第二〇二話「死んでしまえば楽ですか? 」
《――主人公を殺め、その懐から裏技之書を奪い去り
煙の様に何処かへと消え去ったライドウ。
一方……辛うじて生かされ
取るに足らない存在と“捨て置かれた”に過ぎない主人公の仲間達は
既に息絶えた主人公の傍に寄り添う事しか出来ずに居た――》
………
……
…
「主人公……っち……駄目……っ……こんな終わり……絶対に……ッ!!
……魔導通信……モナークッ……助け……て……」
《――息も絶え絶えにそう呼び掛けたエリシア
だが、彼女の通信が繋がる事は無く……
……一行の出発前
主人公の約束した“一〇分”を過ぎたが故に試みられ
そして“失敗”した魔導通信に依り、漸く異常事態を知った政令国家陣営は
戦力の一角を担うアイヴィーと、その部下数名を現場に向かわせた。
だが、到着した彼女に出来た唯一の行動は
瀕死の状態に陥ったエリシアらと共に
主人公の亡骸を持ち帰る事だけだった――》
………
……
…
「何と言う事じゃ……」
《――大統領執務室
冷たくなった主人公の体を幾度と無く擦り
弱々しくそう言ったラウド大統領。
この後……それが手遅れだと知りつつも
幾度と無く主人公の亡骸へ向け
代わる代わる治癒魔導を施し続けた主人公の大切な者達……だが。
その想いが届く事は終ぞ無く……同時刻
魔導病院での治療を終えたエリシアは……深い絶望と怒り
そして、自身に繰り返される“悲運の流れ”に意を決し――》
………
……
…
「……私、もう一度使うよ。
それが、主人公っちを生き返らせる手段の唯一かも知れないのなら
たとえ命奪われたとしても“無作為之板”の力に頼るしか無いのなら……」
《――そう言って
主人公の亡骸と共に転移魔導を発動させようとした。
だが、この直後……そんな彼女の袖を掴み
“なら、私も行きます”
そう言ったメルを皮切りに――》
「えっと……主人公さんが死んだらこの世界は“崩壊する”らしいので
それを止める為にも……って、違いますね。
その……主人公さんとこんな形でお別れするのだけは嫌なので
せめて傍にいさせてください。
唯、私には魔導適性とか無いですし
そう言った意味では何の役に立たないんですけど……それでも。
私も……連れて行って下さい」
《――彼女の目を真っ直ぐに見つめそう言ったマリア。
そして――》
「……“魔族の血”の所為で
主人公の事を危うく殺し掛けちゃった過去のある私だけど
それでも、少しでも役に立ちたいの……だから、私の事も使って。
そもそも主人公が居ない世界とか何の未練も無いし
“崩壊”するならしてくれても構わないわ……けど
こんな状況で一人残されるのだけは嫌、だからお願い……」
《――深々と頭を下げ、そう言った後
主人公の亡骸に視線を移し一筋の涙を流したマリーン。
そして……何を語るでも無く、唯
主人公の亡骸を静かに抱き抱え
自らも同行の意思を示したグランガルド。
そんな彼らの姿に――》
………
……
…
「……分かった、皆で主人公っちの事助けよう。
じゃ無いと、たとえ彼奴を倒せても何も嬉しくないからさ……」
《――直後
静かに発動されたエリシアに依る転移魔導……だが。
“敵意の無い魔族達の集落”へと到着した彼女達を待って居たのは
燃え盛る集落の姿と、其処彼処に倒れた魔族達……そして。
その“元凶”たる男
“ライドウ”であった――》
………
……
…
「おやおやぁ~っ? ……何とは無く此処を訪れただけなのですが
まさか全員無事とは……って、違いますね。
その“無様な転生者以外は”
無事でお越しになるとは思っても見ませんでしたよ?
……まぁ、貴女達が生きて居ようが死んで居ようが
私は何方でも構わないのですが……しかし。
一体何故、こんな“思い出深い所”へお越しになったのです?
ねぇ? ……姉弟子様? 」
《――彼女達の決意を嘲笑うかの様にそう問うたライドウ。
だが、そんな嘲笑を受け流し――》
「……どうでも良い存在だと思ってるなら構わず何処かに行ったら?
“転生者”とか言うのを手当たり次第に消し去りたいんじゃ無かったの?
それとも、私達が生きてたら何か不安になる様な理由でもある訳? 」
《――そう言ったエリシア。
だがこの直後、そんな彼女に返された答えは――》
………
……
…
「……何を馬鹿な。
“害虫が居たら駆除する”のが普通でしょう?
と言うか……其処まで自惚れていたとは思いませんでしたよ。
私は只、この世界を崩壊させるにあたり
一切の痛みや苦しみを与えず崩壊させてしまうよりも、私が受けた苦痛を
爪の先程度でもお返ししてから崩壊させたいと思っただけに過ぎません。
全ては……私の能力や研究を頭ごなしに否定し
一切認めようとしなかった“ヴィンセント”やその弟子である貴女。
そして、私を認めたフリをして私の力を利用する事しか考えなかった
全ての者達に対する“反抗”であり“反逆”なのです。
……覚えて居るでしょう?
貴女よりも私の方が攻撃術師としての才能があった事を。
考えて下さい……“トライスター”の前では
どの職業も“それ以下”の存在でしか無い事を。
理解して下さい……そんな“トライスター”の
更に上位種である“星屑”と成った私が
この世界唯一絶対の支配者である事を!! ……そして。
姉弟子様……貴女は勿論の事
その“無様な転生者”も、その“取り巻き共”も
皆、私に対し少なからず不利益を齎した存在である事を――」
《――そう言った瞬間
抵抗する暇すら与えず皆を捕縛したライドウは――》
………
……
…
「――さてと。
“さっき素直に死んでいたらどれ程楽だったか”
……そう考えてしまう程の苦しみを皆様に差し上げると致しましょう。
少なくとも、この“呪具”はそれを可能にする程の苦痛を
貴方達に対し嫌と言う程に与えてくれる筈ですからねぇ?
どうぞご堪能を……先ずは、姉弟子様からどうぞ」
《――直後
エリシア皆の額に張り付けられた“呪具”は
ゆっくりと彼女の体に“根”を張り始めた。
そして――》
………
……
…
「ぐッ……がはッ……
あ゛か゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッッ!!! ……」
《――呪具に依って齎された“物理的痛み”では無い
“痛み”
この呪具の効果は、その者が恐怖する物や原因となる“記憶”……それらを
最も“受け入れ難い形で”与え続ける力を有して居て――》
………
……
…
「……やだ……やだよ……
師匠……主人公っち……皆……ッ……居なく……ならないで……ッ!!!
あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッッ!!! ……」
「おやおや……意外にも幼子の様に泣きじゃくるのですねぇ姉弟子様?
って……既に私の声は聞こえてませんでしたか」
《――発狂し、目を見開いたまま
止め処無く涙を流し続けるエリシアの姿を嘲笑うかの様にそう言うと
この直後……彼女の身を案じ
必死に声を掛け続けて居た者達の額にも“呪具”を張り付け――》
「……どうせ喚くのでしたら、苦しみに悶える声でお願いしますよ?
その方が、私にはとても愉快ですのでねぇ? 」
《――笑みを浮かべそう言った彼の眼前では
それぞれの“受け入れ難き苦しみ”に発狂し
苦しみ悶える者達の姿があった。
この後……この世界への転生者であり、制作者でもあり
“鍵”としての存在でもあった“主人公”を失ったこの世界は
厄災に等しき一人の男の手に依って
静かに、崩壊の一途を辿り始めた――》
………
……
…
「……それにしても、始めこそ愉快でしたが
ある程度経つと煩いだけですね……どうした物でしょう?
放って置いても全員死ぬとは言え、雑音を耳にし続けるのも癪ですし……
……少々苦しみが足りない様には思いますが
この辺りで全員殺してしまうのも一つの手でしょうかねぇ?
しかし……まさか、冥府之扉を開く為に必要な
“鬼之王”の錬成が間に合わない程、主人公が弱いとは思いも寄りませんでした。
とは言え……可能であるにせよ
このまま私の力だけで終わらせてしまっては
此処までの準備が全て無駄になってしまいますし……
……全く以て悩ましい限りですが
転生者を探し出すのにもそろそろ飽きて居た所ですし
此処はやはり、錬成に戻るべきかも知れませんねぇ――」
《――直後
この場から煙の様に消え去ったライドウは
仄暗いその場所で“狂鬼”を複製し続けた。
全ては、自らの野望が為……そして
この世界を“完全なる崩壊”へと導く為――》
………
……
…
「……増えなさい、続々と。
増えなさい、延々と……残る僅かな転生者の為とは言え
この世界に一層派手な終焉を齎す為、全ては冥府之扉を開く為……」
《――この後、ひたすらに自らの野望を叶えんと動き続けたライドウは
“冥府之扉”の解錠に必要な一三体の内、一〇体の錬成を完了した。
その、一方で……
……彼に依って貶められた
世界の絶望的な状況を唯見つめる事しか出来ず居た一人の男は
“ある場所”で涙ながらの“後悔”を口にして居た――》
………
……
…
「エリシア……僕がもっと早く君の助言に耳を傾けて居たなら
この様な事にはならなかっただろう。
……あの日、あの道を通らず
闇を抱えた少年を“救える”などと驕らず自惚れず……
……剰え、厄災に等しき行いをした彼に対し
“不完全な罰”を与えてさえいなければ
今の様な状況を招く事も無かったのだろう。
エリシア……主人公君……全ては僕の甘さが故だ……
本当に……すまない……」
《――“幽世”
霊魂の住まうその世界でそう後悔と懺悔を口にして居たのは
エリシアの師、ヴィンセントであった。
……彼は、決して届く事の無い謝罪を
尚も苦しみ藻掻き続けていた彼女らへと伝え続けた。
そして……幾度と無く天を仰いでは
彼女らを襲い続ける苦しみを消し去る様、ありと汎ゆる神へと祈り続けた。
だが、その願いが叶えられる事は無く……寧ろ
彼の眼に映る光景が一層惨たらしい物へと変化し始めていた頃――》
………
……
…
「目覚めよ……我が導きに従うのだ……」
《――闇の中
自らを成す姿すら形作れず
今にも消え去らんとする霊体に対し、そう告げた“声”……だが。
“霊体”は呼び掛けるその声から遠ざかる様に
ゆらゆらと“逃げ始め”――》
………
……
…
「待つのだ……歩むべき道を違えては成らぬ。
我が最後の導きを受け入れよ……」
《――逃げ惑う霊体に対し幾度と無くそう諭し続けた“声”
暫くの後、やがて逃げる事を止めた霊体……だがそれは
指示を“受け入れた”のでは無く
“逃げ切れぬ”と考えての行動だった様で――》
………
……
…
「お願いですから……もう、一人にして下さい。
俺には何も出来ないんですから……何の手立ても無い俺には……」
《――“霊体”は今にも消え入りそうなか細い声でそう言った。
だがそんな“霊体”に対し“声”は尚も――
“我が最後の導きを受け入れよ……”
――そう繰り返すばかりで“霊体”の願いを決して聞き入れる事は無く
“霊体”が逃げれば追い、立ち止まれば再び同じ“要求”を繰り返し続けた。
そうする内……やがて、この状況に嫌気が差した“霊体”は
“声”に対し――
“一体何を受け入れろって言うんですか!?
これ以上何の苦しみを味わえって言うんですかッ?! ”
――叫ぶ様にそう問うた。
この直後
“声”に依って齎された答えは――》
………
……
…
「……我が最後の導きを受け入れよ。
我は……御主を……御主が目指す“路”へと、正しく導かねば成らぬのだ……」
《――と言う、余りにも抽象的な物であった。
だが――》
………
……
…
「分かりました……もう、好きにして下さい。
どうせ、俺が何を言っても何を願っても何一つとして聞き入れてはくれない癖に
一方的にそうやって無理や負担を押し付けたいって言うのなら
好きに“導けば”良いじゃないですか。
俺の願いも希望も……もう既に、何もかも失われてしまったのに……」
《――この瞬間、半ば諦めた様に要求を受け入れた“霊体”
だが……この様な形であれ
要求を“受け入れた”と見做した“声”の主は――》
「……御主の望み通り、我が最後の導きを御主に授けよう。
我が力を以て、御主の魂を“幽世”へと導かん……
……全ては、御主の願う“正しさ”が為
御主が願う路の為――」
《――そう告げた直後
霊体を“閉じ込め続けていた”黒翼を広げると
天高く飛翔し――》
………
……
…
「――さらばだ、我が主よ。
御主が願う路を果たす為……我は三度導き
そして羽撃いた……主よ。
これが最後の別れだ――」
《――飛び去るその一瞬
漸くその全貌を現し、そう言った
“三ツ脚の鴉”
一方で……“霊体”は、その姿に謎の既視感を感じつつも
自らを“唯、適した場所へ運んだだけ”にも思える
この行動の意味を理解出来ず――》
………
……
…
「ちょ、ちょっと……待って下さいよッ!!
“願う道”がどうとか言って散々振り回して
散々勿体振った挙げ句、何で
“天国か地獄かすらも分からない場所”に連れて来たんですかッ?!
……ねぇッ!! 」
《――既に何処かへと消え去った“三ツ脚の鴉”へ向け
そう必死に訴え続けた……だが、霊体のその声が届く事は無く
唯一人、見下ろせば“現世”の見えるその“幽世”に取り残された霊体は
眼下に見える絶望的な世界の光景に、一層の不安定さを増し始めていた。
だが――》
………
……
…
「その声は……もしかして、主人公君なのかい? 」
《――突如として“霊体”の傍に現れ、そう声を掛けた者。
直後……怯える“霊体”に対し
少し慌てた様子で自己紹介をした“彼”は――》
………
……
…
「……ああっ!! 逃げないで! 怖がらないで!
驚かせてすまなかった……そう言えば
君は僕の“声しか”知らないんだったね……
……僕は、エリシアの師匠ヴィンセントだ。
君がまだ、その……“現世”に居た時、迷惑かとは思ったが
幾度と無く声を掛けて居た事は覚えているだろうか? ……」
《――そう、問い掛けた。
そしてこの直後、これを静かに肯定した“主人公”に対し――》
「……良かった! 覚えて居てくれたんだね!
それでその……僕の可愛い弟子であるエリシアと仲良くしてくれた君が
“現世”の中では群を抜いて“話し掛けやすい力”を持っていた事もあって
つい調子に乗って際限無く話し掛けてしまったんだ。
だが、その反面……何一つとして手助けになれず
剰え、可愛い弟子一人すら護れず……僕は、君にも
君の大切な仲間達にも、何一つとして救いを与える事が出来なかった。
その事を僕は……とても後悔しているんだ。
勿論“許して欲しい”とは言わないし、言うつもりも無い……だが
それでも一度謝らせて欲しい……本当にすまなかった」
《――そう言って頭を下げたヴィンセント。
この場に暫しの静寂が流れた後……尚も自らの姿を上手く形作れず
不安定さの中に居た“主人公”は――》
………
……
…
「……頭を上げて下さい。
ヴィンセントさんが謝る様な事では断じてありませんから……
全ては俺の力不足ですし、彼奴の力を見誤った結果
モナークやアイヴィーさんへの救援要請すら出せず
そう出来る内に皆の事を彼奴から遠ざける事すらせず
メルやマリーン、ガルドやエリシアさんは勿論……俺を信じて
安定して居た筈の地位を投げ捨ててまでこの世界について来てくれた
マリアまでもが……こうしている“今”も傷付き続けているのは
全て……俺の所為なんです。
“世界の鍵”である俺が死んだら
この世界が崩壊へと導かれるって事実を知って居ながら
それを阻止する手立てを何も用意出来て居なかった俺の……
……俺だけの、所為なんです。
でも結局、きっと……最初から無理だったんです。
俺みたいな――
“異世界転生して、最強な能力値だったら楽勝な異世界生活が出来るぜ!
――って考えてしまう様な甘過ぎる馬鹿な考えの持ち主では
彼奴は疎か、ちょっとでも異質な力を持ってる奴に遭遇したら
その度に、全てを奪われ壊されてしまうんだって事位
最初から気付いておくべきだったんです。
でも……もう良いんです。
父さんと母さんが奪われた時みたいに
“俺一人が残される”様な状況とは違う今回、少なくとも……
……“現世を見なければ”苦しむ事も無いですし
俺が幽世で苦しみ続けた所で、誰が救われる訳でも無いんです。
だから俺……此処から先は“見えない聞こえない”ってフリをして
其処らの蛆虫か何かに転生させられて
大きな動物か何かに踏み潰されてどっかに消え去るまで……
……幽世で、じっと耐えてますから
だから……俺なんかの為に頭を下げないで下さい。
そもそも、俺よりも長くこの場所に居るあろう貴方なら分かってる筈です。
もし、この“幽世”で頭を下げれば
辛い“現世”を見せつけられる事に成るって……だから。
お願いします……もう、頭を上げて下さい」
《――全てを諦めたかの様にそう言うと
ヴィンセントの肩に触れ、頭を上げる様促した主人公。
だが、ヴィンセントは頑なに頭をあげようとはせず
主人公の言う“辛い現世”を見つめながら――》
………
……
…
「……主人公君。
君の言う様に……僕は永きに渡ってこの場所に縛り付けられ
見たくも無い光景や、苦しみ……様々な負の感情を見せられ続けている
まるで此処が、僕の為に用意された地獄かと思う程にね……だが。
それでも僕は、僕の大切な者達を諦めようとは……
……捨て去ろうとは唯の一度も思わなかった。
主人公君……君にも僕と同じ心がある事を僕は知っている
そうやって全てを諦めた様にわざわざ宣言する事自体が
心優しい君の、耐え難き苦しみが故の行動であるとも。
君は……そうして諦めたフリをしている今も
皆を救いたい、世界を……君が愛する全てを“護り通したい”と言う気持ちを
毛程も捨て去っては居ない筈だ……違うかい? 」
《――そう言って静かに主人公を激励した。
だが――》
………
……
…
「……ええ。
そうですよ……仰る通り、何一つとして間違ってませんし
徹頭徹尾図星過ぎて腹立たしい位ですよ……けど。
……じゃあどうすれば良いんですかッ?!
既に皆を護る為の“肉体”を失ってる俺が
今更どう足掻いたって、誰一人救えない……いいえ。
そう出来る可能性のある“肉体”を持って居た時だって
嘘みたいに簡単に負けて、嘘みたいに簡単に皆を失った俺が……
……一体どうやって、何を以て皆を護る事が出来るんですかッ?! 」
《――そう嘆き、大声で哭いた主人公。
直後……そんな彼の訴えに対し、静かに頭を上げると
ヴィンセントは唯、一言――》
………
……
…
「……もし、そう出来るだけの圧倒的な力が得られたならば
君は、捨てようとした全てを拾い上げてくれるかい? 」
《――そう問い掛け
主人公の目を真っ直ぐに見つめた――》
===第二〇二話・終===




