――濾過器担当、濾過速度は毎時五ミリに設定ッ!
生命兆候担当、変動は二パーセントを上限として監視を厳にして!
増幅器担当ッ! ……何時でも使える様に万全の準備をしといてッ! 」
<――そう、各機器担当者へと的確な指示を出した。
直後“濾過器”と呼ばれる機器の担当者は
ソーニャの身体へと注射針を差し向け、魔導詠唱と共に
それを、彼女の血管へと差し込んだ――>
「……血液の循環、及び濾過を開始。
先ずは毎時、五ミリリットルの速度を維持し血液検査を行います」
<――直後、ゆっくりと管を通り始めた彼女の血液。
……最初の一滴が魔導水晶へと垂れた次の瞬間
魔導水晶は漆黒に“変色”した――>
「測定結果、出ます……型式は呪術型、等級は想定通り特級です。
……毎時循環速度を五ミリから一ミリへと変更し
濾過精度の上昇を最優先として術式を継続します」
<――この後
万が一にも彼女の身体に掛けられた呪いが暴れ出さぬ様
細心の注意を払いながら丁寧に続けられた治療。
……まるで、小さな切り傷から滲み出る血液かの様に
ゆっくりと濾過器を通り、濾された血液は
慎重に彼女の身体へと戻され……そして、暫くの後。
……一滴一滴、危なげ無く循環を続ける血液に安堵した様に
大きく息を吐いたエリシアさんは――>
………
……
…
「……どうやら最初の山は乗り越えたみたいだね。
後は、血液の七.五三パーセントが循環した時に
どの程度生命兆候に変動があるかが問題だけど……
……何れにせよ、此処から先は流石に“片手”だとやり辛いから
申し訳無いんだけどやっぱり主人公っちは部屋に帰っててくれるかな? 」
<――そう言った。
この後……後ろ髪を引かれる様な思いを感じながら
エリシアさんに依って“結界内部”へと戻された俺は――>
………
……
…
「……無事で居てくれれば、それだけで良い。
彼女が……その苦しみから僅かでも救われるのなら……」
<――この日から数日の間
整然と並ぶ薬瓶を見つめ
祈る様な気持ちでエリシアさんの帰りを待つ事と成った。
……窓の外に見える景色、徒に過ぎて行く孤独な時間
時折、差し入れの如く齎されるミリアさんお手製の食事に依って
辛うじて保たれて居たに過ぎない俺の精神――>
………
……
…
「主人公ちゃん……食欲が無いのは仕方が無いが
ちゃんと食べとかないと、いざって時に役に立たないよ?
キツイ事を言う様だが……捩じ込んででも食べときな」
「すみませんミリアさん……」
「良いさ、人間誰しもそう言う時はある物さね……」
………
……
…
「……今日もエリシアさんは帰って来ない。
後何日……俺はこのままこの部屋に缶詰めで居なきゃならないんだ……」
<――部屋に響く秒針の音は、たった一分を永遠の如くに感じさせ
窓の外に浮かぶ雲は薄っすらと黒く
微かに降り始めた雨は、俺の心に不安を募らせ続けた――>
………
……
…
「雨は嫌いじゃない……だけど、今は降らないでくれ……」
<――まるで
雨粒全てが彼女の身体に刻まれた呪いにすら思えたこの瞬間
窓に打ち付ける雨音が、どうしようも無く俺を苛立たせた。
頼む……良い報せを。
この煩い雨音さえ祝福の拍手に聞こえる程の良い報せを……
……だれか。
だれか、彼女の呪いを消し去ってくれッ!!! ――>
………
……
…
「……っち。
主人公っちってば!! ……」
「へっ? ……エ、エリシアさん?! ……い、何時の間に?! ……」
「何時の間にって……世界で唯一の星之光が聞いて呆れるよ全く。
そもそも、転移魔導で帰って来るのに何時の間にも何も無いでしょ?
ってか、そんな事より主人公っち……
……どしたの? “それ”」
<――数日振りの再会に喜ぶ様な事も無く
困った様な表情を浮かべ、俺の頭上を指差したエリシアさん。
“へっ? ”……と、間抜けな声を上げた直後
鏡に映り込んだ自分の顔を見た瞬間……俺は
理解不能な光景を目の当たりにする事と成った――>
「な……何で、ソーニャさんの顔が……し、しかもこれ……」
「う~ん……どう言う原理かは分からないけど
完全にそれって“現在進行系”だよね? ……てか。
“どう言う技なの? ”……って訊いても“その様子”だと無駄だよね? 」
<――“恥ずかしい”と言う感情など無く
この瞬間、静かに頷く事しか出来ないで居た俺は
色々と察した様子のエリシアさんに対し、彼女の無事を問うた。
すると――>
「……無事も何も“鏡を見てれば様子が分かる”んだし
そんなに心配しなくても良いんじゃない? 」
「う゛ッ……そ、それはそうかも知れないですけど!! 」
「いや~ごめんごめんっ! 突っ込まずには居られなかっただけだから!
ま、兎に角……今の所、術式は正常に進んでるから安心して。
それはそれとして……」
「何です? もし、俺に手伝える事があるならッ! ……」
「だーっ! 落ち着いて! ……そうじゃ無くて。
主人公っち……術式が無事に終わったら、本当にあの女とデートするつもり? 」
「へっ? ……そ、それはその……彼女がそう願った訳ですし
約束もしましたから……その……」
「あ~……別に責めてる訳じゃないからそんなに畏まらなくても良いよ?
そうじゃなくて……言い方は悪いかも知れないけどさ。
正直な所、あの女はこのまま“寝てる”だけで
何れ完全に呪いから開放される事に成る訳だけど
その一方で、私は毎日あの女の健康状態を管理して……
……まぁ、自業自得だけど
主人公っちを縛ってる結界を解除したりとか
色々と忙しく動いてるでしょ?
なのに、私だけ何にも“ご褒美”的な物が無いな~って思ってさ?
何か、すっごい不公平じゃないのかな~って思っただけ。
それで、主人公っち……私には“何にも無い”のかな? 」
「へッ?! ……そ、それってまさか
お、俺と……デデデデートがしたいって事じゃッ?! 」
「は? ……ち、違うし!! そうじゃなくてっ!!!
……この騒動が終わって、全てが良い方向に進んだら
久し振りに主人公っちと薬草採集にでも行きたいなとは思ってるけど……」
「って事は……や、薬草採集デートですかッ!? 」
「なっ?! だからデートとかそう言うのじゃ無くてッ!! ……って。
……ちょっとじっとしてッ!! 」
「へっ? そんなに近づいて一体何を……って、ぬわぁぁッ?! 」
<――瞬間
エリシアさんにベッドへと押し倒された俺は……
……漂って来た甘い香りと真剣な眼差し
そして――>
「エリシアさん……お、俺……その……」
「良いから……少しの間だけ、じっとしてて……」
<――俺の両頬を包み込む様に優しく触れ
直後、急激に近付いて来たエリシアさんの大胆な行動に
抗う事も出来ず、静かに目を閉じた――>
………
……
…
「……うん、いい感じ
そのままそのまま! ……良しッ!
……第二の山場は超えたみたいだね。
行くよ、主人公っち……“寝坊助”なあの女に勝利宣言カマしてやろうぜぃ! 」
「……へっ?
も、もう……終わりですか? ……」
「えっ、何が? ……兎に角、何でも良いから!
行くよッ! ――」
<――直後
意味も分からぬまま、エリシアさんに腕を掴まれた俺は……再び
エリシアさんと共に研究機関へ転移する事となり――>
………
……
…
「ほう……我が身はまだ、生きておるのじゃな……」
「当然でしょ? ……少なくとも弁償させるまでは
何が遭っても生かしとかないとね~……まぁ、とは言え。
無事に目覚めてくれて安心したよ」
「ふむ……ん?
……主人公よ、何故御主は泣いておるのじゃ?
そもそも何故、我が身の姿が御主の頭上に映し出されておるのじゃ? 」
「こ、これはその……どっちも気にしないでください。
それより……何処も痛くありませんか?
苦しいとか、妙な感じがするとか……」
「うむ……少々身体が重い様には感じるが
病を患っておる様な深刻さは感じぬ。
唯、御主の涙の故が我が身に無ければと案じておるだけじゃ……とは言え。
御主に其処まで想われておるのならば
何とも喜ばしい話ではあるが……どうじゃ? ふふふっ」
<――と、嬉しそうに笑みを浮かべた彼女の姿に安堵した俺は
この直後――>
「ふ~っ……“相変わらずの”余裕っぷりで安心したよ。
ま、此処まで予定より遥かに順調に進んでるし
後は、私の勝利宣言に悔しがるアンタの顔をマジマジと見つめるのが
残る私の仕事って感じかなぁ~っ? 」
<――そう、満足げに言ったエリシアさんの
“急激に変化した表情と態度に”
大きな胸騒ぎを感じる事と成った――>
………
……
…
「……なッ?!
急ぎ増幅器準備してッ!! ――」
===第二六三話・終===




