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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第一章

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第二十五話「……代わりに仲間の愛で楽に成りました。」

《――主人公が目覚めたから数え数ヶ月程前の事


魔王城では、計画の失敗を重く見た魔王の元へ

帝国軍の総司令官が呼び出されて居た――》


………


……



「……もう一度申せ」


「で、ですから……魔王様のお手をわずらわせずとも

私共の兵が潜入し、内部から混乱を引き起こし……」


「フッ……出来るとうか。


“二度の失敗”を許す程、我は甘くなど無いぞ……」


《――直後、帝国軍総司令をギロリと睨みつけた魔王


……その殺気は、仮にも軍の総司令と呼ばれる人間が

わず一睨ひとにらみで震え上がる程の力をゆうして居た――》


「……か、必ず成功をお約束致しますッ!!

で、ですから我が国は何卒……その、お見逃しを……」


くどい……見逃すも見逃さぬも貴様らの働き次第とった筈」


「し……失礼致しましたっ!

ですが魔王様……奴らは近頃“差別と迫害の無き国家”などとうた

同盟者を増やす動きを活発化させておりますので

その流れに紛れ込み、潜入するならば容易よういでは無いかと思われます」


「方法は貴様らが考えれば良い話……


……我ら魔族の更成さらな繁栄はんえいの為

貴様は全力をもってあの国を手に入れるのだ……良いな? 」


「ハッ! ……必ずやッ! 」


………


……



《――現在の政令国家、主人公が目覚めてから約一ヶ月後


ハンターギルドでは――》


「では、オーク御一行様の依頼はこれで完了ですね!

……報酬は此方こちらです! 」


「かたじけない……またこんな依頼があれば我らオークに回してくれ」


「はい! ……その際は是非ともよろしくおねがいしますっ!

次の方……どうぞ! 」


《――忙しく働く受付嬢

直後、そんな彼女の所に“不満顔”のエリシアが現れ――》


「あーイライラするっ! ……この所、楽で高収入な仕事が多いからか

ハンターも多くて忙しいよねぇ~?


でも……こんなに楽な仕事ばかりなのだって

主人公っちが“吸い取った”お陰なのに、国民も薄情だよねぇ~?

それに……最近薬草採集いけなく成って凄いストレスだ~っ!


……ムキーッ!!! 」


「エ……エリシア様?! そ、その……忙しいのは良い事ですし!

主人公さんはその、あの……残念だとは思いますが……あっ!


……次の方どうぞ~! 」


「受付嬢ちゃん……今、話をらしたね?

ま良いや……頑張って~


しかし、勝手だよね民衆なんてのはさ……」


《――ブツブツと文句を言いながら二階の自室へと戻って行ったエリシア。


一方、ヴェルツでは――》


………


……



「……はい! 三番テーブルにこれ持っていって頂戴っ!! 」


《――ミリアが料理を手渡した相手は

ハーフ族らしき女の子であった。


どうやら、ミリアが新しく雇った従業員の様で――》


「は、はいっ!


……お待たせしました、エールと豆の塩煮です! 」


「……お~来た来た! 美味そうだなぁ~ありがとよ!

ほれ嬢ちゃん、チップだ……取っときな! 」


「あ……有難うございますっ! 」


………


……



「はい次! ……七番テーブルにこのセット!

……あんたが持っていきな! 」


《――こちらも同じく

新しく雇い入れたオーク族に対し、肉料理のセットを手渡したミリア――》


「……へい!!


お客さんお待たせぃ! ……ヴェルツ特製肉づくしっ! 」


「キタキタキタ~ッ!

これが美味いんだよ! ……お前食ってみろ! 」


「本当だ美味ぇぇぇ! ……おい兄ちゃん、チップ取っときな! 」


「お気遣い有難うございます旦那っ! ……」


………


……



「……しかし、此処まで繁盛するとはねぇ。


これも主人公ちゃんのお陰なのに……全く。


早く出してやれないもんかねぇ……」


《――多忙を極める厨房に立ち物憂げにそう言ったミリア。


一方、ドワーフ族の工房では――》


………


……



「うむ……これを後二十回練習じゃ」


「へいッ! ……そぉーれっ! ……よいしょぉ! 」


《――瞬間


弟子の打ったツチは鈍い音を立て

この失敗にガンダルフは檄を飛ばした――》


「……馬っ鹿もんっ!!

さっきも言ったじゃろう! ……もっと腰を入れるんじゃ!! 」


「へ、へいっ! すいやせんっ!

それっ! ……よいしょっ!!! 」


《――直後

先程よりもしっかりとした構えでツチを振り下ろした弟子。


瞬間、心地良い金属音を放ったツチ――》


「そうじゃ! ……そうやって打つのじゃ!

コラっ!! ぼけーっと見とらんとお前達も練習するんじゃ!!


……しかし、主人公アヤツの事は

何時に成れば出してやれるんじゃろうかのぉ……ってバカモンっ!

もっと腰を入れろと言っておるじゃろうに!! ……」


《――ツチの発する金属音よりも

遥かに激しい激が飛び交うガンダルフの工房……その一方

ダークエルフの村では、クレイン族長が“薬の調合”を教えて居た――》


………


……



「……調合は正確さが何よりも大切だ

少しでも間違えば、毒にも薬にも成らず単なる材料の無駄と成る。


……私達が安定した“薬草入手権”をあたえられ

そのお陰で安定した生活を送れる様に成ったのは

他でも無い、主人公と言う偉大な人間が居てこそだ。


良いな? ……一滴たりとも、葉の一枚も無駄にするな」


「ハイッ!! ……」


《――真剣な表情で調合の訓練を行うダークエルフ達


そして……大統領執務室では、オーク族族長グランガルドが

ラウド大統領に対し直談判をして居た――》


………


……



「分かっておるが、国民がじゃな……」


「……もう良いだろうッ!

何故、此程これほど長く閉じ込め続ける必要がある?

せめて監視を付け、わずかな時間でも

外を出歩く事を許す程度の“緩和策かんわさく”は取れぬのかッ!? 」


《――そう憤慨ふんがいしていたグランガルド


そんな彼に対し、獣人族族長リオスは冷静に――》


「……気持ちは分かるけど

聞き込みした感じだと皆まだ怖がってるみたいだよ?


中には“追放したらどうだ”とか言い出す人まで居るし

もっと時期を見た方が良いと思うなぁ……」


《――このリオスの意見に

同席していたマリーナは――》


「“時期を見て”……ですか。


……そう言い続けて早一ヶ月です

主人公様が目を覚ましてから一ヶ月も経過したのですよ?

なのに、何も進展していないではありませんか。


このままでは、彼は一生をあの牢獄で暮らす羽目に成ってしまいますわ?

せめて、国民に対し秘密裏にいくつかの拘束を解く位ならば容易たやすい筈。


少しでも主人公様の事を気遣って差し上げてはどうなのです? 」


《――いきどおりを感じさせる口調でそう言ったマリーナ。


平行線を辿たどる話し合い……だがそんな時

一人の衛兵が、慌てた様子で執務室へと現れ――》


………


……



「……失礼致しますっ! 」


「馬鹿者ッ! “機密事項”の話し合いゆえ

決して入ってくるなと言い付けた筈じゃろうっ?! 」


「も、申し訳ございません! ラウド大統領閣下!

しかし緊急事態なのです……お伝えしない訳には参りませんッ! 」


「一体何事じゃ!? 」


「……東門前に約二十名程“魔王軍に追われ逃げ延びた”と申す者達が

我が国への保護を求め……」


「何じゃと?! ……皆、すまんがこの話はまた日を改める事とする

急ぎその者達を“一時避難所”へと連れて行くのじゃ! ……」


………


……



《――数分後

東門前では――》


「……許可が降りましたので、皆さんを一時避難所へご案内します。

此方へどうぞ……」


《――連絡を受けた衛兵が避難民達の誘導を始めて居た。


その一方……同時刻

“政令国家地下特別警戒監獄室”では――》


………


……



「ね、ねぇ二人共……ずっと側に居てくれるのは嬉しいけど

二人まで此処に居続けなくても

遊んでくるとか、何か自由に……」


《――と、仲間を気遣った主人公に対し

メルは――》


「わ、私は主人公さんの横にいるのが一番幸せなので……


……ほ、ほっといてくださいっ!! 」


「なっ?! ……メルちゃん?!

そ、そりゃあ……俺だって……その、メルちゃんが側に居てくれると……」


《――と、良い雰囲気に成り掛けた二人

だが、これをさえぎる様に――》


「別に私は基本動きたく無いだけなんで

言い訳に使えて超ラッキーって感じですが……何か? 」


《――と言ったマリア。


だが――


“いや、まぁ……それならそれでいいけどさ”


――と、あまりにも冷たい答えが

主人公からもたらされ――》


「はぁ?! ツッコミ待ちなんですけどぉぉぉっ?? 」


「……うっざ! 」


「何ですかもう! ウザいとか本気で傷つきますよ?!

こんな絶世の美女が二人も側に居てこれ以上何が望みなんですか?

ハッ! まさか私達を無理やり手篭てごめに……」


「……するかバカっ!!!

もしどうしても辛抱たまらなかったら

正式に告白して、段階を踏んで……だわ!


……ったく、俺をどんな野蛮人だと思ってるんだよ?!


それに、そもそも俺にはまだ“そう言う経験”が……って。


ハッ!? ……な、何でも無いっ! 」


「……いや~っ、長いノリツッコミが出ましたね~

しかし、油断すると直ぐマイナスに成るんですから

主人公さんったら油断も隙も無いですね~」


「い、いやその……なんかごめん。


しかし……俺が此処ここに幽閉されて早七ヶ月か。


若干だけど恐ろしいな……」


「やっぱり運動したり出歩いたり出来ないのは辛いですか? 」


「いや、割と何とも無い事が恐ろしい」


「成程、やっぱり生粋のニー……」


「それより先を言ったら……“揉む”ぞ? 」


「ニー……ハイソックスってどう思います? 」


「生粋のニーハイソックスって何だよ?! ……好きだけど」


「ふふっ♪ ……お二人のそう言う会話大好きですっ! 」


「しかしメルちゃんは本当に天使だな……居てくれてありがとね」


「へっ?! ……はわわわっ……」


「ちょっとぉ! ……私との扱いの差! 」


「あははっ! ……マリアも居てくれてありがとね! 」


「え、ええッ! ……感謝してくださいね!? 」


「褒めたら照れるんかいっ! 」


《――彼らが団らんを楽しんで居た一方で

“一時避難場所”に案内された他国からの避難民達は――》


………


……



「……暫くしたらお食事のご用意が出来ます、その他

何か必要な際は表に居りますのでいつでもお声掛けください」


「あ、有難うございます……」


「いえ……では」


《――直後、避難民達に一礼し避難所を後にした衛兵。


だが、その直後――》


「……潜入成功か、信じられない程に警備がザルだったが

“所持品確認”すらされないのであれば武器は用意して置くべきだったか……」


「ええ、それで隊長……何処から攻めますか? 」


「まずは武器だ……此方が使う武器を手に入れたら

A班は出来る限りこの国の生命線ライフラインに成り得る店の破壊活動を行え。


騒ぎが起きている間にB班は城へ潜入……私と共に破壊工作を行う

残りの者は妨害魔導を駆使し連絡網をつぶした後

街で騒ぎを起こせ……シッ!


……誰か来るぞ」


………


……



「お食事の用意が整いました……


……皆様、どうぞお召し上がりください。


温かいシチューです」


「おお、これはありがたいっ! ……」


《――この日の深夜

政令国家の民達が寝静まった頃

避難民に偽装して居た帝国兵達は密かに作戦を開始した。


……深夜、ドワーフ族の工房に侵入した偽装兵A班

だが、陳列されている高品質な武器や防具に目移りし――》


………


……



「質の良い武器が山の様にあるな……ついでに頂いていくか」


「ん? ……誰じゃ! 」


「何っ? ドワーフだと?! ……不味い! 急ぎ撤退だ! 」


「盗人め!! ……逃さんッ!


武器破壊連環撃ッ! ――」


《――ガンダルフの激しい攻撃により

班長以外の全員を失ったA班、そして――》


………


……



「くっ、こうなれば刺し違えてでも……ッ!

死ねぇぇぇっ! ……」


《――直後、全力の一撃を繰り出した班長。


だが、その攻撃さえもガンダルフのツチ術の前には無力で――》


「……甘いッ!


“崩山撃ッ! ” ……どっせぇぇぇぇぇぇぃ!! 」


《――瞬間

武器諸共もろともに叩き伏せられた班長。


そして――》


………


……



「ん?! ……これは帝国の紋章じゃぞ!?


不味い事態に成っておる……急ぎラウド殿に報告せねば!

お前達、後は任せたッ!


警戒をおこたるでないぞッ! ……」


《――弟子達にそう言い残すや否や

途轍も無い勢いで城へと疾走って行ったガンダルフ。


同時刻……B班は

既に大統領城内部に侵入して居て――》


………


……



「……街が騒がしくなった

“陽動作戦”が成功した物と断定し、我々も速やかに破壊工作を行う。


B班、突入だ――」


《――迅速に、音も無く

着実に城内部を制圧し始めたB班……そして


暫くの後、一際大きな扉の前に辿り着いたB班は


ゆっくりとその扉を開けた――》


………


……



「ん?! ……貴様ら何者じゃ!? 」


《――B班の侵入した部屋は“大統領執務室”


虚を突かれたかの様な表情を浮かべそう言ったのは

ラウド大統領であった――》


「ふっ、貴様がこの国の長か……死んで貰うぞッ! 」


………


……



「なっ?! ぐあぁぁぁっ! ……」


………


……



《――この出来事から数十分程前の事


“政令国家地下特別警戒監獄”では

主人公が“ある疑問”について考えて居た――》


「……そう言えばだけどさ

この国には“カードゲーム”的な物って無いのかな?

しくは“ボードゲーム”とかでも良いけど」


「あ~……そう言えば見た事無いですね~と言うか

そもそも主人公さんが設定してないから無いのかも?


……ま、もし無いなら無いで主人公さんの記憶を頼りに

ガンダルフさん辺りにお願いして作って頂くのも良いかもですけどね~」


「おっ! ナイスアイデアだなマリア! ……今度頼んでみようか! 」


《――と、二人が話していたその時

メルは不思議そうに――》


「あの~……お二人のおっしゃってる“ゲーム”ってなんですか? 」


「えっ? ゲーム知らない? 」


「私は聞いた事無いです……」


「と言う事は無いのか……えっと

簡単なので言えば“マルバツゲーム”とかかな。


縦横斜め合わせて九マスのマス目の中に交互に自分のマークを書いて

先に縦横斜めの一列でも揃えられたらその人の勝ち!


……って言う遊びなんだけど」


「それ面白そうですね! 一回やってみたいですっ! 」


「じゃあ、やってみよう! ……メルちゃんからどうぞ! 」


《――直後

“マルバツゲーム”で遊び始めた主人公とメル

しかし、このゲームの“ある問題点”にメルが気付いた――》


………


……



「……あれ?

お互いに揃えられなく成っちゃいましたよ? 」


「あ~……このゲームはそうだね

普通にやってるとまず勝負がつかないんだ」


「そうなんですか……ゲームってこういう風なのが多いんですか? 」


「いや……例え話で出してみただけで

もっと楽しいのは沢山あるんだけど……正直口で説明するよりも

実際に物を用意して遊んだ方が分かりやすいかもね」


「でしたら……やっぱりガンダルフさんにお願いして

作って頂いた方が良いかもしれないですね! 」


「そうだね~……あっ、そう言えば!

なぁマリア、ドワーフ族達と仲良く成ってたよな? 」


「はい、私の装備を凄く気に入って下さって

“盾も欲しくは無いか? ”……って言われたので

“是非! ”……って言ったら


“作ってやる! ”……って

ガンダルフさんみずから申し出てくださいまして~! 」


「凄いな……でも、ドワーフの装備は高級品だし

価格もそれなりだと思うけど……予算は大丈夫か? 」


「えっと……“無料で”作って下さるそうです」


「えっマジで?! ……お前それ凄い事だぞ? 」


「そうだったんですね……って

何故私とドワーフ族の関係性を話題に? 」


「いや、それだけ仲が良いなら高級なドワーフ製の製品でも

“お友達価格”で作って貰えないかなーってあわい期待を……」


「確かに……私もゲームで遊びたいですし、良いアイデアかもですね~!

でしたら、最初に何をお願いしてみます? 」


「う~ん……なら、オセロが良いんじゃないかな?

ルールは簡単で作るのも多分簡単だし、俺達だけで遊ぶんじゃなくて

皆が遊べる様に大量に生産しやすい物が一番良いかなと思うしさ。


そうとなれば紙に説明を書いて……っと、どうかな? 」


「いい感じですね! ……じゃあ早速お願いに行ってきます! 」


「えっ? ちょっと待った……今って何時なんだろ?

なぁマリア、余り遅い時間なら明日に……って。


もう居ない?! ……」


………


……



《――主人公の心配を他所よそ

地下牢から大統領執務室へと繋がる階段を

ウキウキ気分でけ上って居たマリア――》


「オセロっ♪……オセロっ♪……って。


あれは!? ……危ないっ! 」


《――瞬間


咄嗟とっさに斧を投げたマリア……


……その方角には、危機的状況のラウド大統領の姿が有った。


この時……ラウドを救う為、咄嗟とっさに投げた彼女の斧は

高速で回転しながら偽装兵へと直撃し……


……腕諸共もろともに武器を“へし折った”後

そのままの回転力を保持したまま、彼女の手元へと戻ったのだった――》


………


……



「なっ?! ぐあぁぁぁっ! ……


……う、腕がっ!?


ぐっっ! なっ……何者だっ!! 」


「危なかった~っ! ……って、貴方達こそ何者です?

ラウドさんお怪我はありませんか?! 」


「う、うむ……マリア殿のお陰で怪我は無いが

それよりもこやつらを退治するのが先決じゃ!


雷の魔導、雷撃ライトニングスパイクッ! ――」


「……了解ですッ!

大連環撃ッ!! ――」


《――直後

危なげ無く潜入部隊を壊滅させる事に成功した二人


だが、マリアの強力な攻撃により執務室は“半壊”し――》


………


……



「なんと……机が真っ二つに……い、いやしかし

良いタイミングじゃった……とは言え

それにしても、こんな夜中にどうしたのじゃね? 」


「そ、その……机の事ごめんなさい。


……えっと、主人公さんの“おつかい”で

ガンダルフさんに“あるゲーム”を作って頂こうと思って! 」


「ほぉゲームとな……それは何をする物なのかね? 」


「間違いなく楽しめる遊び道具です! 」


「ふむ……大変に興味がいたが

まずはこの異常事態をどうにかせんとならんじゃろう。


魔導通信……何? 繋がらんじゃと!?


一体、何が起きて……」


「……ラウド様っ!! 」


「ん?! ……誰じゃ?! 」


《――直後、警戒する二人の前に現れたのは衛兵であった。


彼は、息を切らしつつ現在の戦況を説明し始めた――》


………


……



「……リオス様からの情報です!

帝国の“便衣兵”が各所で撹乱かくらん工作を行っており

“妨害魔導”も使用された形跡があり

現在、政令国家全域にける魔導通信は正常に行えないとの事!


リオス様自ら各所へ情報伝達する事で騒動の沈静化をはかって頂いておりますが

どうやら先程の避難民が帝国の“便衣兵”だった様です。


我々の確認不足がまねいた騒動です……


……大変申し訳有りませんでしたッ! 」


「ふむ……では皆に伝令を送るのじゃ!

“便衣兵と思しき者はその場で対処する様に”


……そう伝えよ! 」


「ハッ! ……」


《――直後

命令伝達の為、走り去って行った衛兵――》


………


……



「えっと……私は何かお役に立てますかね? 」


「うむ、マリア殿は此処に居って貰えるかのう? 」


「はい! ……ラウドさんの護衛ですね! 」


「いや、主人公殿の護衛じゃよ。


この“地下”が敵に知られれば、主人公殿が危険じゃからのう……」


「確かに……分かりました! 」


《――などと話していた二人の元へ

地響きをとどろかせながら猛烈な勢いで近づいてくる者が居た――》


………


……



「……ラウド殿ぉぉぉぉっ!! 」


………


……



「ん?! ガンダルフ殿?! ……何かあったのかね?! 」


「それが……工房に帝国の賊が現れたのじゃ!

ラウド殿が無事で何よりじゃが、此処に来るまで街にも騒ぎが起きて居った。


それでわしが! ……ん? この部屋に倒れている奴らは

まさか……マリア殿が倒したのか? 」


「は、はい……高そうな机壊しちゃって……」


「やはり……いやはや流石の太刀筋じゃが

こうも危険な戦闘が起きる様では

やはり、一刻も早くマリア殿に盾を作らんといかんのぉ。


よし……わしもラウド殿を警護しようではないか!

また攻めてこんとも限らんゆえなっ! 」


「あっ! ……でしたら、こんな時にあれなんですけど

主人公さんからお願いされた物を今の内にお渡ししておきますね!

その……この紙に書いてある物を作って頂けませんか? 」


「何じゃ? ……ふむふむ、木板に石

動物の革などがあれば作れるが……こんな簡単な物を作って

一体どうするんじゃね? 占いのたぐいか何かか? 」


「えっと……この国に“ゲーム”って無いですよね? 」


「ゲーム? ……何じゃそれは? 」


「遊びです、その道具も遊ぶ為の道具なんですよ? 」


「ふむ……これは主人公発案なのか? 」


「ええ主人公さん発案……って言って良いのかな? 」


「ふむ……まぁ良い!

主人公は地下で七ヶ月も幽閉されて居るんじゃ

是非とも希望する物を作ってやろうではないか! ……腕が鳴るぞぃ!!! 」


「私も楽しみですっ! ……」


………


……



《――そして、同時刻


北地区では――》


「くっ! こうなれば少しでも国民を……」


「ほう? “どうする”と言うのだ? 」


「オ、オークだとっ?! ……くっ、死ねぇぇっ!!! 」


《――便衣兵の鋭い一撃がグランガルドの頭部に直撃した。


だが、グランガルドは――》


………


……



「どうした? ……それで終わりか? 」


「私の本気の一撃が……傷一つ付かぬ“兜”だと?! 」


「ドワーフの装備は流石だ……吾輩を更に強くしてくれる。


さて……貴様の様な賊は


土にかえるが良いッ!! ――」


「ぐぁぁぁぁぁぁっ!! ……」


………


……



「全く……他にもこの様な輩が紛れ込んだか。


全て倒さねばるまい……」


《――しばしの戦いの後


目立った被害も無く、全ての敵を排除する事に成功した政令国家。


そして……この出来事より後、国民達は

異種族に対し更に理解と尊敬をいだく様に成ったと言う――》


………


……



「……弁明ならば聞かぬ」


「し、しかし! 敵の猛攻が予想以上で……」


「言葉をかいさぬのか? ……まあ良い、許そう」


「有り難き幸せ! この次は必ずや政令国家を……」


「次など無いとった筈……フッ!! 」


「なっ?! ……ぎゃあああああっ!!! 」


………


……



「……不愉快な。


やはり帝国こやつら程度ではこれが限界の様だ……


……我ら魔族の力に遠く及ばぬ帝国こやつらなど

最早もはや生かしておくゆえい。


我が配下の者共よ……彼奴きゃつらを我ら魔族のかてとする。


……良いな? 」


《――魔王は静かにそう言った。


一方、この命令を待っていたかの様に魔族達は一斉に雄叫びを上げた。


その禍々しい雄叫びは遥か遠くまで響き渡り

周辺の魔物をわずかに凶暴化させた――》


===第二十五話・終===

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