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第百五一話「研究は楽勝ですか? 」

<――帰還後、メルのお父様であるマグニさんから

“娘はやらん宣言”を受け、誤解を解く為に相当な労力をいていた頃。


助け舟のつもりか、マグニさんの戦いっぷりに

話をそらしてくれたガルドは――>


………


……



「落ち着けマグニ……主人公の真面目さは吾輩が保証する

今のはマリアの悪ふざけだ、疑ってやるな。


それよりも……流石であった。


長く現役を退しりぞいていたにも関わらず

御主の剛毅ごうきさは微塵みじんそこなわれていなかった。


……やはり“始祖しその血筋”は伊達では無いな」


<――そう言ったガルド。


だが“始祖しその血筋”とは何だろう?


気になった俺がたずねた所――>


「ん? ……オーク族には始祖しそと呼ばれる血筋が有るのだ。


正確には純血種とでも呼ぶべきなのだろうが

吾輩など比べ物に成らぬ程の強さを誇る存在なのだぞ?

そもそも、本来ならばマグニこそが族長の地位にき……」


<――そう話すガルドをさえぎる様に

マグニさんは――>


………


……



「ガルド……昔にも伝えた筈だ。


俺に族長の器など無い、政治は苦手だ

むしろお前の様に文武両道ぶんぶりょうどうれたらと、どれ程考えた事か。


だが……いずれにせよ、この“目”では

族長としての器など、うに消え去って……」


「……何を言うか!

御主の強さがその程度の事で失われるなど断じて有り得ぬ話だ!!

そもそも、御主が称える吾輩の強さなどッ! ……」


<――と“謙遜けんそん合戦”を始めてしまったガルドとマグニさん。


その一方で、俺はマグニさんの眼帯の下……つまり

“失われた眼球の治療”について考えていた――>


………


……



(新しい傷なら治癒魔導で直せるけど

古過ぎて傷跡に成った様な怪我は傷口が完全に閉じてるから

治療が不可能って魔導書にも書いてあったし

そもそも直せる確証が無いのに下手に此処ここ

“やってみます! ”なんて、言える訳も無いよな……)


<――などと頭を悩ませていた俺の近くでは

なおもガルドとマグニさんが“謙遜けんそん合戦”を続けていて――>


………


……



「……御主はたとえ片目であろうとも

吾輩など遥かに凌駕りょうがする程の力を持っているッ!! 」


「何度も言わせるなガルドよ、俺はそんな器を持ち合わせてなど……」


<――と、褒め称えられては謙遜けんそんしての繰り返しを続けていた二人。


一方、そんな二人を静かに眺めながら――>


「確かに……マグニの身体にきざみ込まれた傷はとても多い。


もしも私の“心の傷”の様に、傷跡と捨て置かず

癒やす事の出来る何らかの方法があれば

どれ程良いのだろうと思っているよ……」


<――酒を片手にしみじみとそう言ったサーブロウ伯爵。


彼は続けて――>


「……昔、治癒魔導には古傷ふるきずなおす程の力は無いのだと

彼の為に呼んだ回復術師ヒーラーにそう言われてね。


……それこそ私の心の傷の様に、主人公君の様な人が現れ

さながら“暴露療法ばくろりょうほう”の様に心的外傷トラウマに直面させ……


……無論、苦しみも多かったが

結果として“古傷”と向き合えたのと同じく

彼の古傷にも何らかの救いがあればと、どれ程願っているか……」


<――そう、とても残念そうに話したサーブロウ伯爵。


だが、伯爵の放った“暴露療法ばくろりょうほう”と言う言葉に

ある“とんでも無い”方法を思いついてしまった俺。


無論……絶対に成功する確証など何処どこにも無かったが

居ても立っても居られなく成ってしまった俺は

なおもガルドと“謙遜けんそん合戦”を続けていたマグニさんに対し――>


………


……



「あ、あのっ!!! ……眼帯の下の状況は分かりませんし

絶対になおるって確証かくしょうも有りませんが

新しい怪我なら治るかも知れなくて……だからッ!


一度……その目に傷を負わせてみたいんですッ!! 」


<――と、後から考えれば信じられない頼み方をしてしまった俺。


当然、一瞬“ギョッ”とした表情を浮かべたマグニさんだったが

直ぐに発言の真意に気がついてくれたのか――>


「治らずとも……試す価値は有るだろう」


<――そう言って、眼帯を外し掛けていたマグニさんだったが

そんな中……これまた空気の読めないマリアは

最早もはやマリアの固有技とでも呼ぶべきレベルの

“悪ふざけ”を発動した――>


「はは~ん? さては――


“娘はやらんっ! ”


――って言われた腹いせに、必要以上に深くえぐるつもりですね~? 」


「ちょ!? ……どんな怖い発想だよ!?

てか、俺はお前の目に一体どんな恐ろしい存在として映ってんだよ!?

だ、大体……傷をつける為の方法もつける傷の程度も

全く思いついて無くて今すっげぇ怖いんだからなッ?! 」


<――と、今感じている全てを吐き出した俺。


そんな中……突如として

頭巾フードと羽織をみずからの眼前に脱ぎ捨てたと思うと

ふところから小さなナイフを取り出したマグニさんは――>


「任せたぞ、主人公君……ウグッ!!! 」


<――言うや否やみずからの古傷をナイフでえぐったマグニさん。


マグニさんの脱ぎ捨てた羽織の上に血が滴り始めていたその一方で

突然の事に慌てた俺は、どの治癒魔導を施すべきかすらも判断が付かなくなり

普段から使い慣れている筈の完全回復パーフェクトヒールでは無く

例の“極氷”と同じ“上位技”の流れを組みつつも

これまで一度も使用した事の無い

極致回復フォールトレスヒール”をこの時始めて発動させたのだった。


いずれにせよ……慌て過ぎていた事もあり

効力を考える余裕さえ無く発動してしまったこの技は

極致きょくち”付くだけの事はある

充分過ぎる結果をもたらしてくれたのだが――>


………


……



「その、主人公君……君に一つたずねたいのだが」


<――直後

妙にテンション低くマグニさんにそう言われ


“何でしょうか? ”


と返した俺に対し――>


「……とても古い傷が故

なおる見込みの無かったこの目を完璧に治してくれた事

正直、どう感謝を伝えるべきかすら分かっていない。


……だが、これ程の事が些末さまつに思える程

この状況が全くもって理解出来ないのだ。


主人公君、是非教えて欲しい――


“傷つけて居ない筈の他の古傷さえ全て跡形も無く直せてしまうのなら

君を信じ、意を決して古傷をえぐったこの行動に”


――何の意味があったのかを」


<――そう。


極致回復フォールトレスヒールの“目玉”とも言える効力が


“傷であれば新旧に限らず全て癒やす”


って物だと気付いたのは、ご覧の通り“使った後”だった。


……その所為も有って

古傷だらけでいかつい見た目をしていた筈のマグニさんが

傷一つ無い、ただしぶい見た目のオーク男性に成ってしまった事は

本来なら喜ぶべき状況なのだが……その所為でマグニさんからは

不信感満載の突き刺さる様な視線を向けられる事と成ってしまった。


……それこそ、マリアの悪ふざけが

“現実化”してしまったかの様な状況に

一切の申し開きも出来ず、唯唯ただただ“あわあわ”としていた俺に

ゆっくりと近づいて来たマグニさんは――>


………


……



「いや……君のその表情を見れば分かる

君自身が想定し得ない程の結果が得られただけなのだろう。


むしろ……これ程の治療をして貰いながら

まともな礼を出来ていない事の方が問題だ……主人公君。


……本当に有難う。


それとその、何だ……これで少しは

一九年前と何ら変わらぬ美貌びぼうたもち続けている我が妻との

“釣り合い”も……少しは取れると言う物だろう。


しかし……妻や娘だけでは無く、俺の事まで救ってくれた君に対し

一体どうお礼をするべきなのだろうな?


……全く、困った物だ」


「い、いえ……むしろ、効力がもうちょっと早く分かってたら

もっと良かったかな~と思いますし……


……でも、本当にちゃんと直せて良かったです!


本当に回復の“極致きょくち”ってだけはありますよね! ……」


<――と、どうにかこの場を取り繕おうとしていたその時

脳内に直接、精霊女王デイジーさんの声が響き渡った。


かと思うと――>


………


……



馬鹿者バカモンッ!! ……なんて量の治癒力を使うだよ?!

お陰で……余計に年を取っちまっただ!!

良い加減、政令国家周辺の森も! お前さんが二度もえぐった草原も!


……一度ちゃんと治して貰わなきゃ

あたしゃあいよいよ死んじまうだよッ?!


……そもそもッ!

王国時代から過剰な木々の伐採が続いて居たお陰で、慢性まんせい的に……」


<――この後暫くの間

凄まじい量の苦情を訴えられ続ける事と成ってしまった俺。


だが同時に……精霊女王デイジーが“お婆ちゃん”的見た目である理由が

慢性まんせい的な森林破壊にる物だと判明した瞬間でも有った。


そして……極致回復フォールトレスヒールと言う上位技が

直接苦情が飛んでくる程の力を使ってしまうのなら

今後、余程で無ければ使うべきでは無い技だと知った事

その上で……少なくとも近い内に、デイジー“お婆ちゃん”を

デイジー“お姉さん”に出来る位の植樹しょくじゅ活動と

草原の“整地”活動を出来る限り早く行わなければ成らない事が確定した。


……何と言うか、とんでも無く忙しく成りそうな予感がしたが

少し前、チナルの森でヘルガさんへの治癒魔導に失敗したあの時の様に

精霊族への負担が掛かり過ぎる状況……所謂いわゆる

“無いそでは振れない”って状況に各自の森をおちいらせない為

今後も継続し、森の健康に細心さいしんの注意を払わねば成らない事を

改めて感じさせられた瞬間だった。


……ともあれ、短時間での激烈げきれつな多忙さに疲れた俺だけじゃ無く

政令国家観光を楽しみにしていた筈の伯爵を

ことごとく後回しにしてしまった今日と言う多忙な一日。


流石に申し訳無さが限界突破しかけて居た事もあり

後一週間程は滞在予定だと言う伯爵に対し、俺は――>


………


……



「……色々と慌ただしい一日と成ってしまった事をお詫びします。


明日以降、伯爵様にお楽しみ頂ける様この国をご案内致しますので

今日の所は此方こちらの旅館で旅の疲れを癒やして頂ければと……」


<――と、伯爵に対し

再会からずっとないがしろな扱いだった事をびつつ

旅館内で楽しめる施設のお勧めなどをした後

数十年振りの再会と成った家族の団らんを満喫まんきつして貰う為

旅館の女将に通信を繋ぎ“メル一家”が過ごせる部屋も別で用意して貰った。


そして――>


「伯爵……明日は俺が責任を持ってこの国を案内致しますので

楽しみにして居て下さい! 」


「ああ、期待して居るよ……では、おやすみ」


「はい! ……ではっ! 」


<――この後

伯爵とメル一家に別れを告げ自室へと帰宅した俺は、疲れからか

あっと言う間に眠りへといざなわれ……そして、翌朝


疲れからかいささ熟睡じゅくすい“し過ぎ”た為

飛び起きる羽目と成ったのだった――>


………


……



「ふんがぁっ!? ……今何時だ!?

って……良かった、予定時刻まで後一時間程ある。


よし! それならちゃんと朝食を摂って

万全の状態で昨日を取り戻す位に案内しまくるぞーッ! 」


<――そう決意し、朝食後

まさに“万全の状態”で伯爵の元へと向かった俺。


だが――>


………


……



「そ……そんなっ!!

俺を“護衛兼案内役”に任命したのはラウドさん自身じゃないですか!!

魔物の件はそっちでどうにか出来ないんですか?! ……」


<――伯爵の為に用意された馬車を背に

通信先のラウドさんに対し、若干“キレ”て居た俺の様子を見れば

何が起きたのかは一目瞭然いちもくりょうぜんだろう。


端的たんてきに言えば……この上無くタイミングの悪い事に

“例の魔物の件”に動きがあったのだ。


……何でも、執務室には既に全大臣が集まっており

実際に戦った、しくはその状況の目撃者……要するに

俺やマグニさんを含めた“当事者”を集めた上で

あらため会”の様な事を

まさかのこんな早朝からやる事が決定したらしい。


その上で――>


「……例の魔物は現在も

主人公殿の指示通りに冷凍保存中なのじゃが

これの維持には莫大ばくだいな魔導力が必要でのぉ……

……流石の兵達にも疲れの色が見え始めておるのじゃよ。


ゆえに、もしも懸念けねん通りこの魔物が消え去るやも知れぬのならば

一刻も早く、出来る限りの情報を探っておきたいのじゃよ」


<――との事だった。


だが……昨日あれほど“明日は必ず”と案内の約束をした以上

それすらも反故ほごにしてしまうのは

俺の中で許せない“約束破り”だったし

だからこそ――


“俺の代わりに成る人選をお願いします”


――そう言い掛けていた俺。


だが、そんな俺に対し――>


………


……



「主人公君……君が居なければ駄目な仕事なのだろう?


……良いから行きなさい、この程度の事で君に失望したりはしないし

マグニの旧友であるグランガルドさんが

代わりの案内役を引き受けてくれると言う事は

マグニの昔話を聞く事が出来ると言う事でもある。


個人的には、ただの観光よりも余程充実している様に思えるのだよ! 」


<――そう言って微笑ほほえんだ伯爵

俺は素直にこの申し出を受け入れた上で――>


「伯爵……お気遣い感謝致します。


……ガルド、伯爵を頼んだぞ」


「うむ……吾輩も久しぶりに

御主の“生涯の友”として役立てている様で嬉しい限りだ。


安心して行ってくると良い……」


「……ああ、驚くほど助かってるよガルド。


っと……では伯爵

仕事が終わったら出来る限り早く戻ってきますのでッ! 」


<――直後

伯爵とガルドに別れを告げた俺は、マグニさんと

非常勤とは言え大臣の職をになっているメアリさんを含め

執務室……では無く

ラウドさんの指示に依って、大統領城の地下

俺の幽閉されていたあの牢へと転移する事と成った――>


………


……



「主人公殿……今一度その魔物の能力値を確認して貰いたい」


<――そう言ったラウドさんの眼前には

数名の魔導兵達が必死に凍らせ続けている魔物の死骸しがいがあった。


直後、その死骸しがいに向け能力値を確認した俺は――>


「……やっぱりか。


相変わらず文字化けした様な文字列ですけど……」


<――ステータス確認後

そう言い掛けた俺をさえぎる様に――>


「フッ……貴様もか。


我の知識にすら無い文字の羅列られつ……


……そもそも、この様な魔物は我の記憶にも在りはしない。


無論、彼奴ライドウの生み出した“悪鬼”共にも符合ふごうせぬ姿だ

全くもって……不愉快である」


<――と、不機嫌を絵に書いた様な雰囲気をかもし出したモナーク。


ともあれ……俺達が到着する前から既に

この場にいる大臣達は皆、あらかじめステータス確認を行い

その際に得られた情報を念の為、紙に書いていたらしく――>


………


……



「取り敢えずっ! ……簡単に言うと

本来あるべき能力値欄が無かったり、むしろ多かったりって感じで~


……正直、謎の魔物って言うより

“未知の生物”って呼ぶべき存在過ぎて

私達もお手上げなんだよねぇ~」


<――そう言いつつ


みずからのステータス情報の

“年齢とスリーサイズの欄だけ黒塗りにした状態の紙”と共に

“未知の生物”と呼んだ魔物から得られた情報を

見たままに記載した紙をその横に並べたエリシアさん。


……二枚の紙を見比べれば

エリシアさんが未知の生物だと呼んだ理由など明らかだ。


備考欄びこうらんの様な所には文字化けした文章が鬼の様に記載されているし

その他の欄も最初に現れた奴と同じく文字化けだらけ。


“死亡状態”つ“冷凍状態”である事だけが

この世界の共通言語である日本語で記されている状態。


だが……そんな状況にいて

俺の脳裏に浮かんだ一つの考え――>


………


……



「その……少し前、ラウドさんにもお話しましたし

この際、改めて全員に話しておきます。


……この世界に対し、他世界からの転生者が

続々と送り込まれている事は知っている方も居るかと思いますが

そんな状況を元に俺は一つの仮説を思い浮かべました。


それは――


“他世界からの転生者が元々過ごしていた世界にあったことわり

転生者と共にこの世界に入り込んだ事で

この世界のことわりをもいちじるしく変化させ、こんな化け物が発生した”


――と言う仮説です。


仮説を元に考えれば、この世界の仕組みに当てはまらない存在として

能力値の確認が出来ない事にも説明が付きますし

“死亡状態”や“冷凍状態”と言ったこの魔物がこの世界で受けた変化だけは

この世界のことわりでもある為、確認が可能であると言う事かと。


そして、その考え方を軸にするならば

この魔物の能力を把握する為にも、解剖などで

この化け物がどの様な体組成たいそせいをしているかを調べ

その上で、弱点等を見つける事が重要になってくるかと思います。


……ただ、それが分かった所で

この魔物に数種の派生型が居る可能性も考えれば

根本的な解決に成る可能性はあまり高く無いかもしれないですし

そもそも解剖したって“文字化け”のままって可能性も……」


<――と、考えを話しつつもマイナス思考におちいり始めていた俺。


そんな中、メアリさんは俺の話をさえぎり――>


「要するに……この魔物を研究すれば

この如何いかんともしがたい状況を打破する……迄は叶わずとも

緩和かんわする事位は叶うと言うのですね? 」


<――妙に自信満々にそう言ったメアリさん。


直後、メアリさんは続けて――>


………


……



「……私には王国時代に研究員をしていた経験があります。


勿論、研究員として過ごしていたのは二〇年近く前の話ですし

今の私で役立てるかどうかも分かりませんが

夫を含め、家族全員の大恩人である主人公さん……いては

政令国家このくにの力に成れると言う事。


……是非、私の知識をお役立て頂きたいと思っている所存です」


<――と、驚く様な事を言い始めたメアリさん。


当然、協力者が多いに越した事は無いが

相手が未知の魔物である以上、研究の為とは言え

近付く事さえ危険な事には違いない。


だが、そんな事を考えていた俺の表情から

俺の気持ちを感じ取ったのか――>


………


……



「ふむ、ならば“研究員”の護衛として……俺を使って貰いたい。


……メアリは研究員である前に、俺の命よりも大切なたった一人の妻だ。


それと主人公君……安心して欲しい、それが誰であれ

メアリに指一本たりとも触れさせはしない」


<――と、続いて協力を申し出てくれたマグニさん。


そして、そんな状況に狼狽うろたえていた俺を余所よそ

ラウドさんは大統領としてこれを承認した上で――>


………


……



「ふむ……ならば、人員を集めねばならんし

研究といえば、マリーナ殿も適任じゃろう。


それと、エリシア殿の様に薬草学に長けておる人物も必要じゃ。


研究員は直ぐにでも確保出来るじゃろうが

エリシア殿自身はどうなのじゃね? 」


「ん~? 別にかまわないけどぉ~……でも

チビコーンの事もあるからそんなに頻繁ひんぱんには居られないよ?

まぁ、それでも良いなら私も参加するけど~? 」


「うむ……ならばそれで決定じゃ!

では細かな人員についてじゃが……」


<――と、見る見る内に事が進みだしたのと同時に

この日から始まった激務の所為で

伯爵との“約束”は叶えがたい物と成ってしまって――>


===第百五一話・終===

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