第9話:祭りは案外楽しめるもの
待ちわびてた人たち、申し訳ありません!!
さて、色々な事があったが祭りの日になった。
初めてというには聊か疑問が残るが、友人たちと来ることが初めてなのは確かだ。
男子女子共に、昼から準備をしていたが着付けをすぐに覚えて着た僕こと水書晴人は、同じく着替え終わった由貴と麟弥と共に祭りの入り口で待っていた。
時刻は夕暮れ時、準備にしてはえらく時間が掛かっているようにも思える。
女子は準備に時間が掛かるなんていうが、こんなに掛かるものなのか?
「……遅いな」
「まさか、すっぽかされたとか?」
「いやいや、二人とも酷くない?」
僕のつぶやきに反応した麟弥がなんとも女子に失礼なことを言い、それに対して由貴が突っ込むという完成された役割が今日も自然にできている。
待つこと三十分、僕ももう帰ろうかと思っていた矢先に麟弥が倒れた。
……なにやら下腹部を押さえて悶絶しているが、なぜそんなところを痛むのか?
うっすら目を開けるとそこにはいつものパーカーを着て口には棒付き飴をくわえている乙姫が拳を握り締め、その後ろに奈緒がいて、奈緒を挟むように美鈴と智美がいた。
女性陣は何故か冷たい目で麟弥を見ている。
「「「「気持ち悪い視線を送らないでくれる?」」」」
こ、これがシンクロ率か!?
一言一句間違わずに綺麗に言い放ったぞ!?
「あ、晴人君! 待たせてごめんね?」
「あぁ、うん、はい?」
なぜ疑問系なのか。
そもそも美鈴さんこっち向いた瞬間に笑顔を向けるのはやめましょうね。
眩しくて目をそらしちゃうから。
美鈴の浴衣は白を基調として赤色の彼岸花が数多く描かれており、内心ドキドキしてしまったのはいうまでもない。
「美鈴、浴衣似合ってるよ。思わず見惚れちゃった」
「ほ、ほんと!? よかった~」
顔を真っ赤にして喜ぶ美鈴。
その顔からは湯気が出ているようにも見えるくらいだった。
「あらあら? たらしがこんなところにも」
乙姫の茶々が入り、改めてそれぞれ誰が誰と行くのかという話し合いになった。
といっても、僕と美鈴はそもそも約束をしていたから確定、智美は丁度よく来ていた友人たちと散策することが決まっている。
あとは、由貴と麟弥と乙姫と奈緒の四人だ。
ちなみに、みんなで行かないのは大勢だとすぐはぐれてしまうから意味を成さないのと、美鈴がペアで行くことを主張したからだ。
もちろん、僕だってできれば美鈴さんと行きたいし、二人きりで遊びたい。
散々悩んだ末、乙姫由貴ペアと麟弥奈緒ペアが出来上がった。
それぞれ帰る時間等は自由にして、それぞれ分かれて行った。
「みんな行ったし、僕たちも行こうか」
「うん! あ、それとね、いやじゃなければなんだけど……」
「なにかしたいの?」
「手……繋いでくれない、かな?」
……やばい、めちゃくちゃ美鈴が可愛い!?
いや、確かに元から可愛いかったが今のは不意打ちで爆弾を食らうぐらいやばい!
想像してみてくれ、夕暮れ時に自分が思いを寄せている相手から袖を引っ張られて、頬を朱色に染めながら恥ずかしいのを我慢して言いましたこの一言!
「手……繋いでくれない、かな?」
これは男性諸君が言われたら一発で恋に落ちるぞ……?
確かに、麟弥が言っていたな。
『夏は、海に祭りに恋だぞ! 晴人!』
あながち麟弥の言っていたことは間違いじゃなかったってことか。
麟弥、今日このときだけは感謝するよ。
「うん、いいよ」
「ほ、ほんと!? うれしい!」
そういって美鈴は僕の手を取り、恋人繋ぎをした。
……もう一度言おう。
美鈴が僕の手を取って、恋人繋ぎをした。
これは……言わなくてもいいか。
■ ■ ■
「ねぇ、俺たちと遊びに行かない?」
「退屈させないからさ~」
「あの、ほんとに人待ってるんです。放してください!」
案の定、祭りって言うのはこういう輩が多いのは知っていた。
確かに美鈴はかわいい。
でも、それは僕だけが知っていればいい。
ほかの誰にも見せたくない。
……そう、僕だけが。
この水書晴人だけが。
こんな感情は初めてだ。
好きなんて言葉だけでは表せない。
愛している? これが人を愛するってことなのか?
『やっと気づいたか。己の心に』
頭に声が響いた。
聞いたことのある声、それはもう一人の僕であるニヒトの声だった。
周りの世界が止まる、いや、極度の集中力による高速思考の結果だろうか?
『いいか? お前は知らずの内に美鈴を異性ではなく守るべき対象としたんだ。世の中の夫婦、それも相思相愛で円満な夫婦のように。しかし、その思いこそが皇帝の真の力を発揮するトリガーだ』
守るべき対象とすることがトリガー?
いまいち理解に苦しんでいる僕のためにニヒトは続ける。
『かつて、数多くの皇帝が国を支配した。そんな多くの王たちは国民を守るべき対象とした。外国からの攻撃に耐え、守らねばならなかった。そんな中で多くの王たちは守ることができずに悔やみながら、この世を去って、体を塵へと還していった。もうわかるな?』
わかった。
本来の皇帝の力、それは支配でも恐怖でもなく。
『「過去の王たちの守りたいという執念、それに伴う勇気」』
理解をしたと同時に、僕の中で鎖が解かれ、そこに縛られていた本来の能力を得た。
丁寧な言葉を使って回りの顔色を伺うわけではなく、けれども傲慢に振舞うわけではない。
完全なる自己の形成、自我の確立。
昔は、僕だって『俺』と言っていた。
人に嫌われてるのが分かり始めてから僕と言うようになりそれが普通だと思っていた。
思い出した。
俺は……俺だった!
自分の目が青く輝くのがわかる。
あらゆる理不尽に対する勇気を纒い、過去の王たちの執念を重圧に変えて、相手に畏怖させること。
今はそれだけを考えて行動する。
全ては、最愛の人を守る為に。
「貴方方、人の連れに何してるんだ?」
「晴人……君?」
「あ? お前あれだろ。嫌われ者の晴人君だろ? 黙ってどっか行けよ弱虫」
どうやら、同じ学校の奴らしい。
そんなのは関係ない。
こいつ等は美鈴に手を出したんだ。
それ相応の報いを。
「二度は言わない。今すぐここから消えろ!」
貯めておいた重圧を一気に相手に与え、畏怖させる。
相手は怖気づいたのか、涙目になりながら呻き、何処かへ行ってしまった。
もしもこれで美鈴に嫌われてしまったらと思うと、立ち直れなくなるかもしれないが、自己満足を押し通した結果と捉えるべきだろう、。
俺がそんな風に考えを巡らせている刹那、美鈴が俺の胸の中に飛び込んできた。
美鈴の目には涙があり、体が震えているのが分かる。
やっぱり怖がらせてしまったのかと落胆しようとした時だった。
「助けてくれて、ありがとう。怖かった。本当に怖かったよぉ!」
「……大事にならならくて良かった」
美鈴の抱きしめる力が強くなり、より一層体が密着する。
不思議とやましい気持ちにはならず、美鈴が近くに、そばにいることに安心さえする。
だからこそ、今ここで言わなくちゃいけない。
数秒後、花火が打ち上がる。
その時に合わせる為に前置きをしなければ。
「美鈴、話があるんだ」
「んっ……何? 大事な話?」
「とても大事な話だよ」
美鈴は涙を拭き、顔だけをこちらに向ける。
美鈴には涙の跡や、夏の暑さのせいか頬がほのかに朱色に染まっている。
「俺は美鈴が好きだ。いや、愛してる。だから、俺のそばにいてほしい」
キザっていると言われればそれまでだが、これが一番だと思った。
タイミングを見計らうように花火が打ち上がる。
その花火は赤と青の二色で彩られ、大きな花を咲かせる。
美鈴は僕の言葉を聴いて、頬を更に朱色に染めて俺の耳元で囁くように答えを言ってくれた。
「私も、晴人君を愛してます。私をずっと、いつまでもそばに置いてください」
美鈴はそのまま口を俺に近づけ、その距離がゼロになる。
さよなら、過去の仮面を被った自分。
お前がいたからこそ、今の俺がいる。
俺と美鈴のキスは数回に及んだ。
■ ■ ■
「何があったか知らないけどおめでとう」
乙姫を代表にして、みんなが祝福をしてくれた。
あの後、俺は美鈴と恋人関係になることを報告した。
なるべく隠し事はしたくなかったからだ。
乙姫達が友人で、仲間で良かったとほんとに思う。
続
ついに二人が付き合うことになりました!
が、しかし、ここでは終わりません!
ラストエンドまでしっかり持っていきたいと思います!




