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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第六章

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第二一四話「全てに訪れる変化は楽勝ですか? 」

<――某日


政令国家での平和な日常。


……魔族種を始めとする多種族が入り乱れ

それぞれがそれぞれの日々を生きる中で、仲良くしたり助け合ったりと

過去、俺の目指して居た世界の実現に少しだけ近付いた様なその“日常”は

今日も今日とて変わらず、俺と俺の大切な存在達を包んで居た――>


………


……



「……以上の理由から、(いず)れの国に()きましても

復興は想定を遥かに上回る速度で行われて居る様です。


ただ、恐れながら……現時点に()ける問題と致しまして

やはり“星之光(スターライト)”の存在が、良くも悪くも

外交に多大な影響を及ぼしていると言うのが実情でございまして

そちらの件に関しては、私の赴任先である“チナル”でも

同様の声がちらほらと……」


<――言葉を(にご)さず言えば


“俺の存在が外交に影響を及ぼして居る”……と言うべきだろうか?


この日、何時(いつ)もの様に執務室で開かれて居た大臣会議で

過剰な程に顔色を(うかが)いつつ発せられた

“在チナル政令国家大使”からの報告。


この直後、大使(かれ)は俺の機嫌を取る様な前置きをしつつ――>


「そ、その……お伝えするべきタイミングを悩んで居たのですが

やはり……現在、主人公様は世界で唯一(ゆいいつ)の存在でありますから

“お近付きに成りたい”と考える国も多い様でして

その、チナルの長で()るヘルガ様から――


“主人公に取り次げ取り次げって(うるせ)(やつら)が多過ぎて

面倒臭くて仕方(しかた)()ぇって伝えてくれ! ”


――と、見方に()れば苦情に聞こえなくも無い様な

“ご意見”を頂いた次第でして……」


<――取って付けた様な褒め言葉の後

(ひたい)に流れる冷や汗をハンカチで(ぬぐ)いながら

間違い無く“苦情と呼ぶべき”報告をしたのだった――>


「あ、あの……お気遣い無く!

ある程度予想はついていましたし、理由はどうあれ

平和が訪れた事は喜ばしい話ですから! ……」


<――この瞬間、事を荒立てまいとそう返した俺の返答に

安堵(あんど)の表情を浮かべ、深く息を()いた大使……直後

執務室に如何(いかん)ともし(がた)い重苦しい空気が流れ――>


「あ、あの……俺は別に何も気にしてませんから!

それより、他に何か報告とか嬉しい出来事とかは……」


<――この後、同席して居た他の在外大使や外交官達までもが

この後の報告を躊躇(ちゅうちょ)する中、そう必死に

空気を変えようとした俺の努力は、余り意味を成してはくれなかった――>


「そ、その何も無ければ無理にとは言いませんから……」


………


……



<――あの日

晩飯を遥かに超え“深夜飯”と言うべき時刻に帰還した俺達。


一方、そんな俺達の帰りを寝ずに待って居てくれたミリアさんは

大慌てで脱出し、ヴェルツの店内に直行した所為で

店内を“土埃(つちぼこり)だらけにした”事にも一切文句を言わず

俺達にとんでも無く豪勢な食事と、お風呂の準備をしてくれた。


そして――


“皆、無事で帰って来てくれてありがとうねぇ”


――そう言って、涙に濡れた目尻を(ぬぐ)いながら

俺達の帰還を心から喜んでくれたのだった。


あの日、皆で食べた“晩飯と言う名の深夜飯”は

これまでのどの時よりも美味しくて、釈然(しゃくぜん)としない俺達の心に

一時(ひととき)の安らぎを与えてくれた……だが。


……あの日の安らぎを最後に、俺達を包む環境は目まぐるしく変化した。


全世界で発生し、各地に甚大な被害を(もたら)し……そして

全世界から忽然(こつぜん)とその姿を消した“謎の魔物達”……


……所謂(いわゆる)“悪鬼系魔物”に()って失われた数多くの命と

その所為で大きく変わった世界の勢力図。


錯綜(さくそう)する情報の中、世界は皮肉にも“敵国との協力”を選んだ――


“生き残る”


――最も単純であり、最も重要なそれを実現する為

全ての“クソプライド”を投げ捨て、互いに手を取り合う事を選んだのだ。


あの日を(さかい)に、国同士の戦争は激減し

ある国は食料の為、またある国は材料の為

何れの国も、ありと(あら)ゆる生存に必要な物の為……


……奪い合う余裕すら無くなった国同士は

目の前の“生存”と言う困難の為……それが(たと)

一時(ひととき)の関係”だとしても、必死に手を取り合った。


そうして手を取り合い、協力する内……少しでも生存確率を上げる為か

ありと(あら)ゆる情報を探し始めた各国は

“大災害級”と呼ぶべきこの状況から早々の復興を成し()げた国を

模範事例(モデルケース)”と位置付け、その国を模倣(もほう)する

()しくは……“取り入る”事を考えた。


……そう。


“日之本皇国”を含めた、悪鬼系魔物の襲来が一切見られなかった

“海を超えた国々”の様な特殊事例(レアケース)を除き

被害に()った国の中では、最も復興の早かった国として

政令国家を“模範事例(モデルケース)”と位置付け、取り入る事を考えたのだ。


言うまでも無く……其処(そこ)からは加速度的に“ラブコール”が押し寄せた。


明らかに政令国家(こちら)を利用する事しか考えていない国や

星之光(スターライト)の力を過大評価し、(さなが)

“無限に湧き出る(いずみ)”や“油田(ゆでん)”かの様に考えた国々は

それまでの敵対関係など忘れたかの様に、恥も外聞(がいぶん)も無く

厚顔無恥(こうがんむち)とでも言うべき態度で取り入ろうとし始めたのだ。


だが、そんな中……何よりも心苦しかったのは

(ただ)生き残る為、難民として押し寄せた人々の存在だった。


とは言え、(ほとん)どは多くの利己的な多くの国々と同じく――


“大国の庇護(ひご)下に入り大きな顔をする為”


――と(おぼ)しき者達だったが

その中には生きる事への必死さを感じさせる者達も確かに居た。


だが……彼らを受け入れる事は出来なかった。


彼らの本心がどうであれ、一人でも受け入れれば

その噂は“情報”となり、より多くの“難民”を呼び寄せてしまう。


何よりも、これ程多くの民を受け入れるだけの余裕が

今の政令国家には無かったのだ。


……(いく)ら復興が早かったとは言え、傷の癒える(ひま)すら与えられず

領土外に押し寄せた“元敵国人”である難民達への対応を迫られ

更には、その余りにも膨大な数に怯える国民を落ち着かせる為

再編成中にも関わらず、万が一を考え警備を強化せざるを得ない

魔導大隊を始めとする兵士達の慢性(まんせい)的な休息不足……


……そんな現場の切実な報告を受け取った俺達大臣が対策を取ろうにも

やるべき事は余りにも多く、そもそもの“原因”である俺は

第ニ城地域(げんば)に近付く事さえ(はばか)られ、思う様に動けないで居た。


解決の糸口すら見えないこの状況に、兵も民も大臣も

皆、疲弊(ひへい)して居た――>


………


……



「……大変、申し訳ありませんでしたッ!! 」


「は、はぃッ?! ……いやいやいや!

俺の方こそ報告し辛い雰囲気を出してたのかも知れないですし!

そもそも気分が悪いとか、そんなのは本当に一切無いですから! ……」


<――“大災害”の収束を(さかい)

既に友好国と成って居た(いく)つかの国に新設された“大使館”の一つ

“在チナル政令国家大使館”から報告の為、政令国家へと一時帰還した大使(かれ)

如何(いかん)ともし(がた)い空気の中、冷や汗を流し

加速度的に(ひど)くなる執務室の雰囲気が

まるで自分の所為だとばかりに頭を下げ続けて居た――>


「あ、あの……皆様も本当にお気遣い無く!

俺に関する苦情とかがあるなら忌憚(きたん)無く(おっしゃ)って下さい!

受け止めるべきは受け止めますし、そもそも

皆様は報告の為に一時帰国なさって居るんですし! ……」


<――俺達が今、最も取り組むべきは“本当の意味での”復興だ。


外から見れば平和に思える政令国家での“日常”に

本当の意味での安らぎを(もたら)さなければ成らない。


……あの日、急激に解決した(ライドウ)の一件とは裏腹に

(いま)だ解決したとは言い(がた)い数多くの問題。


あれから毎日の様に、届いて居るのかさえ分からない

ヴィンセントさんへの祈りを欠かさず居るエリシアさんの

釈然(しゃくぜん)としない胸の内と……同日

アルバートに対し永久の別れを告げた二人(ローズマリー・ペニー)

誰の目にも明らかな悲しみの感情。


そして……それら全ての原因であり、元凶と言うべき(ライドウ)が残した

幾つかの大きな謎――


“力を持つ者との取引”


“世界の崩壊を命じられた”


――冥府(めいふ)へと連行される直前

苦し紛れに何かを言い掛けた(ライドウ)から声を奪った冥王(めいおう)

あの“あからさまな行動”も釈然(しゃくぜん)としない。


まるで、誰かを(かば)う為かの様にありありと

“一切の追及を許さない”……そう言ったに等しいあの態度は

俺の胸の奥に大きなモヤモヤを残した。


だが、その反面……冥王(ヤツ)の口振りからは

(かす)かに“迷惑”と言うべき感情が見え隠れして居た様にも思えた。


一体、冥王(ヤツ)は何を(かば)ったのだろうか――>


………


……



「……二人共少し落ち着かんかッ!!

兎に角ッ! ……報告書に記載されておる通り

他国の動きに大きな変化は無いと言う事で良いんじゃなッ?! 」


「ハ、ハイッ! ……そ、相違(そうい)ございませんッ! 」


「ふむ……ならばこれ以上話すべき事も無いじゃろう。


本日の会議を閉会とする……全員解散ッ! 」


<――直後、(まと)まらない俺の考えを断ち切るかの(ごと)

怒号にも似た形で発せられたラウドさんの閉会宣言に()

急激に閉会と成った会議。


……それが気遣いだと知りつつも

其処(そこ)に触れさせぬ様振る舞うラウドさんの優しさに

何一つとして御礼さえ言えなかった俺は……この後。


あの日を(さかい)に俺への“好奇(こうき)の目”を避ける為

一般客の宿泊を全て断り始めたミリアさんの待つ、実質“貸し切り”な

ヴェルツ本店二階の自室へと戻った――>


………


……



「本当の意味で俺が目指して居た“平和”って……こう言う事なのかな」


<――帰宅後、独り言の様に口をついて出た言葉。


厄災(やくさい)にも(ひと)しい敵を倒し……いや、(ただ)追い詰めただけか。


(いず)れであれ、余りにも都合良く()られた平和は

俺が思い浮かべて居た綺羅(きら)びやかな姿とは明らかに違って居た。


異世界転生って……楽じゃない。


“カンスト”してたら楽勝? ……それも違う。


実際は不必要に注目を浴びるだけだし、その所為で

助けが必要な筈の所に近付く事さえ難しくなった。


……何かを(まも)る為、間違いと思える何かを改善する為に動く度

余りにも過ぎた力の所為で、大切な皆に迷惑を掛けてしまうから。


俺達を包む環境は……本当に、目まぐるしく変化した。


それは、逃げ出したくなる程に恐ろしく――>


………


……



「失礼致します、主人公様はご在宅でしょうか? 」


「ん? ……あ、はいッ! 今開けますのでッ! 」


<――だがそれでも

逃げ出す事は出来ないし、したくない。


……この後、俺の部屋を訪ねて来た“特別配備隊”の女性隊員に

慌てて応対する事と成った俺は――


“護傘同盟共同出資の(バグ)研究機関から新たな報告と

それに()る確認事項があるとの事ですので、ご出席を”


――そう(うなが)され

彼女の案内に()って研究機関へと向かう事と成った。


の、だが――>


………


……



「……お~来た来たっ! 待ってたよ~主人公っち♪ 」


「お、お待たせしてすみませ……って、妙に上機嫌ですけど

何か良い事でもあったんですか? エリシアさん」


「“妙に上機嫌”って言い方は引っ掛かるけど……正解っ!

今日、主人公っちをこの研究機関に(まね)いたのはねぇ~っ!

三国での共同研究が、(つい)に……(つい)にッ!

実を結んだからなのだ~っ♪ ……えっへんッ! 」


「“実を結んだ”って……何か完成したんですか? 」


<――そう(たず)ねた瞬間

俺は……この所、お世辞にも明るいとは言えなかったエリシアさんから

超絶ハイテンションな“成果報告”を聞かされる事と成った――>


「ふっふっふ~っ♪ ……まぁまぁ落ち着いて落ち着いてぇ~っ♪

()ずは今正式採用中の

(バグ)deバックバク改”について説明するからねぇ~っ♪


試作機(プロトタイプ)”の時には位置と匹数しか分からなかったんだけど

研究を続ける内に、各個体の差異(さい)を判別出来る様に成って

取るべき対策も明確(めいかく)に成って

“特別配備隊”の負担も大幅に減らせたし

研究用に捕獲する事も前程難しくは……って。


……この事は主人公っちも知ってたっけ? 」


「ええ、その件はこの間の報告で……それでその

“実を結んだ”って言う話にそれがどう関係するんです? 」


「おぉ~っ♪ 良くぞ(たず)ねてくれました主人公っち♪

此処(ここ)からが、政令国家一の美人攻撃術師(マジシャン)エリシアさんと

研究機関の皆が日夜、汗と涙と“色んな物”を流しながら

必死に開発を続けた研究の成果なのだよ~っ♪


さぁ皆っ! ……いよいよお披露目だよぉ~っ! 」


<――この瞬間

背後に並んだ研究者達に向け合図を送ったエリシアさん。


直後、研究者達は大きな箱状の何かに掛けられて居た布を勢い良く引き

隠されていた“それ”を(あらわ)にした。


の、だが――>


………


……



「な、何ですか? この変哲(へんてつ)の無い“箱”は……」


<――この瞬間、俺の眼前に現れた透明なその“箱”は

エリシアさんの(あお)り言葉とは裏腹に、(ひど)く地味な見た目をして居た。


だが……この直後、俺の失礼な問いに

何故かニヤリと笑みを浮かべたエリシアさんは――>


「主人公っち……見た目を“地味”と(とら)えてくれてありがとう。


正直、出来る限り目立たない形にする事を重要な目標にしてたから

主人公っちの評価はこれ以上無い程の褒め言葉なのだよ~っ♪


……まぁ、とは言え

“ガワ”だけ見せて終わりにするのもつまんないから

軽~く、機能の説明をするね~っ♪ ……っと、その前に!


()ずは、現在“護傘(マモリガサ)同盟”として協力関係にある国の内

日之本皇国から訪れた“賓客(ひんきゃく)”であり、北地域の長である“(ベニ)”さんが

あの日、私達の前で見せてくれた“技”を思い出して貰えるかな~っ? ……」


<――そうエリシアさんが口にした技


魅惑之檻(エンチャンテッドケージ)


あの日、(バグ)達を容易(ようい)に引き寄せ

生きたままの捕獲を実現したこの技を思い出す様に言ったエリシアさんは

続けて――>


「……正直、私も“魅惑之檻(あれ)”を見た時は驚いたし

少なくとも攻撃術師(マジシャン)の技には同じ様な物が無かったから

“固有魔導かな? ”……とかって思ったりもしたけど

あの後、あの技の事を本人に(たず)ねる機会があってさ~……」


―――


――



「ねぇ、(ベニ)さんが使ったあの技って……何系の技なの? 」


「あの技? ……魅惑之檻(エンチャンテッドケージ)の事やったら魔導陣の一つやけど

習得するにはそれ相応(そうおう)の修練が必要やよ? 」


「まぁあれだけの能力ならそうだろうね……でも

習得が不可能……って訳でも無いんでしょ? 」


「エリシアさんって意外と頑固者やねんね? ……気に入ったわ。


ホントなら他人さんに……それも、他国の人間に教えたりはせぇへんのやけど

そもそも“例の同盟”の国の人やし……特別に教えてあげるわ♪ 」


「あ……ありがとうッ! 私頑張るよ! 」


「何言うてんの! ……あかんあかん!

そない肩に力入れてたら習得が遠のくよ?

何せ、この技を習得する為には“女の色気”を覚えなあかんのやから……」


「えっ? 」



――


―――


「お、女の色気? ……どう言う事ですか? 」


「あ~……えっと、主人公っち。


あの日、私も全く同じ反応したから安心して良いよ……」


<――“(いぶか)しむ”


思わず、そう表現するのが最も適切な表情を浮かべてしまって居た俺に対し

少しだけ辟易(へきえき)とした様子で当時を思い出しながらそう語ったエリシアさん。


この瞬間、研究所内に妙な静寂(せいじゃく)が訪れた事は兎も角として……この後

エリシアさんは――>


「……恐らくは主人公っちも分かってると思うけど

この箱には、(あらかじ)め“魅惑之檻(エンチャンテッドケージ)”が掛けてある。


けど……その程度の事なら、わざわざこんなに作るのが大変な

“箱”まで作る必要は無いでしょ?


……なのに、それでも作った理由は

この箱の真の能力が、そんなに“生易(なまやさ)しい”物じゃないから」


「……どんな力が隠されているんですか? 」


「この箱の真の能力は……魔導陣“魅惑之檻(エンチャンテッドケージ)”に()って引き寄せた(バグ)達を

この箱の内部で読み取り、個体別に適切な攻撃を与える事……そして

討伐後、消滅するまでの(わず)かな時間で

(バグ)から魔導力を始めとする使えそうな力を抜き取って

それを、箱の力を発動させる物として“再利用”する事……」


<――この瞬間

そう言って、箱へと視線を移したエリシアさんは――>


「……さてと。


この所、騒がしい“敵国人の集団”が()わる()わる居座ってる所為か

この所(バグ)の出現報告が連発してる“三”に向かうから

実際の能力は其処(そこ)で嫌と言う程確認して貰えるかな~っ? 」


<――そう言うと

恐らくは魅惑之檻(エンチャンテッドケージ)と同時に教わったのだろう“転移魔導陣”を(えが)

俺と研究者達を、通称“三”と呼ばれる(バグ)警戒地域へと転移させた。


そして――>


………


……



「おぉ~っ! 正常に稼働してるっぽいねぇ~♪ ……っと。


どう? 主人公っちを驚かせる為に完成までずっと秘密にしてた

(バグ)(バク)(ショック)”の凄まじいまでの力は♪ 」


<――木々や岩陰に隠す様に配置され

次々と発生する(バグ)達を誘引(ゆういん)しては“燃料”として(もち)

文字通り、また次の(バグ)を“()らう”と言う

凄まじいまでの“成果”を前に、エリシアさんは自信満々な様子でそう言った。


だが……当然と言うべきか

恒例(こうれい)”と言うべきか――>


………


……



「さ、流石(さすが)はエリシアさん……って褒め言葉では足りない位

凄まじいまでの成果です……俺がウジウジして居た間に

こんなにも凄まじい物を完成させて居たなんて……けど。


命名のセンスが……毎回、その……“凄い”ですよね」


「……どう言う意味かな? 」


「い、いやその……別に深い意味は無いんですけど……」


「そう? ……まぁ良いや!

兎に角、この装置のお陰で“特別配備隊”の負担は減らせたし

()いては、ハンター達やその家族……つまりは国民に至るまで

これで少しは安全に成ったって事だよ~ん♪


……ま、さっきも言った様に“例の集団”だけは頭の痛い問題だし

それに誘われて蟲達(やつら)も発生してる様な感じではあるんだけどね。


ま、それも(いず)れは解決策が見つかるだろうから

主人公っちも“ウジウジ”なんてせずに

何時(いつ)も通りのイジり甲斐ある主人公っちで居てよねぃ♪ 」


「いや、イジり甲斐って……でも、本当にありがとうございます

エリシアさんのお陰で……」


「待ったッ! ……私“だけ”のお陰じゃないよ?

護傘(マモリガサ)同盟は勿論、研究者の皆とか

協力してくれた沢山の人達のお陰でこの装置が完成したんだって事

ちゃんと理解してないと駄目だよ~っ? ……って、まぁ

主人公っちはその辺ちゃんと理解してるよねぇ~っ♪


んじゃ、取り敢えず~っ! ……そろそろ研究機関に帰ろっか~♪ 」


<――そう言って満面の笑みを浮かべたエリシアさんは

研究機関へと戻る為、再び転移魔導陣を(えが)き始めた。


……だが、この直後

突如として(もたら)された緊急通信に()って


事態は急変した――>


………


……



「……第二城地域外郭(がいかく)に“勇者”と名乗る者が現れ

“魔族は敵、滅ぼすべき敵なのだ! ”……そう騒ぎ立て

第二城地域の魔導障壁(しょうへき)へ向け攻撃を!


……ぐッ! 主人公様ッ! 至急応援をッ!!! 」


===第二一四話・終===

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