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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第五章

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200/310

第二〇〇話「苦楽を“常に”共にすると言う事……前編」

<――万が一を考え、失う恐怖に(おび)えながら

それでも仲間の同行を受け入れた俺は

(なお)(ひど)くなり続ける胸騒ぎを抑えつつ、必死に冷静であろうとしていた――>


………


……



「……念の為、皆に防衛魔導を掛けて置きたいんだ。


だから、その……絶対に置いていったりしないって誓うから

皆、一度だけで良いんだ……手を離してくれないか? 」


<――直後

皆がこの要求を受け入れ手を離してくれた瞬間

単騎特攻(たんきとっこう)”を実行出来たかも知れない……だが

どれ程胸騒ぎが(ひど)くなり続けたとしても

俺にはそうする事が適切とはどうしても思えなかった。


それは……もし、此処(ここ)で皆を眠らせたとしても

捕縛で皆の自由を奪い、此処(ここ)に縛り付けたとしても……


……皆は、俺がどんな手を使おうとも

必ず追いかけてくる様な気がしたから――>


………


……



「……皆、今考え付く限りで最上級の防衛魔導では有るけど

それでも“無いよりはマシ”って程度に思ってくれ。


それから……ラウドさん、俺達が出発してから一〇分後

もし俺達から何の連絡も無かったら、その時は……


……チビコーンの森を“消し去って”下さい」


<――“念の為”と言うには少々荒々しい俺の注文に対し

ラウドさんは静かにうなずいた。


そして――>


「……うむ、準備は整えて置こう。


じゃが、そう成らぬ様祈っておる……言うまでも無く御主ら全員の無事もじゃ。


良いな? くれぐれも注意をおこたってはいかんぞぃ? 」


「はい、(きも)(めい)じておきます……皆、準備は良いか? 」


<――直後


力強く返事を返した皆を連れ、俺は

胸騒ぎの原因である“チビコーンの森”の入り口へと転移した――>


………


……



「この場所から見る限り異常は無い様だ……だが、警戒を(おこた)らず進むぞ」


<――転移直後、周囲を見回しそう言ったガルド。


そんなガルドに対し――>


「確かに何時(いつ)もと変わらない様には思うけど

念には念を入れといた方が良いかもね……」


<――(わず)かにひりついた空気をただよわせそう言ったエリシアさん。


……この後、エリシアさんの希望により

少し前、用意した“簡易住居(プレハブ)”を目指す事と成った俺達……だが

現在進行系で俺自身が感じて居る胸騒ぎとは反対に

周囲の状況は不思議な程“平和そのもの”だった。


林道(りんどう)を進む俺達のそばで、花に止まり蜜を吸う蝶や

此方(こちら)の存在に気付きつつも、安心した様子で毛づくろいする

ウサギの姿……本来、災害を始めとする危機の前触れには

人間では気付けない程の些細(ささい)な変化にいち早く気付いた野生の昆虫や動物が

(わず)かにでも普段とは異なる行動を取る筈であり、そう言う意味で言えば

今回の俺の“胸騒ぎレーダー”は間違っている様な気がし始めていた。


とは言え、勿論そんな物は外れてくれた方が良いのだが

この余りにも平和過ぎる周囲の状況に(いささ)か拍子抜けして居た俺は――>


「おかしいなぁ……っと、そろそろ約束の一〇分が()ちそうですし

一度ラウドさんに連絡を入れておきますね……」


<――と、(みずか)らの胸騒ぎが空回りに終わった事に首を傾げつつ

出発前の約束通り、ラウドさんに連絡を入れようとしていた。


だが、この時――>


「待って! ……今、何か変な音がしなかった?

ってほらッ! また同じ音よ! ……」


<――突如として立ち止まりそう言ったマリーン。


この直後、魔導障壁(しょうへき)を二重に展開し

周囲への警戒を強めた俺に対し――>


「い、今の“声”はッ!? ……もしそうなら歩いてたら間に合わないッ!

主人公っちッ! 何も考えず、私達ごと“小屋の中”に飛んでッ!! 」


<――この瞬間

何かに気付き、急激に表情を曇らせそう叫んだエリシアさん。


……直後

ラウドさんとの通信を打ち切り、慌てて“簡易住居(プレハブ)”に転移した俺達は

これまで目にして居た平和な森の姿が全くの虚構とすら思える程の“光景”に

圧倒される事と成った――>


………


……



「な、何だよ……これ……」


<――この瞬間、思わずそう言葉を漏らしてしまった“理由”


それは……


……閉め切られた“簡易住居(プレハブ)”の中にまで(ただよ)ってくる“腐臭(ふしゅう)”と共に

窓越しの俺達の目に映った見覚えのある“悪鬼(バケモノ)”の大群(たいぐん)

そんな絶望的な状況の中にありながらも必死に戦って居た


一匹の(おさな)き“神獣”の姿だった――>


「確かに、凄い状況です……けど、私達は絶対に負けませんし

彼処あそこで頑張っている“チビコーンちゃん”を助ける為なら

(いく)らでも頑張れるって思えませんか? ……


……と言うか、少なくとも私はそう思ってます。


なので……主人公さんは“平和”から“危機”に頭を切り替えて

エリシアさんは大船に乗った気持ちで安心してて下さい。


って事なので、()ずは……うおりゃぁぁぁぁぁっ!!! 」


<――言うや否や

扉を勢い良く開き、悪鬼(あっき)大群(たいぐん)目掛け作戦の一つも立てずに突撃したマリア。


直後、そんな彼女(マリア)に“触発(しょくはつ)”されたのか――>


流石(さすが)はマリアさんね……私も負けてられないわね。


マリアさん! 左側は任せてッ! ――」


<――腰に下げた小太刀(こだち)を勢い良く抜刀しつつそう言うと


直後、此方(こちら)の存在に気付いた悪鬼共を()きつけつつ

敵集団の左側へと一直線に走ったマリーン。


そして――>


「……メル、御主の治癒が“一角獣(あやつ)”に役立つやも知れん。


二人の切り開いた道は堅い、吾輩があの場所までの敵を斬り()

御主の護衛を受け持つ、御主は一角獣(あやつ)の治癒を……行けるか? 」


「はいっ! ……」


<――直後


切り開かれた道の先、(なお)も襲い来る悪鬼(あっき)大群(たいぐん)を相手取り

懸命(けんめい)に戦い続けて居たチビコーンを救う為、マリア達に()って開けられた

敵集団の(わず)かな隙間を縫う様に走り抜けた二人。


そして……この瞬間、復活祭に必要な

“魔物の(コア)採集時の一件”を思い出させる様な動きをした皆の事を(まも)る為

急ぎ、エリシアさんと共に魔導攻撃に()る援護を始めた俺は――>


「ん? 悪鬼共の中に“青い個体”が混じってるな……」


<――“色の異なる個体”が居る事に気付き


皆の援護をするかたわら能力値を調べ、青い個体の名称が“邪鬼(じゃき)”である事

少なくとも“悪鬼(あっき)”と比べ数倍の能力を有している事を知った。


そして――>


………


……



「特殊能力:物理的な攻撃を“完全”無効化? ……って?!

不味(マズ)いッ! エリシアさんッ!! ……」


「分かってるッ!! 連撃之稲妻チェイン・オブ・ライトニングッッ!! ……」


<――特殊能力の欄に(しる)されていた

物理的な攻撃を(おも)とするマリアやガルドに取っては何よりも危険な能力――


“物理攻撃完全無効化”


――この瞬間、大慌てで“邪鬼(じゃき)”の排除を優先した俺は

エリシアさんと共に必死でその数を減らそうと努力していた。


だが――>


「妙だよ主人公っち……悪鬼(あっき)邪鬼(じゃき)も明らかにさっきより増えてる

何かが可怪(おか)しい……チビコーン……急がないと……ッ!! 」


<――事態解決の糸口が見えない状況の中

文字通り、何処(どこ)からか“()いて出ている”かの様に増加した悪鬼共に違和感を感じ

不安げにそう言ったエリシアさんは、しきりにチビコーンの姿を確認しては

今にも持ち場を離れそうな素振りを見せ始めて居た。


だが――>


………


……



「大丈夫、落ち着いて下さいエリシアさん……俺に良い考えがあります。


……チビコーンの事はちゃんと(まも)りますから

俺が合図したら……チビコーンを含め、皆に“しゃがむ様に”伝えて下さい」


<――そんなエリシアさんを“暴走”させない為

そして、大切な仲間を全員(まも)り抜く為……この瞬間

余りにもデタラメな作戦を思いつき、それを実行に移そうとした俺。


この時、エリシアさんにその真意が伝わっていたのかは謎だったが――>


「分かった……何時(いつ)でも良いよ」


<――眼前の状況から来る不安の中

ほんの一瞬だが真っ直ぐに俺を見つめそう言ったエリシアさん。


この直後、俺は……どの時よりも真剣に


どの時よりも狙いを定め……そして


どの時よりも、皆の事を“おもい”ながら――>


………


……



「……土の魔導。


花よ、咲きくるえッ!! “狂華乱舞(きょうからんぶ)ッッ!!! ”……」


<――最も“不安”であり


最も“安心”な技を発動させ……そして。


全ての敵を、殲滅(せんめつ)した――>


………


……



「チビコーン……大丈夫だから。

私が直ぐに薬草で治療してあげるからね……」


<――直後


傷付いたチビコーンの元へと走り寄るや否や

かばんから薬草を取り出し、傷口に優しくあてがい

(みずか)らに弱々しく頬擦ほおずりをするチビコーンの事を優しく()でたエリシアさん。


……そんな姿に胸を()で下ろす皆の姿を見れば

俺の“賭けに(ひと)しい作戦”は間違っていなかったと思えた。


ともあれ……そんな微笑ましくも思える二人の邪魔をしない為

この瞬間、(わず)かに距離を取り現状報告の為ラウドさんへ連絡を入れた俺は

通信終了後、エリシアさんとチビコーンに対し――


“改めて狂華乱舞(きょうからんぶ)を発動させ、腐敗(ふはい)した周囲の森の治癒を(うなが)

例え(わず)かでもチビコーンの治療に役立てるのはどうか”


――そう(たず)ねる為、皆の元へ戻ろうとして居た。


だが――>


………


……



「おや? ……皆様の内のどなたが“獣並みの嗅覚(きゅうかく)”をお持ちなのです?


まぁ……何と無くですが“薬草採集”などと言う“泥臭いご趣味”をお持ちな

“姉弟子様”がその“張本人”ではと思っておりますがね? 」


<――何処(どこ)からとも無く


現れるや否や、そう言ってエリシアさんを嘲笑あざわらった“男”――>


「ライドウッッ!! ……お前が……お前がッ!! ……」


「おや、会話すらまともに出来ない程お怒りとは……姉弟子様?

私はただ“不用品”を処分しているに過ぎません。


狂鬼これ”が大量に増やせる様になった今

悪鬼(それ)”や“邪鬼(あれ)”は場所を取るだけの不必要な者達で……」


「ふざけるなッ! お前がそんな理由だけでこんな状況を作り出す訳が……」


「おや……姉弟子様は少々私の事を買いかぶり過ぎの様です。


まぁ、どうでも良いのですが……


……そんな事より、注目すべきは“一角獣それです。


何がどうなって再び生まれ出たのかは知りませんが……(いず)れにせよ

一角獣(ユニコーン)は捨てる所の無い“最高の素材”です。


ですので……申し訳ありませんが

その“一角獣(ユニコーン)”は、ただちにお譲り頂きましょう――」


<――直後


俺達の眼前から消えたライドウは


“チビコーンの真横に”現れ――>


………


……



「――はい。


これで、この一角獣(ユニコーン)は私の物と成りました」


<――過去


モナークから俺に流れ込んだ数多くの記憶。


中でも、此奴ライドウとの記憶にあったおぞましい記憶と

その中に見られたある特殊な呪具の存在は、俺の脳内に

今も色濃く残って居る――


隷従(レイジュウ)之鎖のクサリ


――この瞬間

(ライドウ)はそのおぞましい呪具をチビコーンの首に掛けつつそう言った。


この呪具が持つ効果は

一角獣ユニコーンから全ての抵抗力を奪う”事だった――>


………


……



「チビコーンッ!!! ……」


<――叫ぶや否や

ライドウへ向け渾身(こんしん)の一撃を放ったエリシアさん……だが

その攻撃は容易(たやす)かわされ……直後


彼女はライドウの固有魔導“時之狭間(トキノハザマ)”の餌食(えじき)と成った――>


「しかし、本当に“お弱い”ですねぇ姉弟子様は……さて皆様

一歩でも動けば姉弟子様の命はありませんよ? ……」


<――そう告げた直後

俺達に向け余裕の笑みを差し向け――>


「……少なくとも、姉弟子様よりは利口な様ですね。


さてと……どうかそのままお動きに成られない様お願い申し上げますよ?

私はこれから、のんびりと“材料”を手に入れ……」


<――そう言い掛けた


瞬間――>


「キュルルゥゥゥ!!! 」


「何っ?! ……」


………


……



<――周囲に(とどろ)いた(おさな)くも激しいいなな


それは……この直後、その首から外れ落ちた“隷従(レイジュウ)之鎖(のクサリ)”を踏み壊し

ライドウに鋭い一撃を叩き込むと、そのままエリシアさんをかばう様に立った


“チビコーン”から発せられた物だった――>


………


……



「キュルゥ! キュルゥゥゥ……」


<――“時之狭間(トキノハザマ)”の効果に

完全に停止してしまったエリシアさんの身体を必死に鼻先でつつきながら

そう弱々しく()いたチビコーン……だが


その一方で――>


………


……



「……何故だ。


何故、貴様の様に未熟(みじゅく)一角獣ユニコーン風情が……何故っ!!


何故“隷従之鎖それ”を軽々と抜け出せたっ?!!! ……」


<――この時


チビコーンの放った鋭い一撃に()り脇腹に致命傷を負っていたライドウは

(みずか)らを(かば)う様に立った狂鬼(きょうき)共の肩を借りつつ怒りを(あらわ)にそう叫んだ。


……だが、その所為か固有魔導を維持する為の集中力を


(わず)かに“()いた”――>


………


……



「……チビコーンはお利口りこうさんだから

アンタみたいな馬鹿の手に掛からなかっただけ。


チビコーンは……私なんか比べ物にならない程、遥かに強くて

遥かに優しい最高の神獣なんだから……ね~っ! チビコーンっ♪ 」


<――直後


チビコーンと共に俺の真横へと転移して来たエリシアさんは

そう言って誇らしげにチビコーンのたてがみ()でた。


だが……この直後、チビコーンは激しく首を左右に振り

少し前エリシアさんに作って貰った

“花の首飾り”を指し示す様に前足を動かしながらそういなないた。


この不思議な行動に対し――>


「首飾りがどうかしたの? ……って。


まさか……“首飾りのお陰”って言ってくれてるの?! 」


<――そうたずねたエリシアさんに(こた)える様に

首を縦に振ったチビコーン。


一方、そんな二人のやり取りを見て居たライドウは――>


………


……



「ほう……青薔薇(ブルーローズ)(ひいらぎ)とは

確かに、その首飾りには“破魔”と“神の加護”が付与されて居る様です。


しかし、よもやその程度の品に私の作った呪具の力が阻害(そがい)されてしまうとは……


……ですが、(はか)らずもその様な物を作り上げるとは

流石(さすが)“泥臭い趣味”をお持ちの姉弟子様と言った所なのでしょう」


<――その余裕を感じさせる嫌味な言葉遣いとは裏腹に

わずかに苛立(いらだ)ちを感じさせる様な口振りでそう言った。


そして――>


「ともあれ……この怪我を見れば

攻撃能力の高さだけは流石(さすが)神獣と言うべき物がありますねぇ?

並みの魔導師ならば既に息絶えて居た事でしょう……ですが。


姉弟子様は少しばかり、失念していらっしゃるのでは?


私の二つ目の固有魔導が、その神獣を


“打ち倒すだけの”力を持っている事を――」


「……ッ!?


チビコーンッ!! ――」


<――瞬間


犠牲交換エクスチェンジサクリファイス”を警戒し、チビコーンの前に立ち塞がったエリシアさん


だが――>


………


……



「か……はッ……」


「……いやはや。


見事なまでに“予想通りの行動”をお取りになりますねぇ……姉弟子様? 」


<――力無く


膝から崩れ落ち、血反吐(ちへど)()きながらも

自身を睨みつけるエリシアさんの事を嘲笑あざわらい……


……“通常攻撃”を放った左腕を静かに下ろしたライドウ。


そして――>


………


……



「さてと……この程度の怪我など普通に治癒しても良いのですが

折角ですから“お約束も”果たして置きましょうか。


一角獣(ユニコーン)と私を――


――“犠牲交換エクスチェンジサクリファイス”」


<――そう唱えた。


直後、脇腹に傷を()いエリシアさんに寄り添う様に倒れたチビコーン


そして……その姿を嬉嬉(きき)とした表情で見つめつつ

固有魔導が持つ欠点デメリットって千切れ落ちた

(みずか)らの左腕を治癒しようとしたライドウ。


だが――>


………


……



「おや? ……治癒魔導が発動しないですねぇ?


って……ああ、(しっか)りと理解しました!

一角獣それ瀕死(ひんし)と成ったこの森では、最早もはや“治癒も出来ぬ”と言う訳ですか。


いやはや……少しばかり順序(じゅんじょ)を間違えてしまった様ですね」


<――常人であれば激痛で藻掻もがき苦しむ状況の中

まるで“落とした物を拾うかの様に”自身の左腕を回収し

肩の傷口を火炎の魔導で“焼灼(しょうしゃく)”しながら

薄気味悪く笑みを浮かべそう言ったライドウは、この直後――>


「……まぁ、直そうと思えば直ぐに直せる手段もあるのですが

この程度でも“ハンデ”が無ければ貴方達には勝ち目がありませんし

ちょっとした余興(よきょう)がてら“この状態で”戦っても構いませんよ?

(ちな)みに姉弟子様の事を“治療”したいのでしたらどうぞご自由に。


ただし……この森では“不可能”な様ですがねぇ? 」


<――そう言って俺達の事を嘲笑あざわらってみせた。


だが……無詠唱であれ何であれ、既に幾度(いくど)と無く試し続けて居た

エリシアさんへの治癒魔導が一度として“発動しない”事を考えれば

本当にこの森ではエリシアさんを(なお)せないのだろうし

エリシアさんのかばんに入った薬草や何かで応急処置をしようにも

そう言った知識が一切無い俺では応急処置すら出来ないし

そもそも此奴(ライドウ)は“応急処置をするから少し待っててくれ”と頼み

“はい、そうですか”と素直に受け入れる様な相手では絶対に無い。


……(なお)も薄気味悪く笑みを浮かべつつ

此方(こちら)の様子をうかがって居る(ライドウ)の姿に恐怖を覚えつつも

俺は、エリシアさんとチビコーンの治療……そして

不気味な程に余裕を持って立ち続けているライドウから

一刻も早く皆を遠ざける為の手段を考えていた。


だが……そんな“猶予(ゆうよ)”さえ得られない事を


俺はこの直後、痛い程に知る事と成った――>


………


……



「おやおや、何もせず“ただ黙り通す”とは……


……全くもって面白味がありませんねぇ?


まぁ、今の私に対し貴方達程度では相手にも成らない様ですし

このまま左腕に痛みを感じ続けるのもしゃくさわりますので

一先ひとまずは――


――お前達。


私の為、その身を“かて”として差し出しなさい」


<――“不用品”と呼んだ悪鬼(あっき)共に対しそう命じたライドウ。


直後、ゆっくりとライドウに近付いた悪鬼(あっき)共は――


“ライドウ様……治ス(カテ)……有難(アリガタ)(シアワ)セ……”


――口々にそう言うと

ライドウの差し出した呪具へと(みずか)らの意志で吸い込まれて行った。


だが、この光景には“見覚え”がある……この“呪具”は

あの日、ガルベームが(みずか)らの配下に“そうさせた”のと


“全く同じ物”だ――>


………


……



「……さて、と。


これで私は元通りと成った訳ですが……その反面

私は今“今直ぐにでもこの場から逃げ去りたいであろう貴方達に”

何かを“お渡ししたい”衝動(しょうどう)に駆られていましてねぇ……


……其処(そこ)の貴方、確か主人公と言いましたか?

貴方の顔を見ていたら、何故か“魔王モナーク”の事を思い出しましてね

折角ですから……あの御方の言う“馬鹿の一つ覚え”を

貴方に進呈(しんてい)致しましょう――」


<――この瞬間

俺に向け不敵な笑みを浮かべつつそう言うと

(ふところ)から小さな箱を取り出し……それを“破壊”すると

(みずか)らの目の前に放り投げた。


瞬間――>


………


……



「ライドウ様……ご命令を、最大限の成果を貴方様に」


<――直後


破壊された箱よりあらわれた“狂鬼(きょうき)の集団”は

ライドウに対し一斉にそうたずね――>


………


……



「宜しい……ですが、命令は一つです。


奴らを“()り”なさい……」


<――この瞬間


下された命令に従い、その尋常成らざる統率力と戦闘力をもっ

俺の(まも)るべき者達の命を奪わんと、一斉に差し迫った――>


===第二〇〇話・終===

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