第百二九話「苦渋の決断は楽勝ですか? 」
<――本番開店当日、式典を無事に終えた俺は
休む間も無く次の仕事に取り掛かる事と成った。
まず、獣人王国に対する様々な支援体制についての更に細かな話し合い。
……次に、各地の森を管理守護する精霊族達に対する
“無の森問題”の解決に向けた協力要請について。
そして最後……二個目の問題に付随する事ではあるのだが
リーアが破ったと言われている精霊族の“掟”
その、厳し過ぎる内容を変更して貰う為……そうで無くとも
ある程度緩和して貰える様、出来るだけ多くの精霊女王に頭を下げる事。
俺は、やるべき事の多さと
それによる“激務”に奔走する事となるのだった――>
………
……
…
「……と、言う事ですので
リオスを獣人王国担当大臣として起用する事も含め
狂乱鳥獣の被害を被った獣人王国への支援は
予定通り行えればと思っています。
尚、狂乱鳥獣の生態についてですが……
……エリシアさん、説明をお願いします」
「はいは~いっ!
先ずは、精神支配系の攻撃が特徴なのと~……」
<――と、俺達が戦闘前に聞かされた注意点を
皆に説明してくれた後、エリシアさんは――>
「……んまぁ、今回は私達が倒しきったから
少なくとも今年は安全だけど~
……ただ、奴らの本拠地には必ず卵と雛が相当数あるし
どれだけ遅くても来年までには根本的な解決をしないとだね~
あっ……リオス、馬鹿弟弟子が迷惑掛けて本当にごめんッ! 」
<――そう言うとリオスに頭を下げたエリシアさん。
当然、その謝罪に対し――>
「いやいや! エリシアが謝る事なんて何一つとして無いよ!
寧ろ獣人王国を救って貰ったお礼を言わなきゃって思ってた位さ!
……僕こそお礼が遅れてごめんっ! 」
<――そう言って頭を下げたリオス
“何れにしろ二人が謝る様な事じゃ有りませんし
兎に角……次の議題に移りましょう! ”
直後、場の空気を変える為、無理やり流れを切った俺。
……だがその一方で
“来年迄に解決”と言うタイムリミットだけは気掛かりだった。
一見すれば長い猶予とも思えるが
獣人王国の存亡を掛けた限界時間と成ればそれは決して長くは無い。
その上で“根本的な解決”とはつまり――
“全精霊族の協力を取り付けた後、無の森を元の姿へと戻し
絶滅したと見られる狂乱鳥獣の天敵である魔物を
もう一度この世界に復活させる”
――って事だ。
正直、難しいなんて言葉では足りない位
“難易度マックスのクソゲー”に挑まされる事と成った訳だが
意外にも、精霊族との話し合いはスムーズに進む事と成り――>
………
……
…
「ええ……イイワ。
その“お墓”を見ても思うけれど……私、心優しい“元住人達”に対して
何もしてあげられなかったから……せめてもの罪滅ぼしに成るのなら
寧ろ協力をさせて貰いたいって思ってる程ヨ? 」
「ほ、本当ですか?! ……有り難うございますッ!! 」
<――まず、マリーンの故郷である水の都を含めた周囲の森の守護者
“精霊女王スイレン”の協力を得られる事が決まり――>
………
……
…
「わたしゃあ……主人公を含めて
エルフ族もダークエルフ族も……今は暮らして居ないが、オーク族に対しても
心優しく、森との共存を守っておる者達に対しては何の敵意も有りはせんよ。
まぁ……“スライムの草原を二度も抉った”おぬしには
少し思うところもあるがのぉ? 」
「う゛ッ……そ、その節は本当に申し訳ございませんでした。
勿論、然るべき責任を取り、どの様な責め苦でも負いますので
どうか今回の一件に協力を頂けませんでしょうか? 」
「なに……釘を差しただけじゃから気にせんでエエ。
……それに、おぬしの頼みは他の精霊女王の為にも成る相談事じゃろう?
勿論協力するから、安心するだよ」
「本当ですか?! ……有り難うございますデイジーさん! 」
「はぁ? ……何だって? 」
「有り難うございますッ!!! デイジーさんッ!!! 」
「あぁ……構わないよ、好青年」
<――精霊女王も“歳を取る”事を知ったのと
彼女への協力要請で“喉が潰れそうに成った”事を除けば
政令国家周辺の森を管理しているデイジー婆ちゃん……もとい
“精霊女王デイジー”にも協力をして貰える事と成り
余りの順調さに内心大喜びだった俺。
だが――>
………
……
…
「うわ、大々的に飾ってあるし……最悪だ。
はぁ~っ……」
<――溜息交じりにそう言わざるを得なかった俺。
何故かって? ……次に訪れたのは“バルン村”
俺の“恥ずかしい過去”を“聖遺物”と崇め奉って居る
……“あの”バルン村である。
俺は……同行者全員から
“クスクス笑い”が漏れ聞こえて居る事に敢えて気付かないないふりをしつつ
リーアに対し、バルン村を守護している精霊女王を呼び出す様頼んだ――>
「でも……彼女は比較的穏健派だから
協力的な面では期待出来ないかも知れないワネ」
「だとしても……話は通しておきたいんだ」
「ええ……分かったワ」
<――直後、リーアの呼び掛けに反応し現れた精霊女王。
リーアの説明通り、彼女は比較的穏健派で
最初こそ協力要請を断りそうな雰囲気を持っていた物の
俺の恥ずかしい過去を全力で奉っている
バルン村の全村人達が一丸となり“煩い位に”彼女を説得してくれた結果――>
………
……
…
「わ、分かりました分かりましたっ! ……もうっ!
私、言い争いとか苦手なのに……」
<――と、少し愚痴をこぼしつつも協力要請を受け入れてくれた精霊女王。
彼女の名は“ブルーベル”……そして
半ば強引に協力させる羽目になった事を
謝罪した俺に対し、彼女は――>
………
……
…
「こ、この森の……そのっ……は、生え放題な……ち、竹林をっ!
皆さんで“処理”して下さってるって言う事で、そっそれで!
そ、その発案者が貴方だって……だからその……有り難うございます……」
「えっ? ……あぁ!
……いえいえ!! 村人達の生活安定の為ですから
そんなにお気になさらないでください。
寧ろ、刈り取り過ぎてご迷惑に成ってたりは……」
「い、いえ! 寧ろお陰様で女として綺麗に……い、いえ!
有難うございますっ! ……でっ、では!! 」
<――そう言い終えると顔を真赤にして
そそくさと森の奥深くへと帰っていったブルーベルさん。
何と言うか……精霊女王にも照れ屋な人がいるのだと知った。
……まぁ、何故か俺の横で
リーアが涙を流す位に笑っていたのは謎だったが。
ともあれ――>
………
……
…
「後は……“敵意の無い魔族達の集落”周辺の森を守護している
精霊女王に対する協力要請なのですが……その、エリシアさん。
もしお嫌でしたら俺達だけで……」
<――俺は、エリシアさんを
二人の墓がある“あの場所”に同行させる事が
ある種の負担と成ってしまうのではと思い、そう気遣った。
だが――>
「……気遣いありがとね主人公っち。
でも、大丈夫……色々と辛い記憶も沢山あるけど
楽しかった記憶だってそれ以上に有るし、何より
師匠にもヴィオレッタにも長い事挨拶してないからさ……
……そろそろ、良い機会かもって思ってるんだよ? 」
「そ、そうでしたか! ……絶対心待ちにしてますよ! 」
「うん……ありがと、主人公っち。
っと、少しだけ待っててね……」
<――そう言うとエリシアさんは何処かへと転移し
暫くの後、俺達の元へと帰って来た。
直後……全員が集まった事を確認し
改めて皆で“敵意の無い魔族達の集落”へ向かった俺達は――>
………
……
…
「……おぉ!! もしかしなくてもエリシアちゃんだろ?!
立派な魔導師に成ったんだなぁ……皆を呼んでくるよ! 」
「おぉ!!! ……エリシア嬢ちゃんだ!
大きくなったなぁ! ……しかし、久しぶりだが俺達の事は覚えてるか? 」
<――皆、続々と集まり
宛ら――
“久しぶりに会った親戚のおじさんおばさん”
――みたいなテンションで
エリシアさんとの再会を喜ぶ集落の魔族達の姿を目の当たりにした。
そんな魔族達の姿に、始めは少し緊張気味だったエリシアさんも――>
「勿論覚えてるけどぉ~流石に全員は覚えてないかなぁ~?
な~んちゃってぇ~♪ 当然っ! 全員覚えてるよ~んっ♪ 」
<――と、照れくさそうに応えて見せたのだった。
そして……この後、エリシアさんの“凱旋祝い”と称された
歓迎の宴が開かれた後、俺達は
今日此処に訪れた理由を集落の皆に伝えた――>
………
……
…
「ほう……そりゃまた面倒な事を任されたもんだな。
……しかし、そんな事よりも
主人公、前に見た時より強くなった様だな」
「えっ? あ、いやその……はい、モナークのお陰で
レベル上げがスムーズに進みまして……」
「ほぇ~?! 元とは言え魔王が直々に……それも人間を育てるなんざ
おめえさん、余程交渉事が上手ぇんだなぁ?! 」
「えっ? いえ、その紆余曲折有りまして……」
<――エリシアさんが集落を訪れた事が余程嬉しかったのか
集落の魔族達は皆上機嫌な様子で、俺を含め
皆の事を過剰なまでに褒め称え
俺達は飲めや歌えの予定外に楽しい時間を過ごす事と成ったのだった。
そして、暫くの後……宴も一頃ついた辺りで
改めて今回の仕事に取り掛かる為、この集落を含めた周辺の森を守護している
精霊女王をリーアに呼び出して貰った所――>
………
……
…
「久し振りね、マグノリア……ってあら?
……あらあらあらっ?!
マグノリア、もしかしてだけれど……其処にいる女の子は
“かの有名な”エリシアちゃんじゃないの?! 」
<――現れるなり興奮した様子でそう訊ねた精霊女王。
そしてその問いに対し、リーアが頷いた瞬間――>
「……実は私、貴方のファンなのっ!! 」
<――と
俺を含めた全員が“ポカーン”とする様な事を言いだした精霊女王。
当のエリシアさんも例外では無く――>
「な……何で私の事知ってるの?
って言うか、私の“ファン”ってどう言う……」
「ま~っ! ……戸惑う姿まで愛くるしいわね~!!
……でも、理由なんて単純だわ?
貴女……森で薬草採集する時、絶対に乱獲しないじゃない?
それどころか、弱っている草花には出来る限りの治療を施して行くでしょう?
……そんな事を無償でやってくれる人間を
嫌いになる様な精霊女王は居ないと思うわ? 」
「……そ、そんなの当たり前の行為だよ?
“貰った物は三倍にして返すべし! ”
お互いにそれを続けていたら、皆幸せになると思うし……」
「……いいえ?
その“当たり前”の行為が出来ない人間の方が多いのよ?
……兎に角、何かお願いがあるなら貴女の顔に免じて耳を貸すから
何でも言って! でも、代わりに……」
「代わりに? 」
「そ、その……握手して欲しいのっ! 」
<――再び全員が“ポカーン”とした事は言うまでも無いだろう。
当然、簡単な交換条件過ぎる事もだろうが
エリシアさんはかなり戸惑いつつ
この“ミーハーな”精霊女王と握手を交わした。
瞬間――>
「んまぁぁぁぁっ!!!
嬉しい……嬉し過ぎるわエリシアちゃんっ! 」
「あ、ありがと……えっと、確か……フリージアさんだっけ? 」
「へっ? ……んまぁぁぁぁっ!!!
私の名前を知ってるなんてぇぇぇぇっ!!!
そ、それに……呼んでくれるなんてぇぇぇぇっ!!!
嬉し過ぎて……“開花”しちゃうぅぅぅぅっ!! 」
<――凄まじいテンションでそう言い放った直後
この精霊女王は、本当に“開花”した。
体に巻き付いている蔓から生えている蕾が全て……花開いたのだ。
何と言うか……“違う意味”で疲れる事と成った精霊女王フリージアとの交渉。
……言うまでも無く、俺達の協力要請を全く嫌がらず
満額回答で受け入れてくれはしたが……兎に角疲れた。
とは言え、これで少しは“無の森”……延いては
“獣人王国”を救う事への足掛かりが出来たかもと一安心していた所――>
………
……
…
「……あまり後ろ向きな事を言いたく無いのだけれど
エリシアちゃんが悲しくなったら私まで悲しいから
予め警告しておくわね……」
<――そう、少し申し訳無さそうに話を切り出したフリージア。
彼女は続けて――>
「……私達精霊女王の中には私達を纏めている存在が居るの。
皆から“大精霊”と呼ばれ崇められている最強の精霊女王……
……彼女の名はメディニラ。
全ての掟と、全ての森を作り出したと言われている最強の大精霊よ。
彼女に意見するなんて私達精霊女王ですら恐れ多くて出来ない程よ
だから……もしも彼女にも何かお願いをするのなら
決して失礼の無い様に……且つ
何を言われても反論なんて決してしない事を良く覚えて置いて欲しいの。
正直、脅してるみたいで申し訳ないけれど
エリシアちゃんに辛い思いをして欲しくないから……
……敢えての忠告として受け取ってね」
「そっか……教えてくれてありがとねフリージアさん」
「んまぁぁぁぁっ!!! ……感謝までされちゃったわ!
嬉しくて……花粉ばら撒いちゃいそうっっ!! 」
<――この瞬間、心の底から
“花粉症の人にとって大迷惑なんで止めてくれ”と思った。
……まぁ、協力はして貰える様で何よりだったが
凄まじくキャラの濃い精霊女王も居たものだと
より一層気疲れした瞬間でもあった。
ともあれ……暫くの後
改めて集落の魔族達と話していると――>
………
……
…
「……なぁエリシアちゃん
久し振りにこの集落に来た事だし“二人”に挨拶でもするかい? 」
「……うん、案内して
あっ、悪いけど……皆は此処で待っててくれるかな? 」
<――そう言うと、集落の魔族と共に
二人の眠る墓の場所へと向かったエリシアさん。
正直……色々と話したい事もあるだろうし
俺達には見られたくない姿もあるのだろう。
……優しさが故に明るく振る舞い
苦しい胸の内を素直に吐露出来ない。
エリシアさんがそんな“不器用な人”だと……少なくとも俺は知っている。
そして、彼女はそんな姿を誰にも見られたく無いと思っているって事も。
だから俺は、たとえエリシアさんが数時間帰ってこなくても
じっとこの場で待って居よう。
もし、泣き声が聞こえても“聞かず”に居よう……そう心に決め
皆と宴を楽しんでいたのだ。
だが――>
………
……
…
「……行か……なきゃ……」
「ん? ……どうした? メル」
「エリシア……私の気持ち……分かって……」
「お、おいッ! ……メル?! 」
<――突如として様子がおかしくなったメル。
そもそも……何時もならば
エリシアさんの事を“さん”付けで呼ぶ筈のメルが
呼び捨てにした事もそうだが……まるで“何かに操られている”かの様に
ふらふらと安定しない足取りで二人の眠る墓の方へと向かったメル。
全く以て理解出来ない状況だったが
最大限周囲を警戒しつつ、俺達はメルを追った――>
………
……
…
「……エリシア……久し振りだね……嬉しいよ……」
<――墓の前に到着するなり
エリシアさんに対しそう言ったメル――>
「!? 皆、来ないでって言った筈! ……」
<――当然と言えば当然だが
俺達の登場に声を荒げ掛けたエリシアさん。
だが――>
「“永久の繋がり”……今も持ってる? 」
<――メルにそう言われた瞬間
エリシアさんは――>
「メルちゃん……今、何て言った? 」
「……“永久の繋がり”って言ったの。
エリシアに……声が届かないから……
だから……この子の力を借りて……話してるの……」
「まさか、貴女は……ヴィオ……レッタ? 」
「うん……そうだよ」
<――メルがそう答えた瞬間
エリシアさんは脇目も振らずメルに抱きついた――>
………
……
…
「本当に……本当にヴィオレッタなの?! ……話せるって事だよね?!
私、話したい事が一杯有って! ……」
<――そう興奮し、話すエリシアさんに対し
メル……いや“ヴィオレッタさん”は――>
「……久し振りだけど、あまり長くは話せないの。
この子が疲れちゃうから……だから
重要な事だけ、伝えさせて欲しいの……」
「わ、分かった……重要な事って何?! 」
「私はずっと……エリシアの側に居るよ。
辛く悲しい時も、楽しく笑える時も……ずっと側に居るから
言葉が伝えられないだけで……ずっと一緒だから
もう私の事で悲しんだりしないで。
私達はずっと……親友だから」
「うん、もう悲しい思い出は思い出さないから! 」
「ありがとう……それから……
“お父さん”に伝えたい事があるの……」
<――“ヴィオレッタさん”がそう言った瞬間
彼女の父親である集落の長が慌てた様子で群衆の中から現れた。
そして、そんな父に対し――>
………
……
…
「私の所為で……悲しませてごめんなさい。
……お父さんが何時も私のペンダントを握って
私に話し掛けてくれる声……大好きだよ」
<――そう伝えたヴィオレッタさん。
そして……そんな言葉を聞いた瞬間、泣き崩れ
何度も自らの名を呼ぶ父に対し
静かにしゃがむと父の背中を優しく擦ったのだった。
一方で……この凄まじい光景を
唯見守る事しか出来ずに居た俺達に対し――>
………
……
…
「最後に……皆さんにお詫びとお願いがあります。
いきなりこんな事しちゃって……ごめんなさい
でも……もし、ご迷惑でなければ
また、メルちゃんの力をお借りしても良いですか? 」
<――そう訊ねて来た。
……何と言うか、あまりの状況に
少しばかり気が動転していた俺ではあったが――>
「い、いやその……メルの許可があって
メルに負担がなければ俺達は何も言いませんけど……」
<――そう答えた。
すると――>
「はい……メルちゃんには確りと許可を取って力をお借りしましたし
負担に成らない様に細心の注意をしていますから……安心して下さい」
「そ、それなら俺達は別に……」
「有り難うございます。
じゃあ……エリシア、お父さん……また何時か、お話しようね。
またねっ……」
<――そう言い残し、メルの身体を“去った”ヴィオレッタさん。
直後、自我を取り戻すや否や――>
………
……
…
「あ、あのっ!! ……ヴィオレッタさんとお話出来ましたかっ!? 」
<――開口一番エリシアさんに対し訊ねたメル。
瞬間、エリシアさんはメルを抱きしめ――>
「……ありがとうメルちゃん。
私、何てお礼をしたら良いか分からないよッ! ……」
「……いいえ、お礼を言うのは私の方ですよ? 」
「へっ? 何で? ……」
「だって……エリシアさんやお父様とお話する為とは言え
ヴィオレッタさんは私の持ってる力を開花させてくれたんです。
この力のお陰で、私が何か役立てるかも知れないって思ったら
お礼を言うのは私の方かなって……」
<――と、メルらしいと言えばメルらしい答えを返した事で
エリシアさんはクスッと笑い――>
「フフッ♪ ……そっかそっかぁ~♪ メルちゃんも素直でいい子だねぇ~♪
……っと、よく考えたら主人公っち!
主人公っちには……師匠が乗り移ったりとかしないのかな~? 」
「え゛ッ?! い、いえ……そんな予兆は無いですけど……
……って言うか、俺意外とお化けとか怖いタイプなので
そう言う話は例え話でもしないで下さいよ~!! 」
「ほほ~ぅ? ……主人公っちの弱点見つけたりって感じかなぁ~?
……って言うのは冗談として、主人公っち。
例え幽霊だったとしても
師匠とヴィオレッタは凄まじく優しいから安心して身を任せるがいいさ~♪ 」
「い゛っ?! ……嫌ですよ!! 」
「い、嫌ってなんだぁ~ッこの薄情者ぉ~ッ! 」
<――この後、俺はこの妙なテンションのエリシアさんに絡まれ続け
“また違う形で”気疲れをしたのだった――>
===第百二九話・終===