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第百七〇話「決断と対応は楽勝ですか? 」

親愛なる読者の皆様へ。


本日の掲載分で「異世界転生って楽勝だと思ってました。 」が

晴れて三周年を迎える事が出来ました。


これもひとえに何時もご愛読頂いている読者の皆様のお陰でございます。


筆も遅く、至らぬ所の多々ある作者ですが

四年目に突入後も初心を忘れず鋭意執筆致しますので

今後ともお付き合い頂ければ幸いです。


……それでは、四年目に突入した本作をお楽しみ下さい。

<――ムスタファから聞かされた衝撃の事実。


ムスタファの母国であるアラブリア王国に対し

現在も大小様々な攻撃を続けている敵国――


“メッサーレル君主国”


――そもそもこの国は

政令国家おれたちから見ても“敵国”と呼ぶべき国々が集まった枠組み

“対政令国家連合国”にも名をつらねている。


だが……その反面、現在は政令国家と友好関係にある

“チナル共和国”の脱退を皮切りに、この連合が既に形骸化けいがいかしている事は

“チナル共和国”の新たな長であり

オルガのお姉さんでもあるヘルガさんから伝え聞いて居たし

最近はいずれの“加盟国”も表立った行動をして来なく成って居た事もあり

さしたる警戒心を持ってはいなかったのだが――>


………


……



「メッサーレル君主国は現在も我が国と戦争状態に有る。


……だが、通常戦力だけを見れば脅威とは程遠く

我が国のかかえる優秀な魔導師達にって

現在も降り注いでいる我が国への攻撃は

こうしている今も我が国の魔導師達が無効化し続けている筈だ。


そして、主人公……冗談とは分かってるが一応言わせて貰いたい。


政令国家は勿論の事、日之本皇国に対しても

亡き父に誓って、我が国から悪意を持った何かを差し向けた事は無いし

今後も有り得ないと断言させて欲しい……とは言え

実の弟が迷惑を掛けている事実は変わらないし

代わりにつぐなえる事ならば何でもすると誓おう。


だが、今はず私の謝罪を受け入れて欲しい……本当に申し訳無い」


<――そう言って深々と頭を下げたムスタファ。


勿論、彼を責める様な人なんてこの場所には居なかったし

俺だってムスタファを責めるつもりなど無かったが……


……顔を上げたムスタファから発せられた悲しげな雰囲気に

執務室を包む空気は重苦しい物と成ってしまった。


だが、この空気を断ち切る為――>


「と、兎に角じゃ! ……海賊問題について

ムスタファ殿が知っておる事を話して貰えるじゃろうか? 」


<――そううながしてくれたラウドさんにって

ムスタファは再び海賊問題についての話を続けてくれて――>


………


……



「ええ……天照様からの連絡を受けた後、我が国の方で

資金や武器、物資の提供が行われているであろう場所を探った結果

受け渡しに使われていると思しきみなとを発見、ただちに

周辺海域への取締りなどを強化した事で

海賊の活動を大幅に沈静化ちんせいかさせる事に成功したのです。


……とは言え、全てをてた訳では無いでしょうし

完全に海賊が居なく成ったと言う訳でも無いのですが

少なくとも“負担は減った”との報告を天照様からお受けしました」


<――と、全容を話してくれたムスタファ。


だが、まだ少しムスタファが“尾を引いている”様に感じた俺は――>


「成程な……つまり、ムスタファのお陰で

“ディーン達が政令国家に帰ってこられる様に”成った上

日之本皇国に残して来た“ゴブリン族の子供達”は勿論

俺の大切な“二人の弟子”の安全までまもってくれたって訳だな?


ムスタファ……本当にありがとう。


お前は最強で最高の親友だよ」


<――ムスタファの行動にまもられた人々

そして、人生の選択肢を増やして貰えた人々。


彼らの代わりにお礼を伝えたかった俺は

後から考えれば少々“クサい”言い方でムスタファにお礼を伝えた。


直後……思わず“かわいいなお前”


……と言いそうに成る位照れて嬉しそうにするムスタファの姿を

妙に誇らしく見つめていたハイダルさんが

本当に“爺や”感半端無くてすっげぇなごんだのは内緒だ。


ともあれ……本来ならばこの後も引き続き

護傘マモリガサの建設に関する話し合いを続ける予定では有ったのだが――>


………


……



「ふむ……いずれにせよ今日はもう遅い様じゃし

明日以降、我が国の観光などをして頂いた上で

改めてこの件に関する話し合いをしようと思っておるのじゃが……」


<――深夜十二時を告げる鐘の音が執務室に響いた後

ラウドさんはそう言って今日の話し合いを終えた。


……この後、天照様を始めとする“国賓こくひん達”を旅館へと案内する為

俺を護衛役として指名したラウドさんは――>


………


……



「主人公殿……案内が終わった後に何か予定はあるかね? 」


「いえ、ヴェルツに帰って寝るだけですけど……」


「ふむ……であれば。


……案内後、執務室に来て貰えるじゃろうか? 」


「分かりました、では行ってきます……」


<――この後、無事“国賓こくひん達”を送り届けた俺は

約束通りラウドさんの待つ執務室へと向かった。


すると――>


………


……



「ふむ……手間を掛けたのう主人公殿」


「転移魔導なので然程さほど疲れては……ってそんな事より

俺に用事があったのでは? 」


「う、うむ……その件に関してなんじゃがのう……その……主人公殿。


一度大統領城の中庭へ飛ぶ故、わしの手を掴んで貰えるじゃろうか? 」


「ええ、構いませんけど……」


<――この時、ラウドさんから感じられた

僅かだが“妙な雰囲気”


俺は、軽い違和感を感じつつも素直にラウドさんの手を掴んだ。


そして――>


「では行くぞぃ、転移魔導……大統領城、中庭へ」


………


……



「うむ……主人公殿、もう離して構わんぞぃ? 」


<――転移後そう言ったラウドさん。


だが俺は眼前の“建造物”に驚き、それどころでは無くて――>


………


……



「あの、ラウドさん……何で既に工事が始まっているんです? 」


<――俺の眼前に有った“建造物”


それは、間違い無く“建造中の護傘マモリガサ”であった。


俺は……建造物の存在を確認した瞬間

ラウドさんが妙な雰囲気をまとっていた原因にも気が付いた。


ラウドさんは今


“事後報告をしなければならない事を”


申し訳無く思っているのだ――>


………


……



「その……主人公殿。


御主が“機密の戦い”を原因として眠っていた約一ヶ月の間

わしは毎日の様に神に祈って居ったんじゃよ――


“どうか……我が国の宝であり

心優しい青年である主人公殿がかかえておる苦痛や不安、重圧を

少しでもやわらげる事の出来る解決方法をもたらして下され”


――とのぉ。


元を正せば、わしの大統領としての至らぬ采配が

負担の一番の原因じゃとは思って居るんじゃが……兎も角じゃ。


その後、神頼みをし始めて一週間程が経ったある日の事じゃ

ライラ殿が一通の手紙を届けてくれたんじゃが……


……その手紙こそが、日之本皇国の長である天照殿と

アラブリア王国の長であるムスタファ殿の連名がしるされた……


……この“親書”じゃ」


<――そう言ってラウドさんがふところから取り出した


“親書”


頭語とうご時候じこう結語けつごなどをはぶ

内容を要約ようやくすると、こうだ――


その一……海賊問題が大幅に沈静化ちんせいかした事で

主人公おれと交わした約束を果たす為の準備が整ったので

その為に一度政令国家に表敬ひょうけい訪問をしたい。


その二……今後のより良い国家間の関係性構築と

ライラさんから伝え聞いた“機密の戦い”を始めとする

予測不能な脅威に対応する為に、我が日之本皇国と

アラブリア王国の持つ軍事力や兵站へいたん

必要と思われる全ての支援を今後、迅速じんそくに行えるだけの手段を持ち

三国の更成る緊密きんみつな関係性構築の為、約一ヶ月後に訪問させて欲しい。


――ラウドさんの言う様に

文書の最後に連名がしるされたこの親書に俺が目を通し終えた頃

この親書の後、両国と交わしたやり取りを話してくれたラウドさん――>


………


……



「……その後は、我が国の状況と

今回の問題だけに限らずかねてより慢性まんせい的であった、主人公殿に対する

一極集中いっきょくしゅうちゅう”……その解決に苦悩している事を伝えたんじゃが

ある日、解決策と成るやもしれん事を

天照殿からの親書で知る事に成ったんじゃよ」


「成程……それこそが、この護傘マモリガサって事ですか」


「うむ、じゃが……建設をいて居たわしとは対照的に

天照殿もムスタファ殿も、本稼働に向けての“最終段階”に関しては

口を揃えて――


主人公かれの気持ちを聞いてから”


――と、主人公殿の判断を待つ事を選んでくれたんじゃよ。


無論わしも主人公殿の“心”を優先したいと考えては居ったし

この意見に反対はしておらんかったんじゃが

“目覚めてからの建設”では

完成までに相当の時間が必要であると言う事実を天秤てんびんに掛けた時――


“結果的に護傘これがただの置物オブジェと成ろうとも構わん”


――そう考えたわしは、天照殿やムスタファ殿の到着はおろ

主人公殿が目覚める事すら待たずの建設を選んだ。


無論、主人公殿に取っては全くもって気分の良い話では無いじゃろうが

少なくとも、本稼働に必要な部品と主人公殿の協力が無ければ

この護傘マモリガサは絶対に動かぬゆえ、安心して欲しい。


……とは言え

主人公殿の気持ちを考えず勝手な行動を取った事は事実じゃ。


本当にすまん事をしたと思うておる……申し訳無い」


<――そう言って深々と頭を下げたラウドさん。


勿論、ラウドさんの選択には

言うべき事や問題視するべき事も多々あるのだろう。


だが、少なくとも――>


………


……



「……頭を上げて下さいラウドさん。


ずっと眠っていただけの俺が……いや。


そもそも、国防に関する最終的な意思決定やその責任を一手に引き受ける

大統領としての重圧まで考えれば、謝るべきなのはむしろ俺の方です。


ラウドさん……気を遣わせてしまって申し訳ありませんでした。


それと、その……本当に何時もありがとうございます」


<――そう言って頭を下げた俺。


本当に何故だかは分からなかったが、少なくとも

眼前の護傘マモリガサを見た時……嫌な予感も、嫌な気分も

一切のマイナスな感情が湧き出なかったし

そもそも“嫌な事が起きる”時には何時いつだって警戒のしようなど無く

本当に突然訪れる……そんな星の下に生まれている人間が俺だ。


少なくとも……この時、護傘マモリガサから感じられた物は

そんな状況から最も離れた何かだったし

この“一切裏付けの無い意味不明な程の安心感”だけでは無く――>


………


……



「その……兎に角、これちゃんと本稼働させないと

“無駄な公共事業”に成っちゃいますし

仮にも国民からの税金で作り上げてる以上……」


「い、いや……アラブリアと日之本の両国からも既に

三割ずつの負担金が投入されておるから、全額と言う訳でも……」


「……なら余計に失敗出来ないじゃないですか!

全く……ラウドさん? 」


「……な、何じゃね?!

わしは主人公殿が嫌ならば、護傘これは“観光名所”にでもして

損失を取り戻せば良いと考えておるし! ……」


「いえ、断じてそんな事には使わせません!

と言うか……俺の方からお願いします。


この護傘マモリガサを、三国の緊密な同盟関係の為

そして、俺の大切な人達が“山程”住んでる政令国家ここまもる為

稼働させる以上は完璧な運用をしたいんです。


だから……観光名所の案は“廃止”でお願いします」


「主人公殿……本当に良いのじゃな?

断じて“気を使って”の事では無いんじゃな? 」


「勿論ですよ! ……って言うかさっきも言いましたけど

俺が眠ってた間ずっと気を遣って下さってたのはラウドさんの方ですよ!


って言うかその……感謝を伝えるのって気恥ずかしいですけど

でも本当に……ありがとうございます」


<――そう感謝を伝えた。


そもそも……俺に取ってのラウドさんは

この世界にけるお祖父じいちゃんの様な存在でもある。


無論、それだけじゃ無く……長い期間を掛け

結果として、巨大な国家の一つと成った政令国家ここには

ラウドさんの他にも大切なまもるべき人達が数多く住んでいる。


……今までの様に、俺自身の判断や俺だけの力

“苦労するのは俺だけで良い”等と言う

ある意味では“逃げ”と取れる様な考えは

今日と言う日をさかいに捨て去るべきだと心の底から思えたのだ。


ともあれ……この後、ラウドさんに別れを告げた俺は

ヴェルツの自室へと帰還し――>


………


……



「……弱さと強さ。


いつの間にかとんでも無く大きく成ったこの国を支える為には

信じたり頼ったりと言う……“任せるべき事”の判断を

俺自身がもっと出来る様に成らないと駄目だし、そもそも

今回の戦争だって敵と味方の判断を誤った俺の責任みたいな物なのに

誰一人としてその事を責める様な人は居なかった。


本来なら外交大臣としての役職を辞するべき程の失態だし

この件だけでも、この国の何かを決める事に

俺が関わる事自体が適切じゃ無いとすら思える。


大体、話し合いの席で俺の背後から声を掛けて来たモナークの声が

幻聴げんちょうだったにしろ、何らかの手段で本当に発した言葉だったにしろ

彼奴モナークの言う通り、はたから見れば一目瞭然いちもくりょうぜんな味方すら疑う様では

結果的として、俺だけの選択では大切な人達をまもるどころか

傷つけてしまうのかも知れなくて……」


<――今日起こった全ての出来事、今後の政令国家が目指すべき姿

俺自身の失態に頭をかかえつつも、俺は――>


………


……



「……いや、駄目だ。


これ以上暗い考えで居たら

明日の“観光ガイド役”にまで支障が出るかも知れない。


今日の所はこの位にして、寝なきゃだな……」


<――そんな事を考えながらベッドに入り目をつぶった俺。


だが、今日と言う激動げきどうの一日と

この所の疲れが重なっていた所為か――>


………


……



「んっ、何時……ってやばっ?! 」


<――気がつくと翌日を迎えていた。


起床後、朝食を食べる暇など一切無く

慌てて身支度を済ませる事に成った俺は――>


………


……



「ハァハァ……ゲホッゲホッ!!

お待たせして申し訳御座いませんでしたッ!! ……」


<――“息が切れる”と言うレベルを通り越しつつも

何とか予定時刻通り、旅館のロビーに到着し――>


「あまり無理を為さってはいけません……せめて“息が整う”迄は

こちらで休憩してからでも私達は構いませんから……」


<――と

天照様から気を遣われてしまったのだった――>


「い、いえ……もう落ち着きましたのでご心配無く!


そもそも、この後の移動は全て馬車ですし!

その……車内で休憩しますので! 」


<――ともあれ。


この後、国賓こくひん専用の馬車に一行を案内した俺は……“宣言通り”

馬車での休憩を取りつつ、降り立った観光名所で

一頻ひとしきり“ガイドさん”をつとめ――>


………


……



「……さて、そろそろ昼食の時間ですし

本日は大統領城……では無く。


我が国が誇る“最高の食事処”である

“ヴェルツ本店”での食事をお楽しみ頂……」


<――と案内をする俺の事をさえぎるかの様に

“ヴェルツ”と聞いた途端とたんテンション爆アゲ状態と成った男。


それは、勿論――>


………


……



「やっとか……本当だね主人公?!

カミーラ、爺や……ついにヴェルツの食事を楽しめる時が来たよ! 」


<――そう。


まるで子供の様に無邪気に大喜びしていたのは……ムスタファだ。


何と言うか、大国の長とは思えない……すっげぇ可愛い姿だった。


ともあれ……この直後、誰よりも早くヴェルツへと入店したムスタファは

超絶ハイテンションなまま――>


………


……



「……お久しぶりです、女将さん! 」


「ん? ……って、ムスタファちゃんじゃないかい!

久しぶりだねぇ……元気にしてたかい?

見た所少しばかり痩せてる様だけど、ご飯はちゃんと食べてるかい? 」


「ええ、お陰様で……ですがやはり

ミリアさんの作る料理程に美味しい物は母国にも有りませんので

此処ここに居た時よりは食が細く成ってしまったかも知れませんね……」


「んまぁ~ッ! ……嬉しい事を言ってくれるじゃないかい!

これは腕によりを掛けて作らないとだねぇ!

今、ミリアさん特製スペシャルセットを作ってあげるからさ! 」


<――そう言うと上機嫌で厨房へと消えていったミリアさん。


暫くの後……運ばれて来た食事に目を輝かせ

久々のヴェルツでの食事にムスタファが舌鼓したつづみを打ったと同時に――>


「あ、兄様……このメシ凄いぞッ!

あたしゃ~何としてもこれを国に持って帰りたいぞ! 」


<――と、眼を真ん丸にしてキラキラと輝かせながらそう言ったのは

ムスタファの妹である、カミーラさんだった。


そして……そんな彼女の一言を皮切りに

天照様を始めとする日之本皇国の皆さんも

皆一様にヴェルツでの食事を楽しみ始めた。


だが、その時――>


………


……



「主人公様ッ!! ……申し上げますッ!!! 」


<――血相を変えて現れた一人の女性。


転移魔導で現れ、俺を確認するや否や

ひどく慌てた様子で俺に近付いて来た彼女は――>


………


……



「……例の“禁止区域”三ヶ所全てにバグが大量出現し

現在、我々“特別配備隊”が防衛の任務にいておりますが

かつて無い規模での同時発生に……」


「なッ?! ……他の大臣への通達は?! 」


「ご安心を、既に我が隊の別の者が対応をしております。


ですが、その……主人公様にも現場での対処たいしょをお願いしたくッ! ……」


<――そう言った彼女の表情は、現場の“危機的状況”を物語ものがたっていた。


無論、直ぐに現場へと向かう決断をした俺に対し――>


「ご協力感謝致しますッ!

では、私は皆様の避難誘導を担当致しますのでッ! ……」


<――と“国賓こくひん”を誘導する為に動き始めた彼女。


だが、そんな彼女を制止し――>


………


……



「いや……申し訳無いが、君に同行は出来ない。


親友の危機を黙って見過ごせる程、情けない性格はしていないんだ」


<――そう言って避難誘導を拒否した男。


それは“ムスタファ”だった――>


「は? ……何言ってんだよムスタファ!!

国賓こくひんである以前にお前はアラブリア王国の長なんだぞ?!


第一、何かあったらどうするんだよ!? 」


「……“国賓それ”を持ち出すなら聞こう。


主人公……“例の件”で私が固有魔導を発動した時

既に国賓こくひんとしての働きを逸脱いつだつして居なかっただろうか? 」


「そ、それはッ!! ……」


「……良いかい? 主人公。


君は私の大切な親友だ……そして今

その親友が大切にしている国に危機が訪れている。


私は……何度でも、親友の危機を救いたい。


君が私を親友だと思ってくれているのなら……良いだろう? 」


<――そう言って俺の目を見つめたこのイケメン


もとい、ムスタファの発言を皮切りに――>


「兄様っ! ……なら、あたしも戦うぞッ! 」


「カミーラ様までもとなりますと……私めも参加させて頂きましょう」


<――と

アラブリア王国の“国賓こくひん”全員が参戦を表明した挙げ句――>


「……噂ではお聞きして居りましたが

私も実物を見てみたいと思っていた所です。


情報でしか知り得ない未知の魔物を何としてもこの目で見ておかねば。


……いては、我が国の防衛にも大いに役立つ事でしょう。


主人公さん……宜しいですね? 」


<――と、天照様までもが参戦を希望した事

そして当然の様に、四地域の長達も……更に

彼らに護衛として付いている日之本皇国の軍人達も。


何より、その“師匠”である――>


………


……



「……久しぶりの再会と成っただけで無く、まさか

我々の鍛えたこの者達の“練度れんどまでも見せつける機会があろうとは。


……そう言う事だ、主人公。


我々ディーン隊も参加させて貰うぞ? 」


<――この瞬間


国賓こくひん”全員が参戦を表明した事に狼狽うろた

俺と全く同じ表情を浮かべていた特別配備隊の女性兵士が

少しだけ、不憫ふびんで成らなかった――>


===第百七〇話・終===

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