第百八五話「“復活”……楽勝ではなかった偶然」
<――精霊女王九輪桜から譲り受けた
“聖泉水”
この水が持つ聖なる癒やしの力に依って起きた祠での奇跡は
“モナークの復活”と謂う待ち望んだ結果を俺達二人に齎してくれた。
だが、その反面……力の全てを俺に譲り渡し、魔族以外には譲る事の出来ない
“受け継がれし歴代魔王の力”すら奴に奪われ……
……謂わば“空っぽ状態”だった彼奴が
何故、此程までの“奇跡的な復活”を遂げられたのか……
……喜ばしい状況の中にありながら
そんな漠然とした不安と疑問を感じていた俺。
だが、その身を案じ不安に陥っていた俺の気持ちなど
当の本人は一切気付いていなかった様で――>
………
……
…
「……お、愚か者とか酷過ぎだろッ?!
てか、人が心配してるってのにお前って奴は!! ……」
<――復活早々“らしさ”全開な発言で俺の事を煽ったモナークに対し
懐かしさと腹立たしさが混じった様な感情が押し寄せた俺は
自分でも気付ける程に“妙なテンション”でブチギレていた。
だが……そんな俺の様子など見えていないかの様に
モナークに対し静かに跪いたアイヴィーさんは――>
「モナーク様……御復活を心よりお祝い申し上げます。
畏れながら、取り急ぎご報告を。
先ず、敵大将……いえ
“卑怯者”の討伐は主人公様が……次に
卑怯者の手に渡った“受け継がれし力”は
主人公様の御協力に依り私が回収致しましたのでご安心下さい。
そして……現在、モナーク様の代わりを務める為
私は“暫定的魔王”と名乗り、配下の者達を取り纏めて居る次第ですが
現在も私の身体に流れ続けている“受け継がれし力”と共に
何れに於きましても、迅速にモナーク様の元へと御返しする為
“復活祭”と共に儀式を執り行う心積もり……では
あるのですが……」
<――報告の途中、何かを謂い掛け口籠ったアイヴィーさん
……この場に暫しの静寂が流れた後
思い切った様に顔を上げた彼女は――>
………
……
…
「その前に一つ……御聞かせ願いたい事が御座います」
<――そう謂うと
モナークに対し、鈍い俺でも理解る程の
“怒り”を感じさせる表情を差し向けたアイヴィーさん。
そしてこの直後、質問を許したモナークに対し――>
………
……
…
「モナーク様……何故、私共を投げ捨て“死出の旅”をお選びに成られたのです?
何故、右腕である私を捨て駒として御使いに成られなかったのです?
何故……別れの一つすら告げてはくれなかったのです?
其れ程迄に……私は頼り甲斐の無い存在なのですか? 」
<――真っ直ぐにモナークを見つめたまま
表情の一つも変えず、流れ落ちる涙に声を上擦らせる事も……
……その涙を拭う事も無く、気持ちの全てを吐露したアイヴィーさん。
謂うまでも無く……俺だって彼女と同じ気持ちだ。
あの日、モナークは何も語らず一方的に俺達の事を
謂わば――
“捨てた”
――そして、俺達に全ての尻拭いをさせた挙げ句
アイヴィーさんや俺の心を容易く踏み躙った。
無論、本人にそんなつもりは無かったのかも知れないが
あの行動は確かに多くの心を傷付けた。
一体何故、此奴はあんな行動を取ったのか……
……俺達は、此奴の復活を祝いたい反面
“暴挙”の真意を聞かない限り、納得が出来ないとも考えていた。
何故わざわざ俺に全ての力を渡し、不利な状況を作ったのか
まるで、負け戦を“敢えて選んだ”かの様に……そして。
何故……物理的な力も魔導力も“受け継がれし力”すらも
一切何も持ち合わせていない筈の此奴が
何故、何一つとして不足していないかの様な出で立ちをしていられるのか。
この他にも数多くの疑問と怒り……そして、不信感を持って居た俺達に対し
モナークは、何時もと変わらぬ態度のまま――
“フッ……愚か者共が”
――と謂った。
無論、この発言の真意が理解出来る筈も無く
余計に腹が立った俺は、アイヴィーさんの前に割り込み――>
………
……
…
「モナーク……お前ッ!!
俺達二人がどれだけ苦労してお前の事を復活させようと動いたか
俺達二人がどれだけお前の事を心配してッ!! ……」
<――モナークに掴み掛かり、怒りをぶつけた。
だが、モナークはそんな俺の手を振り解くと――>
「……我が力の全てを手に入れた主人公ならば
何よりも……貴様の“甘さ”ならば、我が配下を必ずや守護するであろう。
そしてアイヴィーよ……我が右腕である御主ならば
我が配下の行く末を任せるに足る力を有していると考えただけの話よ……」
<――と、余りにも都合の良過ぎる理論をぶつけて来たモナーク。
だが当然、この発言程度では全く以て納得出来なかった俺は
尚もモナークに食って掛かった。
すると――>
「……本来ならば
彼奴の様な“馬糞”にくれてやる命など有りはしない
だが、我が退く程度の事で配下の多くが救われると謂うのならば……
……彼奴に強いられ、彼奴に付き従う事しか出来ぬ
哀れな同族共をも護る事が出来ると謂うのならば――
――我が魔王として果たすべきであった矜持も満たされると謂う物よ。
我の様な……魔王と謂うには烏滸がましい者に付き従い続け
果てに裏切られた同族共に対する詫びとでも謂うべきか……」
<――と、一人で納得した様な態度を取ったモナーク。
だが、そんなモナークに対し――>
………
……
…
「……モナーク様。
あの日……貴方が魔王と成られた日
貴方は私を“影之者”の長と任命しその全権を私にお任せ下さいました。
……変化の一つも満足に行えぬ
影之者としては不適当である筈の私をで御座います。
ですが……あの日から、貴方の采配に依り耐え難き日々から救われた私は
自らの人生を貴方の道具と捧げる決意を致しました。
にも関わらず……何故、共に散り逝く事を命じては頂けなかったのです?
何故、私の事をお残しになったのですか……」
<――声を震わせ
大粒の涙を流しながらそう謂ったアイヴィーさん。
そんな彼女に対し――>
………
……
…
「アイヴィー……御主の謂う願いなど全て容易く叶えられたであろう。
だが……御主の父すら護れなかった我が
大恩ある御主までもを道連れにするなど……虫唾が走る。
……アイヴィーよ。
御主は自らを我の“道具”と謳い
我への忠誠を示した積もりなのであろう……だが。
違えるな……一度壊れた道具は二度と役には立たぬ
我が右腕アイヴィーよ……二度と
我が道具の“生殺与奪”を謳うで無い。
何よりも……我は既に魔王では無い。
……故に、御主自身が“暫定的魔王”と名乗り
“受け継がれし力”を有している事に何の不都合もありはせぬ。
我は謂った筈――
“順当であれば、御主が次期魔王で在ったやも知れぬ”
――とな。
アイヴィーよ……我すらも配下と為し、我が種族の繁栄を目指す長と成り
その力で……御主の“耐え難き日々”をも消し去るが良い。
……その上尚気に入らぬと謂うのなら
有り余るその力を以て、我を滅するが良い。
これは……あの日
御主が我に授けた“刻”の恩である……」
<――俺にはさっぱり理解の出来ない二人の会話。
だが……少しだけ理解出来た事がある。
それは……此奴は此奴なりに反省をしているし
アイヴィーさんの事をとても信用しているからこそ
こんな危ない橋を渡ったって事だ。
……そして。
俺に対しても……まぁ、かなり失礼な言い方では有ったが――
“命を懸ける位には”
――信用して居たからこそ取った行動だったのだと分かった。
ともあれ、そんなモナークに対し――>
………
……
…
「……モナーク様。
“私を魔王に”などと言う戯言は、私の言葉を疎ましく思い発した物と考え
畏れながら……捨て置かせて頂きます。
それと……遠き“刻”のお話を少し。
……あの日、歴代の魔王達は
数多くの魔族の中から貴方を選び……そして全てを託しました。
紛う事無きその判断を当時の私はとても喜びました
そして……今も尚、その判断を尊重しています。
モナーク様……魔王としての御力は
貴方にこそ相応しい事と言う事が少しはご理解頂けましたでしょうか? 」
<――そう謂って頭を垂れたアイヴィーさん。
だが、そんなアイヴィーさんに対し
モナークは……アイヴィーさんは勿論の事
俺すらも予想していなかったとんでも無い話を口にした――>
………
……
…
「アイヴィーよ……御主が我に対し受け継がれし力を差し出す為には
通常の魔族相手とは違い、御主の生命すら奪うに等しい儀式と為る。
御主程の者を犠牲にした上に成り立つ“魔王”など……願い下げよ。
……それでも尚我に“魔王の力が必要だ”と謂うのならば
我の内へ芽生えた“力”を見るが良い……」
<――直後
俺は勿論の事……何時も冷静沈着なアイヴィーさんですら
驚きの表情を浮かべる事と成ったモナークの発言――
“自らの内に芽生えた力”
――そしてこの瞬間
謎だった此奴の“元気さ”に合点が行った。
だが、同時に新たな疑問が芽生えた――
“此奴は一体、如何にしてその力を得たのだろうか? ”
この新たな疑問は、俺と同じ疑問を感じていたであろう
アイヴィーさんの問い掛けに依って明らかと成った――>
………
……
…
「……モナーク様、畏れながら質問を。
そ、その……新たな力……つまりは
“魔王の力”が御目覚めに成ったとは……つまり……」
「フッ……今御主らが見た通りであろう」
「……で、ですがッ!!
新たな魔王の力など、先代先々代……言い換えれば
数千年もの間発現する事の無かった御力で御座いますし!
そもそも容易く手に入れられる様な物では無く! ……」
<――普段冷静沈着なアイヴィーさんがこんなにも興奮する理由は明らかだ。
……“魔王だから”と必ず得られる様な容易い力では無い上
しかも“あの状況下で”歴代魔王達が成し得なかった新たな力の発現を
数千年振りに成し遂げたのだ……興奮するのが普通だろう。
だが――>
………
……
…
「……と、取り乱し失礼を。
しかし、一体どの様にしてその御力を発現為されたのです? 」
<――僅かに呼吸を整えた後、再びそう訊ねたアイヴィーさん。
すると――>
「……何千年もの間、新たな魔王の力が生まれぬ中
何故、突如として“半魔族”である我などに新たな力が目覚めたのか……
……無論、我がその術を知り動いた訳では無い。
だが、我の行動が故であったと謂うほかあるまい」
<――そう答えたモナーク。
そして――
“モナーク様の行動? ……一体何を為さったのです? ”
――そう訊ねたアイヴィーさんに対し
モナークは――>
………
……
…
「……過去、我ら魔族に取って食料で有った“人族”共から見れば
我ら魔族が“破壊者”である様に
“人族”に食われる“家畜”からすれば“人族”もまた“破壊者”であるのだ。
何れの立場であれ……何れにも等しく矜持があり
護るべき者共の為――
“長と成る者は自己犠牲を厭わぬ覚悟と
己が全てを託す覚悟を有するべきである”
――それこそが
新たな力を得るに必要な“矜持であった”と謂うだけの事よ。
とは言え……目覚めたと謂うには程遠く
“墓標に等しき”姿で在った事も
馬鹿の一つ覚えの様に“カレーと福神漬”を手土産に現れ
毎度醜悪な泣き声を発し続ける主人公の姿を目の当たりにし続けると謂う
拷問にも等しき永き刻は……“石化”など比べる迄も無い
耐え難き苦痛で在ったがな……」
「な゛ッ!? ……み、見てたのかよ?! 」
「フッ……幾度かならば愉快であったぞ? 」
「お、お前なぁッ!!! ……」
<――この何時もと変わらぬモナークの毒舌っぷりに
若干は苛立ちつつも、いつの間にか笑顔を浮かべていた俺。
だが、その反面……此奴の謂う通り
アイヴィーさんと共に此奴の能力値を確認した俺は
此奴が新たに手に入れたと謂う魔王の力“以外の能力値”が
著しく低い事にも気付いていた。
……何時もと変わらぬ態度でぶつかってくる此奴の姿につい見逃していたが
此奴は、俺に対し元々持って居た力の“全て”を渡したのだ。
要するに……此奴の中に生まれた“新たな魔王の力”がどれ程の物であれ
俺が今、唯の一度でも……それこそ
“デコピン”の一つでもしてしまったら
此奴は間違い無くその生命を終わらせる羽目に成るって事だ。
そして……この事実を知った瞬間、俺の中に大きな不安が押し寄せた。
……強がりで毒舌だが、実は優しくて口下手で気遣いの出来る此奴が
何かの間違いで本当にこの世を去ってしまったら……だが
一体何をどうすれば此奴が一方的に破った契約の所為で
俺の身体へと流入して来た力を全て返す事が出来るのか?
既に契約が破棄されて居るとするのならば
一体何をどうすれば再び契約を結ぶ事が出来るのか。
そして何よりも……此奴が契約を受け入れてくれるかどうかすら
定かでは無い現状が、何よりも不安だった。
だが……そんな俺の漠然とした不安など知る由も無い
モナークとアイヴィーさんは“次期魔王”に関する話を続けて居て――>
………
……
…
「……何れにせよ、モナーク様こそが魔王であり
私などが魔王を名乗るなど甚だ烏滸がましき事で御座いますッ!
到底……受け入れられる様な物ではありませんッ! 」
「フッ……よもや御主が斯様に頑固とはな。
だが、魔王と謂う役職は無理強いする手合では無い
……良かろう。
今まで通り、御主は我が右腕であり……影之者の長として
……我が側付きとして居るが良い。
だが……“受け継がれし力”だけは
何を宣おうとも既に御主が物と心得よ……」
「で、ですがモナーク様っ!! ……」
「アイヴィーよ……これ以上は許さぬぞ」
「モナーク様……承知致しました。
私の中にある“受け継がれし力”は
モナーク様からのからの賜り物として……
……このアイヴィー、守護し続ける事をお誓い申し上げます」
<――そう謂って跪き
再びモナークとの“関係性”を再確認したアイヴィーさん。
その一方で……このタイミングなら
二人が、改めて“再確認”をしたこのタイミングならば
俺とモナークの間に結ばれていた契約に関する話も持ち出し易い……
……そう考えた俺は
この直後――>
………
……
…
「な……なぁモナーク。
アイヴィーさんとの話が済んだんなら、俺との契約に関する話を……」
<――そう謂い掛けた俺に対し
モナークは――>
「フッ……既に我の力は全て貴様に渡った
よもや、更成る力を寄越せと宣う腹積もりか……」
「は? ……違うに決まってるだろ?!
俺は唯! ……」
<――と謂い掛けた瞬間
このまま“俺の中に浮かんでいる考え”を伝えたら
此奴が拒絶しそうな気がして思わず口籠ってしまった俺。
すると、そんな俺に対し――>
………
……
…
「……我の持つ力は全て貴様へと渡った。
つまり、今貴様の身体には
“我が半魔族の力が流れている”と謂う事だ……
……よもや、気に食わぬと謂うつもりでは無かろうな? 」
<――と、何か大きな勘違いをした様子で
俺の顔を睨み据えながらそう謂った。
当然、この疑いを全力で否定した俺だったが……同時に
全ての力が流れていると謂う言葉の意味を考えた俺は
最高の解決策を思いつく事と成るのだった――>
………
……
…
「なぁ……今、俺とお前の間には“契約”が無いんだよな? 」
「その通りだ……何か不満か? 」
「あ~……やっぱりか。
じゃあさ……もし仮にお前が今、政令国家を襲おうと思ったら
契約の外だから簡単に襲えるって事だよな? 」
「フッ……斯様に愚劣な考えに至って居たとはな」
「……ま、まぁ肯定として受け取るけどさ。
兎に角、だとするならちょっと怖いしさ……その
モナーク――
――俺と“魂之割譲”再契約してくれないか? 」
「フッ……不愉快な。
貴様が斯様に愚かな考えを持つ者で在ったとは……」
<――正直な事を言えば完全な誤解だし凄く傷付いた。
だが、俺の考えを実現する為には
たとえ“愚か者”だと思われたとしても
何としても……此奴に今直ぐ再契約させたかったのだ。
だから、俺は――>
………
……
…
「や……やーいやーいッ!
仮にも魔王って呼ばれてた奴が生命の恩人の言う事すら聞けないとか
マジ見損なうしぃ~? ……マジありえねぇって謂うかぁ~!
魔王って結構卑怯者だったのかなぁ~ッ?! 」
<――そう必死にモナークを煽った。
だが、この瞬間……アイヴィーさんがブチギレて居る事に気付いた。
正直……モナークすら比べ物に成らない位の覇気に怯え
膝を震わせていた俺は、それでも必死に煽り続けた。
結果――>
………
……
…
「フッ……我にその様な口を聞く者など
貴様を於いて……他にはおらぬであろう。
不愉快だが……良かろう」
<――アイヴィーさんに呪い殺されそうな既の所で
俺との再契約を受け入れてくれたモナーク。
ともあれ……再び“某宇宙人との友好の証”みたいなポーズで契約を結び
モナークとの間に契約と謂う名の“絆”が生まれた事を
確りと確認した俺は、この
“直後”――>
「こ、これで……良し。
さてと……モナーク」
「何だ? ……」
<――俺は
モナークに対し――>
………
……
…
「あの日の……御返しだッッッ!! 」
「……ッッ?!! 」
<――俺は
モナークに対し、フルスイングで“ビンタ”をした――>
………
……
…
「貴様……何の積りだ……」
<――と、明らかにブチギレているモナークと
此奴以上にブチギレて居る鬼神の如きアイヴィーさんに
本当に殺られそうな何かを感じつつも
俺は――>
「何って、あの日の仕返し……いや御返しって“言った”だろ?
……あの時、あの日お前から受けた“ビンタ”は
汎ゆる意味で“痛かった”し……そもそもお前の力は
俺に取って余りある力過ぎて制御出来ないって言うかさ……
……だっ、だから!
かっ……返しただけだし?! 」
<――妙に照れくさくなってしまった俺は
顔から火を吹きそうな状態になりながらもそう伝えた。
一方、俺の“暴挙”の真意に気づいた様子のモナークは――>
………
……
…
「フッ……貴様と謂う男は何処までも甘い男の様だ
我に“力を分け与える”為、道化を演じ……ん? 」
<――そう、何時もと変わらぬ態度で
俺に対し“感謝を伝え掛け”……途中で固まったモナーク。
そして――>
………
……
…
「いや“ん? ”……って何だよ?
これでお前にも力が戻って俺も元通りに……って、あれ?
何だろ……何か、全然体に力が入らないんだけど……」
<――この時
自らの“大間違い”に気付くのに要した時間は本当に極僅かだった。
俺は……“分け与える”どころか、契約破棄に依って
“全部の力を”モナークに渡してしまって居て――>
………
……
…
「ちょ……か、返してくれ……何だか頭がふらふらする……」
「フッ……断る」
「ちょッ!? ……た、頼むから返してくれって……せめて半分
いや、ちょっとだけでも良いから……てか、マジで死ぬから……」
「フッ……全く、貴様の見通しの甘さには驚かされる。
愚か者め……」
「分かったから……愚か者で良いから早く……」
………
……
…
<――この後
モナークの発動した“力之譲渡”のお陰で何とか九死に一生を得た俺は
危機管理不足とモナークに対する無礼な煽りっぷりを
アイヴィーさんからこっぴどく叱られる事に成るのだった――>
===第百八五話・終===