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第百六三話「戦後処理と共闘作戦は楽勝ですか? 」

<――俺が三ツ脚のカラス姿で“ただよって居た”間に起きた目まぐるしい迄の出来事は

ローズマリーとペニーの両名が“共闘関係に成った”と言う話で幕切れをした……


……訳では無く。


むしろ、この後に聞かされた話の方が余程“本題”だった様で――>


………


……



「……取り敢えず二人が共闘関係に有る理由はそんな所だねぇ~」


「そ、そうだったんですね……てか

俺が不甲斐無い所為で本当に申し訳……」


「待った! ……確かに彼奴ライドウには逃げられちゃったし

第二城にも犠牲者は出ちゃったよ? ……けど

全滅する可能性すらあったあの状況を一変させてくれた主人公っちに

何か文句を言う方がどうかしてると私は思う訳なのよ。


てぇ事で~! ……気にしない気にしな~いっ!

そもそも主人公っちも覚えてない位だから仕方無いじゃん? 」


「そ、その……お気遣いありがとうございます。


それでそのもう一つだけ気になる事がありまして……


……“お二人”の事は兎も角として

“国同士の関係”は一体どうなったんですか? 」


「おぉ~っ! ……流石は主人公っち!

大臣を三つも掛け持ちする位だし、其処そこも気になるよねぇ~♪


……でも、安心していいよぉ~?

主人公っちが眠ってた約三週間の間に解決したのはねぇ~♪ ……」


「……え゛ッ?


ちょ……ちょっと待ってくださいエリシアさんッ!

俺、三週間も眠ってたんですか?! 」


「へっ? ……そだよ~?


……まぁ、大変な事の後だし

主人公っちは限界を超えて無理をする“悪いクセ”があるからね~」


「す、すみません……でも、三週間も眠ってたって事は

俺が眠っている間、皆さんには相当なご迷惑を……」


「ハイハイハ~イ! 今からマイナス発言は全面的に禁止ぃ~っ!

さっきも言ったけど、主人公っちのお陰で全部丸く収まったんだから

それだけで充分なんだってばっ! ……分かったかなぁ~っ? 」


「は……はい」


「むぅ~……煮え切らない返事だなぁもう。


兎に角っ! 主人公っちが眠っていた間に起きた問題と

その解決に関して、主人公っちが納得出来るまで

政令国家一の美人攻撃術師マジシャンである私エリシアさんが

一から十までちゃ~んと教えてあげるから~……


……って?! もうお昼前じゃん!?

ごめん主人公っち! サラちゃんとの約束に遅れちゃ申し訳無いし

詳しい話は皆から聞いてくれぇ~っ!


って事で……じゃあねぇ~っ♪ 」


「……ちょ、エリシアさん?!

って、もう居ないし……」


<――この後、エリシアさんが去り際に残した

“サラちゃんとの約束”と言う言葉が気になって居た俺に対し

その件に関する話も含め、俺の眠っていたと言う

約三週間の間に起きた激動げきどうの出来事を代わる代わる説明してくれた皆。


……事の始まりは

俺が遙か上空で“ただよっていた”らしい時までさかのぼる――>


―――


――



「……“全て終わった”

本当に……そう、形容けいようしても良いのじゃろうか? 」


《――敵大将アルバートの唐突な死


それにるローズマリー、ペニー両名の戦意喪失せんいそうしつ

唐突な終焉しゅうえんを迎えていた両国の戦争……


……この異様な状況の中、ラウド大統領は静かにそう言った。


そして……そんな彼の発した一言をまるで合図にしたかの様に

この瞬間まで遙か上空で“ただよって”居た三ツ脚のカラス

ゆっくりと、彼らの元へと舞い降り――》


………


……



「あと一度、この者を導かねば成らぬ……」


《――そう言い残し魔導之大剣へと“帰還”した。


そして――》


………


……



「“一体何が”……とは聞くまい。


主人公ともよ、ヴェルツへと帰還するぞ……」


《――意識の無い主人公をかつぎ上げると静かにそう言ったグランガルド。


それはまるで、この場にいる者達の心にひとしく芽生えていた

不安や疑問を切り捨てるかの様に発せられ――


――唐突とうとつな終わりを迎えた戦争の事後処理と共に

傷付いた“政令国家くに”と“主人公そんざい”を癒やす為の行動を各自にうながした。


そして、この日より約一週間の後――》


………


……



「さて……ずは自己紹介と行きますかな? 」


《――某地域にて極秘に開かれた

政令国家とメリカーノア大公国の会談。


その“開会式”とばかりに立ち上がりそう言ったラウド大統領……だが。


メリカーノア側に属する者のほとんどが口を真一文字に閉じ

不服を絵に書いた様な不満顔を浮かべたまま声一つ発さず居た。


そんな、如何いかんともしがたい重苦しさの中……


……メリカーノア大公国の新たな長と成った男性は

ラウド大統領に対し、深々と頭を下げ――》


「……ラウド大統領。


ずは会談への招待に対する感謝をお伝えすべきかと思っていたのですが

その前に一つ、此方こちらから申し上げるべき事がある様です……」


《――そう言った。


その上で、彼は――》


………


……



「……極秘会談の場を用意し

これ以上、事を荒立てぬ様細心さいしんの注意を払って頂いた事。


本来であれば、我が国の国政に関わる者全員がこうべ

謝意しゃいをお伝えするのが最低限の礼儀で有るにも関わらず……ご覧の通り

我が国の政治家共はいささか“礼儀知らず”が多く、く言う私も

長としては“新参者”と言う有様で御座います。


ゆえに……会談中、意図せず今以上のご無礼を働いてしまうやも知れぬ事

何卒なにとぞ、ご容赦ようしゃ頂きたい……」


《――そう続け

先程よりも更に深々と頭を下げたメリカーノアの新たな長。


一方、そんな彼に対しラウド大統領は頭を上げる様頼みつつ――》


「ふむ……いずれにせよ、ずは自己紹介を済ませましょう。


では、改めて……わしの名はラウド。


政令国家の大統領……つまりは、長を努めております。


さて……本来であれば、本日欠席の主人公殿が我が国にける重要な

三つの大臣を兼任してゆえ、本日は我が国の外交に

“大きな穴が空いた状態”での会談と成った訳なのですが……


……この“穴”を外交にける此方こちら欠礼けつれいとら

言葉遣いや非礼など気に為さらず、むし

“先に向こうに非が在ったのだ”と

笑って頂ければ幸いじゃと思っておる所ですじゃ」


《――そう言って微笑ほほえんだラウド大統領。


そんな彼の気遣いに、メリカーノアの新たな長は――》


「ラウド大統領……お気遣い痛み入ります。


では……此方こちらも自己紹介を。


この度、メリカーノア大公国の新たな長となりました

名を……ヴィクターと申します。


以後、お見知り置きを……」


《――深々と頭を下げ

そう自己紹介をしたメリカーノアの新たな長


“ヴィクター”


だが……頭を上げた瞬間


“ある人物”の同席に気付き――》


………


……



「……おぉ! 貴女は確か、ライラさん……で、合っているだろうか?

とても久しぶりだが、私の事を覚えてくれているだろうか!? 」


《――ライラの存在に気付き、とても嬉しそうにそう語った。


一方、ライラも彼に気が付いて居た様で――》


「……うん。


あの時、クロエと――


“女性の人権をけて勝負してた人”


――でしょ? 」


「う゛っ……し、少々聞こえが悪い言い方だが

ある意味では事実とも言えるだろうし……と、兎に角ッ!


私の事を覚えていてくれた様で安心したよ……」


《――直後

冷や汗を拭いながらそう言ったヴィクター


会談の場に“妙な”沈黙が流れ……そして

本題である“今後の両国にける関係性の再構築”へと話が移った時――


――戦後処理の為、あらかじめ開かれていた政令国家内での話し合いを元に

淡々と冷静に政令国家側の立場を説明し始めたアイヴィー


彼女は――》


………


……



「さて……ずは大公国本国そちらの兵舎で

いまだ“眠り”について居る兵員についてですが、私を含め

影之者カゲノモノ隊の者達は、あくまで事を荒立てぬ様

彼らを“保護”する為そうして居たに過ぎません。


……ゆえに、そちらの兵員に対する“仮死状態解除そせい”に関し

此方こちらから特段の条件付け等は有りませんのでご安心を。


次に……此方こちらこうむった被害をかんがみた上で

この度、此方こちらが要求する事となる“補填ほてん”の内容についてですが……」


《――両国間の極秘会談にける最大の問題点。


第二城、第五居住区で失われた数多くの生命の“代償”……


……本来、同盟関係を一方的に破棄し

非戦闘員に対する攻撃を行った大公国側は

しかるべき賠償ばいしょうを負うべき立場に有り……それを知ってか

この場に集まった大臣達の多くが彼女アイヴィーの発する一言一句に固唾かたずんで居た。


だが……そんな中、彼女アイヴィーがメリカーノア大公国へと求めた

たった一つの“要求”とは――》


………


……



此方こちらが求める補填ほてん賠償ばいしょう保証ほしょう代償だいしょう……


……どの様にお呼びしても構いませんが。


いずれにせよ……此方こちらの要求は一つだけです。


メリカーノア大公国所属の絵師である、クロエ女史じょし

彼女の邸宅が建つ山の中程へ極秘裏につくられた――


“研究所”


――その研究所で発生したあらゆる知識と物と“者”を全て破棄し

関わった研究者全員の記憶を全て消し去った上で

我が国の厳正げんせいなる監査を全面的に受け入れる事……


……以上の要求を受け入れる事でのみ

貴方達メリカーノア大公国の行った暴挙ぼうきょの全てを問題にしない。


れが……亡くなられた第二城第五居住区の民達と

その遺族達による唯一ゆいいつの望みである事をお伝えし、此方こちらの要求を終わります」


《――この度、彼女アイヴィー

“たった一つの条件”として大公国側へと突きつけた“要求”


それは……“遺族の願い”であった。


……彼女は今回の件をえて明るみに出さず

両国が友好国としての関係を今まで通り続ける事で

事を荒立て、更成る大戦争へと発展させる事の無い様……


……これ以上、両国の兵員を含めた民達が傷つく事の無い様

苦渋くじゅうの決断をした遺族達の気持ちをんで欲しいと……そう、希望した。


平和的な解決を望み、事を荒立てず……後の世を考え

一切の不満を漏らさず居た遺族達のわずかな望み。


その、純なる願いは……大公国側の大臣達が放った

心無い発言にって、容易たやすにじられた――》


………


……



「……わ、我が国の兵員全ての生命を人質に取ったまま

いわば“ナイフを首元に突き立てたまま”

その様に不平等な要求を突きつけるとは何と狡猾こうかつな民共か!! 」


「そ、そうですぞッ!? ……そうして我が国が要求を飲んだ瞬間

“本命の”要求を飲ませる腹積もりなのでしょう!?

差し詰め……行く行くは我が国の戦力すら問題とうた

そちらの息が掛かった兵の駐留をさせる様要求し

“真綿で首を絞める”かの様に

我が国の全てを飲み込もうと考えているに違いありません!!

だ、断じてッ! その様な要求は飲めませんぞっ!? ……」


《――この後


会談は紛糾ふんきゅうし……遺族達の純粋なる願いとは裏腹に

両国の関係性は良からぬ方向へと向かい始めていた……だが。


そんな中、大公国側の新たな長ヴィクターは

大公国側の大臣達に向け、怒声どせいげた――》


………


……



「……黙りたまえッ!!!


もしも政令国家に属する方々が

本当に君達が口汚くののしった言葉通りの存在ならば

私を含め……君達を今直ぐ、この場で声すら発させる事無く

くびり殺す事すら容易よういに行えると言う事であろうッ!!


だが……それ程の歴然れきぜんたる力を持った方々が誰一人としてそうはせず

そんな色すら微塵みじんも見せず、これ程の礼を尽くして下さった事の意味を

君達がなおも理解しようとしないのならば

君達が“人質である”とのたまった兵士達の帰りを

今か今かと待っている彼らの家族に対し――


みずからの判断で彼らの生命を投げ捨てたのだ”


――そう、伝えに行くが良いッ!!


これ程言ってもなお理解わからぬと言うのなら

私は、今この場で君達を――


“我が国とはまるで関係の無い者達だ”


――そう断言しても構わないと思っている。


そうなれば、君達がどれ程“むごたらしい最期”を迎えようとも

両国の会談の障壁しょうへきには成らない、もし仮に君達が

私にその様な“決断”をさせたいとまで考えているのなら――


――後少し。


ほんの一言でも……口汚く

傷付いた遺族ものたちの願いをののって見るが良いッ!!! 」


《――それまでの穏やかな態度とは打って変わり

立ち上がるや否や、会談の場に響き渡る程の声量でそう言い放ったヴィクター


この直後“心無い者達”は鳴りを潜め――》


………


……



「……お見苦しい姿をお見せしてしまい、大変申し訳ありませんでした。


勿論、ご遺族の方々が納得される形での監査を

全面的に受け入れる事をお約束致します。


そもそも……民が幸せに暮らす為、我が国に制定されていた筈の法を

前大公自身が破り、それにって今回の様な悲劇が起きたのです。


少なくとも私は……この会談を受け入れた時点から

如何いかなる要求をも受け入れる積もりでした。


……ラウド大統領、アイヴィー様

そして、今日お集まり頂いた政令国家の皆様に対し

前大公が破壊し尽くした我が国の正義を……必ず

私が責任を持ち、修復して行く事を宣言させて頂きたい。


ただ……そうする為には

いくつかの問題が残ってもいるのです……」


《――そう言った直後

バツが悪そうな表情を浮かべたヴィクター


彼は続けて――》


「……数日前

会談のお誘いを受けた際、ラウド大統領より――


此方こちらは事を荒立てぬ様考えておる”


――そう伝えられ、その際に謝意しゃいをお伝えした反面

仮にも長であったアルバートの死と、彼が引き連れその生命を散らした

多数の兵達に関する死の原因とその“言い訳”に関し

どうすべきかと苦慮くりょした結果、どう転んでも

アルバートを含めた兵の全てを

“悲運の英雄”としてまつり上げる必要が有るとの考えに至ったのです。


そうすれば、彼らの死を“不慮ふりょの事故”と出来る。


……ですがその反面、政令国家そちらからすれば

アルバートは紛う事無き怨敵おんてきであり……」


《――ヴィクターが其処そこまで言い掛けたその時。


これまで沈黙を貫いていたモナークは――》


………


……



「フッ……何を気に病むとうのか。


ヴィクターとやら……此方こちらかかえる問題は此方こちらが対処すると

たった今、我が右腕アイヴィーが語った筈……


……例え貴様が発そうとした策がどれ程“詭弁きべん”であろうとも

それが現時点での最善さいぜんであると考えたのならば

貴様は新たな長としての職務を全うするだけの事であろう。


“国防を綺麗事で考えるなど愚の骨頂”


……アルバートが主人公に対し宣った“詭弁きべん”だが

皮肉にも、今の貴様に取っては最も有用な“詭弁きべん”であろう……」


「成程……それがどれ程の詭弁きべんであろうとも

私は私の職務をまっとうしろとおっしゃるのですね。


モナーク様、助言……感謝致します」


《――そう言ってモナークに対し頭を下げたヴィクター


この後、両国の間に開かれた極秘会談は無事終了した。


そして……この日より数日後

ヴィクターにって、メリカーノア全域に

民草をまもる為の“詭弁きべん”が伝えられた頃――》


………


……



「んっ……此処ここは?!

サラ!! ……サラっ!! ……何処どこに居るッ?! 」


《――政令国家本国


魔導病院の一室にて……目覚めるや否や

妻の名を叫びつつ過度の興奮状態におちいっていたオウル。


直後、彼の元へ看護師が現れ――》


………


……



「……落ち着いて! 此処ここは政令国家の魔導病院です! 」


「そ、そうでしたか……いや、そんな事よりも妻はッ?!

サラは一体何処どこに!? ……うぐっ?! ……」


「あぁっ! ……貴方はまだ病み上がりなのですから落ち着いて下さいっ!

奥様は今、大統領執務室で拘束時の状況について聴取を……」


「何っ?! ……妻は何も悪くありません! 罪は全て私に有るのですッ!

どうかお願いです! 身重の妻への責め苦は全て私がッ! ……」


「ちょっとオウルさん!? 落ち着いて下さいっ!!

って……あぁっ?! 」


《――直後

過度の興奮状態に有ったオウルは

ベッドから勢い良く転げ落ち、派手に転んだ。


……だが、直ぐに立ち上がると

看護師の制止を振り切り病室を飛び出し――》


………


……



「ん? ……退院にはちと早いのでは無いかのぉ? 」


《――直ぐに

騒ぎを聞きつけ魔導病院正面へ現れた

“ラウド大統領”に制止された。


だが、この直後――》


「ラウド大統領……必要ならば私の命をもお捧げ致します。


全ての罪を、どの様な責め苦をも受けると誓います……ですからッ!!


どうか……どうか、サラの事だけは罪に問わず

彼女と、彼女のお腹の中に居る子供の事を……


……二人が幸せに暮らせる様、取り計らっては頂けないでしょうか?

その為に必要とおっしゃっしゃられるのであれば

私を防衛専用の“道具”として頂こうとも……」


《――ラウド大統領の眼前

愛する妻と子供の為に土下座し、そう懇願こんがんしていたオウル。


……だが、そんな彼に対し


ラウド大統領は静かに首を横に振りつつ――》


………


……



「……ずは顔をあげるのじゃ。


良いかね? オウル殿……御主がいく懇願こんがんしようとも

御主と、御主の複製体への対処たいしょ瀕死ひんしの状況におちい

いま昏睡こんすい状態の主人公殿が急激に回復する訳でも無ければ

我が国……特に、第二城第五居住区の民達が被った

不可逆ふかぎゃく厄災やくさいくつがえる訳でも無いんじゃよ。


そもそも、何をどうした所で……御主の願いは聞き届けられぬぞぃ? 」


《――冷酷なまでの現実を突きつけるかの様にそう言ったラウド大統領。


そんな彼の様子に、絶望ぜつぼうし……諦めた様な表情を浮かべたオウル。


だが、そんな彼に対し

ラウド大統領は更に続けた――》


………


……



「……良いかね? オウル殿。


御主が一人犠牲と成り、全てが丸く収まると言うのならば

わしも心を鬼にして、御主の犠牲を受け入れたやも知れん。


じゃが、いまだ目覚めぬ主人公殿も……勿論わしも。


この国に属する全ての者は、御主と

御主の大切な存在をまもる為必死に戦ったのじゃよ?


そうして何とか救う事が出来た存在を、御主が言う様に

“物として扱う”など……到底聞き入れられぬと言うて居るんじゃよ」


《――そう言ってオウルに対し手を差し伸べたラウド大統領


直後、差し出された手を静かに握ると――》


………


……



「ラウド大統領、私を妻と共に……いえ。


妻と子供と私の三人を……この国に置いては頂けないでしょうか? 」


《――ラウド大統領の眼を真っ直ぐに見つめてそう言ったオウル。


だが、彼の雰囲気にわずかな勘違いをしたラウド大統領は――》


「ん? ……勿論構わんが、いきなりどうしたのじゃね?

さっきも言ったが、御主を道具として国防に使うつもりは無いぞい? 」


「いえ、その……みずからの意思でこの国の国防に関わりたいのです。


ですが……そうする為には移住が必要かと……」


「……ふむ、それならば良いじゃろう。


じゃが、病み上がってすら無い御主が

今直ぐ国防に加わっては逆に危険じゃ……一先ずは

もう暫しの休息を取る事を命じるぞぃ? 」


《――彼の言わんとする事を理解すると

そう言って優しく微笑ほほえんだラウド大統領……そしてこの直後


オウルはラウド大統領の手をゆっくりと離し――》


「……このオウル、ずは治療に専念し

治療後は、粉骨砕身ふんこつさいしんの覚悟でこの国の国防に関わる事を誓いますッ! 」


《――そう言って勢い良く立ち上がると

ラウド大統領へ向け敬礼をしたオウル……だが


“病み上がってすら居ない”彼の体は大きくバランスを崩し

そのまま勢い良く地面へと倒れ――》


………


……



「じ、じゃから……程々にと言うて居るじゃろう!?

全く……魔導医殿ぉぉぉっ!! ……急患じゃあああああああっ!! 」


《――と

ラウド大統領へ大迷惑を掛けたのだった――》


===第百六三話・終===

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