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第十七話「国家運営って楽勝だと思ってました。」

<――大統領執務室に集まった各種族の長達。


各自の自己紹介も終わった頃

様々な種族が安心して暮らせる新しい国家を作り上げる為の

大切な話し合いが行われる事と成ったのだが――>


………


……



「……ではず、第一の議題ですが

異種族への理不尽な差別や迫害を無くす為の足掛かりとして

全種族を対象とした“義務教育”と言う教育の枠組みについて

お話させて頂きたく思います。


……貧富ひんぷの差に関わらず、皆が教育を受けられる様

費用は全額国が負担する予定ではあるのですが

その為の“教科書”制作の為、我が国の書庫より

各種族に関する記載が有る文献はを全て確認致しました。


ですが……残念な事に、それらは全て

穿うがった情報を含んだ物ばかりでした。


そこで、本日は皆様との話し合いに

正確な情報のすり合わせを行いたいと思います。


ずは皆様にお配りしているいくつかの文献を確認して頂き

事実と異なる箇所があれば指摘して頂きたく思います」


<――そうたずねた瞬間

早速、オルガさんから指摘が入った――>


「……残念ながらほとんど間違っている様だ。


正しい所は“肉を食わぬ”と言う部分だけだな。


……本来の我々が持つ平均寿命は八百年程で

弓は確かに得意だが、魔導も相応に得意だ。


主人公おぬしなら知っている筈だがな。


そして……人間を嫌っているのでは無く

エルフ族の仕来しきたりを軽視する存在を嫌っているだけだ。


人間族には“御主”の様な者も居るからな……嫌う筈など無い」


<――そう言って俺の目を見て微笑んだオルガさん。


そして……そんな“ど直球”の褒め言葉に照れて狼狽うろたえた俺の姿を

微笑ましく見つめつつ、オルガさんは更に続けた――>


「……それと、エルフ族の女は

服飾と音楽の才能にも長けている……と付け足してくれると助かる」


「了解です、そちらも付け加えておきます」


「ふむ……ダークエルフの項目も間違いが多々見受けられる。


正しく修正するなら……平均寿命は人間の十倍程度

エルフとは違い動物性の食事もり、人間の食生活とも差異は無く

薬剤の制作及び知識に長けており、隠密行動にも長けている。


人間をらう等と言う情報はデマであり

先述した様に、人間の食生活と差異は無い。


……と言った所か」


「有難うございますクレイン族長、ではそのまま記載させて頂きます」


「ふむ……オークの項目は少々悪辣あくらつに書かれているな。


事実と異なる物、誇張された物が多々見受けられる……だが

この情報を全て消し去ればそれを不自然に思う者も居るだろう。


主人公よ、正しい教育をするとは言うが……


……やはり無理があるのではないのか? 」


「いえ、最大限正しく改定かいていいたしますので

グランガルド族長には真実をお話頂きたく思います」


「ふむ……承知した」


<――グランガルドさんはそう言うと“嘘の歴史書”を閉じ

遠い昔を思い出しながら、本当の歴史を説明してくれた――>


………


……



「……始まりは大飢饉だいききん


我らだけでは無く、人族を含む全ての種族がえていた時代だ。


他の種族ならば“三日”生きる事の出来る食事は

吾輩達にとっては“一日分”だ……とても生き残れる様な量ではなかった。


無論、持ちこたえる為に吾輩達も努力はしていた……だが

妊娠中の妻の為に少しでも多くの食材をほっした一人のオークが

人族に食料を分けて貰える様頼みに行った。


その際、人族は何らかの誤解をして其奴に攻撃を仕掛け……


……それを振り払った際、人族に怪我を負わせてしまった。


本人いわく事故では有った様だが……それでも、再発防止の為

当時の吾輩は泣く泣く奴を罰する事を選んだ。


……だが、王国はその様な事などどうでも良かったのだ。


その後、当時の国王は……まるで吾輩達の存在その物が

大飢饉だいききんの原因であるかの様にうた

ついには王国領土から吾輩達を追い出した。


……はらわたの煮えくり返る様な状況では有ったが

我輩達は大人しく従い、王国を去る事を決めた。


だが……それにも関わらず

奴らは去りゆく我らの背に大量の矢を放った。


その時失った同胞の数など……


……この文献には一切しるされてなどいない」


<――グランガルドさんはそう言いながら古傷を擦っていた。


……素人目にも分かる。


あれは、間違い無く“弓矢の傷”だ――>


「その……辛いお話をさせてしまい申し訳有りませんでした。


オーク族の項目改定には……少しだけお時間を下さい」


「……承知した」


………


……



「獣人族の項目は大方あってるけど~……この項目が失礼だね~! 」


<――この場を包む鬱屈うっくつとした雰囲気を吹き飛ばすかの様に

獣人族族長、リオスさんはそう言った――>


「本当だ……“野蛮で粗野”と書いてありますね」


「ねぇねぇ! 主人公は僕を見てどう思う?

“野蛮で粗野”に見えるかな? 」


「いえ……“天真爛漫てんしんらんまん”に見えますが」


「それだよそれ! ……それが良い! そう言う感じに改定してよ! 」


「……そうですね、確かにこの文言はおかしいです。


では獣人族の項目ですが……


平均寿命は人間と同程度か若干長命な者も存在する

食事は獣人の原種により草食か肉食かが決まり

食事の好みも原種の動物と同じと考えて良い。


……基本的には定住をせず

旅をしながら狩猟を行うなど比較的自由な生き方を好むが

戦闘能力は原種により得意分野が違う為、これと言う説明は難しい。


性格は天真爛漫な者がほとんどをめて居る。


注意:自由を愛する種族の為、それを制限される事を好まない。


……と言った感じでいかがでしょうか? 」


「うん! ……これで間違い無いね! 」


「お喜び頂けて良かったです! 」


<――リオス族長率いる獣人族の項目は

比較的軽微な修正で済み、ホッと胸を撫で下ろして居た俺。


だが――>


………


……



「……何たる侮辱! この項目は許せぬ!!!

主人公殿! ……此処を見てみるが良い!!! 」


<――ガンダルフさんが激昂し、俺に指し示した項目。


それは――


“身長は五歳の子供にも満たず、物造りに長けてはいる物の

王国の職人と比べると一段落ちる”


――と言う

余りにも失礼極まりない物だった――>


「……許せぬッ!!!

これを記述した者を打ち首にせねばわしの気は収まらんぞ?! 」


「そ、その……見た所、古い本ですから恐らく既に作者は死去しているかと。


とは言え……確かに失礼極まりない文言なのは事実です

早急に改定致しますので、どうか怒りをおしずめ下さい。


……ドワーフ族の項目ですが、平均寿命は人間族と同程度

好みの食事は人間族で言う“宴会料理”の様な栄養価の高い物を好み

体躯たいくは他の種族と比べれば小柄であるが

筋肉質であるが故に、腕力は大抵の種族よりもはるかに強力である。


何よりも、全種族中最も制作技術が高く

仮に彼らが製作出来ぬ物が有るとするならば

その物は、他のどの種族にも制作する事は不可能だろう。


……また、彼らにしか扱えない素材があると言う情報もあり

いずれの情報を照らし合わせようとも

物造りに関し、彼らの右に出る種族は存在しないと思われる。


注意:ドワーフ族の体型をけなす事は

彼らへの“宣戦布告”に当たる為、禁忌きんきとら

げんにこれをつつしむべきである。


……と言った形でどうでしょうか? 」


「ふむ……それならばドワーフ族を正しく説明出来ている。


全く……主人公殿の爪のアカでもせんじて

この本の著者に飲ませてやりたいわい!! 」


「……よ、喜んで頂けて良かったです。


さて、残るはオーク族についての記載ですが

俺の考えた物をそのまま記載しようと思っているので

問題が有れば、都度修正頂ければと思います」


「うむ……承知した」


「ではオーク族の項目ですが……


……平均寿命は人間よりも少し長いか同じ程度

食事は大抵の物を消化出来る強靭きょうじんな胃袋を持っている為

これと言った苦手な食材は無い。


……大柄で力が強く、物理攻撃が大の得意だが

食事量もそれに比例して全種族中でも多い方に入り

その平均的な摂取量は人族と比べ約三倍程の量と成る。


なお、旧王国時代の文献にて悪辣あくらつえがかれていた

行動、性格については旧王国側の都合にる物が大半で

人間や他の種族と同じく家族思いである。


……その為、大飢饉だいききんの際には

妊娠中の妻の為に食材を分け与えて貰おうと

人族の元へ交渉に向かった一人のオーク族を、誤解した人間族が攻撃し

それを振り払った際、誤って人間族に怪我を負わせてしまうと言う事故が起こった。


だが、事態を重く見た種族の長が

当該オークを追放処分にしょしたにも関わらず

当時の国王は“口減くちべらし”の口実に利用し

王国領土から追い出すと言う悪政あくせいを働いた。


……その際、無抵抗で旧王国を去る彼らの背に向け

弓による極めて致死性の高い攻撃を行い、結果として

旧王国による虐殺が行われたと言う痛ましい事件も発生しており

これらの情報は旧王国の文献では意図的に隠蔽されている。


注意:様々な旧王国時代の文献に記載されている

“恐ろしい性格”などでは決して無く

失礼な態度や理不尽な行為を行わない限りとても友好的である。


……これでどうでしょう? 」


「……全くもって吾輩からの文句は無い。


だが……他の種族と比べ、いささ記述きじゅつが長くはないか?


やはり、吾輩に気を使って……」


「気を使うべきだから使いました……問題だとは思いません。


むしろ、今までが異常だったのですから」


<――真実の蓋を開けてみれば何の事は無い

オーク族は、見た目が厳つくて力が強いだけの心優しい種族だったのだ。


そんな彼らの事を、二度と“穿うがった目”で見て欲しく無い。


……そう決意して居た俺の気持ちをんでくれたのか

ラウドさんもこの記述に賛成してくれて――>


「……うむ、この位は記載しておかねば成らんじゃろうて。


わしもこの件に関しては思う所が多い……これでようや

“正常”に戻ったと言うべきじゃろう」


<――そう言ったラウドさんや俺達に対し

深々と頭を下げ、感謝の意を伝えてくれたグランガルドさん。


一方の俺は、そんな彼らの様な差別迫害にる犠牲者を

これ以上生み出さない為――>


「いえ……むしろ、真実を記載するまでに大変な時間が掛かり

本当に申し訳有りませんでした。


それでなのですが……その、もう一つだけ……出来れば

“ハーフ族”に対する項目を新たに増やしたいと思って居るのですが……」


<――恐る恐るそう申し出た。


直後――


“構わんが……内容はどうするんじゃね? ”


――と、ラウドさんにたずねられた俺は

此処まで一緒に過ごして来た“メルちゃん”の事を強く思い浮かべながら

俺の中で温めて居た記述を伝えた――>


………


……



「……皆様から見て

おかしいと思う所があれば、指摘して頂ければと思います。


では――


――ハーフ族、両親となる種族毎に全てが異なる為

一概いちがいに情報を記載できない存在。


一部種族への古く間違った知識にる差別や迫害の所為で

苦しんで居るハーフ族はとても多く、現在も事件が相次いでいる。


……解決方法は一つ

国民一人一人が正しい知識を身につける事。


全種族中最も未知数であり

全種族中最も“差別迫害”の枠を超えた、種族同士の愛の結晶的存在である。


どう……でしょうか? 」


<――恐る恐る伝えた俺の原案に対し、満場一致で承認されたハーフ族の項目。


良かった! これでメルちゃんに対する理不尽な迫害も

少しずつ減って行く筈だ!


だが、その喜びはぐっとこらえつつ――>


「さて……全ての項目が改定されましたので

これを基本とした新たな教科書を作り教育の場や国民に行き渡らせましょう。


その上で……行く行くは、種族毎の得意分野を生かした仕事を

それぞれの種族の安定した暮らしの為に利用したいと考えています。


ですが、その為の法整備もおこなわねば成りませんので

族長の皆様には、是非とも各種族代表の“大臣”として

この国の政治に関わって頂けたらと思っているのですが……


……ラウド大統領、その様に取り決めて頂いても宜しいでしょうか? 」


「うむ、最初からそのつもりじゃったぞぃ? 」


<――ラウドさんからの承諾が取れたこの瞬間

各種族長達はそれぞれの種族を担当する大臣と成った。


……のは良かったのだが、話し合いが長時間に渡った事もあり

ラウドさんはある事を心配していて――>


………


……



「ううむ……時間が遅くなってしもうた。


各種族達が長の不在に不安や苛立いらだちを感じておるやもしれん

その事で大事に成っても面白くないでのぉ?


……主人公殿、今日の所はこの辺にして

皆をそれぞれの居住区に送り届けては貰えんじゃろうか? 」


「勿論です! ……では、皆さんを一人づつ転移魔導でお送りします!


っと……言っておきながら申し訳有りません。


クレイン族長と、リオス族長の転移先が分からないのですが……」


「あぁ! 僕はエリシアと用事があるから送らなくていいよ~!

ありがとね~主人公っ! 」


「了解しました! ではクレイン族長は……」


「ふむ……そう言えば

主人公君は私達の村に来た事が無かったのか……なら、丁度良い機会だ

皆を送り届けた後にでも私達の村に来ると良い。


そうすれば以降の往来が楽になるだろう? 」


「助かります! ……是非お邪魔させて頂きます!

では、オルガ様から順にお送り致しますので……」


<――暫くの後

長達を全員送り届けた俺は

メルちゃんとマリアの二人を連れダークエルフの村へ向かう事に成った。


だが、マリアが喜んでいた一方で

メルちゃんは――>


「で、でも……私が居たら、御迷惑に成りませんか? 」


<――そう言って不安げにクレインさんを見つめた。


だが、クレインさんは――>


「……メル君。


君や、君の両親を差別する様な“愚か者”は

我が種族には一人として居ない事を約束する……だから、安心すると良い」


<――メルちゃんの目をしっかりと見つめそう言った。


正直、俺もホッとした――>


「良かったね、メルちゃん」


「……はいっ! 」


「よし……では出発だ」


<――直後、クレインさんに連れられ

ダークエルフの村へと向かい歩きだした。


そして……小さな山の奥に入り、数十分ほど歩いた頃だろうか?


樹齢じゅれい千年はくだらぬであろう大樹の近くに

樹木に偽装された家々がつらなっているのが見えた。


どうやら、此処がダークエルフの村らしい――>


………


……



「皆……帰ったぞ! だが、今日は重要な客人を連れて居る

皆、もてなしの用意をして貰いたい」


<――クレインさんがそう伝えると

何処からとも無く若いダークエルフ達が現れ、宴の準備をし始めた。


……だが、若いって言ってもエルフ系の種族って

何百歳とかだったりするんだよな?


もしかしてだけど……年上ばかりか?

などと考えていたら、これまた何処からとも無く現れたダークエルフの女性

褐色の肌にコバルトブルーの髪をなびかせた凄まじい美女だ。


彼女は、現れるなり――>


「アナタお帰りなさい……ってあら?

人間が二人と、貴女はもしかして……“メアリ姉さん”の娘かしら? 」


「は、はいっ……メルといいますっ!!


って今、メアリ“姉さん”って……」


「ええ……私はミア。


メアリは私のお姉さんなのよ? つまり貴方とは親戚ね!

ちなみに……クレイン族長は私の旦那様よ♪ 」


「と言う事は……ミアさんは私の叔母さんって事ですか?! 」


<――目を丸くして驚いてメルちゃん。


と……俺とマリア。


そんな俺達に対し、クレインさんは――>


「……だから言ったのだよ。


この村でメル君とメアリ“義姉ねえさん”を迫害する様な“愚か者”は居ないと。


所でミア、留守中に問題は無かったか? 」


「ええ、私が居たら大丈夫に決まってるじゃない!


……所でメルちゃん、姉さんは元気?

最近退院したって聞いたけど全然会いに来てくれないし……


……ひょっとして嫌われてるのかしら? 」


「えっと……お母さんは主人公さんのお陰ですっかり元気になりました!

で、でもっ……その……ミアさんを嫌いとかそう言う事は無いと思いますっ!


ただ……まだ政令国家では差別が完全には無くなってませんから

その、お母さんは……出歩くのが怖いのかもしれないんです」


「……そう。


それで、その主人公さんって言うのがそちらの男性? 」


「は、はいッ! ……主人公と申しますッ!


……大統領制に変わった政令国家で

教育、外交、法務大臣を兼任させて頂いておりまして

日頃からクレイン族長には大変お世話に成っており

本日は此方の村にお誘い頂けた御縁でお邪魔させて頂く運びとなりましたッ!

ほ、本日はおまねき頂き……」


「待って待って! ……そんなに固い挨拶しなくてもいいわ?

それより……メアリ姉さんの事、私からもお礼を言わせて下さい。


主人公さん……本当にありがとう」


<――そう言うと

ミアさんは俺に対し深々と頭を下げてくれた――>


「そんな!! ……頭をあげて下さい!

大切な仲間のお母様ですし、そもそも当然の事をしただけですから! 」


「……だとしても、感謝しています」


「私もだよ主人公君。


……さて、積もる話もあるだろうが続きは宴で話そう」


「そうねアナタ……さあ皆さんも此方へ」


<――直後、宴の席に招かれた俺達。


宴では、クレインさんが政令国家で大臣と成った事や

俺が族長の“義姉”であるメアリさんの命を救った事

メルちゃんがそのメアリさんの娘である事

マリアは最近頭角を現しつつある、かの有名な

“マリアーバリアン”で有る事などを一頻ひとしきり紹介して貰い

照れたり謙遜したりなどしていたのだが……そんな中

流石にマリアも気を使ったのか、凄く小さな声で

“語呂が悪い”と言っていたのが地味に面白かった。


更に、スライムの草原で二度起きた俺の大失敗……まぁ、二回目は故意だったが。


兎に角……その“犯人”が俺である事をクレインさんがバラした事で

村のダークエルフ達は何故か更に盛り上がり

飲めや歌えの大宴会といった様相に成リ始めたのだった。


そして――>


………


……



「……この果物美味しぃれすよぉ~主人公しゃ~ん♪ 」


「全くマリアは毎回毎回……って酒臭っ! 」


「マ、マリア君……それは本来、飲み物に入れて潰し

酒にしてから飲む……し、信じられん酒豪だ」


「クレイン族長、マリアが申し訳有りません……」


「い、いや……構わないが

“マリアーバリアン”の通り名は伊達では無い様だね……」


「……ちょっとぉ~!?

なんれその語呂の悪い呼び名が定着してるんれすかぁ~?


……もぉ~!! 」


「良かったじゃないかマリア」


「よくなぁぁぃ~……zzz」


<――そう文句を言いつつ“寝落ち”したマリア

そして、そんなマリアを微笑ましく見つめるクレインさんの優しい眼差し。


何だか、楽しいな――>


………


……



「本当に……楽しそうな仲間で羨ましいね」


「ええ、騒がしいですけどね」


<――クレインさんとそんな話をして居た一方で

メルちゃんはミラさんと話して居て――>


………


……



「……所で、メルちゃんは回復術師ヒーラーなの? 」


「はいっ! ……まだまだ勉強中ですけど頑張ってお役に立ちたくてっ!

でも……どうして分かったんですか? 」


「……そのネックレス

昔ガーベラが着けていた物に良く似て居るから……そうかなと思って」


「はいっ! これ、ガーベラさんからの頂き物なんですっ! 」


「……あら、それならメルちゃんはかなり期待されてるのね!

自信を持って頑張りなさいね? 」


「はいっ! ……頑張りますっ! 」


「さて、それなら私からも何かプレゼントしないと……


……この髪飾りとかどうかしら? 」


《――そう言うと

ミアは懐から古めかしい髪飾りを取り出し、メルにプレゼントした――》


「よ……宜しいんですか? 」


「ええ、メルちゃんが着けてくれたら髪飾りも喜ぶと思うわ♪ 」


「あ、ありがとうございますっ! ……」


………


……



「そう言えば主人公君。


今日はもう遅いが……このまま泊まってはどうかね? 」


「光栄ですが……ご迷惑に成りませんか? 」


<――と、たずねた俺の

“真横”では――>


「zzz……むにゃむにゃ……語呂が……悪い……」


「既に寝ているマリアも居る事だ……嫌で無いなら泊まると良い」


「そんな嫌だなんて滅相めっそうも無い! ……むしろ光栄です!

っと……メルちゃ~ん!

今日はクレインさんの村にお泊りする事になったよ~! 」


「は、はいっ! ……あっ、主人公さんっ!

ミアさんに髪飾りを頂いたんですけど……に、似合いますか? 」


「うん、とても良く似合ってる! 可愛いと思うよ? 」


「あっ……有難うございますっ!! 」


《――この瞬間、頬を赤らめたメルの姿に

ミアは何かをさっした様な顔をして微笑んだ。


ともあれ……宴は終わり

そして翌日――》


………


……



「うぅ~……頭痛いぃ~……」


「だ、大丈夫ですか? マリアさん……」


「あぁ……メルちゃん“ソレ”は放置で大丈夫

マリアはお酒関連必ずそうなるみたいだから」


「……うぅ……主人公さんの鬼ぃ……」


………


……



「しかし……マリア君は大変そうだが、楽しんで貰えた様で良かった。


また何時でも来てくれ、君達の事は何時でも歓迎する」


「はい、本当に有難うございましたッ! 」


<――別れ際、固い握手を交わしたクレインさんと俺。


けど“認められる”って


嬉しいんだな――>


===第十七話・終===

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