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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第六章

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第二三八話「友を護るのは楽勝ですか? 」

<――俺が知って居る

エリシアさんに取っての”大切な存在”は大きく分けて三人居る。


一人目……と言うか“一頭目”は、神獣である“チビコーン”

二人目は、彼女の師匠であるヴィンセントさんだ。


だが……この日、八重桜(ヤエザクラ)の口から発せられた

三人目(ヴィオレッタさん)”を奪わんとするかの様な発言は

エリシアさんから冷静さを奪うだけの理由を生み出してしまって――>


………


……



「……ふざけるなッ!!

アンタなんかにヴィオレッタは渡さないッ!! ……撤回しろッ!! 」


<――八重桜(ヤエザクラ)に掴み掛かり

そう、当然と言える要求をしたエリシアさん……だが。


八重桜(ヤエザクラ)は首を縦には振らず――>


「……残念だが、それもおめぇが決める事じゃ()え。


そもそも何を勘違いして居るのかは知らねえが

この娘っ子はおらが欲した訳じゃ()え……この半魔族の娘っ子が

(みずか)ら“そう成りてえ”と求めただけの話だ……」


<――そう、信じられない事を口にした。


そして――>


「嘘を言うなッ!! ヴィオレッタがそんな事願う筈が! ……」


<――そう、食って掛かる様に言ったエリシアさんに対し

八重桜(ヤエザクラ)は――>


「いいや、ついさっきおらの目さ見てはっきり言ったど?


まぁ、動機は少々無礼な(モン)だが――


“エリシアが大切にして居る(ばしょ)(まも)る事が出来て

エリシアに直接会えて、エリシアと直接話せると言うのなら

私は、その為の苦労を(いと)いません……だから、お願いします! ”


――確かに、この娘っ子はそう言っただ」


<――と、少しばかり不満げにヴィオレッタさんの言葉を伝えた。


この直後、そんな彼女(ヴィオレッタさん)の願いを知った

エリシアさんは――>


「……八重桜(ヤエザクラ)、もしも

心優しいヴィオレッタの性格を利用しようと考えてるのならそれだけは止めて

ヴィオレッタの代わりが必要だって言うのなら私がやるから……だから。


お願い、ヴィオレッタをこれ以上苦しめないで……」


<――力無く頭を下げ


それでも首を縦には振らなかった八重桜(ヤエザクラ)に対し

彼女は、怒るでも無く……(ただ)必死に懇願(こんがん)し続けた。


だが――>


「……全て語らずとも、おめぇ達が固い絆で結ばれてる事は良く分かってる。


だが……おめぇが望む通り、この娘っ子さこのまま此処(ここ)さ居させても

この娘っ子は、おめぇが望む様な幸せな状況では居られねえど? 」


「ど、どう言う事? ……」


「……おめぇ達がどう考えて居るかは知らねえだが、少なくとも

この娘っ子が犯した過去の罪は、この娘っ子の魂を“冥府”さ落とすだけの大罪だ。


無論、この娘っ子が(みずか)らの意思でそうした訳では無く

何かに操られて居た事も判ってる、だが……その罪さ不問にされたとて

(みずか)らの父親さ案じ……挙げ句、仲の良いおめぇの事まで案じて

このまま此処(ここ)(みずか)らを縛り付け“地縛霊”として居続ければ

この娘っ子の純粋さは(いず)れ完全に失われ、本当の化け物に成っちまうだ……


……そうなる前に、おらが最初の(わらべ)として精霊族へと転生させれば

少なくとも“化け物”さ成らず済む筈だと、おらは考えてる。


無論、転生は生半可な苦しみじゃ()えだが……


……今を逃せば、恐らく後は()えど? 」


八重桜(ヤエザクラ)……もし“転生(それ)”を受け入れたら、ヴィオレッタは幸せで居られるの? 」


「ああ、この娘っ子は気が強い……苦しみさ耐えて、幸せば掴む器さ持ってる」


「そう……その発言に嘘偽りは無い? 」


「当たり前だ……」


<――どれ程の時が経ったのだろうか?


静寂の中……静かに顔を上げたエリシアさんの目は

決意に満ちて居て――>


………


……



「……分かった。


でも……一つだけ約束して」


「何だ? ……言ってみろ」


「ヴィオレッタが……優し過ぎる位優しい大親友(ヴィオレッタ)が一人で苦しまない様に

私に出来る事があるなら私にも手伝わせて。


もう二度と、ヴィオレッタの悲しむ姿は見たく無いの……お願い」


「……当たり前だ。


おらの(わらべ)さ成る娘っ子さ、使い潰す様な事はしねえ」


<――この瞬間


二人の間に交わされた“約束”


そして――>


………


……



「……では、精霊女王八重桜(ヤエザクラ)よ。


(わらわ)の手に触れ、森との同化を宣言せよ……」


<――直後

メディニラに()って()り行われる事と成った“儀式”


……差し出された彼女(メディニラ)の手に触れ

八重桜(ヤエザクラ)が森との同化を宣言したこの瞬間

八重桜(ヤエザクラ)の胸元に現れた一輪の“硝子の花”……それは。


つい先程、九輪桜(プリムラ)が顔色を変えた”硝子花(もの)”と

とても良く似て居た――>


「……これで()の森は(ヌシ)が体へと完全に同化した。


どうじゃ? ……森の力は感じるかえ? 」


<――この瞬間

静かにそう問うたメディニラに対し――>


「ふむ……聞いて居た以上に貧弱な森ではあるが

既におらが体も同じ森だ……娘っ子と共に精一杯盛り立てねば成らねえ」


<――(わず)かに不満を漏らしつつ、そう答えた八重桜(ヤエザクラ)


だが……この直後

余りにも呆気(あっけ)なく終わった同化の儀式とは反対に

彼女(ヤエザクラ)()り執り行われる事と成った“転生の儀式”は

これとはまるで比べ物にならない程の困難を俺達に突きつけた――>


………


……



「成程……これは、少々“不味(まず)い状況”だな」


<――ヴィオレッタさんの墓に触れ、困った様にそう言った八重桜(ヤエザクラ)


直後、彼女はエリシアさんに対し――>


「……本来、おらが時代には

他種族からの転生者はそう珍しい(モン)では無かった。


エリシア……おめぇの様に、森や草木を愛し(いつく)しむ者や

そもそも森との関係が根深いエルフなどは

死を迎え、天に召される者よりも精霊族と成る者の方が多かった位だが

(なが)き精霊族の歴史の中でも、魔族の色さ入った者を迎えた話は数少ねえ。


……とは言え、この娘っ子の純粋な心さ有れば

魔族(そんな)”事など大した障害には成らねえだ。


だが……どうやら、この娘っ子さ背負ってる“罪”の方は

そう簡単に赦される(モン)では()え様でな……」


<――そう

ヴィオレッタさんの転生が困難であるかの様に言い……そして。


直後、問い質す様に声を上げたエリシアさんに対し

更に続けた――>


「……勿論、絶対に無理とは言って()えだが

全てで無くとも、罪の大部分が(ゆる)される必要がある。


もし、このまま転生の儀式さ行えば

それはこの娘っ子さ苦しめる為だけの行為になっちまう。


だが、おらはあくまで精霊女王だ……この娘っ子さ迎え入れる為には

罪を(ゆる)す力を持つ者に、力さ借りねば成らねぇ……だが

森と同化したばかりのおらにその者さ呼び出す程の力は

まだ、戻って()えだ……」


<――そう、現時点では不可能と思える様な状況を伝えたのだった。


だが――>


「私、言った筈だよ? ――


“親友の為に出来る事があるなら私にも手伝わせて”


――って。


見つけたい相手はどんな奴? ……種族は?

住んでるだろう大凡(おおよそ)の場所に心当たりは?

協力の対価に求めてきそうな物は何?


……何が何でも見つけ出して協力を取り付けるから

分かる範囲の事は今直ぐ全部教えて」


<――そんな絶望的とも言える状況に対し

何一切諦める事無く、エリシアさんはそう返した。


……だが、八重桜(ヤエザクラ)

そんなエリシアさんに対し、静かに首を横に振り――>


「……残念だが、人族に見つけられる様な存在では()え。


そもそも、人の犯した罪を(ゆる)す力さ持つ者は

大きく分けて“二人”しか居ねえ……それは

この空さ遥か上に()まう者か、遥か地の底さ()まう者のどちらかだ。


……おら達精霊女王ならば兎も角、おめぇ達では

死を迎え、その(いず)れかに向かう沙汰(さた)が下る時

その名さ知る事が出来るかも知れねぇ程度の、とんでも無く“遠い”存在だ。


……言うまでも()えが、物で釣る事は勿論

人族の要求を受け入れるなどまず有り()ねえ相手だど? 」


<――そう、恐らくは

“高次元の存在”と呼ぶべきだろう者達に関する話をした。


その上で――>


「……無論、其処(そこ)に居るメディニラや九輪桜(プリムラ)さ力を(もっ)て呼び掛けさすれば

(ある)いは、(こた)える事があるやも知れねえ……だが、そもそも

それでこの娘っ子さ罪が(ゆる)されるならば兎も角

“悪しき者め”……と、冥府さ()とされる事が()えとは言い切れねえ。


……万が一にもそうなれば

おら達が揃って頭さ下げた所で、その沙汰は(くつがえ)らねえだど? 」


<――そう、もう一つの問題点を口にしたのだった。


だが……そんな話を聞かされた後でさえ

エリシアさんの覚悟が揺らぐ事は無くて――>


「教えてくれて有難う……お陰でその方法の欠点(デメリット)は全部分かったよ。


けど……目を背けたく成る程の欠点を全て話してくれたお陰で

少なくとも、私や主人公っちには嫌と言う程

“思い当たるフシがある相手”だとも分かったよ……


……ねぇ、八重桜(ヤエザクラ)


“遥か地の底に()まう者”って方についてだけどさ。


其奴(そいつ)――


――“冥王(めいおう)”とかって呼ばれてたりしない? 」


<――この瞬間

俺の脳裏に色濃く残る存在の名を口にしたエリシアさん。


……直後、顔色を変えた八重桜(ヤエザクラ)()って

これが正解だと確信をしたエリシアさんは――>


「……まぁ正直、呼び出す方法は私にも分からないけど

実は、主人公っちも私も直接会った事があるんだ。


たった今、貴女が同化した“チビコーンの森”の地下深くでさ……」


「何? ……何が()った? 」


「別に? ……この世界から一人

その名を呼ぶ事さえしたく無い(おとうと)弟子が消えただけ……


……数多くの厄災をこの世界に撒き散らした、最低のクソ野郎がね。


けど、弟弟子(そいつ)の所為で……あの日、ヴィオレッタは

私の知ってるヴィオレッタなら絶対に選ばない行動を()いられた。


……八重桜(ヤエザクラ)


確かに貴女の言う欠点(デメリット)は私も怖い……でも

彼奴(アイツ)の所為で狂ってしまったヴィオレッタの人生が……


……こうして、此処(ここ)で眠る事さえ長くは続けられないと言うのなら

(ゆる)されないかも知れない罪に怯えるより

たとえ(わず)かでも助かる可能性に私は()けたい。


私は……彼女の罪を一緒に背負いたいんだ。


それが私の、大親友の(まも)り方だから」


<――この瞬間


この選択に()って、大親友を永久に失ってしまう可能性を知りつつも

そう強い決意を口にしたエリシアさん。


直後、八重桜(ヤエザクラ)は――>


………


……



「メディニラよ……おめぇが何故、其処(そこ)主人公(わらべ)さ使って

おらの眠りさ邪魔したかなど……既に、その“目的”さ達成した事も含め

良く分かってる……無論、今更それを責めはしねえ。


だが……」


<――そう言い掛け、そして

この直後、そんな彼女(ヤエザクラ)の“言わんとする”事に気付いた

メディニラは――>


「……“呼び掛ける”だけであれば(わらわ)の力で充分に事足りよう。


じゃが……(おう)じるか否かまでの責任は取らぬぞえ? 」


<――そう(こた)えたのだった。


この、直後――>


「充分だ……さて、エリシアよ。


おめぇは勿論……おめぇの大切な娘っ子も

メディニラさえも、おめぇの賭けさ乗った……だが。


……結果がどうなろうと、おらさ恨むじゃ()えだど? 」


「恨まないよ……どんな結果になろうとも、私がヴィオレッタを(まも)るから」


<――“守護(そう)”出来るか否かなど既に些末(さまつ)な事かの様に

強い決意と共にそう言ったエリシアさん。


……そんな彼女の決意に(こた)える様に

八重桜(ヤエザクラ)は、(ただ)一言――


“良く言った”


――そう言うと、メディニラに対し目で合図を送った。


直後――>


………


……



「……()けまくも(かしこ)き冥府の王たる冥王よ

(わらわ)の声を聞き届け、その声に(こた)えよ――」


<――鈍い俺にでも容易(ようい)に感じられた(おごそ)かなる雰囲気。


この瞬間”冥王(めいおう)”に対する呼び掛けを行ったメディニラは、鋭く響く柏手(かしわで)を打った。


……その音に驚き、森に()む鳥さえも羽音を立てて飛び立つ程

森へと響き渡ったその音が、完全に消えた


瞬間――>


………


……



「……久方振りだね、主人公……エリシア。


だが……少なくとも、此度(こたび)此方(こなた)を呼んだのは君達では無い様だ。


精霊女王メディニラよ……此方(こなた)に何を所望する積りか」


<――急激に(ゆが)んだ次元


その(ゆが)みから現れるなり、そう言って無感情に問うた“冥王(めいおう)

直後、嘘の様に容易(たやす)く呼び掛けに(こた)えた“冥王(めいおう)様”に対し――>


「……では、端的(たんてき)に申す。


我が種族の古代種が一人で()る“八重桜(ヤエザクラ)”が森の為

この“娘”の罪穢(つみけが)れを(はら)い、精霊族とする(ゆる)しを(たまわ)りたい」


<――そう、願った。


だが――>


「ふむ……此方(こなた)を呼び出した(ゆえ)(ほん)にそれだけか? 」


<――この瞬間

メディニラに対し、全てを見通す様にそう問うた冥王(めいおう)


直後……怯えるどころか

何故か、不敵に微笑(ほほえ)んでみせたメディニラは――>


「やはり……隠し立てなど出来ぬか。


()れば、更に願う――


冥王よ……(ヌシ)()べる冥府の“番人共”に()り奪われし

各地の森が力……全て正しく“再分配”して貰いたい。


――(わらわ)が願いはこれで全てである」


<――この瞬間

無礼にも思える様な物言いでそう願ったメディニラ。


直後――>


「無礼な物言いをする者は好かぬ……が、その件は此方(こなた)にも否が()る。


良かろう……だが、叶う願いは二つに一つだ。


さぁ……精霊女王メディニラよ。


好きに願うが良い――」


<――冷たく、重苦しく

視界を揺らす程の声でそう言った冥王(めいおう)


そして……そんな“悪魔の(ささや)き”にも思える様な選択に

再び不敵に微笑(ほほえ)んでみせたメディニラ。


……この直後

彼女の微笑みに危うさを感じた俺が声を発するよりも遥かに早く

冥王(めいおう)は俺の声を“奪い”――>


「……何人たりとも“選択”の邪魔はさせん。


主人公……これで“二度目”だ。


……後一度、君が此方(こなた)を不快にさせれば

此方(こなた)は君を“連れて行く”事と成る……」


<――”(ほとけ)の顔も三度まで”かの様にそう言った。


直後、静かに(うなず)く事しか出来なかった俺に再び声を“戻す”と――>


「精霊女王メディニラ……答えぬと言うのならば

此方(こなた)(いず)れの願いも聞かず冥府へと帰る……


……さあ、好きに選ぶが良い」


<――そう、再び“選択”を迫った。


直後……張り詰める様な静寂の中


静かに口を開いたメディニラは――>


………


……



「……(わらわ)の願いは何一つ変わらぬ。


(わらわ)の願いは――


――“森が力の再分配”である」


<――そう、言い切った。


そして――>


「以降、選択は(くつがえ)らぬ……本当にそれで良いのだね? 」


<――そう問われ、静かに


“二言は無い”


と、一切の曇り無い眼で返事をしたメディニラの選択に――>


「……良いだろう、此方(こなた)は君の選択を受け入れた。


では――


――“(かえ)そう”」


<――止める暇さえ与えられぬ程、まるで

借りた物を返すかの様に、余りにもあっさりとそう言った冥王。


……だが。


冥王の発言とは裏腹に……過去

“冥府の番人共”に()って大きな被害を受け

今もその爪痕の色濃く残るこの場所には、何一つとして


“変化”が無くて――>


………


……



「……フリージアの森は相当に被害を受けた筈。


“再分配”が被害を一切受けていない森に対しても行われると仮定しても

これだけの被害を受けた此処(ここ)

草木一つ増えないなんて絶対に有り得ない……冥王。


たった今メディニラが望んだ(ひど)く自分勝手な願い……本当に叶えた? 」


<――つい先程

声を発する事さえも重罪かの様に言い放った冥王に対し

一切臆する事無く、余りにも無礼な口振りでそう言い放ったエリシアさん。


だが……そんな彼女に対し、怒るでも無く

(ただ)(わず)かに微笑(ほほえ)んでみせた冥王は――>


「……“願い”は確かに叶えた、その“結果”は直ぐに理解出来る事だろう。


では、ね……」


<――そう言い残し

闇の中へと消えて行ったのだった――>


………


……



「ふざけんな……何してんだよメディニラッ!!!

私の親友の事なんて最初(ハナ)からどうでも良かったって事?!

アンタが望む結果が得られるなら、何もかも犠牲に出来るって事?! 」


<――メディニラに掴み掛かり、そう食って掛かったエリシアさん。


だが……この直後、そんな彼女の言葉を(さえぎ)ったのは

メディニラでは無く――>


「全く……褒めたくも()えだが

良くぞ此処(ここ)まで“狡猾(こうかつ)な手段”さ思いつく(モン)だな? 」


<――この瞬間

半分は感心した様に、もう半分は呆れたかの様に言い放った八重桜(ヤエザクラ)


そして、この直後

そんな彼女の問いに対しメディニラは――>


「……仮にも(わらわ)は大精霊女王と(あが)められし存在

(ヌシ)ら“古代種の力”を知りもせず、この地位に就いて居る訳など無かろう? 」


「成程……だが、おめぇの想定通りに事が運ぶ可能性は

其処(そこ)まで大胆に賭けられる程高かったとは思えねえだがな? 」


「何を言う? ……その主人公(もの)が力に一度(ひとたび)触れれば

常識など、何の役にも立たぬと理解(わか)る筈であろう? 」


<――そう、唐突に俺の事を“過大評価”した。


そして――>


「ふざけんな……アンタ達二人だけが楽しく話してるのを

“はい、そうですか”って静観出来る程、状況は! ……」


<――少なくとも

“人族の身では”理解出来ない会話に(しび)れを切らし

そう“ブチギレ”たエリシアさん……だが。


この直後、八重桜(ヤエザクラ)はそんな彼女に対し――>


………


……



「黙れ……まだ、儀式は終わって()え。


現時点では、おめぇが大切だと言った内の“一頭”しか救えて()えだ。


……残る娘っ子さ救う為、折角手に入れた力さ無駄にしねえ為にも

黙っておらの話しさ聞いて、黙っておらに協力しろ。


それだけが、おめぇの望む……果ては、主人公(わらべ)さ望む願いさ叶える為の

唯一の“一手”さ成るかも知れねえんだからな……」


<――そう“理解出来ない発言”と共に

余りにも過剰に思える自信を見せながらそう言ったのだった――>


===第二三八話・終===

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