第百六五話「監査と詮索は楽勝ですか? 」
「……国王様ッ!!
申し上げますッ! 女王様がッ! ……」
《――急報を告げる侍女の声
直後、彼女の齎した知らせに国王は胸を撫で下ろし――》
「ふむ……これで我が国の行く末は安心だ。
侍女よ、良い知らせを齎した御主に褒美をやろう。
……何なりと申せ」
《――そう訊ねた。
だが、侍女はこれに対し――》
………
……
…
「い、いえッ! ……私は
“新たなお世継ぎの”健康無事が叶うのであれば
それだけで幸福至極に御座いますッ! 」
《――そう答え、深々と頭を下げたのだった。
……この日、彼女が知らせた“新たな世継ぎの誕生”と言う情報は
瞬く間に王国内を駆け巡った。
その一方で……尚も病床に伏して居たアルバートの立場は
より一層、危うい方へと誘われてしまう事と成り――》
………
……
…
「おい、弟が生まれたって……本当か? 」
《――側付きの少女に対し
弱々しき声でそう訊ねた幼き日のアルバート。
そんな彼に対し――》
「は、はい殿下……ですが今も尚、継承権は殿下に……」
《――彼の側付きとして必死にそう励ました一人の少女。
病弱な彼を献身的に支え続けていたのは
幼き日の“ローズマリー”であった。
だが、彼を気遣いそう発した彼女に対し――》
………
……
…
「バ……ッ……バカにするなッッ!!
僕に……こんなに病弱な僕にッ!!
このまま、継承権が有り続ける訳無い事位ッ分かってる筈だッ!!!
良いか? どうせ直ぐに僕は死ぬんだ……
……どうせ君だって、僕にヘラヘラして取り入って
後々甘い汁を吸おうって……僕の地位だけを見てるんだろッ!!
僕はッ!! ……お前みたいな下品な女なんて信じ……ぐっっ?!
ゲホッゲホッッ!!! ……」
「……で、殿下っ!?
ご安心を! 直ぐに治療を致しますからッ! ……」
「な、何でもいいから早く治療しろッ!! ……ぐあぁぁっ!!! 」
《――恐らくは彼自身が最も理解していたであろう事実。
自らの病弱な身体では、地位も国も……
……“自らの身体すらも”御する事は出来ないと言う事実に。
だが彼は、その事に絶望しつつも必死に願っていた――
“何をしてでも、健康な体を手に入れたい”
――と。
そして、その願いは……ある日唐突に
“彼の望まぬ形で”叶う事と成る――》
………
……
…
「うぐっ!! ……ゲホッゲホッ!! ……く、苦しい……たす……け……」
《――ある日の深夜
容態が急変したアルバート……この時
彼を襲った苦しみはこれまでとは比べ物に成らず
痛みにのた打ち回る悲痛な声だけが彼の部屋に響き渡っていた。
だが、そんな時――》
「殿下っ!! ローズが今、お側に参り……なっ!?
何故?! ……何故扉が開かないのですっ?! 」
《――いつ何時でも対応出来る様
常日頃から隣の部屋で寝泊まりをして居たローズマリー
……だが、異変に気付き彼の部屋へと向かったその時
“施錠されていない筈の扉”は何故か固く閉ざされていて――》
………
……
…
「ローズマリー……何してる……早く……治療……し……ろッ!!
うぐっ?! ……ぐぁぁぁぁっ!!! 」
《――尚も彼を襲う地獄の苦しみ
意識を保つ事すら容易では無い激しい痛みの中に在った彼は
再び“願った”――》
………
……
…
「……嫌だ。
もう、こんな……こんな身体は……もう嫌だッ!!
もっと……丈夫な身体が欲しい……もっと……
苦しまないで……済む……力が欲しい。
痛みの無い、丈夫な身体が……ッ!!
その……為……なら……悪魔にでも……魂を売り渡す……
この国の……全てでも……差し出すか……ら……
……だからッ!!
何としてでもッ!!! ――」
《――耐え難い苦しみの中
叫ぶ様にそう言い放った幼き日のアルバート
次の瞬間――》
………
……
…
《《――該当者一名を発見。
該当者の“残存生命時間”は残り一分です――》》
「何……だ? ……この……声は……何処から……」
《《――該当者に依る“自己の放棄”を確認。
“上書き可能な素体”として使用可能です――》》
「上書き? ……素体? ……一体何を……ギギッ?! 」
《――直後
幼き日のアルバートは、完全に“停止”し――》
………
……
…
《《――対象者の完全停止を確認
対象の“初期化”を開始します――》》
「ガ……ギギ……ッッ……」
………
……
…
「アルバート様ッ!? ……今向かいますわッ!
転移魔導……アルバート様の元へっ! ……何故ッ!?
何故転移出来ないのですッ?!
くっ……こうなれば、扉を破壊致しますッ!
アルバート様ッ! ……扉にお近づきに成らぬ様ッ!! 」
《――尚も固く閉ざされたままの扉を破壊する為
攻撃魔導を発動させたローズマリー
だが――》
………
……
…
「な、何故ですのっ!? この技で破れぬ様な扉では……不味いですわッ!
アルバート様の声がしなく成った……アルバート様っ!
アルバート様ァァッ!!! ……」
《――開く事は疎か
傷一つ付ける事すら出来ない扉に違和感を感じつつも
彼の身を案じ必死に扉を開く為の手立てを考えていた彼女は――》
「ハッ……そうですわっ!
“窓”からならば!!! ……直ぐに向かいますわッ! 」
《――直後
中庭へと走ったローズマリー……だが。
……彼女が到着し、窓を破り
部屋への侵入が叶った時には“既に”――》
………
……
…
「……アルバート様っ!!
アルバート様、今直ぐ治療をッ! ……」
「ん? ……不要だよ、僕はこの通り元気だからね」
《――言うや否や
勢い良く立ち上がり、彼女に対し微笑んでみせたアルバート。
だが、その反面
異様な程の変貌を遂げた彼の体調と“人格”……
……当然、彼女も
この異変を感じて居て――》
………
……
…
「……アナタ、一体何者ですの?
アルバート様と瓜二つの姿をしては居ますが
アナタは断じて“アルバート様では有りません”わ?
……吐きなさい。
アルバート様を一体何処へ連れ去ったのです?
答えに依っては……命の保証は出来ません事よ? 」
《――警戒心を顕にそう言ったローズマリー
……だが。
そんな彼女に対し、怯える事も無く――》
………
……
…
「……君が考えている事は殆ど正解だ。
だが、仮に君が今この場で僕を捕らえ
このご子息は“偽物である”と国王に喧伝でもしたとして……
……一体誰がそれを信じると思うのかね? 」
《――そう、堂々たる態度で返した“彼”
だが、ローズマリーも引きはせず――》
「……信じる信じないの問題では有りませんわ?
仮にも国王のご子息である御方を騙ろうとする様な不届き者に
何の裁きも下らないと思って? 」
「確かに、君の言う通りかも知れない……だが。
情報によると、君が今の今まで仕えていたこの“素体”……いや、失礼。
アルバート君の立場は現在“相当不味い”様だが
仮に君の告発を信じて貰った所で……良くてこの体を処刑され
アルバート君の“身体は”一生帰って来なくなる……
……それで君は良いのかい? 」
「意味の分からない事を長々と……
……アルバート様を何処かに隠し
アルバート様に成り代わろうとする為、詭弁を……」
「おっと……待った。
僕はアルバート君の事は何処にも隠していないよ?
寧ろ……今こうして話しているこの身体こそ、アルバート君その物だ。
……もし、この説明でも分からないと言うのなら
もっと確りと説明してあげよう。
僕は、この体を――
――“乗っ取ったのだよ”」
《――“彼”がそう告げた瞬間、攻撃の構えを見せたローズマリー
だが……そんな彼女に対し“彼”は更に続けた――》
………
……
…
「おっと! ……君が“ご子息殺し”の凶行に及ぶ前に二~三伝えておこう。
先ず一つ目、本来ならばこの体の命は数分前に尽きて居たそうだ。
次に二つ目、僕の得た情報によると……この国では
君の様に能力の高い者がぞんざいに扱われている様だが
僕がこの国の長に成れたなら
君の様な能力の高い者を決してぞんざいに扱わず重用する事を伝えておく。
そして、最も重要な……三つ目だ。
僕は……君が仕えていたこの“暴君”の身体を
決してぞんざいに扱ったりはしないし、君の様に純粋な優しさを持つ者を
この子がして来た様にぞんざいに扱ったりはしないし
不当な評価を与えたりもしない。
僕が伝えたい事は以上だ……さぁ。
君の“大声”につられて衛兵達が現れる前に
どうするのか、どうしたいのか……君自身が決めると良い。
だが、予告しておく……情報を見る限り
今の国王のままでは君を含めた
“高い能力を持つ者達”が日の目を浴びる事は“まず無いだろう”……とね」
《――そう告げた後、その場に座り込むと瞳を閉じ
無抵抗の構えを見せた“彼”……そんな“彼”に対し
尚も攻撃の構えを緩めず居たローズマリーであったが――》
………
……
…
「……アナタが何者かは分かりませんわ。
ですが……何れであるにせよ。
一度だけ、見定めさせて頂きますわ……」
「……賢明な判断だ。
その期待に応えられる様、僕も頑張るとしよう……」
《――直後
構えを解いたローズマリー……
……一方、その様子を確認し
静かに立ち上がった彼は、駆けつけた衛兵達に対し――》
………
……
…
「あぁ、驚かせて済まない……でも、安心して欲しい。
騒ぎの原因は、長らく僕の身体に憑いていた
“悪い魔物”を、彼女が退治してくれた事に起因する。
つまり……そのお陰で僕はこれ程の健康体に成ったんだよ
だから、彼女が“窓を壊しちゃった事”はどうか責めないであげて欲しい。
“継承権第一位”の僕が言うのだから……良いだろう? 」
《――そう告げた
“彼”
……直後
衛兵達を納得させた彼の“雄弁さ”に嫌悪感を覚えつつも
この場を収める為、敢えて沈黙を選んだローズマリー
そして……この日より暫くの後。
“彼”は……剣術、学術、魔導術の何れに於いても凄まじい成長振りを見せ
順調に周囲からの信頼や“コネ”を得ていた。
……全ては“王位継承”に必要な実力と立ち居振る舞いを身に付ける為の
“術”とばかりに……同時に彼女との“約束”を現実の物とする為
“彼”は、必要な全ての策を講じていたのだ。
だが……順風満帆に見えた彼の“野望実現”に
唯一“陰り”を見せる存在が居た――》
………
……
…
「息子よ……トライスターは確かに強力だ。
……だが、もし今以上に地位を向上させれば
増長し、何れは我が国に反旗を翻すやも知れぬのだぞ?
そう成った時、お前は一体どうやってそれを抑え込もうと言うのだ?
アルバートよ……そもそも、お前とお前が“目を掛けている女子”が
“トライスター”である事こそ
お前が地位向上を叫ぶ一番の原因であろう? ……」
《――彼女が沈黙を選んだ日より数えて数年後の事。
国王に対し、再三の要求を伝えていた彼であったが
国王の考えが変わる事は無く……寧ろ、日に日に強くなる彼の訴えを
“邪な物”と一蹴さえし始めて居た頃。
……そんな国王に対し、一切の苛立ちを見せる事無く
彼は冷静に……だが、国王にでは無く
寧ろ、国王の抱える配下の者達に対し訴える為かの様に――》
………
……
…
「……断じてその様な“含み”は御座いません御父上。
ただ、この国が更に強固で強大な力を持った一等国へと成る為には
強大な力をただ恐れ続ける事が、無駄な事であると……
……そう、申しているのです。
他国との交渉事を有利に進め、他国からの侵略を未然に防ぐ為には――
“そうする気が微塵も起きぬ程”
――軍事力を強化させる事が
最も必要不可欠な事だとは御父上も重々承知の筈。
……それは我が国の抱える兵の安寧にも繋がり
勝てぬ戦いに挑まされ無駄死する者も……未亡人も減らせるのです。
この国の領土と民を守り、繁栄させて行く為には
これこそ最も重要な事だと信じているのです。
どうか、お聞き入れ下さい御父上……」
《――そう言って深々と頭を下げたアルバート
だが――》
………
……
…
「息子よ……成らぬと言って居るであろう。
今まで通り、その者の出身に関わらず
トライスターの力を有して居ると確認の取れた者には常に監視をつけ
更に……不適切な力の行使を確認した際には、それを厳しく処罰する。
……以上だ。
理解したのならば、下がるが良い……」
《――この後も国王が考えを曲げる事は無く
彼の要望が通る事は無かった……
……この日より暫く
不遇の地位を決定的な物とされたトライスターの力を持つ者達。
だが……当時友好国であった国との取引に依って
国王が受け入れた難民の中に居た“ある者”の存在に
状況は“大きく変わる”事と成る――》
………
……
…
「ふむ、この者は……攻撃術師か。
次ッ! ……この者は……魔導適正無しと。
……次ッ!! 」
《――難民とは言え、例に洩れず
トライスターを見つけ出す為
魔導石版を用い検査を行っていた検査官の男。
……だが、その中に一人
一刻も早く治療の必要な者が居た――》
「たす……けて……このままじゃ……っ……」
「なっ!? ……チッ、不味いな。
……おいッ!! この中に回復術師職の者は居ないか!?
チッ……魔導通信ッ! ……」
《――今にも息絶えそうな程に衰弱した様子の難民に対し
救う為の手立てを持たず居た検査官の男。
……だが、彼が慌てた様子で魔導通信を開き掛けて居た
その時――》
………
……
…
「おっと……これは不味いね。
大丈夫だ、僕に任せたまえ……完全回復」
「ア、アルバート様?! ……どうして此方に? 」
「ん? ……友好国との“付き合い”で難民を受け入れたと言うのに
頭の固い父上のお陰で難民達が“牛歩”だと聞いている。
……だから、体調を崩した者でも出て無いかと
心配して来て見たんだけれど……“案の定”だった様で驚いているよ。
君も大変な仕事を任せられた物だね……」
「い、いえ……流石はアルバート様で御座います!
兎に角……おい、其処のお前ッ!
アルバート様にお礼を申し上げるのだッ! 」
「おっと……待った検査官君。
御礼なんて必要無い、人助け位減る物じゃないさ……それよりも。
君、何処も辛く無いかい? 」
《――そう言うと
たった今治療を施した相手に対し優しく微笑んでみせたアルバート。
すると――》
………
……
…
「……す、素敵な殿方じゃないっっ!!
あ、あたぃのコト……救って下さって有難う御座います。
その、アルバート様……とお呼びしても宜しいかしらん? 」
「ああ……か、構わないよ。
そ、それより……君の名前は? 」
「……あたぃの名前は、ペニー
戦争で両親を失って身寄りの無い中
こんなに大きな国で受け入れて貰えるだけじゃ無く
こんなに素敵な殿方に命まで救って貰えるなんて……っ♪
あたぃ決めたわ……今日からあたぃはアナタの為だけに
この国で過ごすわねぇん♪ 」
「そ、それは助かる……のか?
い、いや兎に角……余り気に病まないで欲しい。
……さて、見た所難民も後僅かみたいだし
そろそろ僕は帰るとしようか……」
「なら……あたぃもついていくわぁ~ん♪ 」
「う゛っ……ま、まぁ仕方無い。
そう言う事だ……検査官君、引き続き頑張ってくれ。
君も大変だろうが、難民の体調も考え
出来るだけ早く検査を終わらせてあげるんだよ? ……ではね」
《――そう言って
ローズマリーらと共にこの場から立ち去ったアルバート。
だが……彼らが立ち去ったこの時、検査官はある重大な“ミス”をしていた。
……そう、ペニーに対する検査を“行わず”入国を許してしまったのだ。
この時発生した、この極めて小さな“ミス”が
後にこの国を大きく変える一手と成る事は……
“彼”ですら、知る由も無かった――》
………
……
…
「……こ、こんなに沢山の装備を頂いても宜しいのかしら?
あたぃ……どうやってお返ししたら良いの?
あたぃの身体で良かったら、幾らでもオ・カ・エ・シ……しちゃうケドっ♪ 」
《――ある日の事
半ば“強制的に”アルバートの側付きと成って居たペニーは
愛するアルバートからの“贈物”に喜んでいた。
一方、そんなペニーに対し――》
「い、いや……その必要は無いよ。
兎に角……君も知ってるだろうが
君がその装備を身に着けて一歩でもこの国を歩いた瞬間
先ず間違い無く、君にも“監視”がつくだろう。
僕の護衛でも有るローズですら単独行動をする時には監視が付いている。
……君がもし監視されるのが嫌ならば
外では絶対に身に付けず、トライスターである事は疎か
魔導適正が有る事も隠すべきだ。
そして、国王が息を引き取る迄……と言っても
あれ程ピンピンしていたら、かなり先の話だろうが……何れにせよ
人前では決して身に着けない事もお勧めしておくよ。
それと……念の為
その装備を作らせた装備職人には“忘却の魔導”を強めに掛けて置いた。
その“意味”……君が理解していると嬉しいのだが」
《――そう言って微笑み掛けたアルバート。
そんな彼の要求に対し――》
………
……
…
「ええ……アルバート様。
あたぃの命もこの身体も……全て、アナタのモノ。
あたぃは今後もアナタの命令しか聞かないつもりよ? ……ダ・カ・ラ♪
アナタが何を望んでも、あたぃはそれに従うだけっ♪
それに……二人だけの秘密って感じで嬉しいのぉ~ん♪
兎に角! ……安心してねぇん♪ 」
「い、いやローズも居るのだが……兎に角、君が聡明で安心したよ。
さて……今日渡したかった物はそれだけだ
長く引き留めてすまなかったね……」
「いいえ? 何時でもお呼びになってねぇ~ん♪ 」
《――彼らがこの“密約”を交わした時から更に数カ月後。
彼らに取って千載一遇の好機が訪れる事と成る――》
―――
――
―
「……さてと。
あたぃとアルバート様の“愛欲の日々”の話はこの辺にして……お次は
政令国家に居る人達は勿論、メリカーノアですら
“ほぼ”全ての人達が知らないであろう真実を教えてあ・げ・る♪ 」
《――そう言った後
不敵な笑みを浮かべたペニーは
主人公の部屋に集まっていた者達に対し――》
「……あれは、あたぃがアルバート様から
装備を一式プレゼントされて約数カ月後の事。
……その頃と言えば、周辺の地域で
“ゴブリンの大群”に関する目撃情報が山程挙がり始めて居た頃でね
本来ならば警戒心を持って置くべき時期だったと思うのだけれど
警戒心の無さ故か、前国王はゴブリンの手に掛かり崩御し……って。
この“嘘”なら、この場にいる全員が知っている事よね?
……でも、今から話す“真実”の方は
きっとアナタ達が腰を抜かす様な内容なのよ? 」
《――直後
自らの発言に依って皆が騒がしくなった事に
“気を良くした”ペニーは――》
………
……
…
「実はね、国王の崩御は――
――ゴブリンの仕業に見せかけた、あたぃとアルバート様の
“愛の共同作業”に依る物なのよぉ~んっ♪ 」
《――クルクルと回転しながら自慢気にそう言った。
だが――》
………
……
…
「成程……それなら納得だな」
「アラ? ……意外な程冷静ねぇ主人公。
もう少し位驚いてくれると思ってたんだけれど、何で全く驚かないのかしら? 」
「いや、驚いては居るよ……けどさ
話を聞く限りでは、無い話じゃ無いなと思ってたんだ。
……気になるのは暗殺の方法位だけど
恐らく、犯人役に使うゴブリンは予め何処かで倒したゴブリンの死骸
武器は武器で、物理攻撃が得意な君がゴブリンの武器で国王を殺害すれば
恐らく目撃者は居ないだろうし、居ても……“口封じ”するだろ?
で……偶然通り掛かったかの様にアルバートが現れ
事後処理を済ませた後“悲劇の演出”も整え
徐々に国王の地位を引き継ぐ為の流れを作る……そうすれば後は
彼奴の思うがままだと思うんだけど……合ってるか? 」
「ええ……殆ど正解よ。
でも、少しだけ間違えてるわ? 」
「ん? ……何処が違ってたんだ? 」
「国王を殺めたのはあたぃじゃ無い……アルバート様が
自ら、手をお下しに成ったのよ……」
「そっか……話してくれてありがとな」
《――冷静に全てを言い当てた主人公。
だが……同時に
彼はとても大きな“疑問”を感じていた――》
===第百六五話・終===