第百十六話「……役に立ったら楽勝です! 」
<――マリーナさんから驚愕の事実を聞いた俺。
どうやらこの世界には“注射器が無い”らしい……だが
当然といえば当然だ……大抵の怪我なら治癒魔導で治せるし
仮に治癒魔導で治癒できない物に対しては“飲み薬”
若しくは“塗り薬”が主体って事もあり、確かに無くても不思議は無い。
だが、それなら一体どうやって血を抜き取るんだろうか――>
………
……
…
「注射器が無いって……ならどうやって血を抜くんですか? 」
<――そう訊ねた俺に対し
マリーナさんが返した答えは――>
「それは勿論“ナイフで指先を切る”若しくは手首を……」
「うげっ?! ……そんな方法だったら俺だって嫌ですよ! 」
「そう言われましても、他に方法など……では
主人公さんの仰られる“注射器”とは一体どの様な方法で血を抜き取るのです?
皮膚を傷つけずに血を抜き取るなど、その様な事が行えるなど聞いた事が……」
「えっと……口で説明しても分かりづらいでしょうし
そもそも絵が不得意なので……ちょっと待ってて下さい
直ぐに実物を持ってきますから! ……」
<――そう言い残し、一度ヴェルツの自室へと転移した俺は
懐から“裏技之書”を取り出し――>
………
……
…
「記憶にある物を生み出す為のページは……っと、これか? 」
<――それらしい記述を見つけ
直ぐに書かれている呪文を読み上げた……だが、何も起きない。
一体何をどうすればこの本の力が発動するんだ?
悩みつつ、更に本を読み進めていると――>
「ん? 何々……
“その物に対する造詣が深い物以外を生み出す場合は
相応の対価が必要”
相応の対価? 一体何を用意すれば良いんだ? ……」
<――と、更に悩んでいたら
突如として魔王が俺の真横に転移して来て――>
「……ぬわぁッ?! な、何で来たッ?!
って言うか何で来られたんだよ!? 」
「来られた理由など“貴様の記憶”と言えば理解出来るであろう?
しかし“其れ”を使うが為だけに態々(わざわざ)転移をするとは
貴様の行動には無駄が多……」
「う、煩いな! ……お前が皆にバラしたとは言え
俺は今でも約束を護りたいんだよ!
……とは言ったものの、全員俺がこの本持ってるの知ってるんだから
考えてみれば確かに無駄か……ってか
“相応の対価”ってのが分からなくて悩んでるんだから
邪魔するなら早く帰……」
「何? ……貴様はどの様な物を生み出すつもりか? 」
「どの様なって……さっき話に出た注射器だけど、材質の話なら
大抵は針がステンレスで本体がプラスチックとゴムで出来てて……って
……何してるんだ? 」
<――俺の説明をある程度聞いた後
懐に手を入れ何かを探し始めた魔王。
この直後、魔王が取り出した物は――>
「……これを本の上に置き、再び呪文を唱えるが良い」
「重っ?! ……ってこれ、純金だよね?
てか幾ら“対価”とは言え本が金銭を要求してくるなんてそんな馬鹿な……」
「……貴様の申した材料はその何れも我ですら耳にした事が無い。
なれば、この世界に於いて金……若しくは
より価値の高い物であると捉える事も出来よう。
……貴様の“古き故郷”では、さぞ豊富だったのだろうがな」
「な、成程……一応やってみるか」
<――この後
魔王に“転生前の記憶まで見られてる疑惑”を感じつつも
魔王の言う通り本の上に金を置き、もう一度呪文を唱えてみた俺。
……結果、すぐに出現した。
だが、握り拳大の金一個を対価に出来た注射器は……たったの一本だった。
何と言うか、些か口が悪いかも知れないが――
“クソ程効率が悪い”
――と思った。
と言うかそもそもこんな調子では“報奨金”どころの騒ぎじゃないし
医療知識に疎い俺でも知っている常識
“注射器は一人一回の使い捨て”……この事実を考えれば
どんなに少なく見積もっても後
“一万四千九九九本”程作らないと駄目って事になる。
いや、よく考えたら“血液混成法”だから
魔族用の注射器も必要って考えると……余計に不可能だ。
かと言って、注射器の材料を生み出し
ドワーフ達に作って貰うとなれば相応の時間が掛かってしまう。
……正直、どうしたものかと思い悩んでいたのだが
どうやら俺は、纏まらない考えを全て口に出して居た様で――>
………
……
…
「フッ……貴様は一度その道具を生み出した。
故に……その道具を観察すれば
これ以上の対価を払う必要など無い筈」
「おぉ!? ……その手があったか! 」
<――盲点だったし
“魔王すっげぇずる賢い”とも思った。
と言うかこれも“口から出てた”お陰で魔王にめっちゃ睨まれて怖かった。
兎に角……俺達は再び執務室へと戻り
注射器の使用方法を説明する事に成ったのだが――>
………
……
…
「何とぉ!? ……その様に細い金属が空洞じゃとぉっ?!
しかも先端には刃がついておるじゃとぉっ!!?
主人公……御主どうやってその様な物を手に……」
<――と、案の定ガンダルフに詰め寄られたが
渋々“例の本の技術”だと説明した瞬間
かなり諦めた表情を浮かべたガンダルフ……と言うか
本を使った事を話す位なら“公然の秘密”状態とは言え
約束の為に転移してまで使った俺の立場は一体……まぁ。
何れシゲシゲさんには確りと謝っておこう――>
「とっ……兎に角っ!!!
今回は大勢の命に関わる問題だから!
ガンダルフ……今回だけはこの“ズルい本”の事には目を瞑ってくれ。
そもそも俺はこんな本よりもガンダルフの職人的な腕の方を信用してる。
だから、今回だけ……許してくれるかい? 」
「ううむ……今回は事情が事情じゃし仕方あるまい。
……じゃが、今回だけじゃぞ? 」
「ああ……肝に銘じておくよ」
<――ともあれ。
暫くの後……城内で一番広い倉庫的な部屋に移動し
注射器の製造をする事と成った俺。
作っては清潔な布に包み
作っては清潔な布に包み……を繰り返し
この日は、五千本程を製造する事が出来たが
単純作業って意外と疲れる事を知った。
とは言え、安定して製造出来るだけでも良しとしなければ
残すは民達への説明と説得だが……正直
かなり胃が痛い――>
………
……
…
「……と言う事ですので。
皆様の腕に此方の道具を使用し
健康を害さない程度の僅かな血液を頂く形になりますが
言葉で幾ら説明をされたとしても
不安感や恐怖心は拭えないのも事実ですので
先ずは発案者である俺自らが
此方の道具で血液を抜き取られる様子を実演致します。
……そして、皆様に安全である事を知って頂いた上で
ご協力頂けるか否かをお選び頂く形になります。
無論強制ではありません、ですが出来る限り多くの皆様に
ご協力頂ける事を願っております」
<――俺は民達に対し誠心誠意頭を下げそう頼んだ。
と言うか……俺自身、注射は相当苦手な筈だったが
民達の協力を得たい一心で、何とか恐怖心を抑え採血を受ける事が出来た。
一方、この様子を見守っていた民達の目は
興味津々な物が半数、嫌悪感を抱いた様な表情を浮かべる者が
半数と言った所で――>
………
……
…
「……は、はいっ! 正常に終わりましたっ! 」
「あ、ああ……有難うメル」
<――俺がある種の実験台に成る宣言をした瞬間
“私が採血をする”と言って聞かなかったメル。
正直……手を震わせ
冷や汗を流しながら採血をするメルの姿を見ていたら
“違う意味で”恐怖心が湧いて居た事は絶対メルには言えないが
そんなメルの姿がほんの少しだけ“新人の看護師さん”に見えない事も無くて
そんな事を考えてたら採血は終わってた。
うん、これも“違う意味で”メルには言えないな――>
………
……
…
「……さて、皆様の中には
嫌悪感を感じられた方もいらっしゃるかと思いますが
だからこそ、最後にもう一つだけお伝えさせて頂きたい事があります。
魔王以下……彼の配下の魔族達にこの治療を施せば
俺達人間からすれば恐怖の存在だった魔族達は頼もしい友と成り
家族となり……俺達と同じ食事で生きる事が出来るのです。
この国が争いの無い平和な国と成って行く上で
皆様のご協力が不可欠な物なのだとご理解頂ければと願っています」
<――俺が言える事はこれで全てだった。
後は……少しでも民達の中から協力者を得られる事を祈るだけ。
……とは言え、民達の動揺の大きさも鑑みた結果
今日は敢えて民達からの採血を行わず
注射器での採血法を披露するだけに留めた。
そして……三日後
賛成してくれる民達からのみ採血を行なう旨を伝え
この日は解散と成った。
……その一方で
俺達は一度執務室へと戻り、マリーナさんから
詳しい“施術方法”を教わっていたのだが――>
………
……
…
「……この道具のお陰で効率が良く採血する事が出来ますから
先程の試算よりも条件が緩和出来ますわね」
「それは嬉しい報告です!
……そうなると、どの程度の協力者が居れば良いのですか? 」
「……仮に全魔導師から協力を頂く事が出来なくとも
半数弱にご協力頂ければ不足はしないでしょう。
ですが……」
「その様子だと……まだ何か問題が? 」
「ええ……魔族も人間も個体差がありますから
混ぜる血液量の判断を誤れば施術は無意味に成ってしまうのです。
ですから……施術する者は
その塩梅を見る目を養わなければ成らず
そうするには余りにも時間が……」
<――この後、自分一人の力だけでは
“全魔族の五分の一程度を治療するのが関の山だろう”
と、心苦しそうに言ったマリーナさん。
一体……どうすればこの状況を解決出来るのだろう。
そんな難問に深く思い悩んで居た俺達……だが
そんな中、何かを思い出した様に立ち上がった一人の女性が居た――>
………
……
…
「まさか、ワタシが魔族の為に案を出すなんて……不思議な事もあるものネ」
<――少々不満げにそう言い放ったのは
リーアだった――>
「な……何か良案が浮かんだのか?! なら頼む……教えてくれ! 」
「ええ、でも……あくまでも魔族では無く、アナタを助ける為ですワ? 」
「有難う……それで充分だ、教えてくれ」
「……ワタシ、マリーナさん以外で
唯一“塩梅を見定める目”を持っている者達の存在を思い出したのですワ?
その方々は、エリシアさんのお友達とお師匠様の眠るあの場所に……
……此処まで言えばアナタなら気がついたでしょう? 」
「あぁ! “あの人達”が居たッ! ……」
<――直後
“敵意の無い集落の魔族達”に対し協力要請をする事に成った俺。
だが――>
………
……
…
「我と……我が配下の者共を救う為の協力をさせる以上
我自らが出向き頭を垂れるが最低限の礼儀と謂う物。
……故に、我も征くとしよう」
<――と、魔王が集落への同行を希望した事で
魔王と共に集落へと転移する事に成った俺。
だったのだが――>
………
……
…
「命掛けでこの集落を守るのダッ!!! ……」
<――こうなった。
言うまでも無く完全な誤解だし、完全に俺の連絡ミスなのだが……
……考えれば、魔王軍の追跡から必死に逃げ延びた彼らの元に
何の説明も無く魔王が現れたら警戒するのは当然だ。
だが、このままでは色々と不味い……直後
慌てて間に入った俺は――>
………
……
…
「あ、あの……落ち着いて下さいッ!!
詳しい説明は省きますが、紆余曲折ありまして
魔王とその配下の約半数が、この村の皆様と同じく
“血液混成法”の治療を受けたいと希望していまして……」
「騙され無いゾ!! ……って?! 貴方は主人公さんではありませんカ!!
……皆、警戒を解くのダ!!!
どうやら、魔王の存在に驚き過ぎた余り
貴方が居る事にすら気付けなかった私達に問題が有った様ダ……」
<――直後
凄まじい警戒っぷりだった集落は、直ぐに落ち着きを取り戻した。
……とは言え、魔王が絡むと
俺の心拍数が跳ね上がる“イベント”が
高確率で起こる事に今更ながら気付いたし……この上更に
集落の魔族達に協力要請をしなきゃ成らない事に
胃の痛さが限界突破しそうに成っていた。
だが、そんな時――>
「何を謂うよりも先ずは――」
<――突如としてそう言ったかと思うと
集落の魔族達に対し深々と頭を下げた魔王。
この瞬間……当然と言うべきか
集落の皆さんは驚き過ぎて固まって居た……と言うか、俺も固まっていた。
ともあれ、そんな中――>
………
……
…
「……貴様らの協力を得る事叶わなければ
我が配下の者共は皆餓死……
……若しくは主人公の守護する
政令国家の民草の命を奪い、無様にも生き永らえようとするであろう。
だが……其れを望む考えなど最早我に有りはしない。
故に、我はこうして……貴様らに頭を下げている」
<――そう言い切った。
と言うか……何処からどう見てもプライドの塊っぽい魔王からは
想像の出来ないこの行動のお陰か、集落の魔族達は
即座にこの要求を受け入れただけで無く――
“直ぐに施術を! ”
――と尋常ならざるやる気を見せてくれた。
だが、今はまだ先程俺から採血した一本……つまり
魔王分の血液しか無い事もあり、この日は一旦
魔王に対する治療を集落で行なう事と成った。
の、だが――>
………
……
…
「では魔王、貴方からも血を取り……ん? 」
<――そう言いながら魔王の手を握った瞬間
不思議そうに魔王を見つめた一人の魔族。
妙な雰囲気を感じた俺がその様子を遠目から見ていると――>
「主人公よ……貴様は一度帰還し
この者達の協力を得られた事を皆に伝えて来るが良い」
「えっ? その位なら別に魔導通信でも伝えられ……」
「貴様……我に二度同じ要求をさせるつもりか? 」
「そ、そんなに怒んなくても……分かったよ。
その代わりちゃんと自分で帰ってこいよ? ……はぁ~っ」
<――この直後
妙に威圧感満載な魔王をこの集落に残し
一人、政令国家へと帰還する事と成った俺――>
「転移魔導、政令国家執務室へ! ――」
………
……
…
「さて、人払いは済んだ……申せ」
「いえ……私は唯貴方に――
“この治療は必要無い”
――そう、お伝えしようとしただけでございます」
「フッ……そうであろうな」
「……お待ちを魔王様
一つお訊ね致します、貴方はもしや人間族との……」
「黙れ……他言無用だ、良いな? 」
「良いでしょう……しかし、皮肉な物ですな」
「ほう……我を侮辱するとは良い度胸だな、貴様」
「ぶ、侮辱など滅相も無い!
唯、私の娘と同じ“境遇”の者に会ったのが二度目でしてね……
……まさかその二人目が魔王であるとは思いも依らず
つい要らぬ口を……無礼をお許し頂きたい」
「構わぬ……だが、何れにせよ他言は無用だ。
……良いな? 」
「ええ……確と、心得てございます」
《――主人公の去った後、集落で取り交わされた約束。
魔王は何故この事実を隠したかったのか……現時点では誰にも分からない。
何れにせよ……暫くの後、魔王はこの集落の魔族達に対し
今後一切の危害を加えない事を約束しこの集落を後にしたのであった――》
………
……
…
「……待たせたな」
「俺達はそんなに待ってないけど……魔王は大丈夫かい?
術後の状態は……何処も違和感とか無いかい? 」
<――そう
親切心で訊ねたのにも関わらず――>
「フッ……貴様の血は世辞でも美味とは言えぬ味であった」
「ちょっとぉ?! 魔王、お前なぁ……」
「騒ぐな……それに、我は既に魔王では無い」
「えっ? ……ど、どう言う事だ? 」
「……貴様との契約を実行したあの日
我は約半数の配下を開放し
それまで食料で在った筈の人間族と“盟約”を結んだ。
魔族……ましてや魔王である我が身の矜持を尽く投げ捨てた我は
既に魔王と名乗るべき存在では……無い」
「そう言う事か……でっ、でもさ!
お前の中ではそう思ってしまうのかも知れないけど
俺からするとあの決断は格好良かったと思うし
立派な魔王……って表現があってるかは謎としても
英断だと思ったし、今もあの決断は尊敬してるって事は理解してくれ。
……ってか魔王って呼べないならどう呼べば良いんだ?
まさか“魔族その一”って呼ぶ訳にも行かないし……」
「フッ……我にも名前位は有る。
今後は我を“モナーク”と呼ぶが良い……無論、呼び捨てて構わぬ」
「えっ?! ……名前格好良過ぎない?!
てか、寧ろ魔王って呼ぶよりも名前の方が格好良過ぎて
若干、嫉妬心が湧いて……」
「フッ……我に世辞など……」
「いやいや、マジで名前まで格好良いのはズルいと思うぞ?
てか、そんな事よりも本当に呼び捨てで……良いんだよな? 」
「フッ……好きにするが良い」
「じ、じゃあ……モ、モナークッ! 」
「黙れ……下等生物め」
「ちょっ!? 理不尽過ぎだろ?! ……」
<――と、ひょんな事から魔王を名前で呼ぶ事に成った俺達。
一方……この日から数日間
寝る間も惜しんで注射器を製造しまくった甲斐もあり
何とか期日に間に合わせる事が出来た俺。
後は民達がどれだけ協力してくれるかが問題だったが
マリーナさんの宣言通り、水の都出身者は全員協力を申し出てくれた。
だが――>
………
……
…
「嘘だろ? ……」
<――結果は散々だった。
魔導師全体の半分どころか
全体の二割弱程度の協力しか得られなかったのだ。
と言うか……このままでは全魔族中
約三割程の魔族が“間に合わなくなる”……そして
そんな惨状に頭を抱えていた俺の横では――>
「……人間族など所詮はこの程度か」
「モナーク……俺が絶対にどうにかするから、諦めないでくれ」
「フッ……貴様がどれ程頭を下げようとも
外方を向いたあの者共に貴様の声など届いては居なかったと謂う事よ」
「い、良いから黙って待っててくれよ!! ……お、俺を信じろッ! 」
「フッ……終焉は近い様だがな」
<――多分、この時の俺は安請け合いな上
解決方法が無いにも関わらず大口を叩いただけだったのだろう。
無論、このままじゃ絶対に間に合わない事も分かってた……だけど
絶対に何か方法はある筈とも思っていた。
拒絶した彼らが、諸手を挙げて協力したく成るだけの
絶対的な何かが……俺は、その答えを必死に考えていた。
そうして汎ゆる方向に考えを巡らせていた時
俺はある斜め上な考えを思いついた。
その考えとは――>
………
……
…
「……モナーク、お前に一つ頼みがある。
例の“地下牢で話してた一件”についてだ」
「……貴様の格についての話で有った様に記憶しているが
何故今その話を持ち出した? 」
「ああ、その話だ……今から稽古をつけてくれないか? 」
「何だと? ……理由を述べよ」
「いや……もし民達の協力が足りなかった場合に
異質な量の魔導力を持ってる俺の血液だったら
“少ない量でも大勢の魔族を救えるかも”……って思ったんだけど
あの時、モナークが俺のレベルが低いって言ってたから
もしレベルが上がったら、更に少ない量で
大勢を助けられるんじゃないかなって考えたんだけど……」
「ふむ……無い話では無い。
良かろう……我が貴様を育てる対価に
我は……貴様の生き血を貰い受けよう」
「な、何だか怖い言い回しだな……でもッ!
その条件……飲んだッ!! 」
<――この日を境に、俺は
モナーク協力の下、全力でレベル上げに勤しむ事と成るのだが――>
===第百十六話・終===