第百九九話「“嫌な予感”は楽勝ですか? 」
<――あの日
アラブリアの地下金庫で風化し、砂の様に崩れ去った
“裏技之書”
あの本が有して居たと言う能力は――
“完全支配”
――その過ぎた力が故に、ムスタファの父であり
アラブリアの前国王でも有る彼は、この本の存在を
“呪い”と同一視したのだろう。
だが……この時、そんな呪いにも等しい裏技之書と
同じ名を冠する技を発動させたモナークは……俺に対し
失われた筈の“天蝎宮之書”から力を得たかの様に言い放った。
そして――>
………
……
…
「フッ……漸く理解したか。
……貴様の持つ“白羊宮之書”にもさしたる制限が存在せぬ様に
我が力にも制限など有りはせぬ……此れ迄聞いて尚、不安が拭えず
赤子の様に喚き散らすと謂うのならば――」
<――言うや否や
狂鬼共を整列させたモナークは――>
「――刮目し、その目に焼き付けよ。
そして、この力こそが貴様の渇望せし“護る”を叶え
尚余りあるのだと知るが良い……だが。
……我の言葉を聞き尚不安だと吐かし、我との“契約”が必要だと謂うのなら
我の差し出すこの指に触れるが良い……」
<――そう言って俺に指を差し出した。
だが、言うまでも無く――>
………
……
…
「今こんな事を言えば、またお前に――
“フッ……甘い男よ”
――って言われるかも知れないけど、俺
これでもお前の事は信じてるつもりだから……“契約”はしないで置くよ。
それに……俺一人で抱えきれる程、この国は“小さく無い”って事
遅いかも知れないけどお前のお陰で思い出せたからさ!
だからその……あ、ありがとなッ! 」
「フッ……貴様はやはり甘い男よ」
「な゛ッ?! お前なぁ……兎に角
何れにせよ精霊女王達にも連絡を取らないとだし
契約の件はそう言う事にしといてくれ。
後は……あっ。
そ、その……エリシアさん、出来たら一度ラウドさんの所で……」
「……分かってるって主人公っち。
もう“癇癪”は起こさないし
“勝手に動いたり”はしないから変に気を遣わないで。
それで……私にやって欲しいのは
“同盟関係や友好関係のある国々への連絡”で合ってる? 」
「は、はい! お願いしますッ! ……」
<――この後、他国への連絡をエリシアさんに任せた俺は
奴の目撃情報を訊ねる為、精霊女王デイジーの森へと飛んだ。
だが――>
………
……
…
「そう……ですか。
ま、まぁ裏を返せば“何処の森にも被害が無い”って事ですし! ……」
<――転移後
彼女に全精霊女王への確認を取って貰った結果
被害は勿論、遭遇や発見と言った役立つ報告は得られなかったが
反面、付近に何らかの“国”がある森を守護している精霊女王達から――
“何処何処の国を大量の化け物が襲っている”
――と言う情報だけが数多く寄せられた。
この瞬間……狡猾なあの男の痕跡すら見つけられず
遣る瀬無さを感じて居た俺……だが
そんな俺の心情は顔に出てしまって居た様で――>
「……役に立てず済まないねぇ。
とは言え、アタシにだって一つだけ役立てる事があるんだよ?
まぁ、爪の先程度かも知れないが……」
<――申し訳無さげにそう言った精霊女王デイジー
彼女は続けて――>
「……アタシは今、アンタが“眉間にシワを寄せてた”間
アンタの大切な仲間達に“体力の源”を送ってみてたんだが
始めてにしちゃあ以外な程に上手く行ったよ。
……“アタシの力で何もかもを解決”って訳には行かないが
此れで少しはアンタの悩みも軽く……」
「俺の仲間達……ってまさか?! マリア達に生命力を送ったんですか?!
と言うか、そんな事をしたらデイジーさんの健康状態に悪影響がッ! ……」
「なぁに、この程度なら何とも無いさ……寧ろ
アタシとしては“若返らせて貰ったお礼”が足りて無い様に思ってたし
その事でずっと“ウズウズ”してた位だからねぇ……ちょっとしたお礼さ」
「あれは緊急事態でしたし、そもそもあんなのは俺のエゴみたいな物でッ! ……」
「……助けて貰った側は“エゴ”かどうかなんて考えちゃいないさ。
兎に角……そんな些細な事なんて気にしないで良いから早く帰ってやりな?
また何か新しい情報が入ったら伝えてやるから
アンタは少し思い悩むのを控えて……後は無理も控えるんだ。
……分かったね? 好青年」
「デイジーさん……分かりました。
……いきなり訪ねて来て色々とお手間をお掛けしたにも関わらず
何から何まで本当に有難うございました。
その、今回の御礼はまた何れッ! ……ではッ!! 」
「なっ?! ……待ちなッ! 馬鹿言うんじゃ無いよ!
この程度の事で御礼なんてされちまったら
また何かお返ししなきゃ成らないだろうっ?! ……」
<――転移直前
“少し慌てた様子の”デイジーさんに見送られ、森を後にした俺は
彼女の忠告通り、一度魔導病院に皆の様子を確認しに行った。
すると――>
………
……
…
「……おっ! 丁度良い所に来ましたね主人公さん!
私達、何故か分からないんですけどいきなり元気に成ったんですよ?
ほら見て下さいこの筋肉ッ! カッッッチカチ……」
「……黙れ、それ以上は“絶対に言うな”マリア。
それはそうと……本当に皆、元気に成ったんだな」
「えっ? 何故私達が元気に成った事を知ってた様な口振りを?
まさか……私達の事をずっと覗いてたとか?! 」
「違うわッ!! ……デイジーさんが皆に
“体力の源”ってのを送ってくれたからだッ!
てか、後で改めてお礼を言いに行くんだからな? ……兎に角
マリアは勿論、皆病み上がりなんだからまだ安静にしててくれないか?
俺はもう行くけど、一段落ついたらまた様子を見に来るし……」
「……待ってよ主人公。
貴方のその口振り……明らかに
私達を置き去りにして“危ない橋を渡ろう”としてるわよね? 」
「い゛ぃッ?! いやッ!? そんな事は無……いぞ? マリーン」
「……露骨に動揺したわね。
何処に行くつもりなの? もし置いていこうとしても無駄よ?
私達……絶対ついて行くから」
<――直後
力強く俺の手を掴んだまま離さなくなったマリーン。
そして……そんな彼女に続き、俺に逃げられない様にする為か
俺の事を完全に囲んだ皆の威圧感に――>
………
……
…
「い、いや……別に危ない橋を渡ろうとはしてないって!
唯、もしもライドウの居場所が分かったら
その場所には総攻撃を掛ける可能性が高いからさ、それで……」
「でしたら、尚の事付いて行きますっ! 」
<――言うや否や俺の腕にしがみついたメル。
そして――>
「うむ……確かに、幾度と無く“単騎特攻”を繰り返した御主の
斯様な状況下での発言は何一つとして信用ならん。
であればこそ、生涯の友の為……吾輩も同行せねばならぬであろう」
「ガルドまで……てか、俺そんなに信用されて無かったのか? 」
「うむ……全くと言って良い程に信用しておらん」
「そ、そんな堂々と宣言しなくても……と、兎に角!
先ずは一度執務室に戻って色々と報告をしたいし……」
「あっ! ……さては、そう言って“置いてけぼり”にするつもりですね?
って事なので、私も付いて行きますね~っ! 」
「な゛ッ?! マリアまで何だよ?! ……って、だぁ~もうッ!!
分かったよッ! 皆、気が済むまで俺の事を掴んでれば良いだろ?!
兎に角……行くぞッ! 」
<――それが“愛ゆえ”だと知りながらも、余りの“信用の無さ”に苛立ち
“半ギレ”で転移魔導を発動させた俺は……この直後
ラウドさんの待つ執務室へと到着し――>
………
……
…
「おぉ、主人公殿っ! ……ん?
……何故に御主は“しがみつかれて”おるんじゃね? 」
「う゛ッ……そ、その件は後ほどご説明を……」
<――こう成った理由を察しての事か
若干のニヤけ顔で俺を“イジった”ラウドさん。
ともあれ……この後、精霊女王達からの情報に目ぼしい物が無かった事と
少なくとも被害に遭った森が無い事を伝えた俺……だが
それまでラウドさんと共に報告を聞いていたエリシアさんは
徐々に顔色を曇らせ――>
「そっか、精霊女王達からの目立った報告は無かったか……」
<――妙に落ち込んだ様子でそう言った。
そんな彼女に対し――>
「え、ええ……ですが、彼女達の森がある周辺の国々には
現在モナークが操っている者達と“同種”の魔物が
現れては居るみたいですけど、数としては……」
<――と返し掛けた俺を遮ると
エリシアさんは――>
「分かってる……でも、私が暗い理由はそれじゃ無いの。
……何か決定的に調べるべき場所を忘れてる気がしてるのに
それが一体何処なのかさっぱり分からないからイライラしてるだけ。
と言うか、さっきからずっとだけど……本当にごめんね」
「い、いえ……それよりも“調べるべき場所”……ですか」
「うん……私、主人公っちが執務室に来るまでの間に
色々な方向に考えを巡らせては居たんだけどさ……
……考えの幾つかは主人公っちが嫌な気分になる可能性が高い内容だし
言うべきじゃないかなって思ってて……」
「その……お気遣い有難うございます。
でも……こんな緊急事態に万が一にも
重大な事を見逃してしまう可能性があるのは嫌ですから……その
俺の事は気にせず、全部話してください」
「分かった、じゃあ言うよ……けど本当に、気にしないでね? 」
<――そう改めて俺に許可を取ると
エリシアさんは、地図を指し示しながら――>
「まず……現在に至るまで一切の被害報告が無い“日之本皇国”だけど
あの国が今回の件に関して“裏で糸を引いている”とは思えないし
そうする意味さえ無いって事も含め、今の所は
“信頼出来る国”って結論に落ち着いてる。
……次に、現在も若干連絡の取り辛い“鬼人族”の所だけど
これも主人公っちの報告を聞く分には何も起きてないと思う。
まぁ、他にも疑うべき国や地域は有ったんだけど
それらの国々よりも更に隠れやすそうな場所を探すなら――
“既に崩壊した幾つかの国の何れかに隠れている”
――って考える方が正しいでしょ?
その上で、今“メッサーレル”はもぬけの殻だから
其処に隠れて居る可能性が少しあるのと、現在連絡が取れず
生死すら不明なメリカーノアに関しては
“裏で糸を引いている可能性”がそれなりに高いと睨んでる。
残念だけど“一度でも裏切った国”はそう見るべきだと私は思うから
次に……」
<――壁に貼られた世界地図に次々と印を付けながら
一箇所ずつ虱潰しに状況を分析し、説明を続けてくれたエリシアさん。
だが――>
「……以上の情報を加味すれば、幾つかの怪しい場所は絞れてる筈。
だけど……ッ……」
<――筆を止め、拳を握り締めながら
悔しさの様な物を滲ませつつ――>
「彼奴が……あのライドウが、私が考えつく様な場所に
そんな“簡単に見つかる様な場所に”隠れる様な奴じゃ無い事は
ムカつくけど……“嫌と言う程”分かってるつもりなの。
……だからこそ、当初私が考えて居た場所は
今も尚襲撃を受けている各国の様子を魔導通信か何かで
確認出来る距離にある“何れかの森”だったの。
だけど、主人公っちは何処の森からも
“被害報告が無い”って言ったから恐らくはそれも違……違う。
そうだ……私何で気付けなかったんだろう?
主人公っち……ごめん。
私、行かなきゃッ! ――」
<――突如として青褪めた表情でそう言うや否や
転移魔導を発動させ掛けたエリシアさん。
だが、既の所で放った捕縛の魔導が彼女に届き――>
………
……
…
「――離してッ!! 行かなきゃ駄目なのッ!!
一刻も早く行かなきゃッ!! ……」
「お、落ち着いて下さいッ!!
……今エリシアさんが何を思い浮かべたのかなんて俺には判りませんけど
だとしても、一人で動くなんて余りにも無謀過ぎますッ!! 」
<――興奮状態にあったエリシアさんを必死に抑えつつ
そう必死に説得を試みていた俺。
だが――>
「あら、ついさっきまでの“自分自身”を忘れた様な口振りね? 主人公」
<――先程から服の裾を掴みっぱなしのマリーンにそう言われ
仲間達もそれに同意すると言う、全く以て格好のつかない状況の中――>
「ごめん、分かった……説明するから」
<――そんな俺の姿に気が抜けたのか
少し落ち着いた様子のエリシアさんは――>
「ねぇ、主人公っち……今
精霊女王達から“は”被害報告が無いって言ったよね? 」
<――苛立ちを抑えつつ俺に対しそう問うた。
そして、静かに頷いた俺に対し――>
「そうだよね……そうなの、本当に。
主人公っち、皆も良く聞いて……
……ありと汎ゆる森には精霊女王を始めとする精霊族が数多く居て
文字通り、森を“自らの身体の如く”護ってる。
けど、紆余曲折の末に私達が会話出来る様に成った精霊女王達とは別に
唯一連絡が取れず、且つ彼奴が欲しがるであろう力を持つ森が
たった一箇所だけあるの……」
<――この瞬間、俺達は
何故エリシアさんが無謀な行動に移ろうとしたのかを痛い程理解する事と成った。
その原因たる場所とは――>
………
……
…
「……もう気付いたでしょ? それが“チビコーンの森”だって事に。
主人公っち、皆も……もしもこの判断が間違って無くて
本当にあの森に彼奴が居るとしたなら
彼奴はきっと私達にバレた時の事を考えて、何らかの罠を張ってるだろうし
もし違って居たとしても、この理論が出た以上
あの森に一定以上の強力な護衛をつける必要が出たって事。
……昔、モナークがまだ敵だった時
彼奴があの場所を崩壊させ、当時の魔族達に対しては食料として
そして、彼奴が自ら語った目的である“世界の崩壊”の為
“悪鬼ら”の生産を始めた事……どう考えても
あの場所以上の潜伏場所は有り得ない。
今こうして冷静に話している間にも
チビコーンが危ない目に遭っている可能性を考えたら
今直ぐにでも飛んでいかなきゃ駄目なの!
ねぇ主人公っち……皆も。
此処まで聞いてまだ協力してくれないのなら
この拘束を解いてくれないって言うのなら……
……チビコーンを見殺しにするって言うのならッ!!
そんな酷い事をするって言うのなら、今直ぐに私を殺してよッ!! ……」
<――本来ならば何をしてでもこの場を抜け出し
一刻も早くチビコーンの安否を確認したかったのだろう。
拘束を逃れる為か、身体を振り乱し……流れる涙を振り散らしながら
必死にそう懇願したエリシアさんの事を
このまま引き止め続けられる程、俺も冷静では無くて――>
………
……
…
「……分かりました。
でも……それなら俺も付いて行かせて下さい。
チビコーンの森は俺も少なからず関わりがある場所ですし
そもそも、そんな危険を知って見殺しにするなんて無理です。
大体、俺はずっと……大切な人や物を、全て残らず救いたいと思ってたんです。
でも……俺の甘さと力量不足では全てを完璧に救う事なんて出来ないから
ずっと悩んで、苦しんでいました……だからこそ
そんな俺の“全てを言い当てた”モナークに対して
俺は何も言い返せなかったんです。
俺は、彼奴にまで気を遣わせたんです……お願いします
俺が言えた義理では無いかも知れませんが
そんな危険に一人で立ち向かわないで下さい。
お願いしますから……俺にも手伝わせて下さい」
「……頭を上げて主人公っち。
正直、主人公っちが付いて来てくれるなら心強いし
彼奴がどうやってトライスターの力を得たのかは知らないけど
少なくとも攻撃術師の力しか使えない私だけじゃ……
……ムカつくけど、あの子を護れない。
主人公っち……私の事を引き止めてくれて、冷静にさせてくれて有難う」
<――そう言うと、静かに俺の目を見つめたエリシアさん。
直後……エリシアさんの捕縛を解いた俺は
ラウドさんに対し“派兵準備”を頼んだ。
そして――>
………
……
…
「そう言う訳だから……皆にはこの国を護って居て欲しい。
万が一、また狂鬼共が暴れたり、蟲の大量発生があった時
少しでも政令国家を護る人数が多い方が……」
<――奴の性格を考えれば
仲間を連れて行くと言う事が“どれ程危険か”など言うまでも無い。
だからこそ俺は、皆に対し“言い訳の様な理由”で政令国家に残る事を勧めたのだ。
だが――>
………
……
…
「主人公さん……貴方が何を言おうと、私はこの手を離しません。
もしも今、私達を置いていく為に捕縛の魔導とか睡眠の魔導とかを使って
無理矢理にでも私達をこの国に残して行く決断をしたら、私……
……ま、魔物さん達に食べられに行きますからっ!! 」
<――声を震わせ
精一杯の力で俺の腕を掴みながら――
“残される位ならば死を選ぶ”
――そう言ったに等しい発言をしたメル。
直後、そんな彼女に同意する様に
彼女の傍に立ち俺の目を見据えたマリアとマリーン。
そして――>
「主人公よ……吾輩が生涯の友と認めた“初めての人族”である御主を失えば
吾輩は、あの日の“喪失”を再び経験する事となるのだ。
それは……メルの父であり、吾輩の最初の生涯の友でもある
“マグニ”を失ったあの日の事だ。
無論、マグニは生きて居た……だが、吾輩には
マグニの時の様な奇跡がそう何度も起こるとは思えん。
何よりも……もう二度と生涯の友を救えぬと言う
“生涯の恥”を味わいたくは無いのだ。
主人公よ……どうか、吾輩達の同行を許して貰いたい」
<――深々と頭を下げ、俺の中にある
“同行させない為の言い訳リスト”の全てにバツ印を付けたガルド。
何か一つでも間違えれば、何か一つでも足りなければ
その全てを失いかねない程の強大な力で俺の全てを奪い去る力を持つ男――
“ライドウ”
――万が一にも奴の罠に掛かってしまえば
それは恐らく“最期”を意味する事となる。
俺の仲間であり、俺の大切な存在である皆は
俺など比べ物にならない程に頭が良くて、優しくて
俺からすれば文句の付け所がない完璧な人達だ。
だが……そんな皆が最も危険な場所への同行と言う
“愚かな決断”をすると言って聞かない。
……マリーンを失いかけたあの日
俺は、この世界に於けるルールを破り彼女を救った。
だが、その代償として俺には“固有魔導”と呼べる物が無い。
この後、万が一にもライドウと戦う事に成った場合に
切り札と成る様な物が何も“無い”
……二つの固有魔導を持ち、そのどちらもが厄介な奴の固有魔導を
片方だけでも塞ぐ手段すら……何一つ持ち合わせていないのだ。
だが、何よりも最悪なのは……エリシアさんに同行する事を決めた瞬間から
俺の中で起きた“胸騒ぎ”が今までに無い程の警告を発していた事だ。
先ず間違い無く……あの森には“何か”がある。
だが……それでも俺は
その恐ろしさを知った上で
皆に対し――>
………
……
…
「分かった……皆も一緒だ」
<――そう言った。
言って、しまった――>
===第百九九話・終===