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第百七二話「協力に次ぐ協力は楽勝ですか? 」

<――突然のバグ大量発生

そして、討伐とうばつ任務にまさかの国賓こくひん全員が協力と言う

何とも国際問題“スレスレ”な時間を過ごす事と成った俺。


……紆余曲折うよきょくせつすえ

どうにか国賓こくひん達の協力にり何とか危機を脱した俺達は

その御礼と、彼らの希望する“バグの共同研究”に関する話も含め

一度、執務室へ向かう事と成ったのだが――>


………


……



「と、言う訳でして……」


「……何じゃとぉっ?!!

主人公殿ッ!! 御主は一体何を考えてッ!! ……」


<――執務室に響き渡ったラウドさんの怒声。


俺の報告を聞いたラウドさんは若干……いや。


尋常では無く“キレた”……とは言え

国賓こくひんをこの国で最も危ない場所へと連れて行き

あまつさ討伐とうばつ任務に協力させてしまったのだから

怒らない方がどうかしているだろう。


……だが、クロエさんはバグのラフ画を提示し

ベニさんは例の“大量サンプル”に関する話を伝え

ムスタファに至っては――


“皆、恩人であり親友である彼を助けたい一心で動いただけの事

そもそも、真っ先に口火くちびを切ったのは私なのです。


ですから……主人公を叱るのならば

ず私が叱られるのが筋と言えるでしょう”


――そう言って皆で俺の事をかばってくれたお陰もあり

ラウドさんの怒りは次第に収まり――>


「ううむ、皆様がそうおっしゃられるのであれば……


……主人公殿、この様な事は今回限りじゃよ? 」


「は、はい……以後気をつけます……」


<――ともあれ。


この後、話はバグ研究に関する三カ国の協力関係へと移り――>


………


……



「……と言う訳ですので

今回の協力へのお礼としての意味も多少はありますが

そもそも純粋に今後のバグへの対応を考えた時

我が国は勿論の事、深い友好関係にある両国の安全をまもる為にも

両国のバグ研究への共同参加は良案であり、急務かと思われます」


「うむ……主人公殿、説明ご苦労じゃった。


では早速採択を……」


「えっと、その……待って下さい!


その前にずは“中庭で話し合って決めた件”について

国賓こくひんの皆様に伝えさせて頂けませんか? 」


「中庭? ……あぁ! あの件じゃな!?

勿論じゃ! ……話して貰って構わんぞぃ! 」


「ありがとうございます! ……では。


……今回の騒動で伝えそびれて居た“ある重要な件”について

少しお話させて頂きたいと思います。


その……“バグ共同研究案”が可決された場合

頻繁ひんぱんになるであろう往来おうらい容易よういにする為

護傘マモリガサ”の本稼働も早急に行えればと思っています。


その……答えをお待たせする形と成ってしまい申し訳ありませんでした。


今後ともよろしくお願い致します」


<――伝えるべき事を伝えた俺。


……この後、この発言に後押しされるかの様に

バグ共同研究案”は全大臣の賛成にって可決され――>


………


……



「今この時をもって……


……政令国家・日之本皇国・アラブリア王国の三カ国にける

バグの共同研究、並びに“護傘マモリガサ同盟”の発足を宣言するぞぃ!! 」


<――ラウドさんの宣言を受け

執務室には割れんばかりの拍手が響き渡った。


そして……この決定から暫くの後

既にそのほとんどが完成している“護傘マモリガサ”本稼働の為に必要な

ある“儀式”が執り行われる事と成ったのだが――>


………


……



「え、えっとその……俺は一体何をすれば宜しいのでしょうか? 」


<――巫女装束みこしょうぞくにも似た

それでいて、更に神々しい様な……兎に角。


……護傘マモリガサの本稼働に必要な儀式を執り行う為

天照様の着ていたその装束しょうぞくは……“名前”や人と成りは勿論の事

全てにいて圧倒的な“神々しさ”をまとっている彼女を

更に神々しくさせていた。


……転生前、決して信心深いタイプでは無かった俺だが

本当に天照様の事を“神様”の様に思い始めて居た俺。


その所為も有ってか、妙に緊張していた俺に対し――>


………


……



「主人公様? ……とても光栄ではありますが

私はその様に“おそれ多い存在”では有りませんよ? 」


<――“天照大御神あまてらすおおみかみ


俺が所謂いわゆる“日本神話”にける最高位の神様と

彼女の事を……はからずも重ねてしまっていた事を言い当てた彼女は

緊張した俺の顔を見て優しく微笑ほほえみながらそう言った。


そして……その直後、天照様は俺の手を優しく掴むと

“儀式”についてでは無く――>


………


……



「主人公様……大丈夫です。


貴方の居た“日本”と言う世界で、貴方や

貴方の大切な人達があがたてまつって居た神様は

今でも貴方を見守っている事でしょう。


何故ならば……貴方がおそれ多くも私などと重ねて下さった神様は

慈愛と圧倒的な力に満ち溢れた存在であると私は考えて居るからです」


<――そう言って、俺のお腹に手を当てた天照様。


この瞬間、心做こころなしか

緊張と疲れ……そして、この所の悩みまでもが完全に取れた気がした。


と言うか……やはり、俺が天照様の事を

神様に重ねてしまったのはあながち間違って居ない様に思った。


まぁ……ともあれ。


この後、俺が落ち着いた事を確認すると

天照様は――>


………


……



「では……護傘マモリガサ起動の為の儀式を執り行います。


主人公様……この魔導宝珠に向けて、貴方の純粋なる慈愛じあいの心と

安寧あんねいへの願いを注ぎ込む様に意識を向けて下さい。


魔導を流し込むのでは無く、あくまで“心を込める”様に……」


「心……ですか?


難しそうですが、分かりました。


慈愛じあいと……安寧あんねいの願い……」


<――直後

魔導宝珠と呼ばれたこの珠に向け言われた通り“心を注ごう”とした俺。


……だが。


言葉で言う程、簡単では無くて――>


………


……



「う~ん……これであってるんですかね? 」


「……いえ。


一度止めましょう……主人公様、良いですか?


慈愛じあい”とはつまり

貴方が大切に想う全ての人々に対する無償むしょうの……心からの愛。


安寧あんねいへの願い”とはつまり

大切な人々が平穏へいおん無事に……ながき平和を享受きょうじゅ出来る様祈る事。


貴方が常日頃つねひごろから望んでいる……いいえ。


渇望かつぼう”すらしている事を心から思い浮かべ

その気持ちを、貴方の大切な宝物の様に

この魔導宝珠へと“仕舞しまう”様な意識を持つのです」


「えっとその……仕舞しまい込んだら

“取り出せなく”成ったりしませんよね? ……」


「貴方の想いに限りがあるのならば

“そう”なってしまうかも知れません……ですが。


そうでは無い事を……私は知っています」


<――この後


再び精神を落ち着かせ、魔導宝珠に想いを注ぐイメージを浮かべた俺。


その瞬間、俺の脳裏に浮かんだ映像……それは

俺が望む“最良さいりょうの未来像”だった。


誰一人としてしいたげられる事の無い、老若男女ろうにゃくなんにょ全ての種族が

みずからの尊厳そんげんを壊される事無く、互いをうやまい平和に暮らせる世界。


もしも“お花畑な思考だ”と万人に笑われたとしても

俺にはこれが最も完璧な世界だと思えて成らない。


……今後、誰一人として

転生前の俺の様に、意味も無くしいたげられる存在があっては成らない。


誰一人として……生まれや種族でしいたげられては成らない。


この世界で、幸運にも俺が助ける事の出来た人々が

かつて経験した様な理不尽りふじんな扱いは

もう二度と……誰にも受けさせては成らない。


もし、それらの願いが全て叶ったなら――


“転生先で最強で、モテモテの存在”


――などと言う自己中な考えしか持ち合わせていなかった俺が

少しは成長出来た証にも成りそうだし……何よりも

この世界に住む全ての人々が幸せに暮らせる筈だ。


気がつくと、俺はそんな想いの全てを

この宝珠に注ぎ続けていた――>


………


……



「……主人公様、成功です。


魔導宝珠は今現在の無垢むくなる貴方の事を


“覚えました”


……これで、決して貴方以外の誰も

この護傘マモリガサを……起動は勿論、悪用など出来なくなりました。


ですが、一つだけ大きな注意事項があります――」


<――そう言いつつ俺から受け取った魔導宝珠を

護傘マモリガサの支柱 (しちゅう)に空いた穴へとめ込んだ天照様。


彼女は続けて――>


………


……



「――宝珠は、貴方の“いちじるしい変化”を決して許しません。


もしも万が一、貴方が純粋さを忘れ暴君の様に変わり果てたならば

護傘マモリガサは貴方を敵と見做みなし、二度とその力を与えてはくれないでしょう。


……たとえどれ程気がいて居たとしても

護傘マモリガサの前に立つ以上、今の貴方が持つ冷静さと純粋なる心だけは

何時如何いついかなる時も忘れては成りませんよ? 」


「はい……心に刻んでおきます」


「……その様に緊張せずとも大丈夫です

私は、貴方がそうは成らない事を知っています。


今のは念の為の注意に過ぎません……さて

後は護傘マモリガサの起動方法と、運用方法をお伝えしておきましょう……」


<――この後

天照様から護傘マモリガサが出来る事を一通り教わった俺。


そして、暫くの後……“護傘マモリガサ同盟”の発足と

バグの共同研究”と言う二つの事柄を祝う為

全員で旅館へと向かった俺達は――>


………


……



「では! 今日と言う良き日を祝しましてッ! ……カンパーイッ!! 」


<――突然の大所帯過ぎる国賓こくひんの登場に驚きを通り越し

色々と収拾しゅうしゅうがつかなくなったあの日からわずか一週間足らず。


……気付けば三国の“お偉方達”が肩を組み

“飲めや歌えの大騒ぎ”と成っている今の状況も……正直な所

収拾しゅうしゅうがついて居ない”位なのだが……今日、三国の間に交わされた

これまで以上に深く、強い同盟関係とそのかなめである

護傘マモリガサ”の本稼働にって、遠かった筈の距離は

大きく縮まり、そのお陰もあってか

天照様の言って居た――


“俺との約束”


――つまりは“ディーン隊の正式帰還”も今日果たされようとしていた。


の、だが――>


………


……



「しかし、彼ら……レッドスキュラ隊でしたっけ?

さっき見てて思ったんですけど、凄い統率力でしたし

洗練された動き過ぎて驚きましたよ……と言うか

もしかして、他にもレッドスキュラ隊みたいな隊が沢山あるんですか? 」


<――と、何気無なにげなくそうたずねた俺に対し

彼らを此処ここまで育て上げた立役者の一人であるギュンターさんは――>


「いえ……残念ながら。


そもそも彼らは、私共ディーン隊の去った後

私共の代わりに日之本皇国にける兵員の育成を行える様

日之本皇国でも選りすぐりのエリートで構成された

言わば“教官”と成る立場の隊で御座いますので……」


「そうなんですか……だからあんなに強かったんですね!

でも……と言う事はこれから先

レッドスキュラ隊の様な“トップクラスのエリート部隊”が

新たに生まれるかも知れない位には練度も上がった訳ですよね?

そうなれば……いずれは彼らの様なエリート部隊が乱立しちゃう位

日之本皇国の軍人達が育つ伸びしろみたいなのもあるって事ですね!


……いやぁ~楽しみです! 」


「ええ、その点は私めも安心しております。


少なくとも“牽引けんいん”せねば成らぬ様な練度の者は

もう既におりませんので……」


「な、懐かしいと言うか……あれはヒヤッとしましたね」


「ええ……あの時はきもが冷えまして御座います」


<――そう言って“苦々しい過去”をさかなに酒を飲んだギュンターさん。


そして、そんなギュンターさんの話を聞いていた天照様も――>


「……ギュンターさんのおっしゃられた通り

レッドスキュラ隊の能力の高さは

今や、我が国の国防の要と言っても過言では無い程なのですよ? 」


<――と彼らの事を褒め称えたのだった。


そして、そんな天照様の発言に――>


「……ちなみに

今回彼らをこの旅に同行させた理由は“護衛任務”だけでは無い。


今日まで我がディーン隊が務め上げて来た

教官としての役目を引き継がせる為の“節目の任務”と言う側面もあるのだ。


それに……仮にも私達が此処ここまで育て上げた可愛い弟子達だ

“見せびらかしたかった”と言う考えも少しはあるのだがな……」


<――少し照れた様に後頭部をきながらそう言ったディーン。


一方……そんな彼らの愛情を感じさせる言葉の数々に敬意けいいを払う意味か

宴会と言うのに一滴たりとも酒を飲まず、姿勢も崩さず

一言一言を真面目な表情で聞いていたレッドスキュラ隊の隊員達。


何と言うか、この時の彼らから

“ディーン達と離れたくない”と言う想いを感じた……様な気がした。


ともあれ、この後も暫く続いた大宴会では

様々な思い出話に花が咲き

残念ながら今日はこの場に来られていないゴブリン族の子供達や

俺の“二人の弟子”の近況などもベニさんやミカドさんから教えて貰えたりと

久しぶりの楽しい時間を過ごす事が出来たのだった。


そして、大宴会も終わりに差し掛かった頃――>


………


……



「……さて。


余り国を空けてしまえば民達にいらぬ不安を与えてしまいかねませんし

あまり長居をし過ぎては政令国家にご迷惑をお掛けしてしまいます。


……政令国家の“護傘マモリガサ”も本稼働と成った事ですし

まだ護傘マモリガサの起動経験が無い主人公様の“練習”の為にも

明日、我々が帰国する際には

護傘マモリガサもちいてみるのが良いのでは?


と考えて居るのですが……主人公様は如何いかがですか? 」


<――そう天照様に問われ、当然この提案を受け入れた俺。


……この後、大宴会は無事に終わりヴェルツの自室へと帰還した俺は

激動げきどうと成った今日と言う日の疲れに

“ラスボス級の睡魔”に飲まれ――>


………


……



「ふんがぁっ?! ……」


<――目が覚めたら翌朝。


俺に取っては“あるある”な異世界でのルーティーンだ。


夢すら見ない程の爆睡ばくすい――>


「……って。


アホな事考えてる余裕……よく考えたら無いんだよな今日」


<――そう、今日は護傘マモリガサの初稼働だ。


失敗しても“転移が発動しない”程度ではあるのだろうが

仮にそんな事に成れば――>


「あ~……ず間違いなくマリア辺りに茶化されるだろうな」


<――超絶ちょうぜつ恥ずかしい事に変わりは無い。


と言うか、そもそも稼働方法などはあらかじめ教わったが

正直、この手の大役を任される事には慣れて居ない。


……当然と言うべきか、本番前に

出来る限り練習をしておきたいと思っていた俺だったのだが――>


「やっべ!? ……ボーッとしてたら時間がっ!?

練習は多分一回位なら出来るか? ……兎に角、急ぐか」


<――直後、大統領城の中庭へと転移した俺。


だが――>


………


……



「あら……お早い御到着ですね」


<――と、天照様に声を掛けられた。


と言うか、予定時刻より三〇分は早いのに既に全員集合していると言う

国賓こくひん達の準備の良さがわざわいし

この瞬間“ぶっつけ本番”が確定してしまった俺。


嗚呼……胃が痛い。


……ともあれ。


国賓こくひんを全員無事に送り届ける為、細心さいしんの注意を払いつつ

起動の準備をしていた、その時――>


………


……



「ディーン様、ギュンター様、タニア様……今日迄

我々に厳しくも愛に溢れる教育を授けて下さり有難う御座いましたッ!


我々、レッドスキュラ隊に課された任務である

“後進の育成”……そして、さらなる力の獲得を目指しッ!

我々は、粉骨砕身ふんこつさいしんの覚悟でッ!! ……」


<――永久とわの別れと見紛みまがうばかりに

敬礼姿のまま、直立不動で涙を流しながら

ディーン達との別れをしんだレッドスキュラ隊の隊員達。


……ディーンは勿論、タニアさんやギュンターさんも

何だか“離れがたい”と言った表情を浮かべていた。


そんな中、ディーンは――>


………


……



「……お前達には教官として教え足りない事の方が多い。


だが、例えそうであろうとも

今日まで厳しい訓練を耐え抜いて来たお前達ならば

必ずや、我々をも超える立派な軍人へと成長する事だろう。


……名残惜しいが、友との約束を果たす為

我々ディーン隊は今日をもって……」


<――と“道半みちなかば”発言を繰り出したディーンを間近で見ていた俺。


俺との約束と、天照様との約束……いずれの“約束”であれ

彼の心の中で渦巻いて居るであろう複雑つ、単純な感情は

どうにも約束それを“かせ”に感じている様に見えた。


だから、俺は――>


………


……



「……なぁ、ディーン。


もしお前達がまだ一緒に居てやりたいなら

今日、今直ぐ無理に帰ってこなくても良いんじゃないのかな? 」


<――思わずそうたずねた俺。


この瞬間、ディーンは――>


「……何を言うか主人公

私達は君と共に同じ道を進むと約束したでは無いか! 」


<――そう言った。


だが、その言葉とは裏腹に

ほんの少しだけ“違う感情”を感じた俺は――>


………


……



「ああ、確かに言ってくれた……けどさ。


ディーンは勿論、ギュンターさんもタニアさんも

全員が全員“離れがたい”って想いが漏れ出てるし

そもそも“もっと教えたい事がある”って言っちゃってるしさ……


……何て言うか、上手く言えないけど

仮にも俺とディーンは親友みたいな関係性だろ?

なのに、その親友が目を輝かせて挑んでる“天職”を

俺の所為で無理やり奪っちゃうのは嫌なんだよ。


それに、護傘これがあれば

今までは難しかった往来もかなり簡単になるし

そもそもが“今生こんじょうの別れ”って訳じゃ無いしさ。


兎に角……暫くは“帰ってこなくて良い”から

自分達がやりたい事を好きなだけ、目一杯楽しんで欲しい」


<――この時の俺は不思議な程清々しく

寂しさなんて物も一切感じていなかった。


多分それは、この考えを伝えた瞬間のディーン達と

レッドスキュラ隊の隊員達が見せた“輝く瞳”の所為だと思う。


なんたってこの後、幾度いくどと無く――>


………


……



「主人公……本当に構わないのか? 」


<――ディーンからそう聞かれ続けた上に

謎にミカドさんが――>


「主人公……君はやはり、武人の心を持ったオトコだ」


<――と、俺の事を凄まじく“格好良く”とらえてくれたりと

何だか恐ろしく照れくさい時間と成ったからだ。


……ともあれ、この後

国防を考える上ではとても大きな存在である“ディーン隊”の処遇しょぐう

俺の一存で勝手に決めた事を

念の為ラウドさんに確認し――>


「ほっほっほ……構わんよ、主人公殿の決断は何一つ間違っては居らん」


<――と太鼓判を押して貰った俺は

この後……“護傘マモリガサ”の初起動と言う大きな緊張の中

一つずつ慎重に手順を踏んでいた。


そして――>


………


……



「これで良し……っと。


では、護傘マモリガサッ!!


起動ッ!! ――」


<――瞬間


大きく開かれた護傘マモリガサ

周囲の風を巻き込みながら凄まじい速度で回転し始め……


……第一の目標地点である

アラブリア王国へのゲートを開いた――>


………


……



「……主人公様。


私達は一度アラブリア王国へと向かい

ムスタファさんのお力で改めて日之本皇国へと帰還致します。


……初起動、お疲れ様でした。


有能な主人公様の事ですから、この後もご多忙かとは思いますが

どうかごゆっくりお過ごしに成られて下さいね。


では……」


「はい! ……天照様も帰国後はごゆっくり為さって下さい。


では……またいずれッ! 」


<――直後

開かれたゲートへと吸い込まれる様に消えていった“国賓こくひん達”

そして、その姿が見えなくなるまで必死に手を振った俺達。


……彼らの去った後

俺は、激動げきどうだったこの一週間と少しの時間に思いをせていた――>


………


……



「けど……本当に、政令国家って大きな国に成ったんだな。


友好国との関係性も深くなって

大切な人達との距離もどんどん近くなって

まもるべき存在がどんどん増える分、不安も強くなるけど……その分

こうやって新たな“国防のいしずえ”と成る物が出来たりして……


……そう考えると、政令国家って

結構恵まれた立場に居るのかも知れないな……」


<――しみじみと感慨にふけり、そんな独り言を発して居た俺。


だが、そんな時――>


「ん? ……何だ? 」


<――俺の目に写ったのは慌てた様子の兵士。


彼は、中庭へと現れるや否や――>


………


……



「……申し上げますッ!!

第二城地域に魔族軍の大量襲来が確認されましたッ!! 」


<――血相を変え


そう言った――>


===第百七二話・終===

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