第百十三話「帰還後も楽勝ですか? 」
<――転生前、テレビで見た
豪華客船の最上級客室みたいな部屋で絶世の美女達に囲まれて居た俺。
……若干の気恥ずかしさを感じながら子守唄を聞かされていた筈なのだが
気がつくと翌日を迎えていて――>
………
……
…
「んんっ、おはよう皆……って誰も居ないぞ?
……ってか今何時だ? 」
<――辺りを見回してみたが時計らしき物が見当たらない。
“取り敢えず身支度だけでもしておこう”
そう考えつつ、窓の外を見て驚いた――>
「もう到着してるのか……って、荷馬車が降りてるッ?!
まさか俺……忘れられてるんじゃ?! 」
<――慌てて身支度を済ませた俺は飛び出す様に部屋を後にした。
だが――>
………
……
…
「わぁっ!? ……主人公さんっ?!
って……どうしたんですか? そんなに慌てて……」
「おぉメル! ……ってメルも急いだ方が良いよ?!
窓の外見たら大量の荷馬車が降りてたし、もう皆……」
<――と、慌てる俺を黙って見つめたかと思うと
ふふっ♪ ……と、口元を隠しながら笑ったメル。
俺がポカーンとしていると――>
「……えっと、今降りている荷馬車は
天照様が念の為にって用意して下さった護衛の方々が乗って居るそうです。
それから……今降りたのがサーブロウ伯爵様から頂いた
沢山の絵本を乗せた荷馬車だった筈ですよっ♪ 」
「そ、そうだったのか……凄い荷馬車の数だから
てっきり俺は忘れ去られたのかと思ったよ」
「ふふっ♪ ……あっ、でも
主人公さんだけ朝食は抜きに成っちゃいましたね……」
「え゛っ?! ……な、何故にそんな酷い扱いッ?!
あっ……もしかして。
俺が皆を置いて行った件を根に持っててその腹いせに朝食を……」
「ち、違いますよっ!! ……今お昼なんですよ? 」
「へっ? ……因みに今何時位なの? 」
「今は……十二時位ですっ!
多分、そろそろお昼ごはんの時間だと思いますけど
本来私達が朝ご飯を食べ終わった頃には、港に到着してたんですよ? 」
「と言う事は、俺が爆睡してた所為で皆を待たせてたり……」
「ほ、ほんの……ちょっとだけですけどねっ! 」
<――実際は相当待たせてしまっているのだろう事は
明らかに挙動不審に成ったメルを見れば一目瞭然だ。
……てか、それなら皆相当怒ってるんじゃないだろうか?
よし、取り敢えず謝ろう! ――>
「そ、そっか~……先ずは謝らないとだし、皆の所に行こっか! 」
「は、はいっ! ……」
<――こうしてメルに連れられ
食堂へと向かった俺だったのだが――>
………
……
…
「おはようございます主人公さ~ん……って言うか
……本当に十二時間睡眠するとは思いませんでしたよ? 」
「う゛っ……マジでごめんマリア」
「けれど……良く寝た代わりに血色は良くなりましたわネ♪
でも……昨日あんなに激しかったから心配だったワ? 」
「い゛っ?! リ、リーアっ?! ……は、激しいって一体俺は何を?! 」
「イビキと寝相がですワ♪ ……ナニを想像したのかしらッ♪ 」
「な゛っ!? ……そ、想像通りだったさ~!
とっ……兎に角っ!! 昼食を食べ終わったら
待たせた分の時間を取り戻す為にも
此処から直行で皆を荷馬車ごと転移させて帰……」
<――リーアの“誘導尋問”に引っ掛かりそうに成りつつも
皆を待たせてしまった“お詫び代わりに”と転移での帰還を提案した俺。
だが、ガルドはこの提案に反対し――>
「……待つのだ主人公。
御主は今だ本調子とは言い難い……それに
今回は護衛も用意されている事だ。
……荷馬車でのんびりと帰れば良いではないか」
「……でも、オベリスクですら此処までの道のりは長かったし
途中、オルガのお姉さんと“一悶着”あった
“あの国”を超えないと政令国家には帰れない。
更に言えば、護衛が多い事も荷物が多い事も問題の種に……って!
よく考えたら港についてる事だし
一度政令国家に連絡入れてどうするべきか聞いてみようよ! 」
「ふむ……それもそうだな」
<――この後、政令国家に魔導通信を繋ぎ現在の状況を説明したのだが
俺の所為で数日間“待ちぼうけ”を食らった魔王が
とても不機嫌そうな表情を浮かべていて――>
………
……
…
「貴様……この上更に我を待たせると謂うか。
……全く以(もって不愉快な。
だが、貴様らの帰りをこれ以上待つ気など我には無い。
不愉快極まる事だが……我が自ら
貴様らを政令国家へ転移させてやろう」
<――と、渋々ながらも申し出てくれた魔王。
……には悪いのだが。
如何せん“魔族の王たる迫力と見た目”が
明らかに“別の問題”を引き起こしかねないと判断した俺は
全力でこの申し出を断った。
……正直、数日間野宿でもして
俺の体力と魔導力が完全回復するのを待つって言うのも
一つの手としてはあるのでは? とまで考えていたその時――>
………
……
…
「ねぇねぇ~! そう言えばだけどぉ~
主人公っちの魔導通信って居場所が見えるから
行った事無い私でも転移出来そうな気がするんだけど!
って事でぇ~っ! ……一回やってみよ~ぜぃ! 」
<――と、エリシアさんが提案してくれた。
確かに、転移魔導は見えている場所なら転移出来るとは言うが
魔導通信で見た場所への転移なんて前例も無いだろうし……
……危険性は無いのだろうか?
だが、そんな心配を余所に
エリシアさんは転移魔導の詠唱を始めてしまい――>
「……場所の名前わかんないし!
取り敢えず~っ! “主人公っちの真横に転移”っ! ――」
「ちょっ?! ……」
………
……
…
「……ふぃ~っとぉ! 成功成功ぅ~♪
てか~行った事無い場所への転移って歴史上、私が初めてじゃないかな~? 」
「た、多分そうだと思います……って言うか
無事に転移出来て本当に良かったですよ……」
「……お~っ? 主人公っちったら心配してくれたのかぁ~?
嬉しいねぇ~♪ このぉ~♪ 」
「当たり前ですよ! ……でも、本当に有難うございます」
「ん~っ? どしたぁ? ……何だか真剣な顔してるけどぉ~
ミリアにやったみたいに、私にも抱きつくか~ぃ? 」
「い゛っ?! ……そ、それは言わないで下さいッ!!
今感じている事を正直に言えば……俺の為に
簡単に命を掛けたエリシアさんの行動に対して
心配と責任と感謝の入り混じった感情が複雑に入り乱れててですね……」
「うっひゃぁ~……主人公っち暗いぞぉ~!?
あっ!! さては! ……余り寝られてないでしょッ?! 」
「え、ええまぁ……って、良く考えたら十二時間程……」
「げっ、それは流石に寝過ぎだよ~?
……んまぁいいや! どっちにしても疲れてるっぽいし~?
主人公っちを休ませる為には~――
“政令国家で最も美人なマジシャン”
――との呼び声高い
私、エリシアさんが頑張っちゃう必要があるみたいだねぇ~♪ 」
<――そう言うと
腕をブンブンと振り回し、謎の決めポーズを取ったエリシアさん。
本来ならツッコミを入れるべきなのだろうが……
……ちょっとだけ本当に可愛いと思った。
だが、そんな姿にある意味で見惚れていたら
急に顔を真赤にしてポーズを止めたエリシアさん。
……照れるならやらなきゃ良いのにと思った反面
“萌えて”しまったのは本人には内緒だ――>
………
……
…
「わ……私に見とれてないで、さっさと下船の準備を急げ~ぃッッ!! 」
「は、はいッ! って押さないでくださいよぉ! ……」
<――こうして、元気いっぱいなエリシアさんに
“物理的に”背中を押されつつ下船した俺達だったのだが……
……降りた先には、四〇名程の護衛達と
船長以下、六~七〇名の船員がずらりと並んでいた。
そして……その中には
俺を神と勘違いしたままの“あの女性”の姿もあり――>
………
……
…
「……主人公様っ!
昨晩の私の部屋での出来事を……この感謝を
お別れと成る今、どうお伝えするべきか……」
「いぃっ?! ……い、いや……気にするで無いぞ! 」
<――最悪だ。
咄嗟に“神のフリ演技”をした事も含め、皆から白い目で見られた。
これは迅速に誤解を解く為にも詳細の説明を……いや。
……したら余計にぶん殴られる気がする。
と、そんな事を考えていた俺に対し――>
「……主人公さん?
そちらの女性のお部屋で……一体何をしたんですか? 」
<――殺気を超え“冷気”を発するかの様なメルの気迫に
卒倒しかけた俺は……文字通り
“決死の”覚悟で言い訳を始めた――>
「メ、メルッ?! ……い、いや!!
き、昨日の夜風呂上がりにその……紆余曲折あって
俺は倒れちゃったんだけど……此方の女性が介抱してくれて!
で、その後……な、悩みを……そうッ!!
なっ……悩みを聞いてあげたんだよ! だっ……だから!
その人は……その御礼を言っただけだからッ! 」
<――まぁ“慌てて説明するその態度こそ”が
愚の骨頂だと知ったのは、女性陣に取り囲まれた後だった。
……全員が疑いの眼差しで俺を見ている。
俺がした事と言えば……風呂に入り
“モロに見られて”超絶大根な演技をしたって位なのに――>
「……く、詳しい事は帰ってから説明するから!
ほ、本当に今は……それにほら!
別れ際にバタバタするのは良くないじゃん?!
……後ほら!
お世話になったこの船の皆さんとは笑顔で別れたいじゃん?!
ねっ! ……ねっ?! 」
「どうお世話になったのか……
……後でじっくり聞かせてくださいね? 主人公さん」
「う゛っ、そう言う言い方は良くないぞマリア……」
<――ともあれ。
エリシアさんの転移魔導のお陰で
難無く政令国家へと帰還する事が出来た俺達。
とは言え……転移直前、あれだけ張り切っていた護衛の皆さんが
がっくりと肩を落とした事だけは少し不憫に感じた。
……だが、万が一にも戦闘が起き仮に死人でも出ていたら
そっちの方が後味の悪い結果だった様に思う。
……あぁ、そうそう。
女性陣から責められ続けていた俺の事を少しでもフォローしようと思ったのか
俺を神と勘違いしたままの女性はあろう事か俺の“全て”を見た事を自供し
“自分の不注意なのでそれ以上は責めないで”
と、涙ながらに頭を下げて皆に懇願してくれた……結果
俺は女性陣に袋叩きにされましたとさ。
あ~……理不尽過ぎて“涙”も出ねぇ。
兎に角、無事……でも無いが、政令国家に辿り着いた俺は――
“仕方無いから万事順調って事にしておこう! ”
――そう
半ば無理やり思いこんでいたのだが――>
………
……
…
「到着早々で申し訳ないんじゃが……」
<――開口一番、ラウドさんはそう切り出した。
……聞けば、俺の居ない数日間の内に
魔族受け入れに反対する民達の声が結構な数上がって来ているのだと言う――
“まぁ……無理も無いですよね”
――そう返答をしつつ思った。
そりゃそうだ……そもそも第二城の遥か遠くで
ずっと陣を張ったまま待機している魔族達の不気味さは
事情を知らない人間からすれば恐怖だし
そんな状況下で配下の魔族に対し
待機し続ける様命じるしか無い魔王も相当に不愉快なのだろうと思う。
……とは言え、このまま放置していては
反対派の民達も……勿論魔族側も
双方“限界を迎える”だろう事は火を見るよりも明らかだ。
正直、休んでいる暇が無さ過ぎて辛い――>
………
……
…
「……分かりました。
なら……取り敢えずの一時避難的な物として魔族用の
“居留地”みたいなのを用意しないとですね。
でも、何処に作るかなぁ……」
<――そう言った瞬間、ラウドさんだけでは無く
大臣達までもが皆申し訳無さそうな表情で俺を見つめた。
俺が不思議に思っていると、クレインは――>
「それすらも問題視している様でね……困っている所だ」
<――そう教えてくれた。
だが……正直、たった数日空けただけで
こんな面倒事が起きているとは夢にも思わなかった。
とは言え……何れにしろこのままでは埒が明かない。
早急に反対派の民達とも話をするべきだと考えた俺は
ラウドさんにそう出来る場所を用意する様頼み――
――数時間後
反対派の民達を代表する者達が十数名程集まった。
無論、話し合いは公平を期す為に全国民が見守る中で行われる事と成り
先ずは反対派の言い分を聞く事と成った俺達――>
………
……
…
「主人公様……一年と少し前、国王が魔族に成り変わられていた時
その真実を暴き、我々民達を救って下さった事にはとても感謝をしています。
……だからこそ、我々は貴方に問いたい。
何故あの時命掛けで排除した筈の魔族を
今に成って諸手を挙げて受け入れようとするのです?
……話の筋として通らないとお思いにはなられないのですか? 」
<――確かに、実情を知らなければそう思うのも無理は無い。
まぁ俺がそう思った位だからか、この意見に賛同する者達は多かった。
軽く見回した所、反対派が七割……頭が痛い。
……とは言え
その時とは状況が違う事を説明すれば皆も理解してくれるだろう。
そう考えた俺は、魔王との間に交わされた“契約”の持つ力に依って
似て非なる状況が出来ている事を国民全員に説明し
理解を得ようと思っていた。
だが――>
………
……
…
「……そもそもッ!!
貴方がどれ程の実力者であったとしても、何故国の長であるラウド大統領や
各種族の大臣達ですら貴方の決定に全面的に従い
異を唱える者が一人として居ないのですッ!?
貴方は……貴方に反対しない者ばかりの傀儡政権を作り
この国を良い方向に導くフリをして……徐々に
魔族に我々民達を売り渡して行くおつもりなのではッ?!
……第一、我々の総代でもあるジョルジュ様は
其処に座っている魔族の王から受けた攻撃に依り
現在も魔導病院で治療中なのですよ?!
口でどれ程“危害を加えない”と説明された所で
信用しろと言う方が不自然だと、何故ご理解頂けないのでしょうかッ!! 」
<――ある意味俺が一番恐れていた論調だった。
そもそも、一般人と言うのは大抵が日和見主義だ。
……勿論それを悪いとは思わないし
ある意味、最適解を選び続けて居るのだから正しいとすら思う。
だが……詳しい事情を知らない物事にまでケチを付け
話をややこしくした挙げ句
その責任すら取らないなら、そんな物は唯の我儘でしか無い。
大体……ジョルジュが魔王から攻撃された一件は
そもそも俺を庇った結果そう成ったに過ぎない。
勿論、彼奴の事は俺が責任を持って完治させるし
何があろうとも絶対に助けるつもりだ。
あと……大切な皆の事をコイツは傀儡政権と貶したが
別に俺の意見が殆ど全て通った訳じゃない。
……どの法律も仕組みも俺の立案後、皆が“肉付け”してくれて
民達の為……そして、各種族に不利益や不公平の出ない様
細心の注意を払い、完璧に整えられた物が通っただけだ。
とは言え……これをそのままコイツらに説明した所で
言い訳だ、詭弁だ……と喚くに違いないし
そもそも聞く耳を持っていない様子だったから――>
………
……
…
「……勿論、貴方達の意見を無視したりはしませんし
ジョルジュの事は俺が責任を持って必ず助けます。
そしてそれは、彼が俺の命の恩人だからって訳じゃなく
彼も政令国家の大切な民の一人だからですし
勿論皆さんも政令国家の大切な国民です。
……ご不満に感じられている事柄につきましても
受け入れるべきは受け入れ、改善すべき部分は改善して行きますから
そう興奮し、物事を一方向から見るのでは無く……」
「……その様な綺麗事を聞く暇など無いのですッ!!
耳障りの良い言葉ばかり並べ立てず
今直ぐにでも魔族達を追い出して頂きたいッ!!! 」
<――“聞く耳を持たない”とはこの事だろう。
正直、相当疲れてる所為もあって
こう言う態度で来られ続けてる事にはそれなりに腹も立って居た……だが
だからと言って彼らの意見を全く聞き入れず
強制的に魔族を受け入れる……若しくは
魔導の力か何かで彼らを完全に服従させる事を選んだとしよう。
もし仮に怒りに任せ、力で彼らを服従させてしまったとしたなら
遅かれ早かれ彼らは反乱分子となり、国は分断され
この国を襲う新たな戦争の火種に成ってしまう。
そして……もし仮にそうなってしまえば
政令国家は俺が目指した“平和で争いの無い国”から
とんでも無く乖離した姿に変貌を遂げてしまう。
それは……それだけはなんとしても避けたい。
だが、彼ら全員に理解して貰う為に不足している物が一体何なのかなど
疲労困憊の俺では思いつく筈も無く
この後も思い悩み続け、反対派の“口撃”に一切の反論が出来ずに居た俺。
だがそんな中、突如として立ち上がった一人の女性――>
………
……
…
「……皆、お黙りなさいっ!!!
主人公さんを責め立てるのは
私の話す“真実”を聞いてからでも遅くは無い筈です! 」
<――立ち上がり、そう言い放った女性は
マリーナさんだった――>
「マリーナさんの話す真実? ……まさか?! 」
<――慌てて止めようとした俺に対し、マリーナさんは首を横に振った。
そして、反対派の民達に対し――>
………
……
…
「……そもそも、私は純粋な魔族種です。
娘もその血を半分受け継いでいますし、その事で大変心を痛めていたのです」
<――やっぱりだった。
マリーナさんの衝撃的な暴露に、賛成派も反対派も全員ざわついていた。
だが、そんな事など意に介さず
マリーナさんは民達に対し話を続けた――>
「ですが、私も……勿論、娘も
人様を傷つけて生き永らえる様な事は断じてしておりません。
……ただ、第二城の遠方で待機している魔族達や
此方に居られる魔王も、現状のままであれば
貴方達の仰る通り、生き続ける為に人間族を
“食事”として摂取する必要が有る事を否定しません」
<――そう正直に真実を語ったマリーナさんに対し
反対派の代表者は――>
「……で、でしたら!
余計にあの様な大軍を受け入れてしまっては! ……」
<――そう言い掛けた
だが――>
「……最後まで話を聞きなさい。
問題は……同じく魔族である私が、何故
人間族を襲わず今日まで生き永らえて居るのかでしょう?
そして……その答えは私の持つこの“本”にあるのです」
<――直後
マリーナさんは懐から“裏技之書”を取り出し、民達に示した。
そして“血液混成法”の説明を始めた時――>
「……お母さんの言ってる事は事実よ。
私達も旅の中で“人間を襲わず暮らしている”魔族達に出会ったし
彼らはとても温和で
礼節を持った素晴らしい魔族達だったわ」
<――と、マリーンが“援護射撃”をした事で
反対派に回っていた民達の中でも比較的穏健派っぽい人達や
マリーナさんに日頃お世話になっていた様な人達が賛成派に回った。
……二人のお陰で、良い流れに成った。
と、少しだけ安堵していたその時――>
………
……
…
「マ……マリーナ様やマリーン様の様に
平和主義な者ばかりであれば当然受け入れられるでしょう。
……ですが!
先程もお伝えした様に、我々の総代でもあるジョルジュ様は
未だに魔導病院で“絶対安静”だとお聞きしております!!
少なくとも、そちらにいらっしゃる魔族の王の様に
力で捻じ伏せる考えをお持ちの危険分子は即刻……」
<――と憤慨し
尚も反対を続ける反対派の民だったが……そんな時
一人の男が“看護師の介助を受けつつ”この場に現れた――>
………
……
…
「……全く“絶対安静”だと言うのに。
余りに騒がしくて目が覚めてしまったではないか……」
「……ジョルジュ様っ! 大変申し訳ございません!
ですが……丁度良い所にお越しに成られました!!
……さぁジョルジュ様!
民達に対し、貴方が如何に酷い仕打ちを受けたかを! ……」
<――と、反対派の民はジョルジュを焚きつける様な発言を繰り出し
当のジョルジュもまた
看護師の介助を受けながらゆっくりと車椅子から立ち上がった。
そして……皆が静まり返る中、ジョルジュは
ゆっくりと口を開くと――>
………
……
…
「私は……全面的に主人公の言い分を受け入れるつもりだ」
<――直後発せられたこの発言に民達は皆騒然とした。
と言うか、その中でも“俺が”一番驚いていた――>
===第百十三話・終===