第三話:力は心を壊す
「いばらの間にまかれたもの、これはみ言葉を聞きますが、この事物の体制の思い煩いや富の欺きの力がみ言葉をふさぐ人のことであり、その人は実らなくなります。」 マタイの福音書13章22節
東京某所 ???ルーム
「お帰り、被験体との接触ご苦労だった」
「えぇ、あなたも所長勤務ご苦労様」
そこには、白衣を着た男と制服姿の少女がいた。見た感じは親子と取れてもおかしくはないが、少女はぶっきらぼうであり、白衣の男は少女には興味が無いと言わんばかりに目を合わせない。親子とは程遠い冷め切った関係だった。
「それで、いつ被験体は回収できる?」
「それは永遠に無理ね」
「それはどういうことだ」
少女はカバンの中からエル字型の物体を取り出し、白衣の男に向けた。白衣の男は焦りを見せて立ち上がる。少女は物体を向けたまま白衣の男に近づき、男が最後に聞く言葉を放った。
「彼らはあたしたち『異質な物質』が保護する!」
その言葉を最後に、白衣の男は倒れた。彼はただ、深い眠りについたのである。少女の目には金色が宿っていたが、その心は虚無に支配されていた。彼女は男を一瞥するとすぐに部屋を出る準備をして家を出た。彼女の手には大きなスーツケースと聖書があった。
◆ ◆ ◆
「今日からみんなで住もう」
そう言いだしたのは青﨑 乙姫だ。確かに、衣食住を共にすることで組織の内部強化にはなるだろう。しかし――男女一緒にか!?
「それって、男女一緒なの?」
僕の考えを先読みするかのように聞いたのは、愛しの妹の水書 智美だ。しかし、なぜそこが気になったのかはこの後問いただそう。誰かの入れ知恵ならそいつを見つけて〇〇してやる。
「嫌なら男女別にすることも出来るけど……」
「私は晴人君と一緒に住みたいから男女一緒がいいな」
……今すごくヤバイ内容が聞こえた気がする。しかも、それを言っているのが岩代 美鈴さんじゃないか!
「美鈴ちゃんは晴人のことラブだよね~。こういう意見があるけど、みんないいかな?」
「私も兄さんと過ごせるなら!」
どうもノリノリなのが三人いる。いや、若干喜んでいる男子福島 麟弥もいるので実質四人だろう。状況をつかめない僕と呆れているもう一人の女子小日向 奈緒がこちらに来て座る。
「なんか、大変なことになりそうだね……」
「そうだね……」
結局、男女共生になり引っ越しの準備をし始めるため各々の家に帰ることになった。といっても、僕と智美は既に自宅だけど。
僕は父達の部屋に行き、本を読んでた。自分の力について何かわかるかもしれないからだ。とある本が僕の目を引いた。
「皇帝ネロ・クラウディウスの威光……?」
パラパラとめくり始めると、ある言葉にマーカーがされていた。
力あるものは権威に貪欲になっていく。欲にまみれれば次第に信頼はなくなり、いつしか糾弾されることだろう。力とは、間接的に心を、そして体と信頼に至るまで壊してしまう。
すごく気になってしまう言葉だった。しかし、この時の僕に未来の僕は感謝しよう。この言葉があるから、僕はまだ生きている。
続
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