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第百八〇話「無理矢理な“休息”は楽勝ですか? 」

《――政令国家の執務室で執り行われた緊急の話し合い。


“記憶を失った主人公かれの扱いについて”


……議論の結果

この所過労かろう気味であった彼の肉体的疲労を取り去る為

えて直ちに“記憶を戻す”事はせず、数日から一週程

現状のままで“休ませる”決定をした大臣達。


だが……良し悪しに関わらず

この世界での記憶を“全て”失っていた彼に取って

この日をさかいもたらされた“休息”は、彼の精神と肉体に対し


“良し悪しに関わらず”凄まじい“刺激を与える”事と成った――》


………


……



<――この部屋に閉じ込められてから随分ずいぶんと時間がった。


だが、不思議とストレスは感じていない

何故かは知らないが……この部屋に妙な安心感がある所為だろう。


まぁ、単純に――


あたり一面見た事の無い景色過ぎて、出歩くのが怖い”


――ってだけなのかも知れないが。


兎も角……本当ならば、この部屋から

どうにかして脱出するべきと考えて居た一方

迂闊うかつに逃げ出し、またあの“ロリっ子”に捕まってしまったら

またあの子の悲しむ姿を見る羽目になると考え、脱走を実行に移せず居た。


……まぁそもそも、知らない場所で見ず知らずの女の子に監禁され

その子の心配をしている事自体が変なのだろうが。


それは兎も角として……腹が減った。


仁王ニオウ像が裸足で逃げ出す位、威圧感満載の“石像”がまつられていた場所から

決死の覚悟で逃走……そして失敗し

あれよあれよとこの部屋に閉じ込められてから何も口にしていない。


と言うか……そもそも、俺は“コンビニ飯”を買いに行った筈だ

何故、こんな訳の分からない場所に居るのだろうか?


そして何故……鏡に写った俺の姿は

こんなにも“イケメン”で

“ナイススタイル”に成っているのだろうか? ――>


………


……



「……もしこれが夢だとしても

目覚めた時、この顔のままで目覚めさせて貰えないモンかな?

そうすれば“年齢=彼女いない歴”の俺にも一筋の光が……」


<――などと、鏡に写った自分に見惚みとれる余り

“情け無さカンスト発言”を繰り出していた俺。


だが、この直後……数名の女性の声と

扉を叩く音が聞こえ――>


「は、はい!! 今開けま……って。


そ、その……此方こちらからは開けられないんですけど……」


<――そうこたえた俺に対し


“心配しないで下さいね! ……あっ、後

その……飛び掛かったりしないで下さいねっ! ”


と……まるで人を猛獣もうじゅうか何かの様に言いつつ

扉を開け、部屋へと入って来たのは……


……“美人”で“褐色肌”で“巨乳”な女の子だった。


そして……遅れる事わず

彼女と一緒に食事を持って入って来た二人の美女。


だが、余りにも美女揃い過ぎて

明らかに“現実では無い”と判断した俺は――>


………


……



「はぁ~っ……夢って残酷ざんこくだよな。


こんな美女だらけでハーレム状態の夢を見せて置きながら

いざ“そう言う行為”におよぼうとすると目が覚めるんだぜ?


ってか、誰だったかが言ってたな――


“夢はその人の得た知識からしか生成されないから、例えば

食べた事の無い物を食べ掛ける手前で目覚める様に出来てる物だ”


――ってさ。


って事は、今直ぐこの美女達に襲い掛かって

胸とか揉みしだこうとしたら……その経験が無い俺は

“直ぐに目が覚める”んだろうな……」


<――夢だと思ったからこその発言を繰り出した俺。


だが、この直後――>


「ねぇ主人公、私達に……その……そんな事したいの?

べ、別に私は主人公相手なら私は構わないけど……」


「……ダ、ダメですマリーンさんっ!!

今は主人公さんに沢山お休み頂く為の時間で……」


「それはそうだけど……でも

メルちゃんだって主人公の事好きなんでしょ? 」


「そっ、それとこれとは!! ……はぅぅぅぅ」


<――と、耳を疑う発言が飛び交ったかと思うと

俺の取り合い……いや。


“言い合い”をしていた二人とは別の女性が――>


「あの~……主人公さんはいずれにしろド変態なので

必死に迫ったら案外簡単に“揉む”んじゃないんですかね?


って言うか、例の積木ジェンガの時……お二人共

“腰が立たない程”散々“揉まれて”ましたよね? 」


<――と、爆弾発言をした瞬間


俺が否定するよりも遥かに早く

言い争っていた二人は顔を赤らめ――>


「ち、違いますマリアさん!!

あれは不可抗力ふかこうりょくで……ですよねマリーンさんっ?! 」


「そ、そうよっ! あの時は私達が頼んだんじゃ無くて

主人公に押し倒されて無理やり揉まれてただけで! ……」


<――と、完全なる冤罪えんざいを吹っ掛けて来た上に

俺に同意を求める様な視線を投げ掛けて来た二人。


……だが勿論

こんな無理矢理が過ぎる“美人局つつもたせ”に引っ掛かる程

俺は甘く無い――>


………


……



「……っざけんな!!


全員が全員理解不能な程の“美女揃い”なのは認めるけど

それにしても俺がそんな無理矢理な事する訳無いだろ?!

第一俺は! 年齢=彼女居ない歴の! ……」


<――と、ブチギレつつ

己の正当性を訴えようとしていた俺に対し

二人から“マリア”と呼ばれて居た女性は――>


「へぇ~……でも主人公さん。


ついさっき――


“今直ぐこの美女達に襲い掛かって、胸とか揉みしだこう”


――って言ってませんでしたっけ? 」


「い゛ッ?! ……いや! 変な所で切るなよ!?

その後の流れを意図的な所で切るなッッ!!

まぁ、全文繋がってたとしても

完全に最低な発言ではあるとは思うけど……それでも、切るなッ!! 」


<――と、精一杯の文句をぶつけた俺の顔を

キョトンとした表情で見つめた“三人娘”……そして

妙な静寂せいじゃくが訪れた事に俺が狼狽うろたえ始めていた


その時――>


………


……



「よ……良かった……ですっ……


記憶が無くても、主人公さんが……主人公さんのままで……」


<――そう言いながら涙を流した


“褐色巨乳の美女”……もとい。


“メル”と言う名の女の子……そして

この後、彼女につられるかの様に――>


「もう……何だか久しぶりに主人公らしい雰囲気を感じられて

泣いちゃったじゃないのよ……主人公のバカっ……」


<――そう言って涙をぬぐった


“色白巨乳の美女”……もとい。


“メル”から“マリーン”と呼ばれていた女性。


そして、二人から“マリア”と呼ばれて居た甲冑姿の女性は――>


「そうですね……記憶が無いだけじゃ無く久しぶりなのに

“ツッコミ”の“キレ”は信じられない程抜群ですね~」


<――と言った。


だが……彼女達は何故

しきりに俺の事を“記憶が無い”と形容するのだろうか?


俺には間違い無く自分自身の記憶が有るし

ついさっき迄“クソゲー”に苛立いらだってた筈だし

ついさっき迄コンビニの帰り道を歩いて居た筈だ。


なのに何故、この美女達は――


――俺みたいな“人生負け犬男”の発した言葉に

“涙を流して喜んでいる”のだろうか?


そして何故……彼女達の涙は


こんなにも、俺の心をえぐるのだろうか? ――>


………


……



「あ、あの……俺の所為で嫌な気持ちにさせたなら謝ります。


だから、その……もう、泣かないで下さい……」


<――そう言って頭を下げた俺に対し

三人娘達は慌てて頭を上げる様言ってくれた上

俺の“元気そうな姿に安心して泣いただけだ”と言ってすらくれた。


だが、俺が“記憶喪失きおくそうしつ”の話を振ると途端とたんに口数が減り――>


………


……



「えっとその……そう!

ずはご飯を食べて……その、元気だして下さいっ! 」


<――と、無理矢理パンを口にじ込んで来た“メル”ちゃん。


そして……そんな彼女の

“口封じ”の様なじ込みに“活路かつろを見出した”とばかりに

残る二人もスープや主菜の入った器を手に持ち――>


「は~い……全部一気飲みしましょうね~主人公さ~ん

はいッ! 飲~んで、飲んで! 飲んでぇ~っ♪ ……」


「い、いや……何でそんな

“強制一気コール”みたいな事を湯気のあがる熱々スープで……


……って熱っ?!! 」


「……何してるのよマリアさん!

普通、パンの後は主菜でしょ!?


……はい主人公、沢山食べて元気になってね♪ 」


「あ、有難うございま……って。


ステーキを一枚“丸ごと”は流石に……うぐぐっ?! 」


<――端的たんてきに言おう。


俺は“死に掛けた”


……この後

三人娘達に自分で食べるむねを“強く”伝えた俺は

部屋のすみで申し訳無さそうにしている三人を横目に

なか不貞ふて食いの様な形で食事を始めたのだった。


嗚呼……“普通に食べると”信じられない程美味おいしい。


……ともあれ、暫くの後。


食事を終えた俺に対し、メルちゃんは――>


………


……



「あ、あの……主人公さん。


何かやりたい事とかありますか? ……あっ、でもそのっ!!

エ、エッ……エッチな事以外でっ!! 」


<――と、顔を真赤にしながらそう言った。


この“アニメキャラもびっくり”な姿に

思わず“えてしまった”のは兎も角として――>


「い゛ッ!? ……いや、流石にもう

“ソレ系”の話は振らないから安心して良いよメルちゃん。


と言うか……やりたい事とか欲しい物とかよりも

“俺の記憶がどうたら”って話についてちゃんと話して貰えないかな?


断じて俺は“記憶を失って”なんか無いし、間違い無く

“コンビニの帰り道”を歩いて居た筈で……あれ?

でも、確かトラックが此方こっちに……」


<――と言い掛けた俺に対し、三人は困った様な表情を浮かべ

何かを隠している様な雰囲気を見せた。


だがそんな中、再び部屋の扉を叩く音が聞こえ――


“主人公……入るぞ”


――と言う、低く重みのある声が聞こえた直後


俺は……ベッドから転げ落ちる程に驚く事と成った。


俺の眼前に立っていたのは――


――特殊メイクにしては余りにも生々しい

異世界作品に割りと登場しがちなオーク族の姿をした男性だった。


現れるなり……彼は

“ベッドから転げ落ちた俺に”手を差し伸べながら――>


………


……



「主人公……怪我は無いか?

……しかし、此程これほど綺麗に記憶が抜け落ちるとは

ある意味で吾輩達は“幸せ者”なのやも知れぬな……」


<――そう言った。


だが、彼の発言の意味が全くもって理解出来なかった俺は

思い切って、この強面オーク族コスプレ……かどうかはさだかでは無いが。


兎も角、彼に発言の意味をたずねる事にした。


すると――>


「ん? 吾輩達が“幸せ者”と言った理由か? ……ふむ。


照れくさいが……御主の“愛”を感じただけの話だ」


「あ、愛ッ?! ……いやいやいやいや!!

俺に“そっち”の趣味はッ!! ……」


<――この後

俺の慌てっぷりに笑みを浮かべた強面のオーク男性……もとい


“ガルド氏”は俺に対し――>


「……記憶が無いのは不便だろうが、いずれにせよ

御主の身体には疲れが溜まり過ぎている。


とは言え、分からぬ事だらけで良い気はせぬのだろうが

いま暫くで構わん……吾輩や皆の言う通りに身体を休め

せめて身体の疲れだけでも取り払うのだ。


入り用な物があれば気をつかわず言うのだぞ? ……ではな」


<――そう言い残し部屋を去り

彼につられる様に……いや、俺からの質問を避ける為だろうか?

三人娘達も一人、また一人と部屋を去っていった。


そして、またしても“軟禁生活”に戻された俺は――>


………


……



「困ったな……けど、取り敢えずは分かった

あの人達は少なくとも、普通のコスプレ集団では無さそうだ……」


<――再びベッドに横たわり

断じてこれが夢では無い事に頭を悩ませていた俺。


……ラウド氏の手を掴んだ時、彼のてのひらには

作り物では決して得られない温もりと湿しめり気があった。


強面の顔に一瞬は恐れはしたが、その瞳に感じた彼の優しさからは

何故か“懐かしさ”を感じた。


俺は、彼らの言う通り……本当に何かを“忘れて”いるのだろうか?


何故俺は、これ以上無い程に過ごしやすいこの部屋で

静かに過ごしている事にこんなにも苛立いらだちを感じているのだろうか?


何故……何か重要な事を忘れている様な気がするのだろうか?


幾度と無く深く考える度……俺を襲うひどい頭痛と吐き気。


俺は一体、何に巻き込まれているのだろうか――>


………


……



「……取り敢えず、考えるのはもうやめよう。


って……食事したからかな……何だか睡魔が……」


<――直後

心地良い睡魔に襲われベッドに横たわった俺は

そのまま夢の中へと落ちていった。


いや、まぁ……夢の中かも知れない場所で

“夢の中に落ちる”と言うのも変な話なのだが――>


………


……



「んんっ……まぶしっ……朝か。


それにしても不思議な夢……って、この部屋は……」


<――どれ位眠っていたのだろうか?


カーテンの隙間から差し込む光で目覚めた俺は

眠る前と変わらぬ周囲の風景に半分絶望し、半分……安心していた。


そして妙に身体が軽い……ガルド氏の言った通り

俺の身体は疲れていたのだろうか? ……と言うか、何時振りだろう。


……ちゃんとベッドで眠り、液晶モニターの光で起こされなかったのは。


これが夢の中であれ、万が一にも現実であれ……


……俺は、久し振りに清々しさを感じていた。


そして……この直後

そんな俺の起床を狙ったかの様なタイミングで

部屋の扉をノックする音が聞こえた――>


「主人公さ~ん! ……そろそろ起きてますか~?

あの後眠っちゃって一食しか食べてないですし

今日だけでも良いですから三食ちゃんと食べて下さいね~っ!! 」


<――と、マリアさんらしき声は扉越しにそう言った。


そして――>


「あ、はいッ!! ってかその……丁度今起きた所で

お腹も空いてると言いますか……」


「ほうほう……流石は“二日も眠っていた”だけの事はありますね!

兎に角、入りますね~……」


<――“聞き捨て成らない一言”を発しつつ

朝食を持ち現れたマリアさんは、配膳はいぜんを済ませた後――>


「さてと……主人公さん。


記憶喪失きおくそうしつに関する話……本当に聞きたいですか? 」


<――と、真剣な眼差しで言った。


俺が静かにうなずくと、彼女は――>


「……自分では判って無いみたいですけど

主人公さんは今、記憶喪失きおくそうしつに成って居るんです。


でもそれは、病気や何かの所為じゃ無くてですね……


……その、何と言うか

完全に“誤解を招きそうな”言い方には成りますけど

えて記憶喪失きおくそうしつのまま……“私達が”放置しているだけなんです。


そして……今現在エリシアさんが持っている“木の欠片”が

主人公さんの記憶を戻す為に必要な物なんですけど……」


「あ、あのッ!! ……ちょっと待ってください!

それが本当だとしても、俺がそんな状態におちいる羽目に成った理由と

“意味”が分からないんですが……」


「……つい数日前、主人公さんは

ある“ひどい出来事”の所為で精神的にひどく追い詰められて居たんです。


それで、そんな現状を解決出来る“かも知れない”と言う理由だけで

ある特殊な“呪具”を使ってしまったんです。


そして、その呪具の副作用として――


“良し悪しに関わらず、重要な記憶を失ってしまった”


――それが、今の主人公さんです」


「そうなんですか……分かりました」


「えっと……私の説明、嘘だって思いますか? 」


「……ええ、本来なら嘘だと判断して居たかも知れません。


でも、貴女の説明を聞く内に頭痛がひどく成り始めた所を見れば

その話に嘘は無いのかも知れません。


けど、それなら……俺の意思は何処どこにあるんですか?

俺がその“副作用”を知った上でなお、何かを解決する為

その“呪具”って言うのを使ったとするならば

何故俺を閉じ込めてまで、俺の自由を奪おうとするんですか? 」


<――そうたずねた瞬間、さとった

この質問は彼女の心をえぐる質問だったのだと。


……直後、必死で謝る俺に対し

彼女は悲しげに微笑ほほえみ――>


………


……



「やっぱり主人公さんは優しいですね……でも違うんです。


主人公さんの優しさを私達全員が分かって居て

主人公さんの弱さを私達全員が分かって居るからこそ

主人公さんにどれだけ嫌われても、どれだけ叱られても

主人公さんが無理をしている現状に私達は皆……歯止めを掛けたかったんです。


……そんな私達の“エゴ”が

主人公さんをこの部屋に閉じ込めているんです。


でも……分かって下さい。


私達は全員……主人公さんの事が大好きなんです。


こんな……私のキャラじゃ無いセリフ、もう二度と言いませんから。


分かったら……お願いします。


もう数日だけ構いませんから……大人しくこの部屋で休んで居て下さい」


<――そう言ってきびすを返し静かに部屋を去ったマリアさん。


一人残された俺は勢い良く……だが

静かに閉じられた扉を眺めていた。


直後……何故か俺のほほを一筋の涙がつたった。


……彼女から感じた、彼女の物だけでは無い沢山の愛情。


彼女の言う様に、俺は……そうされるだけの人物であったのだろうか?


俺は……俺は一体何をした?


一体何故、マリアさんをあんなにも悲しませた? ――>


………


……



「俺は……何時も“一人”だと

何時も“一人にされてしまう”……と思っていた。


父さんも母さんも……大切な人達は全て俺の前から消え去って

手に入れたい物も全て、俺の前から消え去って行く様に

関わる人達はおろか、神様にすらいじめられているのだと……


……そう思っていた。


でも……それなら今のは一体何だ?


俺の為、悲しみすらも押し殺し必死に笑顔を浮かべた彼女の

彼女達の……あの姿は一体何なんだ?


俺は……何をしている?


俺は……何を頑張った?


俺のそばから大切な人達が離れていくんじゃ無い。


不遇ふぐうだとなげく前に俺が動けば……俺が

大切な存在と同じ歩幅ほはばで進もうと努力を続けていれば

大切な存在は……そう簡単に離れて行ったりはしない筈だッ!!!


……俺は、この部屋を脱出しなければ成らない。


この、心地良くて過ごしやすい愛に満ちあふれた息苦しい部屋から。


俺を大切にしてくれる彼女達を悲しませて居るその原因を

俺自身が取り払う為にッッ!!! ――」


<――決意し、立ち上がった俺は


決して開かない扉に向かい、決死の覚悟で体当たりを――>


………


……



「……主人公様。


そう本気で“体当たり”をされてはお体にさわりますよ?

く言う私も危うく怪我をする所でしたから……あぁ、そうそう。


確か、人族の間では――


乙女おとめ柔肌やわはだに傷を付けたら責任を取らないと成らない”


――のでは有りませんでしたか? 」


「なッ!? ……って。


何でも良いから離してくれッ!! ……」


<――瞬間


体当たる筈の扉は開かれ……其処そこに立って居た

“青い肌の人成らざる種族の女性”に全ての勢いをおさえられた俺は

一切の身動きが取れない様、しっかりと捕縛ほばくされて居た。


そして……


……必死に藻掻もがく俺を見下ろしつつ

彼女は続けた――>


「……“何でも良いから”とはまた失礼な。


あまつさえ、何をおっしゃるかと思えば……主人公様。


貴方は……軟禁状態に有るにも関わらず、見張りはおろ

道行く者達ですら容易よういに聞き取れる程の大声で

堂々と“決意表明”をさいました。


それはつまり――


“今から俺はこの扉をぶち破る、止めるなら今の内だぞ”


――そうおっしゃったのと同義どうぎでは有りませんか?


そもそも……私は本来ならば貴方様に一刻も早く記憶をお戻し頂き

一刻も早くモナーク様をお救いする為

その為の手立てをお考えに成って頂きたい立場なのですよ?


とは言え勿論……記憶が抜け落ちていようとも

お優しい心根こころねは変わらぬ御様子で少しは安心致しました。


……ですが。


甘えるのも良い加減にさって下さい」


<――そう言って俺の事を部屋に戻そうとした。


だが、彼女の発言にあった――


“モナーク”


――と言う名前を耳にした瞬間

俺の頭は、破裂しそうな程の激痛に襲われた――>


「……うぐッ?!


あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!! ……」


「なっ!? ……主人公様ッ!? 」


………


……



<――激痛が疾走はしったその後、俺は意識を失ったらしい。


ベッドに横たわる俺に対し、青い肌の女性……もとい。


“アイヴィー”さんは――>


「主人公様ッ?! ……も、申し訳御座いませんでしたッ!!

私の不注意にりッ!! ……」


<――今にも切腹せっぷくしそうな程の勢いで頭を下げ続けて居た。


そして、この後……初めて会う筈なのに

何故か懐かしさを感じさせる多種多様な人々に囲まれ

その全員から、まるで“一命を取り留めた”かの様に心配をされた後……


……俺をこの部屋に閉じ込めた張本人である

“魔女コスロリっ子”……もとい。


エリシアと言う名の女の子から――>


「主人公っち……ごめん。


やっぱり……休めるにしても方法を間違ってたみたい。


本当に勝手だとは思うし、記憶が戻ったらまた

主人公っちが苦しむ姿を見なきゃ成らないのは辛いけど……でも

それでも、主人公っちの事……もう元に戻さないと駄目みたい。


本当に不甲斐無くて……ごめんね」


<――そう言って頭を下げた“エリシア”ちゃん。


この直後……彼女は俺の前から、文字通り


その姿を“消し”――>


………


……



「ま、また消えた!? ……そ、そうだ! 手品か何かですね?!

凄く驚きましたし、そろそろ姿を……って。


……ぐぁぁぁぁぁッッ!!! 」


<――直後


再びひどい頭痛に襲われた俺……


頭が……割れそうに痛い……頭……いや、違う。


心が痛い……記憶が……何だ?


これは……この……男は――>


―――


――



「貴様を――


此奴モナーク共々”


――仲良く葬ってくれようッ!!! 」



――


―――


「――此奴はッ!!!


此奴が……この卑怯者ガルベームがモナークをッッ!!


いや……違う、モナークは死んでは居ない。


あの子は……ネイト君は、確かに俺にそう言った。


確かにそう


った”――」


===第百八〇話・終===

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