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第百九五話「連れ帰るのは楽勝ですか? 」

<――転移直後

異形(いぎょう)の化け物との遭遇(そうぐう)()って大きく狂った

“予定”……メッサーレルでの“偵察任務”は、何とか無事に終わりを迎え

その後、彼女ソーニャが下した“想定外の決断”に()

偵察前よりも大人数での帰還と成る事が決定した俺達……だが。


この後……“念の為”と連絡を入れたラウドさんからもたらされた情報は

俺達に明らかな事態の急変を伝えた――>


………


……



「……新たな民を受け入れる事には反対して居らんし

状況を考えればむしろ直ぐにでも受け入れたい……じゃが。


……現在、未知の化け物に対応する為

本国、第二城共に展開されておる防衛魔導に

その為の“隙間(すきま)”を開ける事はあまりにも危険なのじゃよ……」


「それは理解しています! だからこそ俺やアイヴィーさんが

政令国家の“外側から”化け物に対して攻撃を行えば! ……」


「いや……残念じゃがそれも却下とさせて貰いたい。


勿論、御主らに外側から叩いて貰えば

敵に混乱を与えられるやも知れん……じゃが

その策はあまりにも危険過ぎるんじゃよ……」


「なッ?! ……俺達の安全を優先出来る様な状況じゃない事位

ラウドさんなら分かっている筈ですッ!!

無論、俺やアイヴィーさんの身を案じてくれるのは有り難いですけど

戦力が足りていないなら、今直ぐにでも俺達が加勢(かせい)しなければッ! ……」


「そうでは無いッ! 落ち着くのじゃ主人公殿ッ!

現状、化け物共への対処はモナーク殿率いる魔族軍が行っておるし

彼らだけでも充分対処出来ておる。


……わしが言いたいのは

主人公殿とアイヴィー殿の二人だけならばいざ知らず

更に三〇名を超える者達をも受け入れるとなれば

その為に開ける隙間(すきま)の大きさや時間の長さは

致命的な物と成り得るやも知れんと言うて居るんじゃよ。


……主人公殿、此方(こちら)も急ぎ安全に

皆を受け入れる事の出来る何らかの策を考える(ゆえ)

後少しだけ待っていて貰いたい……頼む、この通りじゃ」


<――そう言って深々と頭を下げたラウドさん。


……この時、ラウドさんからもたらされた情報は

此処(メッサーレル)に現れた者と同様の化け物が政令国家にも現れたと言う物だった。


当然だが、此処メッサーレル惨状(さんじょう)を現在進行系で目の当たりにしている俺からすれば

政令国家が置かれている状況は危機的とすら思えた。


……モナーク(ひき)いる魔族軍の統率力と迎撃(げいげき)能力

そして、政令国家魔導大隊にる防衛力のお陰もあり

其処(そこ)まで危険な状況では無い”とした一方で

下級魔導は無効化し、仮に上級魔導で挑んだとしても

その(ほとん)どを回避する機敏(きびん)さが(ゆえ)――


“数の割には対処(たいしょ)に時間が掛かって()るんじゃよ”


――と、眉間にシワを寄せながらそう言ったラウドさんの様子

そして……“二対(につい)魔王”と成り、受け継がれし力にって

今まで以上に強力な存在と成ったアイヴィーさんが

わずか数体を相手にした程度で、軽くとは言え

“指を痛めてしまった”事を考えれば

二〇体を優に超える数が政令国家に出現している状況は

決して楽観視出来る物では無い。


そもそも――


“その女を差し出し、今直ぐこの場から立ち去るのなら見逃してやろう”


――などと、充分過ぎる程に言葉をかい

言葉にって揺さぶりを掛ける事さえ出来てしまう

高い知能を持った謎の化け物が二〇体以上居る事を考えれば

焦りや不安を感じるのは当然だ。


とは言え……今、此処(ここ)でラウドさんの指示を無視し

“新たな民達”を引き連れ、外部から“大立ち回り”をする危険性に

気付いていない訳では無くて――>


「……分かりました。


でも、その代わり……今よりもし(わず)かでも事態が悪化したら

何も考えず、俺達に連絡を入れると約束して下さい」


「うむ……承知した。


……兎に角、そちらも充分注意するんじゃよ? 」


「はい、ではまた後ほど――」


………


……



「――とは言った物の、このまま此処(ここ)で待機するのは

精神的にも、安全面から見てもあまり良い判断とは思えないんだよな……」


<――通信終了後

民達の安全を考え一度洞窟(どうくつ)内部へと戻る決断をした俺。


だが……洞窟(どうくつ)内でつい発してしまったこの“愚痴発言”に

ただ一人、嬉嬉(きき)とした表情を浮かべ

“過剰反応”を見せた男が居た――>


「……ふっ!!

私を此処(ここ)に置き去りにしようとしたバチが当たったのですっ!


どうです?! ……これで理解したでしょう愚民共よ!!

貴方達の判断がどれ程愚かな物であったかを!

この様に軟弱(なんじゃく)な男にすがり、生き(なが)らえようとする愚かさを!! 」


<――鬼の首を取った様にそう喜んだのは

メッサーレル君主国の新たな長と成った“議員の男”だった。


だが、この直後――>


「ほう……既に我が国の民と成った者達に対し“愚民共”とは。


その発言、我が国は元より……我々に対する

“宣戦布告”と受け取っても良いのですね? 」


<――静かに

だが、確実に“釘を差した”アイヴィーさん。


直後……議員の男は血の気が引いた様な表情を浮かべ

意気消沈(いきしょうちん)し、以降(いこう)“過ぎた発言”をしなくなった。


ともあれ――>


………


……



「……我が身の元へともたらされた緊急連絡とその時間を考えれば

この国の現状は考えられぬ程に(ひど)い。


(いく)ら戦力が不足していたとは言え

何故こうも容易(たやす)く打ち破られたと言うのか……


……答えよ、ウィリアム」


<――隊長(ウィリアム)に対し、力無くそうたずねたソーニャ。


そんな彼女の問いに対し、(ウィリアム)はただ一言――


“次元が違う敵であったと言う他ありません”


――そう答えるにとどめ、これ以上の説明を(こば)んだ。


だが、そんなウィリアムに対し――>


「成程……余程(よほど)凄惨(せいさん)な状況を目の当たりにされたのでしょう

えて語らぬ事を選んだそのお気持ち、理解は致します……ですが。


私達は、(たと)(わず)かでも“情報”が欲しいのです。


“崩壊までの筋道(すじみち)を全て説明しろ”とは言いません……ですがせめて

あの魔物が現れた時……それが何処(どこ)からどの様に現れ

一体どの様に動いたのか……些細(ささい)な事で構わないのです。


一人の兵士として……そして

政令国家の新たな民と成る決意をした者の一人として。


是非とも……有用な情報共有をお願い申し上げます」


<――真摯(しんし)に、そして冷静に

彼の心情に最大限の配慮をした上でそう(たず)ねたアイヴィーさん。


暫しの沈黙の後、(ウィリアム)は――>


………


……



「……当初、我々はソーニャ様の留守を預かる為

君主(くんしゅ)城”の警護任務に当たって居りました。


無論、城壁周辺では普段と変わらず一般兵達が見回りをしており

恐らくは彼らも普段通り、外部の不審な動きに目を光らせて居た事でしょう。


ですが……“奴ら”は、そんな日常を容易(たやす)く打ち破ったのです。


……ほとんどの議員らと共に

我が部隊の約半数が一瞬にして“消滅(しょうめつ)した”あの攻撃は

君主(くんしゅ)城の半分以上を跡形も無く消し飛ばしました。


そして……何が起きたのかすら把握(はあく)出来ぬ内に

第二第三の攻撃が我々の直ぐ近くへと降り注いだのです。


アイヴィー殿……申し訳ありませんが

何処(どこ)から、何を(もち)いてどの様に(あらわ)れたか”など

(ただ)、運良く退避(たいひ)する事が出来たに過ぎない我々には

情報は勿論……何一つとして、答えられるすべなど有りはしないのです」


<――崩壊した城の物か、それとも

決死の覚悟で走り抜け、巻き上がった砂煙(すなけむり)(ゆえ)か……


……それがいずれであったにせよ、隊員服に付いた砂をはたく余裕すら無く

つい先程まで懸命にこの場を(まも)り続けて居たウィリアム

この悲痛(ひつう)(うった)えに対し、アイヴィーさんは――


“いえ……たった今貴方が口にした全ては

(まご)う事無く情報としての役目を果たしました”


――そう言った。


そして――>


………


……



「……情報を元に、この国の防衛能力を“一”と仮定した時

それ程に圧倒的な状況を作り出した敵は

最低でも“五”の力を有して居たと見て間違い無いでしょう。


そうなれば……奴ら一体の戦力は丁度(ちょうど)

“このメッサーレルが有して居た全軍事力と同等”と考えられます。


其処(そこ)に、私が戦闘で得た評価を加えれば……主人公様。


主人公様が現在想定(そうてい)されて居るであろう中で

恐らくは最も最悪の状況である“政令国家陥落(かんらく)”ですが……


……どれ(ほど)政令国家側を不利な条件に見積もったとしても

軽く数ヶ月以上は掛かる計算と成ります。


無論“双方(そうほう)現状(げんじょう)の戦力のままであれば”と言う前提は存在しますが

それでも、ラウド様の(おっしゃ)られた見立てはあながち間違っては居ないでしょう。


(いず)れにせよ、不幸中の幸いとでも言うべきでしょうか

帰還までの間に此方(こちら)で考えられる策と、その為に掛けられる時間には

幾許いくばくかの猶予(ゆうよ)がある様です」


<――恐ろしい程の冷静さと共に

凄まじい程の“脅威判定能力”を発揮(はっき)したアイヴィーさん。


……モナーク自身が右腕と認め、周囲からも

“モナークの懐刀(ふところがたな)”と呼ばれる彼女の底力を垣間(かいま)見る事と成ったこの瞬間

俺は、彼女の発した――


“考えられる策”


――と言う言葉を受け、(あら)ゆる可能性や策を考えた。


そして――>


………


……



「……有難う御座いますアイヴィーさん。


お陰でやるべき事が分かりましたし

アイヴィーさんの脅威判定の正確さを()り引き立てる結果になると思います」


「主人公様……一体何を思い付かれたのです? 」


「それは“アラブリアの状況を確認する事”です」


<――そう告げた瞬間

アイヴィーさんは俺の言わんとする事を全て(さっ)し――>


「成程……流石(さすが)は主人公様です。


此処(メッサーレル)(おとず)れる直前(もたら)され

一方的に打ち切られたあの通信を最後に

今の今まで連絡を取れていない状況を(かんが)みれば

友好国(アラブリア)の現状を知る事こそが、現状唯一(ゆいいつ)の策であり

私の脅威判定の正確性を試す事も出来る……と言う訳で御座いますね? 」


「その通りです! ……た、(ただ)

アイヴィーさんの脅威判定は絶対に正しいと思いますけど……」


「いえ、お気遣い無く……兎に角、そうと決まれば

主人公様、今直ぐにムスタファ様へご連絡をお願い申し上げます」


<――直後

アイヴィーさんに(うなが)され

ムスタファに魔導通信を(こころ)みた俺は――>


………


……



「ムスタファ!! ……大丈夫か!? 」


<――繋がるや否や慌ててムスタファの安否(あんぴ)を確認した。


結論から言えば、幸運にも俺の心配は徒労(とろう)に終わった……だが。


一方で、此方(こちら)の様子を視認(しにん)したムスタファの表情は

見る見る内に曇り始めて居て――>


「ど、どうした? ムスタファ……まさか何処(どこ)か怪我を!? 」


「……いや、(さいわ)いにも怪我はしていない。


それよりも……主人公、何故君の横に“その女”が居るんだ? 」


<――ソーニャに気付くや否や

露骨(ろこつ)過ぎる程の嫌悪(けんお)感をあらわにしたムスタファは

親友である筈の俺に対しても警戒(けいかい)感を感じさせる様な態度を取った。


この時、ムスタファが何らかの“誤解をしている”事に気付いた俺は――>


「えっと……“例の件”で警戒してると仮定して話すけど

その件に関しては既に解決済みだから、安心してくれ。


と言うか……紆余曲折(うよきょくせつ)有ってさ、彼女ソーニャを含め

この(メッサーレル)の民と兵を三〇名と少し、政令国家こっちで受け入れる方向で話が決まったんだ。


何と言うかその……あ、(あやつ)られては無いから安心してくれ! 」


<――出来る事ならば

“真横に彼女ソーニャが居る状況で”したい説明では無かったが

仕方無くそう説明をした。


この後……まだ若干の警戒心は感じられたものの

ある程度、此方(こちら)の状況に理解を示してくれたムスタファは――>


「主人公……疑って済まない。


そしてソーニャよ……状況が状況だ、まだ完全に君を信じた訳では無いが

一時避難先として、主人公と共に此方アラブリアへ来る事を許可しよう。


だが、(わず)かでも妙な動きをすれば“敵国人”として扱う事に成る

これは我が国の為であり……何よりも、親友の為だ。


君が真に主人公かれの仲間と成ったのならば……理解して欲しい」


<――そう言って俺達の一時避難先を買って出てくれた。


だが、この直後

アラブリアへの転移を行おうとして居たその時――>


………


……



「ま、待て!! ……い、いや! まっ……待って下さいっっ!! 」


<――言うや否や

すがる様に俺の足元で土下座をした男。


それは――>


「……金輪際(こんりんざい)、贅沢も不平不満も申しませんっっ!!


で、ですからどうか!! 私も……


……私も連れて行っては貰えないでしょうかっっ!! 」


<――つい先程まで此方(こちら)の状況を嘲笑あざわらっていた“議員の男”だった。


俺の“甘さ”を知っての行動か、それとも

此処(ここ)までされれば大抵(たいてい)の人間が受け入れてしまう事を狙ってか……


……まぁ、この時の此奴(コイツ)にどんな考えがあったにせよ

このまま一人、この場所に置き去りにすれば()ず間違い無く死ぬだろうし

それを知って放置するのも後味が悪いから、そもそも

一応、連れて行くつもりでは有ったのだが――>


………


……



「……連れて行くか行かないかの前に、少しだけ聞いてくれ。


俺個人の考えを押し付ける様で申し訳無いけどさ……議員には議員としての

民には民としての役割みたいな物があって、どの立場であれ

どちらかにしか出来ない役割が有ると思うんだよ。


てか……ついさっき“経験”しただろ?

“民も兵も居ない国の長”って立場をさ……だから


“不平不満やら贅沢やらを止める”とかどうでも良いから

愚民だ何だって人様をけなしたり

立場を利用して恫喝(どうかつ)したりするのを金輪際(こんりんざい)止めてくれ。


見てて不愉快だし……何よりも、そう言う事を続けて

一番に損をするのは“お前自身”って事を理解して欲しいんだよ」


<――この瞬間

常々思って居た“失礼な人へ言いたかった事”をぶつけた俺。


爪の先程度の失敗を理由に店員さんにブチ切れる理不尽(りふじん)な奴や

何らかの要求を通す為に恫喝どうかつまがいの態度を取る奴。


……無論、そんな状況に遭遇(そうぐう)しても

転生前の俺なら怖くて見て見ぬ振りをしていたし

そう言う意味では偉そうに出来る立場では無いのだが……だとしても

一度、しっかりと言って置きたかったのだ。


だが“言えた”って事より嬉しかったのは――


“その者の態度をとがめるだけで終わる事無く

まさか、その者の今後をも気遣うとは……流石(さすが)は主人公様です”


――と、アイヴィーさんに褒められた事だ。


正直、頭の中でお祭り騒ぎが行われる位には嬉しかったのだが

そんな“本心”がアイヴィーさんにバレない様

必死に平静(へいせい)(よそお)い――


“いえいえ……俺の考えを伝えただけですから”


――そう最大限に謙遜(けんそん)しつつ、同時に

何だか微妙に“バレている”様な気配をアイヴィーさんから感じながら

誰一人残す事無く無事アラブリアへの転移を完了した俺。


だったのだが――>


………


……



「……主人公、いささか無礼な要求では有ると思うが

一度、私の目を真っ直ぐに見つめ

私の“検査”を受け入れては貰えないだろうか? 」


<――到着直後

王宮の中程でムスタファからそう言われたのだった。


直ぐに“(あやつ)られているかどうか”の検査である事に気がついた俺は

右側に居る彼女(ソーニャ)から“居心地の悪さ”の様な物を

ヒシヒシと感じつつも――>


「わ、分かった……任せるよ」


<――ムスタファの“検査”を受け入れたのだった。


……この直後、俺に何らかの魔導技を掛け

(いく)つかの質問と共に、全ての装備を外す様に要求したムスタファ。


そして、全ての要求を受け入れた俺に対し

“そうする前と同じ質問”を繰り返した後

俺の答えに一切の変化が無い事を確認すると――


“すまなかった主人公……装備を返すよ”


――そう言いつつ申し訳なさげに装備の装着を手伝ってくれたのだった。


ともあれ……暫くの後

ソーニャらと共に王宮の中心へと通され――>


………


……



「その……此処アラブリアは大丈夫だったのか? 」


「ああ、どうにか全て倒したよ……だが

カミーラと私と爺やの三人で必死に能力値を確認しても

情報と呼べる様な物は一切得られなかった……不甲斐無い限りさ。


……能力値確認を発動させると視界から消え

それでも何とか……と、(ねば)ったのだけれど

ようやく“確認出来た! ”……と喜んだのもつかの間。


奴らは“対策”をして居たんだよ……情報を読み取られない様に」


<――そう言うと

続け(ざま)にある“質問”をしたムスタファ――>


「主人公……あの者達を目にしたのなら分かる筈だが

()えて質問させて欲しい。


あれ程の化け物の能力値が“スライムと同じ”などあり得ないだろう?

それも“名前の欄”まで……」


<――“質問”と言う名の

皮肉めいた問い掛けに()って得られた新たな情報。


奴らは“偽装(ぎそう)工作”を(ほどこ)すだけの知能を持ち

(しめ)し合わせた様に様々な国や地域を襲ったと言う事。


幸運にもこの(アラブリア)の防衛力が“桁外(けたはず)れ”だから大事(だいじ)には至ってないが

並大抵(なみたいてい)の国では対処(たいしょ)は難しいだろう事。


だが、その一方で高い知能を有している割には各国に(あらわ)れた数が少なく

国盗(くにと)り”に必要な条件を少しばかり見誤(みあやま)っている様に見えた反面

そんな間違いを(おか)す程“馬鹿”には見えなかった事。


何よりも……この瞬間。俺の中に芽生えた胸騒ぎが

今までの()では無くなったと言う事。


一体、この世界に何が起きて居るのか……そして

一体、何処(どこ)からこの化け物は現れたのか。


……この時、解決の難しい疑問に頭を(かか)

後の対応に苦慮(くりょ)していた俺は――


対処(たいしょ)は難しいし生態系も判らないし……この上

政令国家に帰る事すら難しいとか、俺は一体どうすれば……”


――と、自分でも気付かない内に愚痴を漏らして居た。


だが、そんな中……俺の顔を真っ直ぐに見つめて居たムスタファは

(わず)かに(いぶか)しんだ様子で首を(かし)げながら――>


「……帰還が難しいとはどう言う事だい?

まさか、民達を受け入れる事に反対をされ……」


<――と、少々誤解した様子で心配をしてくれた。


だが、政令国家の現状を伝えると

ムスタファは何かを考え込み始め――>


………


……



「主人公……君だけで無く、避難民達を含めた全員が

安全、つ政令国家の防衛力に一切の穴を開けず帰還する方法が

たった一つだけ……ある」


<――暫くの後、そう言った。


そして、それがどんな方法であるのかをたずねた俺に対し

ムスタファは、意を決した様に――>


………


……



「我がアラブリア、日之本皇国……そして、政令国家の三国を繋ぐ

堅い同盟関係のかなめと言うべき存在であり、この世界で唯一(ゆいいつ)

(あら)ゆる防衛魔導を無視する事が出来る能力を持つ

この世界で唯一(ゆいいつ)の建造物――


――“護傘マモリガサ”での帰還だ」


<――三国内でも極一部の者にしか伝えられていない

護傘マモリガサの真の能力と、その使用を提案したのだった――>


===第百九五話・終===

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