第10話:これはゴールじゃない、スタートだ。
性格を変更するとやっぱりアレがあれしてあれだよ。
祭りから帰宅し、なんとなくぎこちなくなってしまった俺晴人と美鈴。それもそのはず、付き合うことになったのは良いものだがどうすればいいのか見当がつかない。
「しかし、晴人は人が変わったなぁ……。変わったというより戻ったが正しいのか?」
「さぁな。でも、これが俺だっていうのは本能が理解してるからたぶん戻ったが正しいだろ」
「兄さんが昔に戻ったみたいで智美はわっくわくだよ~!!」
「ふ~ん……これが晴人本来の性格ってことなのね」
「晴人って意外に男らしかったんだねぇ~」
各々の反応を示し、ある者は何かにわっくわくしたり、パソコンに何かを打ち込んだり、とりあえずメンタルケアしようか? といったり。
別段彼らの相手をするのは苦じゃないが、さっきから目を赤く光らせてこちらを見ている美鈴がいる。俺自身もやっぱり美鈴と話がしたいし、できればゆっくりしたい。そこらへんを考慮しないのは彼らの性分なのか無意識なのか。
学校のリア充グループを彷彿とさせるので辞めてもらいたい。……ここまで冷静になっているのは能力をちゃんと使えるようになったからなのか、本当の性格になったからなのか。そこらへんの調査をしないといけないな。
『だいぶ様になってきたじゃないか』
聞こえてくるのは心の奥底、深層心理内にいる別人格のニヒトだ。別段声に出して話す必要がないので意識の半分だけをそちらにまわす。
――様になったっていうのはどういうことだ?
『簡単に言えば、本来の人格や性格を取り戻した人間が最初に陥るのは不安と恐怖だ。自分ではない感覚、なのに自分だと主張される。そんなことがあれば人間は不安になるし恐れる。そんな悪循環から逃れられなければ最悪心が壊れる』
――つまり、普通の人間であれば精神的に死んでもおかしくないということか?
『そう考えてくれていい。ただ、お前の場合は能力自体が不安や恐怖を喰うものだからないってのも考えられるな』
――なるほどな。それなら心配は要らないんじゃないか?
『ド阿呆! お前のことなんて端から心配してないわ! 心配なのは残りの二人、特に美鈴が危ないってことだ。美鈴が本来の自分に戻った時、さっき言ったような状態に陥るかも知れない。そのとき助けるのはお前の役目だってことを肝に銘じとけって言おうとしてたんだ』
――心配されなくても美鈴は俺が守る。この命に代えても護るさ。
『その声さえ聞ければ十分だ。何かあれば呼んでくれ、俺はお前でお前は俺だ。いつだって力になる』
その声を最後にニヒトから声がかかってくることはなかった。やっぱりあいつも俺なんだなって感じる。あいつも美鈴を好きだからあんなに心配するんだろうな。
俺はずっと睨んでいた美鈴の所に行った。ここで俺は男を見せないとな。
「ずっと放置ですまなかった。機嫌、悪くしたか?」
「……別に、嫉妬なんてしてないもん」
「それは嫉妬してますって言うのと一緒だぞ――。ほら、行こう」
俺は手を差し出し、美鈴は顔を逸らしながら手をとる。
「行くってどこへ?」
「決まってるだろ。二人になれる所で静かに過ごすんだ。今日は」
二人で走り始めると後ろからみんなが追いかけてくる。それは、いつか俺が夢見た青春と呼べるものであったんじゃないかと感じる。そして、俺はこのとき自覚していた。付き合うのがゴールではなく人生の新たなスタートであることを……。
続
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