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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第六章

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第二五四話「“離れられない”のは楽勝ですか? ……後編」

<――“朝目覚めたら異性の部屋でした”


と、言うだけならば……酒の苦手な俺が想像する

()み過ぎに()る失敗談”としてありがちな一つのオチだとは思う。


だが、何処(どこ)の世界に――


“目覚めたら異性の部屋……から出たら死ぬ状況でした”


――と言う、謎の状況に(おちい)る人間が居るのだろうか?


世界広しと言えども、恐らく俺位の物だろう……まぁ、何の自慢にもならないが。


だが何よりも……“命の危機”以前に、今日から二週間

出来る限り我慢するにしても、どんなに少なくとも

最低でも日に一度……単純計算で“一四回”

エリシアさんと手を繋いだまま“用を足さなければ成らない”事が


確定して居て――>


………


……



「そ、その……申し訳程度にしか成らないとは思うんですけど……


……“音とか匂い”を感じさせない様にする魔導とかって

何かありませんでしたっけ? ……」


<――顔から火が出る程恥ずかしい状況の中


そう、本来ならば聞きたくも……


……聞かれたくも無いだろう質問を投げ掛けた俺に対し

エリシアさんは――>


「言いたい事は分かってる……


……君だって嫌な筈なのに気を遣ってくれてありがとね、主人公っち。


でも……それらの魔導は絶対私に掛けちゃ駄目だよ?

きっと、どれも“攻撃”に分類されると思うし……」


<――そう、この方法が使用不能な手段であると言った。


この後……自分が“見られたくない”と言うよりも

エリシアさんに嫌な思いをさせない為

どうすれば良いのかと必死に解決策を考えて居た俺は……


……その所為か


強烈な腹痛に襲われ――>


………


……



「ぐッ……と……兎に……(かく)ッ……解決策は……はうゥッッ?!


あ、後で……ッ……」


<――急激に訪れた“危機”


その原因だろう思考から頭を遠ざける為

そう、話を()らし掛けた俺に対し――>


「だ、大丈夫? 主人公っち……顔が青いよ?

もしかして、お腹が痛……あっ!!


……主人公っち、大丈夫だから。


私、凄い音と凄い(ニオ)いがしたとしても……全然、大丈夫だからッ! 」


<――目を血走らせ

見るからに“気を遣って居る”事がありありと分かる雰囲気でそう言った。


この直後……これが気遣いだと分かりつつも

既に隠し通せる程の余裕が無くなって居た俺は――>


「……せ、せめて……エリシアさんの持ってる薬草で

消臭効果の……ぐッ!! ……ある物……を……ッ!! ……」


<――“最後の良心”


……と言う言葉が適切か否かは兎も角。


この直後、そう必死に気遣った俺に対し――>


「そんな事気にしなくて良いから!


……兎に角、何があっても手だけは絶対に離しちゃ駄目だからね?


行くよッ! ――」


<――瞬間


俺の手を引き、トイレへと一直線に走ったエリシアさんは……


……到着直後、顔を真っ赤にして目を閉じ

精一杯に体を(ひね)り、俺から視線を外しつつ――>


「主人公っち、私の事は良いから……(ひと)思いに出してッ!! 」


<――そう、強い覚悟を(もっ)て叫んだ。


だが……そもそも、こんな状況で“出せ”と言われて

すんなり出せる程神経が図太ければ、恐らくこんな状況に(おちい)っては居ないだろう。


……考えれば考える程、余計に出し辛くなり

考えれば考える程、邪念が入る――>


「だ、出せって言われても……」


「何も考えなくて良いからッ! 早く出してッ!! ……」


「で、でも……くッ! ……も、もう限界だッ……」


<――とは言え。


恐ろしい程に襲いかかる腹痛にこれ以上耐える事は難しく……


……俺は、(あら)ゆる意味で“観念”し


“受け入れる”事を決意し――>


「……だ、出しますよ!? ……ほ……本当に良いんですね?! ……


くッ! ……」


「良いからッ! ……早く出してッ! 私も限界だから……」


<――この瞬間


互いの意思を確認し合い……少なくとも

俺に取っては一世一代の行動を実行に移そうとしていた


直後――>


………


……



「……ちょっとアンタ達っ!!


アンタ達は仮にもこの国の大臣だろう?!

子供の教育に悪い事を、なんて所でしてるんだいっ!!


……早く出て来なっ!

出てこないなら、扉の鍵を開けちまうよっ?! 」


<――扉の向こうから聞こえて来たミリアさんの怒声。


トイレの鍵を探す音が聞こえる時点で

慌てるべき状況なのは理解出来るが……そんな事よりも。


トイレで用を足す事が何故、教育に悪いのだろうか?


そして何故……ミリアさんの発言を聞いた直後


妙な間と共を置き、エリシアさんは必死に


“弁明”し始めたのだろうか――>


「ご……誤解しないでミリアッ!

アンタが“考えてる”様な事はしてないから!!


そもそも、私はもっと雰囲気のある状況じゃないと! ……」


<――全く理解出来ない会話の続く中


何かを誤解した様子で鍵を開けようとしているミリアさんと

(なお)も必死に弁明するエリシアさんの二人に()る押し問答は

この直後……ミリアさんに()って勢い良く開かれた扉と共に

同じく“開いて”しまった、俺の……うん。


この件は、墓まで持っていこう――>


………


……



「……さて。


エリシア……こんな制限があるってんなら

何で前もってあたしに話しておかないんだい? 」


(うるさ)いよ……ミリアこそ、変な“早とちり”して

耳年増(みみどしま)にも程が……」


「ア、アンタこそ(うるさ)いよっ!! ……と、兎に角。


主人公ちゃん……ごめんよ

あたしは別に悪気が有った訳じゃ無いんだ、(ただ)……」


<――嗚呼(あぁ)、消し去りたいこの数分間の記憶。


場所は変わり、エリシアさんの部屋で交わされて居た二人の会話を前に

俺は、(ひど)く居心地の悪い時間を過ごして居た――>


「いやいや~“悪気”は無いかも知れないけどぉ~……


……“変な誤解”は、有ったよね? 」


「エ、エリシアっ?! ……そ、それ以上言ったら承知しないよっ?! 」


<――数分前


最悪の状況下で高らかに響き渡った“音”……


……何の“結果”も生み出さない、この状況に()ける最悪の“旋律(ファンファーレ)”は

現在進行系で過剰な程俺を気遣う二人(ミリア・エリシア)と言う

余りにも居心地の悪い状況を生み出した……どうせなら

全部俺が悪い事にして“鉄拳制裁(ぶんなぐって)”くれれば

俺自身、此処(ここ)まで気にせずに済んだのに――>


「そ、その……俺がエリシアさんに心配を掛ける様な体調管理をしてた事が

そもそもの原因ですし、その……お二人が

さっき“見聞き”した事を忘れて下さると言うのなら

俺も、これ以上この問題には触れませんから……って言うか、正直

もう二度と、この件を思い出して欲しくないって言うか……」


<――“さっき聞いた屁の音を無かった事にして欲しい”


何一つ飾らず言えばそう言う事に成るのだろうか?


この瞬間、一刻も早く終えたい会話に辟易(へきえき)として居た俺は

祈る様な気持ちでそう言った……そして、暫くの後。


……二人は互いに顔を見合わせ


どうにか、俺の要求を受け入れてくれて――>


………


……



「す……直ぐには無理かも知れないが、ちゃんと忘れるから

あたしの“恥ずかしい誤解”も忘れてくれるかい? 」


「え、ええ……って言っても、俺は

ミリアさんが何を“誤解”してたのかは分かってないんですけど……」


「……わ、分からなくて良いんだよっ?!

主人公ちゃんはそのまま純粋で居ておくれよっ?! 」


「へッ? は、はい……」


<――今まで一度として見た事が無い程に慌て

顔を真赤にしながらそう言ったミリアさんと――>


「ま、まぁ……生きてると忘れた方が良い事なんて沢山あるし

兎に角……私も以後は気をつけるから、主人公っちは無理せずに

気を遣わずに、何時(いつ)でも言ってね?


その……私ももう少し“耐性”をつける様に頑張るからさ! 」


<――“何のですか? ”


と、聞きたい気持ちを最大限(こら)えつつ

“はい”……とだけ(こた)えた俺の気持ちが分かって貰えるだろうか?


まぁ、何はともあれ……この後

どうにか俺達二人の置かれた状況を理解してくれたミリアさんは

御手洗いとお風呂場に“衝立(ついたて)”を用意してくれて――>


………


……



「……さて、一先(ひとま)ずはあれで良い筈さね。


とは言っても、暫くは二人共大変だろうが

あたしも出来る事があったら協力するから、何でも言っておくれよ?


っと……忘れる所だった。


(しばら)くは嫌でも一緒に過ごさなきゃ成らないんだ……


……何時(いつ)までも喧嘩してないで

この期間中に仲直りして置くんだよ? ……良いね? 」


<――去り際


俺達がまだ、(しっか)りと“解決”出来ていない事を見抜いた様にそう言い残し

返事を待たず一階へと降りて行ったミリアさん。


直後……当然と言うべきか

この場に“話し合わなければならない空気”が流れ――>


………


……



「あの、さ……」


<――本来ならば俺から切り出すべき状況の中

そう、切り出したエリシアさんは――>


「私、変な所が意固地で……それで

良かれと思って動く事が空回りだったりする事も多くて……でも。


直せって言われて直るほど、物事を簡単に見る事も出来なくてさ……


……だから、一度全部吐き出させて。


()ず……あの日、主人公っちの選んだ方法に対して

私が伝えた言葉と気持ちは今も変わらない……だからきっと

今どんな言葉で飾って上辺だけ取り(つくろ)っても

私の心の奥には、ずっと主人公っちに対する不安が残るの。


それは、主人公っちの選択が怖かったからとか

受け入れられなかったからってだけじゃ無い……


……こうして、君をこの部屋に縛り付けた私の行動理由でもある

裏技之書(あれ)”に感じた嫌な共通点を解明するまでは

どんなに必要な場面でも、もう二度とあの本を使って欲しくないから。


私は……君が“弟弟子(アイツ)”や“アルバート”みたいな道に

足を踏み入れる姿を見たくないんだ。


もし、これが(ただ)杞憂(きゆう)でも……それでも。


君を……君と言う存在を失う可能性は

それが爪の先程度の可能性でも、受け入れられないから……


……私の勝手な考えかもしれない、だけど

これが……今、私の中にある考えの全て」


<――必死に


(ただ)、懸命に……この瞬間、飾り付けた言葉では決して感じられない

強い思いを打ち明けてくれたエリシアさんは……この後


俺に対し――>


「私の考えは全て伝えたから……次は、君の考えを教えて」


<――と、言った。


その言葉の裏には、彼女自身が行ったのと同じ様に――


“何一つ飾らない真実を話して欲しい”


――そう、書いてある様だった。


確かに、此処(ここ)で言葉を飾り“表面上の仲直り”をしても何の意味も為さず

エリシアさんもきっと、それを受け入れる事は無いだろう。


だが……あの日の俺の考えを

今、何一つ隠さずエリシアさんに伝えてしまったら

エリシアさんは、俺を(バグ)や悪鬼共と同じ

禍禍(まがまが)しき化け物”の様に思うのでは無いのだろうか?


……もう二度と、俺の事を

受け入れてくれなく成るのでは無いだろうか?


今まで、度々と起きてしまった騒動に()って……


……こうして居る今も(なお)、一定数の国民達から差し向けられて居る

俺に対する悪感情(もの)と同じく、俺の事を――


“出来れば、他所(よそ)に行って欲しい存在”


――として

拒絶してしまうのでは無いのだろうか――>


………


……



「……わかりました。


全て、正直に話します……」


<――永遠とも思える苦悩の後

そう、決意を伝えた俺は――>


………


……



「……あの日、俺は

国民の大多数を“馬鹿”だと思って居た。


(まも)りたい、一人として()けたら駄目だ”……なんて言いながらも

きっと、俺の中には“優劣”があったんです。


……今日まで、政令国家は何をするにも()ず国民の意見を聞き

一刻を争う状況でさえも、全て

国民の判断が下った後に(おこな)って来ました。


でも……最近の俺は

この方法が間違って居る様に感じ始めて居たんです。


過去……あの日、魔族達を受け入れる事が決まった瞬間

確かに、当時の状況を見れば

決して手放しで喜べる様な選択(もの)では無かったかも知れませんが

それでも、国民達の協力は圧倒的に不足して居ましたし

その所為で、魔族達を順応させる為の治療には

想像以上の危険が(ともな)いました……それだけじゃ無い。


……俺自身の意見を聞かないのはまだ分かりますが

ラウドさんを始めとする“王国時代”からの見知った人の意見さえ

恐怖と言う名の何かに支配され、耳障りの良い言葉に乗せられ

嘘をつき……彼らは、俺を追放しようと躍起(やっき)になり続けた。


無論、恐れる事は悪では無いですし

俺を追い出そうとした事を恨んで居る訳でもありません。


(ただ)……(いず)れの状況も、結果として上手く運んだだけで

今後も考えられる最悪を回避し続ける事が出来るかと言えば

俺には、どうしてもそうは思えないんです。


だからこそ、俺は……その恐れが、今も(なお)彼らの奥底で

決して消える事無くあり続けるというのなら……


……これから先も彼らを支配し続けるだろう“恐怖”と言う力を利用し

この国と彼らを(まも)る為の力を得なければ成らないと考えたんです。


全ては、俺を嫌いな……俺の大切なこの国の民達を失わない為

それが最低最悪で、身勝手な選択だと分かって居ても……


……俺は、その道を選ぼうとしたんです」


<――包み隠さず言ってしまえば


間違い無く、優劣の“優”に入って居るエリシアさんから

生涯拒絶されるかも知れない恐怖の中

何一つ飾る事無く、そう告げた俺に対し……何も言わず

(ただ)、俺の発した言葉の全てに静かに耳を傾け続けたエリシアさん。


全てを伝え終えた後……恐怖すら感じる静寂の中

(ただ)、彼女の動向を(うかが)う事しか出来ずに居た俺に対し

暫くの後、静かに口を開いたエリシアさんは――>


………


……



「良かった……主人公っちにも“血の(かよ)った感覚”があるんだね」


<――そう、悪く(とら)えれば嫌味とも取れる様な発言をした。


そして、この直後……どう返して良いのか判らず

戸惑って居た俺に対し――>


「実はさ……私、主人公っちが優し過ぎる所為で

悪い意味で底が知れなくて、ずっと怖かったんだ~


“何でそんなに許せるんだろう? ” ……とか


“何でそんなに苦しい道を選んだりするんだろう? ”……ってさ。


だから私、ずっと主人公っちの事が……恐ろしかったんだ」


<――そう、俺が予想だにして居なかった考えを口にした。


そして――>


「でも、今ので(しっか)り分かった……


……主人公っちは“溜め込んでる”だけで、他の人と同じく

ちゃんと不満も感じてるし、腹も立ってるんだって。


(ただ)、優しくて気遣いが凄いから

“自分が引いて解決するなら”……って、本心を言えずに

“仕方無いよな”……って考えて黙っちゃうだけ。


正直に話してくれてありがと……お陰で凄く安心したよ。


そうだよね……主人公っちはあの裏技之書(ほん)の力に飲まれてなんか無い

私が少し過敏になり過ぎてただけ……本当にごめん。


でも、さ……私が言えた義理じゃないかも知れないけど

今度からはもっと、正直に自分の考えを口にしても良いと思う。


と、言うか……そうじゃないと

主人公っちの中で密かに大きくなり過ぎた感情は

他の人から見たら“恐ろしい何か”にしか見えないと思うからさ……」


<――俺が恐れて居た物と同じかは分からない。


だが……少なくとも、この瞬間

俺を気遣う様に助言をくれたエリシアさんの態度は

俺の恐れて居た“拒絶(もの)”とは真逆にあった。


俺の……俺自身の禍禍(まがまが)しい考えを聞いて(なお)

俺を見放す事無く、俺を大切に考えてくれて居る事が

痛い程に伝わる、その表情と声色は――>


………


……



「……エリシアさん。


俺、ずっと怖くて……エリシアさんが俺を()とうとした時

俺はもう、二度とエリシアさんと一緒に居る事が出来ないんじゃないかって……


メルも、皆も……皆が俺から離れて……


……俺の中の最重要な所に居る筈の皆が

皆俺から離れて行くんじゃ無いかって考えに支配されて……


……俺が何も考えず、何もしなかったら

皆、俺の(そば)に居てくれたのかもって……


でも……その為に、取れる筈の手段を取らない方が良いとは

どうしても思えなくて……どうして良いかも判らなくなって……


……ラウドさんが最善の演説(こたえ)()いた今日

俺の考えや行動は間違って居たのかも知れないって思ったら

どうしようも無く自分自身が許せなくなって……俺……俺ッ!! ……」


<――転生後


“恐る恐る”異世界での生活を続けて居た俺は

知らず知らずの間に“仮面”を作り

核心とも言うべき本心を内に秘める事を続けて居た。


……そうすれば

大切で大好きな人達から嫌われないで済むだろうから。


そうすれば――


“嫌い”


“あっち行け”


――そう、拒絶されずに済むと思ったから。


俺は……転生後から今日と言う日まで

何もかもが恐ろしく整い、恵まれた環境の中にありながら

自身の心を、転生前の世界に置いたまま過ごして居た。


……嫌われない為の手段だけを覚え

大切な人達に心の内を見せる事を恐れ続けて居た。


エリシアさんが諦めず、こうして俺の心を開こうとしてくれなければ

きっと今後も付け続けて居ただろう


分厚く重い“仮面”を――>


………


……



「俺を……俺を見捨てないで……


俺を……俺を嫌いにならないで……


エリシアさん――」


<――“やっと言えた”


そんな喜びと同時に感じた、強い恐れ……


……自分が何処(どこ)に居るのかさえも判らなくなる程の感情に飲まれ

それでも、必死に伝えようとする身勝手な俺の事を

エリシアさんは優しく抱き締めてくれた。


直後、肌に伝わる(ぬく)もりと共に発せられた――


“大丈夫”


――と言う俺を(まも)るかの様な優しい声に

崩れ去りそうな程不安定だった俺の心は安定を取り戻し始めた。


背中を(さす)る優しい手――


“大丈夫だよ、大丈夫……”


――(なお)も苦しみを取り去る様に発し続けられたエリシアさんの声

だが、今(ようや)く気付いた……彼女の声にも

俺と同じ“不安”が混じって居る事に――


“俺も……彼女を(まも)らなければ”


――そう思い立ったこの瞬間


俺は彼女がしてくれたのと同じ様に、彼女を抱き締め返した。


だが――>


………


……



「……すみませんエリシアさ~んっ!

ミリアさんに言われて来たんですけど~……って。


……へっ?


主人公……さん? 」


<――この瞬間


そう言って部屋の扉を開いたメルに()って

状況は、なんとも“ややこしい”方向へと向かい始め――>


===第二五四話・終===

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