第百四一話「恐怖から逃れるのは楽勝ですか? 」
<――“私では不足ですか? ”
メルにそう問われ、何も答えられず居た俺……だが
頭の中を埋め尽くす悍ましい程の恐怖を
全て伝えると言う選択は果たして正しい事なのか……否か。
悩みに悩んだ末、俺は――>
………
……
…
「……メルが不足なんて事は絶対に無いし
何時も側に居てくれて、俺を支えてくれて励ましてくれて……
……俺の事を大切だって言ってくれる
メルの事が大好きだし、俺だってメルの事が大切だ。
だけど……少なくとも今この“恐怖”を
話して良いのかすら分からない状況下では、伝える事自体が難しいんだ。
だから……ごめん」
<――今、伝える事が出来る精一杯を伝えた俺。
そんな俺に対し、メルは――>
「分かりました……主人公さんが今
“怖い”って感じてる事も、その内容が何であれ
今の私では……主人公さんの支えには成り得ないって事も……」
「違う! ……俺は唯ッ! 」
「……おやすみなさい、主人公さん」
「お、おいッ! 待ってくれ!! ……」
<――直ぐにメルを追いかけた俺
だが、彼女は自室へ戻ると鍵を掛けてしまった。
まるで部屋の前で呼び掛ける俺の事を“拒絶”するかの様に――>
………
……
…
「……本当にごめん。
でも、今はまだ……誰にも話せそうに無いんだ。
時が来たら、必ず……一番に話すよ……だから本当にごめん。
おやすみ……メル」
<――扉越しにそう伝え自分の部屋へと戻った俺は
ベッドへと横たわり……そのまま翌日を迎えた。
勿論、一睡も出来ず――>
………
……
…
(俺……メルを傷つけたんだ。
……でも、やっぱりまだ話せない。
せめて上級管理者に連絡の一つでも入れられたら……)
<――悩んだ末
恐る恐る上級管理者に呼び掛けてみたが
やはり一切の反応が得られず……寧ろ、余計に
この世界が“見捨てられて居る”可能性を強くしてしまっただけだった。
そして……この、如何ともし難い恐怖に頭を悩ませ続け
“扉を叩く音”と“大声”に気が付かなかった結果――>
「ええいッ!! ……破る他無いであろうッ! 」
<――かろうじてそう聞き取れた直後
部屋の扉をぶち破り現れたのは、凄まじい形相のガルドで――>
………
……
…
「なっ!? ……何してるんだよガルドッ!? 」
「……それは此方の台詞だッ!!
呼び掛けに応じぬばかりか
一切の反応が見られなければ慌てもするであろう?!
……一体何をしていたのだ主人公ッ!!! 」
「な、何って言うか……ごめん
メルにも言ったけど、今はどうしても話せないんだ。
本当に……あと少しで良いから時間が欲しいんだ。
……頼むよ」
「良くは分からぬが……成程。
御主は……またも一人で抱え、吾輩達を遠ざけるつもりなのだな? 」
「違うっ!! ……でも
そうとしか受け取れない気持ちだって分かってるつもりだ!
けど……俺が言えないって言ってる悩みは、元々
“管理側”だったマリアにすら話せる様な内容じゃ無いんだ。
だから頼む……お願いだから理解してくれ、ガルド」
<――そう伝えた瞬間、壊れた扉の向こうからマリアが現れた。
そして――>
「私にすら話せないって……一体何を悩んでるんですか? 」
「その……一つだけ言える事は
“上級管理者に呼び掛けても無視され続けてる”
って事だけだ……これ以上は勘弁してくれマリア」
「そうですか……じゃあ、今の所は“勘弁”しておきますけど
それとは別に、主人公さんにお仕事ですよ? 」
「仕事? でも、俺一睡も出来て無いから逆に迷惑を……」
「まぁ……見れば分かりますけどね。
じゃあ一応、今日の仕事内容が
ソフィアさんご一家の件だって事は伝えておきます。
それと……この件の為に
かなり前から皆で執務室に集まってたんですけど
主人公さんが中々来ないからラウドさんが魔導通信を入れたら
“拒絶”されたって言い出して
慌てたラウドさんが自ら主人公さんの部屋に転移しようとしたら
部屋の前に“弾かれた”って言ってましたけど
転移は兎も角として魔導通信すら拒絶するって……
……“結界”か何かでも張ってたんですか? 」
「えっ? ……防衛魔導なんか展開してないし
魔導通信すら防ぐ防衛魔導とかそもそも知らないし
ましてや、結界とか……俺がそんな物の張り方知ってると思うか? 」
<――そうマリアに訊ねた
瞬間――>
………
……
…
「ふむ……まぁ、主人公殿は規格外じゃからのぉ?
……謎の力を発揮する“程度”では最早驚きもせんよ。
ともあれ、無事そうで何よりじゃ……まぁ、睡眠不足は頂けんがのぉ? 」
<――そう言いながら部屋へと現れたラウドさん。
この後、本人からも詳しく話を聞いた所
どうやら俺は“謎の力”を発揮し、この部屋を
ある種の“隔離部屋”の様にして居たらしい。
自覚がないのが本気で怖いのだが……兎に角
この異常事態に慌てたラウドさん以下、全大臣及び……
……ガルド、マリア、メル、マリーン
そして、部屋の扉を粉々にする羽目に成った事に若干……いや。
“かなり”不機嫌な様子のミリアさんを含めた
十数名が俺の部屋に集結していて――>
「あ、あの……修理代は必ず俺が払いますから! ……」
<――あまりの威圧感に思わず
平謝りする俺だったのだが……ミリアさんを含め
この場に集まった全員が気に成って居た事は他にあった様で――>
………
……
…
「……修理費など我々の負担でも構わない。
そんな些末な事などよりも
今、此処に集まって居る者達は皆君の事を心から心配しているのだ。
……にも関わらず君は
その心配を無下にする様な“隠し事”をしている。
とても……無礼な程にね」
<――そう言って
静かな怒りを顕にしたクレイン――>
「だっ、だからそれは! ……」
「……良いから黙って私の話を聞くんだ主人公君。
今回の“騒動”に際しラウド大統領から伝え聞いた事がある。
……それは、先ごろ“光に包まれ現れた者達”に関し
君が重要な事実を知っている口振りで耳打ちをして来た……と言う内容だ。
その上で、皆と話し合った結果……この世界の他にも
この世界と似た様な場所が幾つも存在し
其処彼処から立て続けに“移住者”が現れ続けた事で
この世界の“理”が急激に変化し始めている可能性に
君が不安な気持ちを持っているのでは無いか?
と……ラウド大統領を含め、私達は考えた。
そして、それを理由とした隠し事をして居るのだろうと……
……“たった今”結論付けた次第だ」
<――代表し、そう俺を問いただしたクレイン。
と言うか、申開きのしようが無い程に正確に言い当てた位だ
集まった他の皆もだが……クレインは何としても
この件に関する話を聞き出すつもりで居る様子だった。
そんな中、ガンダルフは――>
………
……
…
「主人公……何故一人で抱え込み
ワシらに話してすらくれぬのかは知らんし
それがどれ程ワシらの想像を超える内容であるのかも知らぬ。
じゃが……ワシらは御主の“規格外”に慣れておるんじゃよ?
たとえどんな結果が待っていようとも
常に御主と共にあると……最初から言っておるじゃろうて」
「ガンダルフ、皆……分かったよ。
けど……仮に話すとしても、一つだけ聞いておきたい。
話した瞬間、この世界が崩壊してしまうとしても
皆は……俺の話を聞きたいか?
もし仮にそう成った場合……皆の大切な人との
生涯の別れに成ってしまうかも知れないんだぞ? 」
<――この件に関する話をしたく無いあまり
咄嗟に半ば脅しとも取れる様な質問を皆に投げ掛けた俺。
だが、誰一人としてそんな“脅し”の様な質問に屈する事無く――>
………
……
…
「……たとえこの世界が崩壊するとしても
私はその瞬間も……ずっと主人公さんのお傍に居ます。
だから……背負った重荷を、私と皆さんに預けてください」
<――部屋へと現れるなりそう言い切ったのは、メルだった。
泣き腫らした目、その下に見える隈……
……今にも倒れそうな様子のメルは真っ直ぐに俺を見つめそう言い切った。
俺は、そんな彼女の覚悟に――>
………
……
…
「分かった……全てを、話すよ」
<――そう応えた。
そして――>
………
……
…
「……俺達が旅に出たあの日。
“この世界が俺の作り上げた創造物だ”……と話した事は
旅に同行してくれた人なら覚えていると思う。
そして、恐らく……この場に集ってくれた人達の中にも
この事実を人づてに聞いた人も居るかと思います。
けど、今俺が悩んでいるのはその“程度”の話じゃ無く
たった今クレインさんが言った
この世界の他にも“似た様な世界が有る”って事についてです。
ただ……何故この世界で暮らす俺が
見も知らぬ“他世界”の事で悩む必要があるのかについてですが
実は、それらの世界が――
“容量超過世界”
――と呼ばれる扱いに成った場合
その世界の殆どが物理的に消去……要するに
“消滅”させられてるって事実を知ったからなんです」
<――此処までの話を聞き
“自分達の暮らしているこの世界も近々“そう”成るのでは? ”
……と言う、俺と同じ
“漠然とした不安”を感じている様子が皆から感じ取れた。
だが、それでも俺は話を続けた――>
………
……
…
「……ただ、救いが無い訳では無くて
詳しい選定基準は分からないけど……恐らくは俺と同じ条件
つまりは……“転生者”であれば
世界“ごと”消去されてしまう可能性は低いみたいなんです。
それと……これも推測に過ぎないんですが
本人の他にも、本人と深い関わりや本人が思い入れのある人物は
本人と一緒に他世界へと飛ばして貰えるみたいで……その証拠に
“裏技之書”の元の持ち主であるシゲシゲさんも
本人以外は転生前の世界で暮らして居た人達らしくて
ある日突然、纏めてこの世界に飛ばされたらしいんです。
……なので、恐らくソフィアさん一家も
その“流れ”だとは思うんですが……取り敢えず
俺が今分かるのはこれ位って言うか、その……」
………
……
…
<――全てを伝え終えた後の反応も行動も様々だった。
俺と同じく、深刻に捉え頭を抱える者……
……楽観視している訳では無い様だが
少なくとも俺程は悲観的に成って居ない様子の者。
そして……様々な反応を見せた人々の中で
ガーベラさんは、それらを超越した行動を見せた。
その“行動”とは――>
………
……
…
「……成程、内容は理解したわ。
けれど、この世界を“設計”したって言う主人公さんですら
頭を抱える程の大きな問題なんかより
余程早く解決するべき“直近の問題”が
私には確りと見えているのだけれど? ……」
「へっ? ……ああ、ソフィアさん一家の事ですよね? 」
「ええ、勿論それも重要だけれど……主人公さん、メルちゃんも。
まずは……一度其処に並んで貰えるかしら? 」
<――そう言って俺とメルを壁際に並ばせたガーベラさん。
そして、俺達が素直に並んだ瞬間――>
………
……
…
「ええ、その位の距離なら大丈夫ね……睡眠の魔導ッ!
眠れッ、永久にッ!! ――」
「なっ?! ガーベラさん!? ……な……にを……」
<――これで何度目だろうか?
ガーベラさんに睡眠の魔導を掛けられるのは。
正直、多過ぎて覚えてすら無いのだが……兎に角。
俺と……恐らく、メルも
ガーベラさんの放った睡眠の魔導に依って
深い眠りへと落とされてしまったのだった――>
………
……
…
「さてと……これで二人を休ませる事が出来るわね。
えっと……マリアちゃん、メルちゃんを部屋に運んで貰えるかしら? 」
「あ、はい! ……よいしょっ! 」
《――この日、ガーベラの粋な計らいに依り
過度な睡眠不足であった主人公とメルは
余りある程の睡眠を取る事と成った。
そして、翌日――》
………
……
…
「ふんがっ!? ……って、今何時だ? 」
<――“深い眠り”から覚め
飛び起きた俺は直ぐに窓の外を確認した。
……恐らくは昼頃だが、数日間眠ってた可能性もある。
俺は、直ぐにラウドさんに連絡を入れた――>
………
……
…
「おぉ、主人公殿……良く眠れたかのぉ? 」
「え、ええ……お陰様で……てかそんな事より
仕事そっちのけで“爆睡”とか本当に申し訳……」
「……何を言うんじゃね!
寧ろ、主人公殿は根を詰め過ぎな位じゃよ?
大体……平和なこの国ではそうそう急ぎの仕事なんぞ有りはせんぞぃ? 」
「いや、でもラウドさんって割と
俺を叩き起こして急な仕事を押し付けますし……」
「そ、それは“例外的な物”じゃろう?! ……」
「へぇ~? でも、その割には“例外”が多すぎる気がしますけど?
んまぁ……兎に角、ソフィアさん一家の件がまだ未解決ですし
出来るだけ早く決めないと駄目ですし、そもそも
彼女達に“例の事実”を伝えないといけませんから……」
「ん? ……その件ならばもう決まったぞぃ? 」
「へっ?! ……どの様な形に? 」
「うむ、それはのぉ……」
<――この後、俺は
ソフィアさん一家がこの国で暮らす事に成った件や
龍乳と言う“謎の乳製品”に詳しい事を加味し
未だ生産の大変なビン牛乳に関するお仕事を任せる事で
この国で暮らしていく為の仕事も用意した事、そして――>
「それとじゃが……“例の事実”に関しても一応
わしの口から伝えてはみたんじゃが……」
<――そう言うと、椅子に座り直したラウドさん。
暫しの沈黙の後、ラウドさんは――>
………
……
…
「どうも……主人公殿と話しておった段階で
その事実に何とは無く気がついておった様でのぉ?
……詳しく説明するまでも無かったわぃ」
「えっ?! ……本気ですか。
てか、俺の寝てる間に大変な事を全部お任せしてしまって……」
「何を言うかと思えば全く……これでも一応わしは
この国の“大統領”じゃよ? ……見くびって貰っては困るぞぃ? 」
「べ、別に見くびっては!! ……」
「ううむ……そう慌てられると
“見くびって居た”と言われておる様で何とも癪じゃが……
……兎に角、主人公殿が担当の仕事は全て済ませておいたし
同じく根を詰め過ぎておるメル殿にも
大統領権限で休みを取れる様にしておいた事じゃし……それに」
<――と言い掛けた瞬間
何か企んで居る様な笑みを浮かべたラウドさん。
……直後、机の引き出しを開けると
其処から取り出した数枚の紙を通信越しの俺にデカデカと見せつけた。
その、紙の正体とは――>
………
……
…
「……主人公殿は勿論の事、メル殿にマリア殿
マリーン殿にグランガルド殿……何時も御主と一緒に
苦労を背負って居る面々を癒やしたくてのぉ?
その為に今回用意したのが……何を隠そう
旅館の……“最上級客室”の宿泊券じぁぁぁッッ!!! 」
<――思わず
“ババーン! ”
……と、効果音を付け足したく成る程のテンションで
ラウドさんは“宿泊券”を見せつけて来た。
そして、驚く俺の表情を見るなり
まるで“サプライズパーティーが成功した”かの様な表情を浮かべ
とても満足げに俺の真横に転移して来たのだった。
まぁ正直、そっちの方が驚いたのは内緒だが――>
………
……
…
「……これで少しは骨休め出来るじゃろうて!
後は……あまり一人で悩み過ぎず、わしらにも話す事じゃよ?
主人公殿が辛いと、わしらも辛いんじゃからのぉ? 」
「ラ、ラウドさん……ッ! 」
<――瞬間
堪えられず……ラウドさんに抱きついた俺。
……転生後、右も左も分からない俺の力を見抜き
幾度と無く助けてくれたラウドさん。
まるで“実のお爺ちゃん”の様に甘えられる優しさを持ち
困った時には直ぐに手を差し伸べてくれる強さも持っている。
そして……あの“時”……自らの命をも投げ打ち
この国を護ろうとした鋼の意思……
……今後、俺も年を取り
やがてラウドさん程の年齢に差し掛かった時
目指すべきはラウドさんの様な存在だ。
俺は……溢れる想いを胸にラウドさんを抱き締めていた。
だが、そんな時――>
………
……
…
「あの~っ……メルちゃんだけでは飽き足らず
ついに男性相手にもですか? 主人公さん」
「い゛ッ!? ……マ、マリアッ!? ち、違ッ! これは! ……」
<――と、必死に否定する俺を余所に
ラウドさんは――>
「いやん、主人公殿のエッチー……じゃったかのぉ? 」
<――と、おどけてみせたのだった。
だが、妙に場の空気が冷えた所為か――>
「あ、はい……」
<――と、信じられない程冷たく返事をしたマリア
一方……この“目も当てられない”程の状況に――>
「み……見るでないぞ主人公殿っ!!
この歳で“スベった”人間を直視するでないぞっ?! 」
<――この後、ラウドさんは
フォローの入れ様が無い状態に陥ったのだった。
まぁ……何はともあれ。
俺達は早速、ラウドさんに貰った宿泊券を手に旅館へと向かう事と成り――>
………
……
…
<――最上級客室へと通された俺達。
しかし、元々他国からの賓客を招く為
ある程度豪勢な部屋に仕上げる様頼んでは居たものの
いざ実際に宿泊すると成ると
その余りの絢爛豪華さに圧倒されてしまい――>
「す、すげぇな……」
<――と、思わず語彙力皆無な反応をしてしまった俺。
ともあれ……暫くの後
部屋へと運び込まれて来た豪華な食事に舌鼓を打ち
皆で遊戯部屋へと向かい、白熱したバトルを繰り広げたりと
久し振りの休暇を余す所なく満喫していた俺達。
……そんなこんなで、あっと言う間に夕暮れ時と成った頃
豪華な夕食に再び“舌鼓を打ち”
就寝前に一日の汗を流す為、薬浴へと向かう事と成った俺達は――>
………
……
…
「いやぁ~……しかし、設計段階である程度想像はしてたけど
最上級客室があんなに豪華な作りとは思っても見なかったよ!
なぁ! ……女性陣の意見も聞かせてくれよぉぉぉッ! 」
<――壁の向こうへ届く様、少し大きな声でそう訊ねた俺。
だが――>
「えっと……他のお客さんもいらっしゃるので~っ!
……後で話しましょ~っ!! 」
<――と、マリアから
凄く常識的な返事が帰って来たので――>
「分かったぁぁッ!
あっ……ご迷惑おかけしましたぁぁッ! 」
<――と“他のお客さん”に壁越しに謝罪し
その後はガルドとのんびり過ごして居た俺。
そして、暫くの後――>
………
……
…
「少し長湯し過ぎたかも……そろそろ出ようか」
「うむ……良い湯であったな」
<――と薬浴を後にしたガルドと俺。
だが……脱衣場に戻り
浴衣に袖を通していると――>
「……奇遇だな」
「えっ? ってモナーク?! ……お前も遊びに来てたのか? 」
「フッ……湯浴みは毎夜此処でと決めておるだけの事よ」
「そ、そうなのか……」
(てかそれって“激ハマりしてる”って事じゃ……いや
本人には言わずに置こう……何と無くだけどキレられそうだし)
<――などと考えていた俺に対し
モナークは先日の“騒ぎ”の話題を始めた――>
………
……
…
「しかし……貴様には訊ねて置くべき事柄が多い様だ。
故に……一度、我の湯浴みに付き合うが良い」
「でっ、でも俺今入ったばっかりで……」
「浸からずとも……話など出来る筈」
「で、でも! ……ってあーもう分かったよッ!
っと……そう言う事だから、ガルドは部屋に戻ってて!
後、この件を皆にも伝えておいてくれると助かる」
「うむ……承知した」
<――直後
モナークと共に薬浴へと向かう羽目に成った俺は――>
===第百四一話・終===
次回は9月25日に掲載予定です。