第百三八話「他世界人と“落”ち合うのは楽勝ですか? ……前編」
<――帰宅直後に睡魔に襲われ爆睡していた俺は
“寝違え”による激痛で目を覚ました。
……首を擦りつつ窓の外を確認してみた所
今が深夜である事を知り、もう一眠りする為再び横たわったのだが……無理だ。
……だが、寝違えが原因と言う訳では無い
明らかに尋常成らざる位“腹が減っている”事が原因だ。
このままではとてもじゃないが寝られない……だが
こんな深夜に食事処など開いている訳が無く……悩んだ末
懐から“公然の秘密”を取り出し
“パックご飯”と“卵”と“醤油”を出現させた俺は
卵かけご飯を作り、それを一気にかき込んだ。
……ああ、そういえば。
転生前の深夜飯も、確かこんな感じだった様な――>
………
……
…
「くそ~ッ……何で“ド深夜”に食べる飯ってこんなに美味いんだ?
けど、これが全部贅沢な肉……略して“贅肉”に変わるのかと思うと
直ぐに寝るのもマズいだろうしなぁ……って。
……何だッ!? 」
<――久々の卵かけご飯に舌鼓を打ちつつ
少しばかりの罪悪感を感じていたその時……
……突如として窓から強い光が差し込んだ。
慌てて窓の外を見た瞬間、俺の目に映った物……それは
此方に向かい凄まじい勢いで迫り来る
“謎の光”で――>
………
……
…
「ちょ?! ……まさかこの世界に“UFO”とか無いよな?!
てかそもそもこのままだと此処に落ちてくるんじゃ!?
いや……落ち着け俺。
何れにしろあれが何らかの攻撃だったなら、ヴェルツは疎か
政令国家に住む人達が無事じゃ済まないかも知れない……クソッ!
食って直ぐの運動とか……
……脇腹が痛くなるだろうがぁぁぁッ!!! 」
<――と、謎の光に対し
“あるある”的な文句をぶつけつつも、急ぎヴェルツ前へと転移した俺は
落下してくる光の玉を注視しつつ
それが何であるのかを必死に見定めようとしていた。
だが――>
………
……
…
「嫌ぁっーーーー!! ……死んじゃうぅぅぅっ!! 」
<――と“光の玉”から女性の悲鳴が聞こえた事で
俺は、これが人間……若しくは
何らかの魔導に失敗した魔族か何かだと考え――>
「なっ?! ……落ち着け! 俺が助けてやるッ! 」
<――直ぐに防衛魔導を展開し
“悲鳴を上げる光の玉”を包み込んだ後そのまま優しく地上へと下ろした。
……すると、防衛魔導の中で輝き続けていた光の玉は
その輝きを失い――>
………
……
…
「こ、此処は一体? ……って、あのっ!
……この場所から出してください! 」
<――光の中から現れるなり
防衛魔導の“壁”を叩きながら、そう訴えて来たのは
何と言うかその……“巨乳美女”と呼ぶのが
適切と思ってしまう程に“ふくよか”な女性で――>
………
……
…
「あ、あの……今から防衛魔導を解きますけど
暴れたりはしないでくださいね? 」
<――女性に対し
そう伝えると――>
「暴れるなって……兎に角、早く出して下さいっ!! 」
「わ、分かりましたから落ち着いてっ!
では、三、二、一……」
<――と、一応カウントダウンしては居たものの
敢えてカウントが終了しても直ぐには解除しなかった俺。
何故かと言えば――>
………
……
…
「……ふんぎゃっ!?
イタタタっ……ちょっとぉ!? ……何で開けてないんですかっ?!! 」
「い、いえ……解除した瞬間に“襲われたら”怖いので
一応様子を見ようかと……」
「お、襲うって……人を猛獣か何かみたいに言わないで下さいよ!
と言うか、早く解除してくれないと
大声で叫んで……お、お兄さんの性癖をバラしますよ?! 」
「い゛ッ!? ……いや、そもそも何で俺の性癖を知ってるんですか?!
てか、初対面だし! ……そもそも恥じる様な性癖は無いですからッ! 」
<――などと“大声で”話していた所為だろう。
いつの間にか、俺とこの“巨乳美女”の周りには
多数の人が集まっていて――>
………
……
…
「あの……主人公さん?
“夜遅くに道のど真ん中で、女性を防衛魔導に閉じ込めて
性癖の話をひたすらに繰り広げる”って……
……ちょっと目を離した隙に、どんな変態プレイに目覚めたんですか? 」
「い゛ッ?! いや、マリア……これは違うぞ!? 断じて違うッ!
俺はただ、空から落ちて来たこの巨……じゃなくて!
此方の女性を助ける為に……」
「うわぁ……今完全に“巨乳”って言い掛けてましたよね? 」
「い、いや違うんだマリア! 確かに……言い掛けたけどっ!!
悪意が有っての事じゃなくてだな! ……」
<――この時、心に決めた事がある。
“心の中で思っていただけの事でも
咄嗟に口をついて出てくる事は有るので
外面も内面も清廉潔白で有る努力をしよう。
そうでなければ――
“眼の前の女性を助ける為
そして、見定める為に展開していた防衛魔導を解除した途端に
巨乳美女からフルスイングのビンタを食らう事に成るから”
――俺は、赤く腫れた頬と
寝違えた首を擦(さす)りつつ、そう……固く誓った。
まぁ……ともあれ、深夜に突然現れた“訪問者”に
安眠を妨害されたのは俺やマリアだけでは無く――>
………
……
…
「して……先ずは自己紹介をして貰えるかのぉ? 」
<――深夜の執務室
重い瞼を擦(こす)りつつそう訊ねたラウドさん。
当の女性は、この問いに対し――>
「えっとですね……私の名前は、ソフィアです! 」
<――と、名前だけを答えると話を終えた。
執務室に何とも変な“間”が流れた後……ラウドさんに
出身地や、政令国家へと訪れた目的などを訊ねられ――>
………
……
…
「えっと……出身地はシュラ村ですっ!
……けど、此方を訪れた目的って言われましても
そもそも私はベッドで寝てた筈で……なのに何故か
気がつくといきなり空高くから落とされてて……それで
そちらの“特殊性癖”の男性に囚われちゃったって言う感じで……」
<――と、俺を指しながらそう言ったソフィアさん。
だが、全力で否定する俺の事など気にも止めず
彼女は話を続けた――>
………
……
…
「……それでなんですけど
私ってもしかして……凄く不味い立場に居たりします? 」
<――ラウドさんに対しそう訊ねたソフィアさん。
だが、彼女がそう訊ねた理由は明らかだった。
何と言うべきか……当然と言えば当然なのだが
ラウドさんの立場上、国防を考えた時
彼女のした話を全て手放しで信じる訳にも行かず……
……寧ろ、疑いの眼差しを向けざるを得ない内容に
ラウドさん自身も困り果てていたからだ――>
………
……
…
「ふむ、立場云々は兎も角じゃが……ソフィア殿。
第一発見者の主人公殿は元より
一部の国民から寄せられた御主の目撃情報には――
“空から光の玉が落ちて来たかと思ったら
あろう事か防衛魔導をすり抜け、そのままヴェルツ前へと落下した”
――と有る。
一体どの様な術を用いて
我が国全域に展開されている強固な防衛魔導をすり抜けたんじゃね?
無論、答えの如何に依っては
“マズい立場”と成ってしまう可能性もある。
故に……よく考えて答える事じゃ」
<――そう些か強い口調で言い放ったラウドさん。
……今でこそ友好関係を築けて居る魔族達だが
彼らがまだ敵だった際に起きた“魔族大量襲来”での危機的状況は
この国に於ける一つの教訓となり……こうして居る今も
強固な防衛魔導が昼夜を問わず、政令国家全域を護り続けている。
故に……それをいとも簡単にすり抜けた彼女を
疑わず済ませる理由は無いのだが――>
………
……
…
「……その、よく考えて答えろって言われても
そもそも“防衛魔導”と言う言葉自体、つい先程
そちらの“変態さん”が言ってたのを聞いたのが初めてな位で……」
「な゛ッ?! ……だから変態じゃないですってば!! 」
<――彼女が俺の事を“変態”で固定した事はともかく
まるでこの世界の仕組みを知らないかの様な返答をして来たソフィアさんに対し
ラウドさんは更に疑いを強め――>
「……それが事実かどうかを確かめる方法は二つある。
一つは、ソフィア殿……御主に自白の魔導を掛ける事。
もう一つは……御主の魔導適性を測る事じゃ。
……残念ながら、御主がどれ程真剣な眼差しで語ろうとも
言葉だけではおいそれと信用など出来んのじゃよ。
真に信用を得たいのであれば
何れかの方法を受け入れる事が最善であり
最も早い方法じゃと思うがのぉ? 」
<――と、ソフィアさんに対し
どちらかを選ぶ様、選択を迫ったラウドさん。
すると――>
………
……
…
「あの……自白“剤”って後遺症とかあるって聞くんですけど
そう言うのが無いなら……怖いですけど受け入れます。
それと、魔導適正? ……って言うのを測る行為が
何をする為の物なのかがさっぱり分からないんですが
それに適正があったり無かったりしたら何が分かるんですか? 」
「……魔導適正検査は
御主が防衛魔導をすり抜けた術が魔導技に依る物であるのか
そうでは無いのかの判断の為じゃよ。
そして、自白“剤”……と言うのは知らぬが
自白の魔導に後遺症の様な物は無い筈じゃよ? 」
「そ、そうなんですか? ……じゃあ、どっちかを選んで
“疑いが晴れない”って成っても辛いので、思い切って……
……両方でお願いしますっ! 」
<――言うや否や、凄まじい勢いで
ラウドさんに対し“グッドポーズ”を取ったソフィアさん。
一瞬、ラウドさんが狼狽えた様に見えたが……ともあれ
この直後、俺達は魔導石版で彼女の魔導適性を測る事と成り――>
………
……
…
「では、ソフィア殿……その石版に手を当て
三秒置きに 癒やし、攻撃、守りと唱えるんじゃ」
<――ラウドさんに促され、俺やマリアに取っては
凄まじく懐かしい“試験”を行う事と成ったソフィアさん。
……指示通り、三秒置きにそれぞれの呪文を唱えた彼女だったが
どれ一つとして反応する事は無く――>
「ふむ……魔導適性は無い様じゃが
協力者の掛けた術とも考えられる故、未だ疑いの余地は有る。
……じゃが、自白の魔導に抗うなど
魔導適性の無い者には到底成し得ぬ芸当じゃ。
……とは言え、念には念を入れる必要も有るじゃろう。
故に、この中ならば……主人公殿。
……減衰装備を全て外し
全力でソフィア殿に自白の魔導を掛けるんじゃ」
<――ラウドさんにそう指示され、言われた通り減衰装備を外し
ソフィアさんに自白の魔導を掛けた俺。
すると……あれ程騒がしかったソフィアさんが
見る見る内に大人しく成り――>
………
……
…
「何でも聞いてください、何でも答えますから……」
「ふむ……では。
本名、出身国、我が国に訪れた目的……」
<――と、再び先程と変わらぬ質問を繰り出したラウドさん。
そして、全て先程と変わらぬ答えを出したソフィアさんに――>
「ううむ……では、この地図の何処に
“シュラ村”なる場所が有るのか……指差して貰おうかのう? 」
<――と、言った。
だが、ソフィアさんは静かに首を横に振り――>
………
……
…
「……この地図には載っていません。
と言うか、この地図自体が……初めて見る地形をしています」
<――そう答えたソフィアさん……同時に
俺とマリアは顔を見合わせ……恐らくだが、同じ考えに至った。
まず間違い無く……彼女は他世界からの“転生者”だ。
そして、この仮説を軸に考えれば
彼女の言うシュラ村も、その場所がある世界も……恐らく
もう既に、上級管理者の手に依って消去されているのだろう。
“容量超過世界”
上級管理者は確かにあの時そう言った――>
………
……
…
「あの……ラウドさん、少しお耳を」
<――俺は、この“仮説”をラウドさんに伝えた。
同時に……今まで俺達が旅をしていた中で、幾度と無く
他世界からの転生者と思しき存在に遭遇したと言う事も。
暫くの沈黙の後……この事実と“仮説”に
頭を悩ませていたラウドさんは――>
………
……
…
「さて、ソフィア殿……これが最後の質問じゃ」
<――そう言うと
ソフィアさんに対し――>
「……シュラ村の有る“世界全体の”正式な名称を答えて貰おう」
<――と、訊ねた。
対するソフィアさんは――>
「シュラ村は……“ドランドラン”にあります」
<――そう答えた。
この瞬間……彼女がそう答えたこの時点で
“仮説”は“事実”に代わり――>
………
……
…
「主人公殿……自白の魔導を解除して構わんぞぃ」
<――静かにそう言うと、執務室の椅子に深く腰を掛けたラウドさん。
……酷く気疲れをしている様子だったが
その理由なんて考えなくても直ぐに分かった。
そもそもこんな深夜に叩き起こされた挙げ句
本来なら絶対に聞くべきじゃ無いこの世界の“妙な作り”を説明された上に
この後、ソフィアさんに対し
恐らく失われてしまったであろう故郷の事を伝えなければ成らないのだ。
そんな中、俺は……少しでもラウドさんの負担を軽減させる為
ラウドさんの代わりに状況を説明する役目を負う事を決め――>
………
……
…
「……さて、これでソフィアさんへの嫌疑は全て晴れました。
が、同時にお伝えしないといけない事実がありまして……」
「本当ですか?! ……良かったーっ!
これで晴れて、シャバの空気でシャバダバ! シュビドゥバッ!
……って出来るんですね? 」
<――と、全く以て意味不明な返事が返って来たお陰で
睡眠不足な俺の脳は思考停止した。
……だが、その一方で
凄まじい喜びっぷりの彼女は突如として喜ぶのを止め
思い出したかの様に――>
「あっ! ……そう言えば今
“伝える事実が何とか~”って仰ってませんでした? 」
<――と訊ねて来た。
だが、伝えるタイミングがズレた所為で
彼女の置かれた状況を伝え辛く成ってしまった俺は――>
………
……
…
「け、嫌疑は晴れたのですが……その……そうッ!
よ、夜も遅いですし! 夜道を女性一人で
今直ぐ帰還させる事には許可が出来ない……と言いますか
その……今日の所は、我が国の誇る宿泊施設である“旅館”にご宿泊頂き
折を見ての出国……とさせて頂く事に成ればと
そう、思っておりまして……」
<――と、精一杯に取り繕ったのだった。
だが、そんな俺の如何ともし難い心境に気付いたラウドさんに
労う様な眼差しを向けられた。
……有り難さを感じたと同時に、一刻も早く
“顔に出やすい”癖を直さないと成らないと思った瞬間でも有った。
だが、当の本人であるソフィアさんから――>
………
……
…
「そうですか……って!? もしかして、そうやって宿泊施設に連れ込んで
自らの性癖を披露しようと言う魂胆で……」
「な゛ッ?! ……断じて違ーーーうッ!! 」
<――俺は“晴れぬ嫌疑”を掛けられ続けたのだった。
ともあれ……“マジで”夜も遅いので
何れにしろ、ソフィアさんを旅館へと送り届ける事に成ったのだが――>
………
……
…
「さて、到着しましたよ……って、ソフィアさん?
あの……どうかされましたか? 」
「い、いえ……その……別に大した事では無いんですけど……」
<――そう、腹部を押さえながら弱々しく返事をしたソフィアさん。
その様子を見た瞬間、俺は――
“まさか、落下時に何処か痛めていたのか?! ”
――と考え、彼女に治癒魔導を施そうとしていた。
だが、エリシアさんに遮られ――>
「あ~……主人公っちは帰って良いよ~? 後は私が引き継ぐから~」
「で、でも! 治療位は……」
「良いから! ……てか、あまりしつこくすると
本当に“変態の烙印”を押すぞ~? 」
「なッ?! ……止めて下さいよ!?
じ、じゃあ後はお任せしますからッ! ……」
<――と、逃げる様に
ヴェルツの自室へ帰還する事と成った俺は――>
「別に……あんな言い方で追い返さなくてもなぁ……」
<――と、愚痴を垂れつつ
再び眠りについたのだった――>
………
……
…
《――彼が不貞寝と成った一方
主人公が去った後の旅館では……エリシアと共に
“お手洗い”の洗面台で話すソフィアの姿があった――》
「あ、あの……お気遣い有り難うございます」
「良いの良いの~っ♪ ……それよりも、ソフィアちゃん。
何だか体調も優れないみたいだし、何なら明日以降も
暫くはこの国でのんびりしてたら良いと思うよ~? 」
「へっ? わ、私は別に構いませんけど……でも
こんなに立派な宿屋さんだと、宿泊費用とかも結構掛かっちゃったり……」
「いやいや~其処は心配ご無用っ♪
“この国の大臣でもある”主人公っちがお勧めした以上
支払いは全部国に任せてくれて大丈夫だから安心していいよ~? 」
「へっ? ……あの“変態さん”この国の大臣なんですか?!
この国の行く末が危ぶまれますね……」
「……うわ。
主人公っちが聞いたら凄く落ち込みそうな事を
同じくこの国の大臣である“政令国家一の美人攻撃術師”
エリシアさんの目の前で言うとは……御主、中々に強者よのぉ~」
「へっ!? い、いやその……し、失礼を……」
「いやいや、怒ってないから気にしないで~♪
……でも、主人公っちの事を誤解し続けるのだけは
出来れば止めてあげて欲しいかなぁ~?
あの子は、他人思いで純粋な心を持ってるこの国最強のトライスターだから♪ 」
「そ、そう……なんですか。
って……そう言えば確かに私が落下してた時
“俺が助けてやるッ! ”って仰ってた様な……」
「ほらね~? だから――
“ちょっと間が悪くてエッチなハプニングを引き起こす体質”
――な所は出来る限り見て見ぬフリをしてあげて欲しいって思うよ~? 」
「そ、そうですね……確かに。
一応は命の恩人だと思いますし、軽く一回位なら……
“おっぱいを触らせてあげようかな? ”
……って思う事にしますっ! 」
「ちょ!? ……それは両極端が過ぎるからっ! 」
《――と、深夜のお手洗いで“妙な会話”に花を咲かせていた二人。
ともあれ……暫くの後、ソフィアを部屋へ案内し終えると
自らもヴェルツの自室へと帰還した後、倒れる様に眠りについたエリシア。
そして――》
………
……
…
《――翌朝。
朝早くから目覚めたソフィアは、女将を務めて居る魔族種の女性から
朝食と薬浴の説明を受けていて――》
「……以上が朝食のメニューで御座いますが
お客様が苦手な食材などが御座いましたら、遠慮無くお申し付けください。
……尚、薬浴は今のお時間でしたら他のお客様もおらず
貸し切りの様なご気分で入浴頂けるかと思いますので
ご入浴後に朝食とされるのもお薦めで御座いますね」
「そ、そうなんですか……って何だか私
凄くお姫様扱いされてる感じで凄く照れくさいです……けど
ちょっと嬉しいかもです!
……何だかこの国の宿屋さんって凄くサービスが良いんですね」
「お褒めに預かり光栄至極でございます。
……お客様にご満足頂ける事こそ至高の喜びで御座いますので
ご希望が御座いましたら何なりと仰ってくださいませ」
《――女将がそう言った瞬間
ソフィアは――》
「へっ? ……今“何なりと”って言いました? 」
「ええ、申し上げましたが……お、お客様? 」
《――瞬間
ソフィアは勢い良く立ち上がると、女将に対し――》
………
……
…
「じ、じゃあッ! 私の両親とお姉ちゃんを……探し出してくださいッ! 」
===第百三八話・終===