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第十九話「大臣兼業って楽勝……な訳無いっ!」

《――各種族の長達を正式に政令国家の大臣として迎えてから数日後の事。


大統領執務室では会議が行われていた……議題は大きく分けて三つ。


第一に、各種族の大臣を迎えた事に対する祝賀行事と

記念日の制定などの取り決め。


第二に……国民に対し多種族の正しい知識と理解をうながす為の教育機関

“義務教育学校”を立ち上げる際の取り決め。


第三に……各種族が政令国家で生活していく上で

得意な分野の職を割り振る事についての取り決め。


そして……これらの議題はほぼ全て

主人公が数日間徹夜で考え出した草案が元になっていた。


その為か、彼の目元には大きなくまが出来て居て――》


………


……



「……以上が、本日の議題となります」


「ううむ……主人公殿、本当にご苦労じゃった。


……さて、まずは祝賀行事の話じゃが

各種族毎に祝いの席で使う道具や食材や酒などが有ると思うが

それぞれの種族の理解を含める上でも

祝賀行事にはそれらを用意するのが適切だと思うのじゃが……


……どうじゃろうか? 」


《――直後、ラウド大統領の提案は満場一致で可決された。


続く“義務教育学校”についての議題は、主人公の発案に

各種族から一人ずつ教師と成る者を選出する事と成り

此方こちらも、各種族の歴史や技術に詳しい者が選出され

第二の議題もとどこおりなく可決と成った。


続く各種族への“職業の割り振り”も主人公の原案通り

エルフ族には服飾関連、ダークエルフには薬剤関連を

ドワーフ族には持ち前の高い製作技術を活かした鍛冶屋兼、道具屋を割り振り

オーク族には、建築業等の腕力を要する職を広く担当させ

獣人族には素早い身のこなしを活かせる情報収集……所謂いわゆる

諜報活動を割り振る事と成った。


全ての議題が滞りなく可決された一方で、エルフ族とダークエルフ族は

“森との親和性”などの理由で、政令国家内への移住を行わず

引き続き現存している村に住み続ける事を選択。


各種族の村を政令国家に“編入”と言う形を取る事と成った――》


………


……



「これで本日の議題は全て解決となりました……お疲れさまでした!! 」


《――と、感謝をべた主人公。


会議はこれで終了かと思われたこの瞬間

カイエルがそれを制止し――》


「……お待ち下さい。


皆様にお伝えしておかなければならない一件がございます」


「……その口振り、ただ事ではなさそうじゃのぉ? 」


「ええ、ラウド様……どうやらミネルバ様を暗殺した魔族が

未だこの国に潜伏している様でして……」


「何じゃと?! ……それは何処からの情報じゃ!? 」


「それが……まだ確定の情報では無いのですが

再編中の魔導隊詰所に複数寄せられた“失踪者”の情報をまとめた所

魔族はいまだ我が国に潜伏している物かと……」


「ふむ……しかし何故魔族と考えるのじゃね? 」


「……魔族と言うのは食事が特殊でして

魔導力のある生物を長い間摂取しないと“餓死”する様なのですが

恐らく、それが原因では無いかと思われる失踪事件が

此処の所頻発ひんぱつしておりまして……」


「成程……潜伏場所の特定は出来て居るのじゃろうな? 」


「残念ながらまだ完全には……ですが

どうも“北区”周辺で失踪事件が多発して居る様で……


……恐らくその辺りに潜伏して居る物かと」


「ふむ、絞れておるなら捜索も出来るじゃろうが……」


「ええ……しかし、あまり大規模な捜索活動を行えば

敵に勘付かれてしまい、取り逃がす可能性もございますので……」


「迂闊には動けんか……」


《――ラウド大統領を含め、会議の参加者達が頭を抱えていたこの瞬間

突如として“魔族捜索”に名乗りを上げた者が居た――》


………


……



「……なら、早速“諜報活動ちょーほーかつどう”が必要って事だよね?


僕が情報を調べてみるよ!

僕の足の速さと隠れ身の上手うまさなら大丈夫だと思うからっ! 」


「ふむ、確かに……リオス殿ならば怪しまれないじゃろう。


犯人の正確な潜伏先が判れば助かるが……とは言え

くれぐれも注意するんじゃよ? 」


「うん! ……頑張ってみるよ! 」


「……では、この件はリオス殿に一任する事とするぞぃ。


してカイエル殿……失踪者の種族に傾向けいこうは? 」


「どの報告も人族ばかりです……もしも人間以外であれば、魔導効率を考え

エルフ族かダークエルフ族のいずれかを狙う筈なのですが

被害報告が無い理由として考えられるのは、絶対数が少なく

狙うには難度が高い事も原因なのではと……」


「……全くもっ狡猾こうかつな奴じゃな」


「ええ、おっしゃられる通りです……取り敢えず

当面、北区周辺は警戒対象としてお考え頂ければと。


……私からの報告は以上です」


「ふむ、ご苦労じゃった……では解散ッ! 」


………


……



「つ、疲れた……眠い……」


「ううむ……苦労を掛けるのぉ主人公殿。


良く休むのじゃよ? ……」


「はい……では……


転移の魔導、ヴェルツへ……はぁ~っ――」


《――余程疲れて居たのか

ため息をつきながら転移魔導を発動した主人公――》


「困ったのぉ……主人公殿には早急に休みをやらねばいかん。


しかし、法整備やらに主人公殿の知識は必須じゃし……」


………


……



《――その一方、ヴェルツでは

ミリア、メル、マリアの三人が主人公の帰りを待って居て――》


「それにしても……主人公ちゃん遅いねぇ……」


「ええ……此処の所お疲れの様子でしたし

その上、大臣を三つも兼任されて居ますから大変みたいで……」


《――メルがそう話していると

突如として、マリアの真横に“屍の様な顔をした”主人公が

転移魔導で現れ――》


………


……



「……ただいま」


「うわぁっ?!! ……普通に入り口から入って来て下さいよぉっ! 」


「ごめん……これからは気をつける」


「……お、おかえりなさいませっ! 」


「あぁ、メルちゃんただいま……」


「……何だか酷く疲れた顔だねぇ。


よし! ……そんな主人公ちゃんの為に、今日は

あたしが腕によりを掛けたスペシャルな料理を用意するからね! 」


「気を遣わせてしまってすみません……いつも有難うございます」


「大丈夫さね……水臭い事言わないで良いから

メルちゃんとマリアちゃんの相手でもしてあげなよ! 」


《――そう言い残し厨房へと消えていったミリア。


一方……主人公の秘書官と成って居た筈のメルとマリアは

一人疲労困憊の主人公に対し、ある“不満”をぶつけて居た――》


………


……



「あの~……私達って、仮にも“主人公さんの秘書官”って扱いになってるのに

何でヴェルツで待機だったんですか?


それに、此処の所夜になっても主人公さん布団被って何かして……ハッ!

まさか私達にムラムラして……何か“変なコト”をっ!? 」


「なっ?! ……“変なコト”って何だよッ?!


大臣三つも兼任してるとやらなきゃ成らない事や

考えなきゃ成らない事が山の様にあるってだけだよ!


そ、それに……二人に少しでも迷惑を掛けない様に

布団被って書類の整理とか書き物をしてたってだけだし!


けっ……決して“変なコト”はしてないからなッ?! 」


「ま、そんな事だろうとは思ってましたけどね~……でも

それなら、余計に私達にも頼って欲しいんですけど? 」


「……マ、マリアさんの言う通りですっ!

私も主人公さんの事が心配……です」


「ごめん、これからは気を付けるし二人にも頼る様にするよ」


「判れば良いんです判れば! えっへん! 」


「あ~……何でマリアはそんなに誇らしげなのかな? 」


<――などと話していると


“おまたせ!……ミリアさん特製スペシャルメニューだよ!

これ食べて体力つけな! ”


……と言う威勢の良い声と共に

美味しそうな香りを漂わせて料理を運んで来たミリアさん――>


………


……



「凄い量だ……って、そう言えばですけど

最近、ヴェルツの建物が妙に綺麗になった様な気がするんですけど……」


「……そりゃ当然さね! 噂の“トライスター大臣”が寝泊まりしてる宿だよ?

客足が凄いからねぇ……それだけじゃ無い

各種族から食事の注文が来るお陰で相当稼げてるんだよ?

それもこれも、全部主人公ちゃんのお陰さ! ……感謝感激さね! 」


「そうなんですね……お役に立ててよかったです!


……けど、俺がどうこうって言うよりも

常日頃からミリアさんが丁寧で素晴らしい接客で

美味しい料理を提供しているからこそだと思います! 」


「……本当にありがとうねぇ。


旦那も大臣になったお陰で給料が良くなったみたいでね

本当に万々歳さね……ただ、最近は国防関連で忙しいみたいで

中々会えないから少し寂しいけどねぇ……」


「……確かに此処の所は俺も含め

皆さんもあまり休めていない様で……色々と忙しいのは事実ですね。


まぁ、もう少しすれば落ち着くと思いますから

その時に改めて前にした“約束”を果たしたいと思います」


「……前にした約束?

あたしと旦那に“飲み代をおごる”って話かい? 」


「それです! ……色々有ってずれ込んでしまって

本当に申し訳無さ過ぎるので、是非ッ! 」


「……律儀だねぇ主人公ちゃんは、流石あたしが見込んだ男さね! 」


「光栄です! ……でも

本当に早く落ち着ける様に成りたいですね……」


「……これすっごい美味しいですよミリアさん! 」


「いや……マリア、お前全然話聞いてないのな……」


「……良いんだよ主人公ちゃん。


最近は良い材料が沢山手に入るからねぇ~

マリアちゃんも沢山食べるんだよっ! 」


「はい! ……モグモグバクバク……ゲホゲホッ! ……ゴクンッ! 」


「……食べ方まで“マリアーバリアン”だな」


「止めて下さいよその呼び方! ……語呂が悪い! 」


「やっぱり気にするのは“其処”なのか……」


「……主人公さんも沢山食べて元気つけて

今日こそは良く寝てくださいね?

此処の所お疲れみたいなので、私も心配です……」


「ありがとうメルちゃん……心配掛けてごめんね

今日はメルちゃんに従ってよく休む様に……」


<――などと話して居た最中

突如としてミリアさんが大声を上げた。


俺達が驚いていると――>


………


……



「……そう言えば伝えるのを忘れてたよ!

主人公ちゃん達が良く休める様に

部屋もグレードアップしてるからよく休むんだよ? 」


「そ、そうだったんですね……お言葉に甘えてよく休みます! 」


「ああ、元気な主人公ちゃん達を見るのが

今のあたしの一番の幸せだからねぇ」


<――しばらくの後、食事も終わり

俺達は“グレードアップ”された部屋で就寝する事と成った――>


………


……



「ふわぁぁ……今日は疲れたなぁ……二人も今日はよく休んでね」


「……zzz 」


「マリアはもう寝てるし……」


「主人公さんも……ふわぁぁっ……ハッ!

おっ……おやすみなさいっ! 」


「あははっ! ……メルちゃんもよく寝てね、おやすみ」


………


……



《――彼らが眠りについた頃、北区のある教会では


深夜……水晶で何処かへと通信を試みて居た“神父”と

水晶越しでも伝わる程に禍々しく、重苦しい気を放つ魔族の姿があった――》


………


……



「……はい、やはり主人公と言う男は障害になるかと。


この国の防衛力が急激に発展した所為で、差し向けて頂いた魔物も全て

はい……大変申し訳ございません。


……この上更に面倒な事に、奴が発起人と成り

一度は破壊した筈の異種族共との連携を……んっ?!


誰だッ!? ――」


《――忘れ物を取りに来たのであろう。


若いシスターは……あろう事か

この一部始終を目撃してしまった――》


「水晶に映っているのは……ま、魔族っ?!

神父様……どうしてっ?! 」


「チッ! ……見られたからには仕方が無い

丁度、腹も減って居た所だッ!!! ――」


「いやぁぁぁぁぁッッ!! ……」


………


……



「――お見苦しい所を失礼致しました。


はい、では失礼を“魔王様”……」


………


……



《――翌日


久々の熟睡と成った主人公は、清々しい朝を迎えて居た――》


「……んっ……朝か。


くあぁぁっ……良く寝たぁ~っ!

今日は久々に疲れが取れたな……これも

“グレードアップ”された部屋のお陰なのかな? ……」


「あっ! ……おはようございます主人公さん!

元気そうなお顔ですね……良かったですっ♪ 」


「おはよう! ありがとメルちゃん……ってあれ?

マリアは? 」


「へっ? マリアさんならそっちのベッドに……って、あれっ? 」


「ん? まさか……やっぱり!

どんだけ“寝相悪い”んだよお前は!


……おいマリア、起きるんだ! 」


《――直後

主人公かれはベッドと壁の隙間に“挟まった”マリアを発見した。


必死に揺り起こそうとして居た彼だったのだが――》


………


……



「んっ……えっっ?! 閉じ込められてるっ?!


……って主人公さん?!

まさか、ついに我慢の限界に達して

私を無理矢理襲うつもりですかっ!? 」


「……だから何で毎回お前はそうなるッ?!

お前がベッドから落ちたんだろ!? 早く出てこいよ! ……はぁ~っ」


「ちょっとぉ! “呆れる”のやめてくださいよ!

よいぃぃぃぃっ……しょっ! ……トウッッ!


……おはようございますッ! 」


《――勢いを付け隙間から飛び出たマリアは

体操選手の様な決めポーズをしながらそう挨拶した。


だが、最早ツッコむ元気すらも失って居た主人公は――》


「はい“技術点”は高いね~……おはよう。


……っと、今日は何だったっけ?

この所やる事が多過ぎて訳分から無く成って来た……」


《――と、完全には取り切れていない疲れからか弱気を漏らして居た。


だが、そんな彼に対し――》


「私、これでも事務仕事は得意な方ですから任せてください」


「マ……マリアさん程には役に立てないかも知れませんけど

私も頑張りますっ! 」


《――と、彼の補佐を買って出た二人

そんな二人の優しさに感謝しつつ――》


「……二人共ありがとう、正直助かるよ。


でも、いくら二人が“秘書官”扱いだからって二人共無理はしないでね?

そうと決まれば、先ずは朝ごはんだ! ……」


《――二人の優しさを受け、少し気が晴れた様子の主人公は

朝食後、晴れ晴れしい表情を浮かべ

二人と共に大統領執務室へと向かった――》


………


……



「……待っておったぞい!

今日の開校式典には人間だけで無く各種族からも生徒が沢山来る予定なのじゃが

予想して居ったよりも数が多くてのぉ、教室を二つ用意せねば成らん程じゃよ!

とは言え……貴族階級の者達は一人も来んのじゃがな。


まぁ、それはそれとしてじゃ……今日の式典では

主人公殿に挨拶などして貰えたらと思うて居るのじゃが……構わんかのぉ? 」


「ええ、そう言われると思ってある程度用意はしてましたから! 」


「それは良かった……では、そろそろ式典の時間じゃ。


教室まで行こうかのぉ……」


《――直後、ラウドに連れられ城内を移動して居た一行は

部屋のはりに“義務教育学校”の文字がかかげられた部屋の前へと到着し

急遽用意されたと思しき“隣の教室”と共に

真新まあたらしい教室の姿を目の当たりにする事と成った。


他に類を見ない“城内への教室の設置”……無論、妨害対策など

理由は様々ある様だが、一番の理由は“警備が最も厳重”だと言う事であった。


とは言え、開校式典はとてもなごやかな空気の中開かれ――》


………


……



「……さて、これより

政令国家“義務教育学校”の開校式典をり行うぞぃ。


ずは、最大の功労者であり本校の発案者

我が国の教育大臣でもある主人公殿に簡単な挨拶をして貰おうと思う。


……頑張るんじゃよ」


《――ラウド大統領に促され

緊張の面持ちで登壇した主人公――》


「は、はい……


……え~皆様、只今紹介に預かりました主人公と申します。


本校を開校するにあたり、様々な方々に多大なる御支援を頂き

お陰様で、本日この国に“差別”や“迫害”を拒絶する

純粋な教育の場を誕生させる事が出来ました。


本校は、種族の壁を取り払い

皆が幸せに暮らせるいしずえに成れる様目指し作られた学校ですが

その輝かしい未来は、各教員の皆様と生徒の皆様の手にあります。


ぜひ、お互いを尊重した温かい教育の場を育んでください!


それでは、これにて挨拶と代えさせて頂きます」


<――挨拶をして居て薄っすらと思った。


これは完全に“校長先生の長過ぎる朝礼”じゃないか?


と――>


「……それでは

“義務教育学校”開校じゃっ! ……皆、良く学ぶのじゃよ~っ! 」


<――ともあれ。


ラウドさんの開校の合図と共に、人間だけで無く各種族の子供達や

教育を希望する大人達は皆、何処か楽しそうな笑顔を浮かべて

教室に入って行った……だが、そんな姿を見ていて思った。


……不登校で勉強なんてまるでダメダメだった俺が

まさか“学校の立ち上げ”に関わるなんて、とても皮肉な話だと。


けど断じて嫌な気分じゃないし、そもそも始めてだった……


“学校”と名の付く所が

輝いて見えたのは――>


………


……



「ラウドさん……実は俺、学校なんて大嫌いだったんです。


けど……そんな大嫌いだった学校が

なんだか今日はとても華やかな物に見えてるって言うか……その

“睡眠不足”におちいった甲斐がありました! 」


「ふむ……わしはそんな主人公殿じゃからこそ

作る事が出来たのじゃと思うぞぃ? 」


「そんな大層な人間じゃ無いですよ……


……俺はただこの国が良い方に向かって行く事を願っているだけですし

そもそも、俺は勉強してこなかったんで……学は無いですから」


「そうですよね~……主人公さんに学は無い筈です! 」


「おいマリア……確かに事実だけど

そうも綺麗に肯定されると流石にムカつくぞ? 」


「……じゃれ合いはその辺にしておくのじゃよ主人公殿。


それよりも、主人公殿……少なくとも

今日、主人公殿で無ければ成らん仕事は無い。


って……久しぶりに自由に過ごすと良いぞぃ! 」


「本当ですか?! ……じゃあ二人共、一旦ヴェルツに帰ろうか! 」


《――直後

ヴェルツに帰宅すると、えて遊ぶ準備もせず

久々の休みをのんびりと過ごす事に決めた一行。


久々の穏やかな時間を過ごし……昼食時、一行が料理に口をつけた瞬間


血相を変えたカイエルが現れた事で事態は急転し――》


………


……



「……主人公君は居るか?! 」


「ん゛ぐっ?!! ……ゴホッ! ゲホッ!


……は゛い゛っ! 此処ごごに゛居ま゛ずが……ゲボッ……」


「食事中だったか、申し訳無い……しかし事態は一刻を争うのだ! 」


「な……何が遭ったんです? 」


「リオス殿が“例の件”で有力な情報を掴んだとの報告が入ったのだ

至急、大統領執務室へ集まって頂きたい!! 」


《――言うや否や、慌てた様子のカイエルは

主人公の腕を引き無理矢理にでも連れて行こうとした。


だが、事情を知らぬミリアは――》


「あんたっ! ……主人公ちゃん達はまだ食べ始めたばかりだよ?!

少し位待ってやれないのかい?!! 」


「ミリア、事は一刻を争うんだ!! 」


《――言い争う二人を静止しつつ

主人公は――》


「……ミリアさん、これ必ず食べるんで

ご迷惑でなければ取っておいてくださいっ!!


取り敢えず、二人も行こう!


……カイエルさんも掴まって下さい!


転移の魔導、大統領執務室へ! ――」


《――直後

カイエルと共に執務室へと転移した主人公。


執務室には既に全大臣が集まっており、重苦しい空気に包まれていた――》


………


……



<――俺達の到着早々、ラウドさんの一声で開かれた緊急会議

そんな中、重い口を開いたリオス族長は――>


「……僕が情報収集をしてた時

教会の周囲を彷徨うろつく怪しい女性が居たんだ。


それで、気になったから話を聞いてみたら……どうやら

“その子”の母親らしいんだけど、シスターが一人行方不明らしくてね。


……でも、敬虔けいけんなシスターだから

何も言わず何処かに行く様な事は無いみたいでさ。


教会に忘れ物を取りに行ってから

行方が分からなく成ったって言ってたんだけど……


……不味まずい事に、その教会が有る場所が“北区”だったんだ」


「その子に取っては良く無い流れですね……リオス族長は教会へ? 」


「ううん……行って無いよ。


もし魔族が潜んでいたら感づかれて逃げられそうだし

僕一人だと流石に“戦力不足”かもだし……」


「成程……では、その母親には

教会へ行かない様に注意発起はしましたか? 」


「あっ、してないっ! ……」


「なっ?! ……もし魔族が居るならその母親も危ない!

急ぎ北区の教会へ行かなければ!!


俺はその場所に行った事が有りません……誰か、転移出来る方は!? 」


《――直後


“私が! ”……立ち上がりそう言ったカイエル。


念の為、ラウド大統領を執務室に残し

カイエルの転移魔導で教会前へと転移した一行は――》


===第十九話・終===

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