第二五話「……代わりに仲間の愛で楽に成りました。」
主人公の“目覚め”から数え、約数ヶ月前の事
……魔王城では、計画の失敗を重く見た魔王の元へ
帝国軍の総司令官が呼び出されて居た
「……もう一度申せ」
「で、ですから……魔王様のお手を煩わせずとも
私共の兵が潜入し、内部から混乱を引き起こし……」
「フッ……出来ると謂うか
“二度の失敗”など……許しはせぬぞ」
瞬間
帝国軍総司令をギロリと睨みつけた魔王
……その殺気は、仮にも軍の総司令と呼ばれる人間が
僅か一睨みで震え上がる程の力を有して居た
「……か、必ずや成功をッ!!
で、ですから我が国は何卒……その、お見逃しを……」
「諄い」
「し、失礼を! ……ですが、魔王様
奴らは近頃“差別迫害無き国家”と謳い
同盟者を増やす動きを活発化させておりますので
その流れに紛れ込み潜入するならば
破壊工作も容易では無いかと思われます」
「良かろう……我ら魔族の更成る繁栄の為
全力を以てあの国を手に入れよ……良いな? 」
「はっ! ……必ずや! 」
◆◆◆
時は進み
主人公が目覚めてから約一ヶ月後
政令国家“ハンターギルド”では
「では、オーク御一行様の依頼はこれで完了です!
報酬は此方です! 」
「かたじけない……またこの様な依頼があれば
我らオークに回してくれると助かる……」
「はい! ……その際は是非!
では、次の方……どうぞ! 」
忙しく働く受付嬢
直後、そんな彼女の所へと現れた“不満顔”のエリシア
彼女は
「……あーイライラするっ!
この所、楽で高収入な仕事が多いからか
ハンターも多くて忙しいし、そのお陰で
ギルドの財政状況も最高だけどさ~っ?
でも……こんなに楽な仕事ばかりなのだって
主人公っちが“吸い取った”お陰なのに
皆|薄情だよ……てか
最近薬草採集に行く時間が無くなって
凄いストレスだ~っ! ……ムキーッ!!! 」
「エ、エリシア様ッ?! ……そ、その
忙しいのは良い事ですし、その……“趣味”の方は秘書官様に
主人公さんはその、残念だとは思いますが……あっ!
……次の方どうぞ~! 」
「受付嬢ちゃん……今、話を逸らしたね?
ま良いや、頑張ってねぇ~っ? ……
……全く、勝手だよ。
民衆なんてのはさ……」
暫くの後
ブツブツと文句を言いながら
ギルド二階の自室へと戻って行ったエリシア
一方、ヴェルツでは
◆◆◆
「はい! 三番テーブルだよっ!! 」
威勢良く叫んだ女将ミリア
彼女が料理を手渡した相手はハーフ族らしき女の子であった。
……どうやら彼女は
ミリアが新しく雇った従業員の様で
「は、はい! ……お、お待たせしました!
エールと豆の塩煮です! 」
「おぉ~っ! 来た来た!
美味そうだなぁ~ありがとよ!
ほれ嬢ちゃん、チップだ……取っときな! 」
「あ、有難うございます! ……お、女将さん!
チ、チップはどうしたら……」
「何言ってんだい! チップは全額あんたのモンさね!
次! 七番テーブル! ……“力持ち”さん! 持って行っとくれ! 」
直後
同じく、新たに雇い入れたオーク族の男性に対し
肉料理のセットを両手で手渡したミリア
直後、男性はこれを片手で軽々受け取り
「へい!! ……お客さんお待たせぃ! ヴェルツ特製、肉|尽くしっ! 」
「キタキタキタ~ッ! ……これが美味いんだよ!
お前……食ってみろ! 」
「本当だ……美味ぇぇぇっ!
おい兄ちゃん、チップ取っときな! 」
「お気遣い有難うございます旦那っ! ……女将さん!
あっしもチップ頂きやしたっ!!! 」
「あいよっ! 大切に使うんだよ! ……しかし
此処まで繁盛するとはねぇ。
これも主人公ちゃんのお陰だってのに……早く
出してやれないもんかねぇ……」
多忙を極める厨房に立ち
物憂げにそう言ったミリア
一方“ドワーフ族の工房”では
◆◆◆
「うむ……これを後二〇回練習じゃ! 」
「へいッ! そぉーれっ! ……よいしょぉ! 」
瞬間
弟子の打った鎚は鈍い音を立てた。
この“失敗”に、ガンダルフは檄を飛ばし
「……馬っ鹿もぉんっ!!
さっきも言ったじゃろう! ……もっと腰を入れるんじゃ!! 」
「へ……へいっ! すいやせんっ!
それっ! ……よいしょっ!!! 」
直後
先程よりも確りとした構えで鎚を振り下ろした弟子。
瞬間、心地良い金属音が放たれ
「そうじゃ! ……そうやって打つんじゃよ!
ん? ……コラぁっ!! “お前達”も
ぼけーっと見とらんと練習せんかっ!! 」
直後、そう言って檄を飛ばした彼の視線の先には
広い工場にずらりと並んだ弟子達の姿があった
「……しかし、主人公の事は
何時に成れば出してやれるんじゃろうか……
……ってバカモンっ!
もっと腰を入れろと言っておるじゃろう! 」
弟子達が振るう鎚の音よりも
遥かに激しい激が飛び交うガンダルフの工房。
その一方……ダークエルフの村では
クレイン族長自ら“薬の調合”を教えて居た
◆◆◆
「……調合は正確さが何よりも大切だ
少しでも間違えば毒にも薬にも成らず
単なる材料の無駄と成る。
私達が安定した“薬草入手権”を与えられ
そのお陰で安定した生活を送れる様に成ったのは
他でも無い、主人公と言う偉大な人間が居てこそだ。
良いな? ……一滴たりとも、葉の一枚たりとも無駄にするな」
「ハイッ!! 」
真剣な表情で調合の訓練を行うダークエルフ達
……そして。
大統領執務室では、オーク族族長“グランガルド”が
ラウド大統領に対し直談判をして居た
◆◆◆
「分かっておるが、国民がじゃな……」
「……もう良いだろうッ!
何故、此程長く閉じ込め続ける必要がある?
せめて監視を付け、僅かな時間でも
外を出歩く事を許す程度の“緩和策”は取れぬのかッ!? 」
そう憤慨していたグランガルド
だが、そんな彼に対し獣人族族長“リオス”は冷静に
「気持ちは分かるけど、聞き込みした感じだと
皆まだ怖がってるみたいだよ? ……中には
“追放したらどうだ”とか言い出す人まで居るし
僕は、もっと“時期を見た方が良い”と思うなぁ……」
このリオスの意見に
同席して居たマリーナは
「“時期を見て”……ですか。
そう言い続けて早一ヶ月です
彼が目を覚ましてから一ヶ月も経過したのですよ?
にも関わらず、何も進展して居ないでは有りませんか。
このままでは、彼は一生を
あの牢獄で暮らす羽目に成ってしまいますわ?
せめて、国民に対し秘密裏に
“幾つかの拘束を解く”位ならば容易い筈。
ラウド大統領……少しでも
主人公様の事を気遣って差し上げてはどうなのです? 」
憤りを感じさせる口調でそう言ったマリーナ
この後も平行線を辿った話し合い……そんな中
一人の衛兵が慌てた様子で執務室へと現れた。
「失礼致します! 」
「馬鹿者ッ! “機密事項”の話し合い故
決して入ってくるなと言い付けた筈じゃろう?! 」
「も、申し訳ございませんラウド大統領閣下!
しかし、緊急事態なのです……
……お伝えしない訳には参りません! 」
「一体何事じゃ!? 」
「……東門前に約二〇名
“魔王軍に追われ逃げ延びた”と申す者達が押し寄せています!
彼らは我が国への保護を求め……」
「何じゃと?! ……皆、すまんが
この話はまた日を改める事とする!
急ぎその者達を“一時避難所”へと連れて行くのじゃ! ……」
数分後、東門前にて
◆◆◆
「……許可が降りましたので
皆さんを一時避難所へご案内します
では、此方へどうぞ……」
連絡を受けた衛兵は避難民達の誘導を始めて居た。
一方……同時刻“政令国家:地下特別警戒監獄室”では
◆◆◆
「ね……ねぇ、二人共。
ずっと側に居てくれるのは嬉しいけど
二人まで此処に居続けなくても
遊んでくるとか、何か自由に……」
そう言って二人を気遣った主人公に対し
メルは
「わ、私は主人公さんの横にいるのが一番幸せなので
ほ……ほっといてくださいっ!! 」
思い切った様子でそう言った
直後、そんな彼女の思いに
「なッ?! そ、そりゃあ……俺だって
その、メルちゃんが傍に居てくれると嬉し……」
頬を赤らめ、そう自らの想いを伝えようとした
瞬間
「私は基本的に“働きたくない”だけなんで
言い訳に使えて超ラッキーって感じですけどね~! 」
二人の会話を遮る様にそう言ったマリア
だが
「あぁ、それなら良いんだけどね」
「はぁ?! ツッコミ待ちなんですけどぉぉぉっ?? 」
「は? ……ウッザ! 」
「はぁ?! 何ですかもう!
ウザいとか本気で傷つきますよ?!
ってか、こんな“絶世の美女”が二人も傍に居て
これ以上何が望みなんですか? ……ハッ!
まさか私達二人を無理やり……」
「……するかバカッ!!!
もしどうしても辛抱たまらなかったら
正式に告白して、丁寧に段階を踏んで……だわ!
ったく……お前は俺をどんな野蛮人だと思ってんだよ?!
それに、そもそも俺にはまだ“そう言う経験”が……
……って。
なッ……何でも無いッ!!! 」
「いや~……長い“ノリツッコミ”が出ましたね~?
それにしても、油断すると直ぐ私の事を忘れるんですから
酷い男です主人公さんは! 」
「い゛ぃッ?! ……いやその……なんかごめん。
そ、それにしても……俺が此処に幽閉されて早七ヶ月か
若干だけど……恐ろしいな」
「あ~……やっぱり出歩けないのは辛いですか? 」
「いや、割と何とも無い事が恐ろしい」
「成程、やっぱり生粋のニー……」
「それより先を言ったら……“揉む”ぞ? 」
「ニー……“ハイソックス”ってどう思います? 」
「“生粋のニーハイソックス”って何だよッ?!
ま、まぁ……好きだけどさ! 」
「ふふっ♪ ……お二人のそう言う会話大好きですっ! 」
「そ、そうなの? ……しかしメルちゃんは本当に天使だなぁ
本当に……何時も一緒に居てくれてありがとねッ! 」
「へッ?! ……はわわわっ……」
「ちょっとぉ! ……私との扱いの差! 」
「あははっ! ……マリアも居てくれてありがとな! 」
「え、ええ! かっ……感謝してくださいよね!? 」
「いや、褒めたら照れるんかいッ! 」
主人公達が団らんを楽しんで居た一方
“一時避難場所”に案内された避難民達は
衛兵から“食事の説明”を受けて居た
◆◆◆
「……暫くしたらお食事のご用意が出来ます
その他、何か必要な際は何なりと
いつでもお声掛けください……では」
直後、避難民達に一礼し
一時避難所を後にした衛兵……だが。
この直後
「……潜入成功か。
信じられない程に警備が“ザル”だったが
“所持品確認”すらされないのであれば
武器を持ち込むべきだったな……」
「ええ……それで隊長、何処から攻めますか? 」
「先ずは武器の入手だ……
……手に入れ次第、A班は出来る限り
この国の生命線に成り得る店の破壊活動を行え。
騒ぎの間にB班は城へと潜入、私と共に破壊工作を行う
残りの者は妨害魔導で連絡網を潰し
その後、街で騒ぎを起こせ……シッ!
誰か来るぞ……」
「……お食事の用意が整いました!
皆様、どうぞお召し上がりください
此方は温かい“シチュー”でございます」
「おぉ、これはありがたいっ! 」
この日の深夜
政令国家の民達が寝静まった頃
避難民に偽装して居た“帝国兵”らは密かに作戦を開始した
◆◆◆
深夜“ドワーフ族の工房”
侵入した偽装兵A班は
陳列された高品質な武器や防具に目移りして居た
「何と質の良い……これは、武器だけで無く
防具ついでに頂いて行くべきか……」
欲を掻き、帝国では高級品である
“フルプレートアーマー”に手を掛けた瞬間
工房内に鳴り響いた“喇叭”の音
「こらぁぁぁっ!!! 盗みを働くのは誰じゃああぁっ!!! 」
「くっ……警笛だと?!
まさかドワーフの店だったとは……不味い!
急ぎ全員撤退だっ!!! ……」
「盗人め!! ……逃さんッ!
武器破壊|連環撃ッ! ――」
ガンダルフの激しい攻撃に依り
班長以外の全員を無力化されてしまったA班
そして
「……くっ、こうなれば刺し違えてでもっ!!!
死ねぇぇぇっ!!! ……」
直後
全力の一撃を繰り出した班長……だが
その攻撃さえ、ガンダルフの“鎚術”の前には
無力であった
「甘いッ! ……“崩山撃ッ! ”
……どっせぇぇぇぇぇぃ!! 」
瞬間
武器|諸共に打ち伏せられたA班班長。
そして
「これは帝国の紋章?! ……不味い事態に成っておる
急ぎラウド殿に報告せねば! ……お前達、後は任せたぞ!
警戒を怠るでないッ! ……」
弟子達にそう言い残すや否や
途轍も無い勢いで城へと疾走って行ったガンダルフ
……同時刻、B班は
既に大統領城内部へと侵入して居た
◆◆◆
「……街が騒がしくなったな
“陽動作戦”が成功した物と断定し、我々も速やかに破壊工作を行う。
B班、突入だ――」
迅速に、音も無く
着実に城内部を制圧し始めたB班……暫くの後
一際大きな扉の前へと辿り着いたB班は
ゆっくりとその扉を開けた
「ん?! ……貴様ら何者じゃ!? 」
開かれた扉の先は
“大統領執務室”
虚を突かれたかの様な表情を浮かべそう言ったのは
ラウド大統領であった
「ふっ、貴様がこの国の長か……死んで貰うぞッ! 」
◆◆◆
「なっ?! ぐあぁぁぁっ! ……」
この“出来事”から数十分程前の事。
“政令国家地下特別警戒監獄”では
主人公が“ある疑問”について考えて居た
◆◆◆
「……そう言えば、この国には
“カードゲーム”的な物って無いのかな?
それか“ボードゲーム”とかでも良いんだけど……」
「あ~……そう言えば見た事無いですね?
と言うか、そもそも主人公さんが
“設定”してないから無いのかもですね~……ま
もし無いなら無いで主人公さんの記憶を頼りに
ガンダルフさん辺りにお願いして
作って頂くのも良いかもですけどね~」
「おッ! ナイスアイデアだなマリア! 今度頼んでみよう! 」
などと話して居た二人に対し
メルは不思議そうに
「あ、あのっ……お二人の仰ってる
“ゲーム”って言うのは、一体何をする物なのですかっ?? 」
「えッ? ……ゲ、ゲーム知らない? 」
「すみませんっ……私は聞いた事無いですっ……」
「あ~……と言う事は“無い”のか。
……簡単なので言えば“マルバツゲーム”とかかな?
縦・横・斜め合わせて九マスのマスの中に
交互に自分のマークを書いて
先に一列でも揃えられたらその人の勝ち! ……
……って言う“遊び”なんだけど」
「ほぇ~っ……それ、面白そうですっ!
私、やってみたいですっ! 」
「おぉ! じゃあ、やってみよう!
ではでは……メルちゃんからどうぞ! 」
直後
“マルバツゲーム”で遊び始めた主人公とメル
しかし……早々にメルは、このゲームの
“ある問題点”に気付き
「……あれ?
お互いに揃えられなく成っちゃいましたよ? 」
「あ~……このゲームはそうだね
普通にやってると殆ど勝負がつかないんだ」
「そうなんですね……“ゲーム”って
こう言う様な物が多いのですかっ? 」
「い、いや……例え話で出してみただけで
もっと楽しいのは沢山あるんだけどね……
……正直、口で説明するよりも
実際に物を用意して遊んだ方が分かりやすいし
楽しいとは思うけど……」
「でしたら……やっぱりガンダルフさんにお願いして
作って頂いた方が良いかもしれないですねっ! 」
「そうだね~……ってそう言えば!
なぁ、マリア……お前、ドワーフ族達と仲良く成ってたよな? 」
「はい! 私の装備を凄く気に入って下さって
“盾も欲しくは無いか? ”……って言われたので
“是非! ”……って言ったら“作ってやる! ”って
ガンダルフさん自ら申し出てくださいまして~! 」
「す、凄いな……でも、ドワーフの装備は高級品だし
価格もそれなりだと思うけど……予算は大丈夫か? 」
「それが……“無料で”作って下さるそうです」
「えッマジで?! ……お前それ凄い事だぞ?! 」
「そうだったんですね……って
何故私とドワーフ族の関係性を話題に? 」
「いや、それだけ仲が良いなら高級なドワーフ製の製品でも
“お友達価格”で作って貰えないかなーって淡い期待を……」
「成程……確かに、私もゲームで遊びたいですし
良いアイデアかも知れませんね!
でしたら、最初に何をお願いしてみます? 」
「う~ん……なら“オセロ”が良いんじゃないかな?
ルールは簡単で作るのも多分簡単だし
俺達だけで遊ぶんじゃなくて、皆が遊べる様に
大量に生産しやすい物が一番良いかなと思うしさ。
そうとなれば紙に説明を書いて……っと、どうかな? 」
「いい感じですね! ……じゃあ早速お願いに行ってきます! 」
「え? ちょ?! ……い、今って何時なんだろ?
なぁマリア、余り遅い時間なら明日に……って。
も、もう居ない?! ……」
◆◆◆
主人公の心配を他所に
地下牢から大統領執務室へと繋がる階段を
ウキウキ気分で駆け上って居たマリア
「オセロっ♪……オセロっ♪……って、あれは!?
あ、危ないっ! ――」
瞬間
咄嗟に自らの斧を投げたマリア……その方角には
危機的状況に陥ったラウド大統領の姿が有った。
この時……彼が為投げられた彼女の斧は
高速で回転しながら偽装兵へと直撃……
……腕|諸共に武器を“へし折った”後
回転力を維持したまま、彼女の手元へと舞い戻ったのだった
◆◆◆
「なっ?! ぐあぁぁぁっ! ……う、腕がっ!?
ぐうっ! ……き、貴様何者だっ?!! 」
「危なかった~っ! ……って、貴方達こそ何者です?
ラウドさん! お怪我はありませんか?! 」
「う、うむ……マリア殿のお陰で怪我は無いが
それよりもこやつらを退治するのが先決じゃ!
雷の魔導、雷撃ッ! ――」
「……了解ですッ!
大|連環撃ッ!! ――」
直後
危なげ無く潜入部隊を壊滅させる事に成功した二人……だが
マリアの強力な攻撃に依り、執務室は“半壊”し
「なんと……机が真っ二つに……い、いやしかし
良いタイミングじゃった……とは言え
それにしても、こんな夜中にどうしたのじゃね? 」
「……つ、机すみませんでした。
それでその……私、主人公さんの“おつかい”で
ガンダルフさんに“あるゲーム”を作って頂こうと思って……」
「ほぅ、ゲームとな……それは何をする物なのかね? 」
「ラウドさんも間違い無く楽しめる“遊び道具”です! 」
「ふむ……大変に興味が湧いたが
先ずはこの異常事態をどうにかせんとならんじゃろうな。
魔導通信――
――何? 繋がらんじゃと!?
一体、何が起きて……」
「失礼致します!! 」
「ん?! ……誰じゃ?! 」
直後
警戒する二人の前に現れたのは“衛兵”であった。
……彼は、息を切らしつつ
現在の戦況を説明し始めた
「……リオス様からの情報です!
帝国の“便衣兵”が各所で撹乱工作を行っており
“妨害魔導”も使用された形跡があり、現在
政令国家全域に於ける魔導通信は正常に行えないとの事!
……リオス様|自ら各所へ情報伝達する事で
騒動の沈静化を図って頂いてはおりますが
どうやら……先程の“避難民”が帝国の“便衣兵”だった様です。
これは我々の確認不足が招いた騒動です……
……大変申し訳有りませんでしたッ! 」
「ふむ……では皆に伝令を送るのじゃ!
“便衣兵と思しき者はその場で対処する様に”
皆にそう伝えよ! 」
「ハッ! 」
直後、命令伝達の為
走り去って行った“衛兵”の後ろ姿を見つめながら
マリアは
「え~っと……わ、私って何かお役に立てますかね? 」
「うむ、マリア殿は此処に居って貰えるかのう? 」
「はい! ……ラウドさんの護衛ですね! 」
「頼もしいが、そうでは無く……主人公殿の護衛じゃよ
この“地下”が敵に知られれば、主人公殿が危険じゃからのぅ? 」
「確かに……分かりました! 」
などと話していた二人の元へ
地響きを轟かせながら
猛烈な勢いで接近する者が居た
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!! ……ラウド殿ぉぉぉっ!! 」
「ん?! ガンダルフ殿?! ……何かあったのかね?! 」
「工房に帝国の賊が現れたんじゃ!
ラウド殿は無事で何よりじゃが
此処に来るまでにも各地で騒ぎが起き……ん?
この部屋に倒れている奴らは、この傷
まさか……マリア殿が倒したのか? 」
「は、はい……そのせいで
高そうな机を壊しちゃいましたけど……」
「やはり……いやはや流石の太刀筋じゃが
こうも危険な戦闘が起きる様では、やはり
一刻も早くマリア殿に盾を作らんといかんのぉ。
……よし、わしもラウド殿を警護しようではないか!
また攻めてこんとも限らん故なっ! 」
「あっ! ……でしたら、こんな時にあれなんですけど
主人公さんからお願いされた“物”を今の内にお渡ししておきますね!
この紙に書いてある物を作って頂きたいんです! 」
「何じゃ? ……ふむふむ、木板に石
動物の革などがあれば作れるじゃろうが……
……こんな簡単な物を作って一体どうするんじゃね?
占いの類か何かに使用するのかのぉ? 」
「えっと……この国に“ゲーム”って無いですよね? 」
「ゲーム? ……何じゃそれは? 」
「遊びです、その道具も“遊ぶ為の物”なんですよ? 」
「ふむ……これは主人公発案なのか? 」
「ええ主人公さん発案……って言って良いのかな? 」
「ふむ……まぁ良い!
主人公は地下で七ヶ月も幽閉されて居るんじゃ
是非とも希望する物を作ってやろうではないか!
うむうむ! ……腕が鳴るぞぃ!!! 」
「私も楽しみです! 」
そして、同時刻
北地区では
◆◆◆
「くっ! こうなれば少しでもこの国の民を……」
「ほう? ……“どうする”と言うのだ? 」
瞬間、裏通りから現れ
低く野太い声で便衣兵へとそう問うた存在
それは、グランガルドだった
「なっ?! オークだと?! くっ……死ねぇぇっ!!! 」
直後
便衣兵の捨て身に等しい一撃は
グランガルドの頭部へと直撃した。
だが
「どうした? ……それで終わりか? 」
「わ、私の本気の一撃が……傷一つ付かぬ“兜”だと?! 」
「……ドワーフの装備は流石だ
吾輩を更に強くしてくれる……さて
貴様の様な賊は……土に還るが良いッ!! 」
「なっ?! ……ぐぁぁぁぁぁっ!! 」
「……全く、この様な賊が紛れ込むとは
全て、倒さねば為るまい……」
息絶えた“賊”の屍に目を向け
そう言ったグランガルド……暫しの戦いの後
各地とも、目立った被害は無く
全ての敵を排除する事に成功した政令国家。
そして……この出来事に依り、国民達は
各種族らに対し、更に理解と尊敬を抱く事と成った。
一方……“作戦失敗”後
魔王城では
◆◆◆
「……弁明などに耳を貸す積りは無い」
「し、しかし! 敵の猛攻が予想以上でして! ……」
「言葉を解さぬのか? ……まあ良い、許そう」
「あ、有り難き幸せ! この次は必ずや政令国家を……」
「フッ……痴れ者が
“次”など無いと謂った筈だッ!!!!! ――」
「なっ?! ……ぎゃあああああっ!!! 」
「――不愉快な。
やはり“帝国”程度ではこれが限界か……
……帝国など最早生かしておく故も無い。
我が配下よ……帝国を我ら魔族の糧とせよ」
瞬間
魔王は静かにそう告げた……一方
この命令を待ち望んで居たかの様に
配下の魔族達は一斉に雄叫びを上げ……
……その禍禍しい雄叫びは遥か遠くまで響き渡り
周囲に棲まう魔物らを僅かに凶暴化させた
===第二五話・終===




