第二二一話「“楽にしてて”と言われても……」
<――この瞬間
望んで居た“省エネな異世界生活”とは裏腹に
エリシアさんから“長生き出来ない”可能性を告げられてしまった俺は……
……“死への恐怖”では無く
この世界が“俺の死に依って迎える可能性”の中で
最も高い物への恐怖を感じて居た――>
………
……
…
「あ、あの……俺、エリシアさんにもロベルタさんにも
大切な人達に対して迷惑を掛け通しですし、そもそも
俺の生き方は長生き出来る様な物じゃ無いと思うんです……でも。
……俺の命が、この世界に於ける
一つの“維持装置”みたいな形に成ってるって話を聞いた事がある以上
この世界の為にも、俺は……仮にどれ程辛い日常を送る事に成ったとしても
一日でも長く生きなければ成らないんです。
だから……もし俺が“長く無い”と仮定して
それでも何らかの方法があるのなら
俺の命を延命する為……呪いでも何でも構いません。
エリシアさんや皆が少しでも楽しい人生を送る為の……」
<――そう言い掛けた瞬間
エリシアさんは俺の頬を思い切りビンタした――>
「ッ!? な、何を……」
<――直後
そう問い掛けた俺に対し――>
………
……
…
「……馬鹿な事言わないでッ!!!
主人公っちの苦しみの上にしか成り立たない様な世界なら
そんな世界、今直ぐにでも滅びれば良いんだッ!!
良い? ……何か有ると直ぐにマイナスに陥っちゃう
主人公っちの癖は良く知ってるし、それが優しさ故だとも分かってる!!
でも……もう二度とそんな悲しい事言わないでッ!!!
……お願い」
<――直後
エリシアさんの頬を伝った大粒の涙に
何一つとして適切な言葉を返せなかった俺は
唯、静かに頭を下げ――>
「その……すみませんでした」
<――そう、謝る事しか出来なかった。
だが、そんな中――>
………
……
…
「本当……心配性過ぎる所が貴方の唯一の悪い所かも知れないわね。
まぁ、貴方をこんな状況に陥らせた張本人が
言うべき言葉では無いかも知れないけど……大丈夫。
貴方は、貴方が思ってる程“早死”はしないから」
<――そう言い切り、俺の背中を軽く擦ったロベルタさん。
直後、詳しい話を聞こうとした俺に対し
彼女は少し意地悪げに微笑みながら――>
「それに……私だけじゃ無く
エリシアさんの事まで“襲おう”とする余裕がある位だもの。
それだけ“元気”なら大丈夫よ♪ ……だから安心して♪ 」
<――と、エリシアさんの神経を逆撫でする様な発言で
これ以上無い程に俺を慌てさせたのだった――>
「な゛ッ?! だから今のは不可抗力で!! ……って、エリシアさん!!
お、俺は何も言ってないですからねッ!?
今のは完全にロベルタさんが! ……」
<――この瞬間
明らかに“醸し出す雰囲気が変わった”エリシアさんの様子に
慌てて自己防衛の如くそう言い掛けた俺に対し
エリシアさんは――>
………
……
…
「……取り敢えず、少なくとも後数日はこのまま此処に居て
間違っても主人公っちが“早死する”とかって話では無いからさ……
……それと。
私を含め……皆、主人公っちの一日も早い快方を望んでるって事だけは
何があっても絶対に忘れないで。
今、主人公っちがどれだけ歯痒い思いをして居るかは
これでもちゃんと理解してるから……だから、危ない行動は避けてね。
いつも周りを優先し続け、無理し過ぎちゃう主人公っちに対する
“強制的な休暇”とでも思って、お願いだからちゃんと骨休めしてて。
じゃあ……またね」
<――そう言うと
俺の返事も待たず無詠唱転移で何処かへと去って行ったのだった。
そして、この直後……去り際のエリシアさんから感じた妙な雰囲気に
僅かながら違和感を感じて居た俺に対し――>
………
……
…
「さてと……エリシアさんは帰っちゃった事だし
さっきの“続き”……シない? 」
<――妖艶に微笑みながらそう言ったロベルタさん。
そして……この直後
言うまでも無く“大慌て”した俺の様子を満足気に見つめ――>
「ふふっ♪ ……一体“何”を想像したのかしら?
私が言ったのは、さっきの“お話の続き”のつもりだったのだけれど? ……」
<――そう言って俺をからかった。
だが……そんな茶化した様なロベルタさんの発言が
俺には何処か“何も考えさせない為の行動”に思えて――>
「あの……俺のマイナスな考えの所為で
ロベルタさんにもエリシアさんにも不安を感じさせたのは謝ります。
だけど、何かを隠しているかの様なお二人の態度は
どれだけ明るく振る舞って居ても、確実に“違和感”として伝わりますし……」
<――この瞬間
彼女が隠しているであろう“何か”を聞き出す為
そう言い掛けた俺に対し――>
「ねぇ、主人公さん? ……私、貴方の最も格好良い所は
最も重要な時に、誰もが驚く冴えた発言や行動をする所だと思って居るの。
けれど……それでも、今日の貴方は少しばかり“踏み込み過ぎ”てるわ? 」
<――僅かに不満げな様子でそう言った。
そして――>
「もし、最愛の貴方に対して私が言わない様にしている事があるとするなら
それは貴方に知って欲しくない私の“行動”だけ。
……本来の私らしくも無い
本来の私なら恥すら感じるだろうその“行動”だけは
貴方に知られたくも無いし、その行動に同情も心配もされたく無いの。
もし、その事以外に貴方が知りたい事があって
私に話せてない事があると言うのなら、それにはちゃんと答えてあげるから
これ以上、変な“探り”を入れるのは止めて貰えないかしら? 」
<――そう言って、頑とした意思と共に
この瞬間、俺が最も聞きたかった事の一つに蓋をした。
……淫魔館で目覚める事と成った少し前、モナークが口にした
“お前の所為”と言ったに等しいロベルタさんの状況。
そう成ってしまった“本当の理由”を恥と捉えて居た彼女は
この後も決してその事を語ろうとはしなかった。
“四箇所目”の所為で現在も客足が遠のいたままの淫魔館……其処を仕事場とし
根城としている多数の淫魔族達がこうして居る今も無事な理由を。
この後、彼女が答えてくれた事は――
“俺が眠って居た間、何一つとして危機は訪れていない事”
“あれから四箇所目に目立った動きは無い事”
“相変わらず、他国との貿易は鈍化している事”
――と言う
安心と不安が入り混じった様な情報だけだった――>
………
……
…
「……そう、ですか。
それで、その……“その所為で”と言えば良くない聞き方にはなりますけど
食料的な面で不足があったりとか、手に入らない何かがあったりとか
不足や不便とかは……」
<――この瞬間、自らの頭の中にある
“最悪な答え”が帰ってこない事を祈りつつそう訊ねた俺に対し
ロベルタさんは僅かに困った様な表情を浮かべ――>
「……ねぇ、主人公さん。
この国で起こる全ての事象について
貴方が常日頃から心配している事は私も良く知ってるし
その気持ちも少しは分かって居るつもりよ? ……でも。
つい先程、エリシアさんに言われたばかりでしょ?
“少なくとも後数日は、此処で骨休めしてて”……って。
無論“ベッドから出る事さえ禁止”されている現状で、魔導通信は勿論
周囲の状況を何一つとして確認出来ないのは歯痒いでしょうけれど
後数日だけで良いから……お願い。
それとも……貴方が悩む度に“私の体を弱らせてしまう”としても
貴方はそうやって心配事に頭を悩ませ続けてしまうのかしら? 」
<――と
“そんな訳無いじゃないですか!! ”
以外の言葉が返せない様な、不安を残す逆質問で俺の問いを濁したのだった。
この後……これ以上何かを訊ねられない状況に陥った俺は
二人の忠告通り、無理にでも“何も考えないで居る”事を決めた。
だが――>
………
……
…
「それにしても美味しそうに食べるものね……素敵よ♪ 」
「へっ?! い、いやその実際美味しいですし! ……って。
そ、その……ロベルタさんはお食べに成らないんですか? 」
「ええ、だって私は淫魔族だから……“意味が無い”もの」
「あっ……すっ、すみませんでしたッ!! 」
「大丈夫よ、気にしないで……悪く受け取っては居ないから。
それよりも……貴方が食べる姿、もっと見せて♪ 」
「へっ?! は、はい……」
<――この後
少なくとも、食材を“経口摂取”する事がまるで意味を為さない
彼女から“熱い視線”を浴びつつ
彼女の真横で摂る事と成った何とも気恥ずかしい食事と
その際に言われた――>
「あぁ……そうそう。
貴方が意識を失って居た七日の間……貴方の体が空腹でおかしくならない様に
少なくとも、貴方よりは早く目覚めて居た私が
意識の無い貴方に“口移し”で食事を摂らせて居た事だけど……
……貴方は覚えて居るかしら? 」
<――と言うとんでも無い“冗談”は
食事中の俺をこれ以上無い程に慌てさせたのだった――>
「いやいやいやッ!! ……お、俺には意識が無いんですから
どれ程噛み砕いて貰ってたとしても飲み込めないでしょうし
そもそも! 意識が無い人間に経口摂取は……って……うぐッ?!
の、喉に詰まったッ! グエッ!! ……」
「あら大変……私が“吸い出して”あげましょうか? 」
「な゛ッ!? ……ゲホゲホッ!! うぐッ?!
ば、馬鹿な事言ってないで……み、水を……」
………
……
…
<――ともあれ、翌日。
七日の間意識不明だった俺が“不衛生”に成らない様
長期入院中の重病者と違わず、数日置きに俺の体を
“清拭”してくれて居た事を話題に出したロベルタさんは――>
「あぁ、そうそう……貴方って、意識が無い時でさえも気を張ってるのね?
何が、とは言わないけれど……とても逞しかったわよ♪ 」
<――と言う、最早冗談かどうかさえも分からない“何か”を語りつつ
その“実演”とばかりに、お世話係の淫魔に
清拭用の蒸しタオルを用意させると――>
「うわぁっ?! ……って、ななな何するんですかッ?!! 」
「何って……貴方では届かない所を拭いてあげようかと思っただけじゃない」
「だ、だとしたら何でそんなく“すぐったい”様な触り方をッ!!
……って、ひゃぁッ?! 」
「あら……眠って居た時は“なすがまま”だったんだし
今更そんなに“体裁を整え”なくても良いのよ? 」
「な゛ッ?! ……いやいやいやッ!
そんな“含み”の有る言い方をされても俺は覚えて無いですし!
そもそも、意識が無い時の事なんて何を言われても……って。
……ひゃぁぁぁんッ?!
そそそッ……其処は自分で拭けますからッ!! 」
<――と、この日も
そもそも“休ませる気があるのか”さえ謎な行動を取り続けたロベルタさん。
反面……そんな“悪戯心満載”な彼女の楽しそうな姿は
俺の中にある不安や恐れ、焦りなどの負の感情を
少なからず薄めても居てくれて――>
………
……
…
「ひゃぁッ?! ……って、この所毎日言ってますけど
流石に……“前”は自分で拭けますからッ!!! 」
<――数日後
“清拭時のお約束”の如く手を滑り込ませるロベルタさんに
軽い恐怖を感じ始めて居た俺は、そんなツッコミを入れつつも――>
「と言うかその……ロベルタさんだって病み上がりなのに
俺の看病をしてくれてたって事には感謝してますし
その……“食事”にしろ“清拭”にしろ、俺の為に頑張り過ぎて
もしもロベルタさんが体調を崩してしまったら元も子も無いですし
色々と有り難いとは思っていますが……」
<――彼女が無理をしていないかが気になり
そう訊ねた――>
「……やっぱり、主人公さんって素敵なヒトね。
愛してるわ……んっ♪ 」
「のわぁッ!? ……ひ、人が話してる時になんでキスするんですかッ?! 」
「良いじゃない♪ ……別に“唇を奪った”訳じゃないんだし
そもそも“頬にキス”なんて私達に取っては挨拶みたいな物なのよ? 」
「そ、そうなんですか……って、そう言う事では無くてッ!! 」
「もう……貴方だって病み上がりなんだからそんなに興奮しちゃダメよ?
そんな事より……私の事も、拭いてくれないかしら? 」
「い゛ぃッ!? ……いやいやいやッッ!!
そ、それだけは絶対駄目ですからッ!! ……」
「あら……自分だけ清潔に成って、私には不潔で居ろって言うの?
酷いヒトね……私は唯、貴方の為に綺麗で居ようとしていただけなのに……」
「ちょッ?! ……わ、分かりましたッ! 分かりましたからッ!!
でも“背中側”だけですからねッ!? ……」
「ふふっ♪ ……“手が滑って”も良いのよ? 」
「な゛ッ?! ……す、滑りませんッ!! 」
<――ともあれ。
恐らく、転生前の俺ならば“泣いて喜んで居た”だろう状況の中
この後も、騒がしい“骨休め”に身を置く事と成った俺は
エリシアさんとロベルタさんの二人から言われ
自らも少なからず感じて居た“疲労”とは違う体の異変を取り去る為
出来る限り、肉体と精神を休める事を優先し続けた。
……頻繁に様子を窺いに来てくれる仲間達や
大切な人達の少しばかり“疲れた顔”に不安を感じつつも
それでも、治す為の努力を――>
………
……
…
「……だぁぁぁもうッ!
毎日毎日ッ! ……“興奮するな”って言うんなら
興奮させる様な行動を少しは謹んで下さいよロベルタさんッ!! 」
「あら、それは私で“興奮”してくれてたって事かしら? ……嬉しい♪ 」
「な゛ッ?! ……だからッ!! 」
………
……
…
《――この日より数日
騒がしくも優しさに包まれた療養の日々を過ごす事と成った主人公。
一方……彼の身を案じ
そして、彼の仲間から“監視”を任されて居たエリシアは
研究機関所長“メアリ”と、その夫“マグニ”……そして。
彼女らの護衛の為招集された“特別配備隊”の隊員らと共に
新たな蟲発生地域である、通称“四箇所目”の調査へと訪れて居た――》
………
……
…
「やはり……あの日以降“新種”は一度も現れていない様ですね。
無論、現れないに越した事は無いのですが……」
《――周囲の環境を検べつつそう言ったメアリ。
そんな彼女に対し、エリシアは――》
「そうだね……でも、主人公っちが万全では無い今
あれだけの被害を出した新種がもし“再訪”したら
対処法さえまだ分かってない上に“箱”だって使えないんだし
“特別配備隊”は勿論、私達だって無事では済まないかも知れない……寧ろ
この周囲を検べる間だけでも奴らが出てこない事を祈るべきだよ」
《――活路の見えぬ状況の中
その歯痒さが故と思しき態度を以てそう言った。
だが――》
「エリシアよ……状況が状況だ、気が急くのは理解するが
此処でどれ程言い争おうとも解決策が生まれる事など無い筈……
……今は唯、解決の糸口を見つけ出さねばならん。
其れが例え“今日見つかる事は無い”と知って居たとしてもだ……」
《――この瞬間
彼女を窘める様にそう言ったマグニに――》
「そんな事は分かってるけど! ……って、ごめん。
もうちょっと範囲を広げて検べてみるよ……」
《――そう、反省した様子で返すと
二人の元から僅かに離れたエリシア。
……この後、周囲の土壌に何らかの残留物が無いか
入念に検べ始めた彼女は、独り言の様に――》
………
……
…
「やっぱり変だ……幾ら主人公っちの力が凄まじかったとしても
あれだけの被害を出しておきながら、何一つ残留物が無いなんてありえない。
絶対に何かが可怪しい……この状況は余りにも異質過ぎる」
《――そう言った。
そして……この直後、一人離れた彼女を護衛する為
聞くとは無く、そんな独り言を聞いてしまった“シェリー隊員”から
違和感の理由を問われた彼女は――》
「……初めこそ、蟲の生態は謎に包まれてたけど
護傘同盟を始めとする協力者達のお陰で
少しずつその謎は明らかに成って行って、対処法も分かり始めた。
その事は最前線で戦ってる特別配備隊なら良く知ってると思うけど
今回の“新種”は……“背中の武器”以外、既存の蟲共と大差無い見た目なのに
能力値は勿論、その全てが明らかに“常軌を逸してる”の。
……研究を進める内、討伐から暫くすると
“全て跡形も無く消え去る”と思われてたこれまでの蟲からは
どんなに完全な形で倒しても“其処に居た証拠”みたいな
言わば“断片的”な情報が手に入ると分かった。
だから、此処にも“既存種”の情報は嫌と言う程転がってるの
なのに……今回の“新種”は、まるで其処に居なかったかの様に
“断片”どころか、塵の一つさえ残してない。
そもそも“蟲deバックバク改”で不明個体として表示されたのに
その詳細を検べることすら出来ないなんて、絶対に可怪しいし――」
《――誰の目にも明らかな不安を以てそう言い掛け
そして――》
「――って、ごめん! こんなの唯の愚痴だよね。
本来、私達が検べを進めて状況を解決しなきゃ駄目なのに
逆に不安にさせる様な事ばかり言っちゃって……」
「い、いえ! 私が要らぬ詮索をしたのが悪いのであって! ……」
《――暫くの後
新たな情報が見つかる事も無く
皆一様に肩を落とし帰宅の途についたこの日。
……帰還後、解決の兆しさえ見えない状況に
頭を抱えて居たエリシアは、一人ベッドの中で
“新種”に関する物だけでは無い、ある“違和感”を口にして居た――》
………
……
…
「絶対に可怪しい……一つ問題が解決する度に
狙った様にもっと対処の難しい存在が現れて
平和を維持しようとする私達の生活を次々に脅かしては奪おうとする。
主人公っちから聞いた“他の転生者”って奴らだってそうだ……
……何処からか現れては、何らかの問題を起こしてる。
あの勇者様だってそうだ……本人に悪気は無かったけど
それでも、彼奴の所為で主人公っちに負担が増えて……ッ!!
……何時もだ。
何時だって私の大切な人達は、苦しい環境に追い込まれて……
…… 師匠、ヴィオレッタ……
私……もう二度と
二人みたいな存在を失いたく無いよ……」
《――この日
彼女の心を支配して居た、あまりにも大き過ぎる恐怖と言う感情……
その“失いたく無い”と言う彼女の恐れは……彼女の体は勿論
精神さえも休ませはしなかった。
だが……幸か不幸か、この瞬間
独り耐え難い恐怖の中に在った彼女の発した言葉の中には
限り無く“正解”に近い“違和感”が紛れて居た――》
………
……
…
「何だ? ……まだ生き残って居たのかこの世界は。
全く……“しぶとい”にも程があるよ。
そもそも、あんなにも“行き当たりばったり”な転生者の世界が
最終選考近くまで生き残るなんてね……全く。
強運の持ち主と言うべきか、それとも只の“たまたま”か。
……まぁ、何れであれ
あれだけ“特別扱い”をしてやった駒でさえ
結局、自らの矮小な我欲に支配され
半端な結果に終わり、他の“強制転生者達”にしても
“鍵”に掠りすらしない程の体たらく……全く。
一体何故、管理は勿論
監視さえも面倒な世界ばかりが生き残ってしまうのか……
……最終選考に残った奴らは揃いも揃って
どれも役立たずか我欲に支配されたバカばかり。
何故、父はこれほどまでに不完全な存在達に
“可能性”を見出したのか……全く。
……酷く理解に苦しむ愚行だよ」
《――眩い光に包まれた空間。
目まぐるしく移り変わる数多の画面の表示を眺めつつ
そう、苛立ちを口にした存在――
“上級管理者”
――彼は、眼前に映し出された数多の世界を監視しつつ
“父”と呼んだ者への不満と共に、眼前の制御盤を操作して居た――》
===第二二一話・終===




