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嫌われ者の僕に彼女ができました。  作者: 須道 亜門
嫌われ者とデレデレ妹
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第五話:嫌われ者は知る

 妹の晩御飯が食卓に並び、食欲を刺激する。目の前にあるのは妹の得意料理であり、僕の大好物である我が家の特製肉じゃがである。我が家では、日によって料理の味が微妙に変わる。理由は、妹が隠し味を毎回変えるからだ。前回は醤油が違うって言ってたな……。今回は何が違うのか楽しみだ。


「いただきます!」


 箸を取り、肉じゃがに手を付ける。形は崩れず、色も良い。見た目は最高だ。


「見た目は良いな」


「えへへ~頑張ったんだよ?」


 智美(さとみ)は嬉しそうに答える。しかし、形が崩れないということは、中まで味がしみ込んでないかもしれない。それに今回は何を入れたのか分からないのでそこの心配もある。


「でも味はどうかな?」


「味も大丈夫だよ! ちゃんと味見もしたから!」


 妹の返答を聞き、味には心配ないことを確認した。ジャガイモを一口食べる……。こ、これは――!


「味が中までしみ込んでる!?」


「でしょ!」


 不思議だ。形も崩れず、中に味がしみ込んでいる。そして、その味も辛すぎず、甘すぎず。丁度良い美味しさが口の中に広がる。しかし、味がしみ込んでいるのに形が崩れないのが謎だ。


「兄さん、今回の隠し味は分かった?」


 智美が当ててほしそうにこちらを見ている。隠し味は分かった。しかし、形が崩れないのがやはりわからない。


「肉じゃがの味の中に鰹節と昆布の風味があるからダシをブレンドしたのは分かるが、形が崩れないのがわからないな」


「お、ダシを当てるなんてさすが兄さんだね! 形が崩れないのは水を使ってないからだよ!」


 水を使ってないだと……!?


「ダシ以外は全部野菜の水分を使って蒸らすように作るの! 焦げないようにずっと見てなくちゃいけないんだけどね」


 えへへ~っと言いながら説明する智美はどこか楽しそうだった。しかし、こんなの作って胃袋掴まれてると居なくなってからが大変そうだ……。


 ◇ ◇ ◇


 晩御飯を食べ終わり、食休みをして、妹のそろそろいこ? の一言に誘われ両親の部屋の前に立つ。両親の部屋にはオートロックが掛かっており、パスワードを入力しないと開かない。パスワードは八桁の番号を入力するのだが、僕には何もヒントが無いためパスワードが解読できない。


「ちょっと待っててね」


 智美が何かノートを取り出すと、番号を入力し始めた。入力が終わり、表示されていた番号は、


 零 六 零 九 一 零 三 零


 僕たちの誕生日だった。しかし、そんな安直なものなのか?


「実は、パパの名札の裏にパスワードが書いてあったの。パパは名札を外さない人だったから書いてあったんじゃないかな?」


 智美の推理に僕は納得がいく。智美は名前の通り、頭は良く姿は中学生と思えないような美貌を持っている。その頭の良さは、研究者であった両親の血を受け継いでいて、何より推理することが大好きな妹である。兄である僕が言うのもあれだが、現代のシャーロックホームズといっても過言ではないと思う。そうなると、僕はさしずめワトソンと言ったところか。


 智美がエンターキーを押すとオープンの文字が電子音と共に表示され、ロックの解除音が聞こえた。智美は躊躇なくドアを開ける。両親の部屋の中は……。


『パソコンと書類があるだけの書斎のような部屋だった』


 書斎、まさにその一言に尽きる。壁には一面の本棚。二つあるテーブルにはパソコンと数百枚はありそうな書類の束。ベッドなどはなく、仕事をするためにあるような部屋だった。


「じゃあ、兄さんはパパのテーブル付近を調べてね! 私はママのテーブル付近を調べるから!」


 言いながら智美は母さんのものと思われるテーブルに向かっていった。ならば、僕も探してみるとするか。


 二時間後……


 僕の結果は収穫なし。周りも見てみたが特に何もなかった。諦めて智美の方へ向かおうとしたその時、足元にあった本につまずき転んでしまった。しかし、転んだ視線の先にあるのはテーブルの下に隠すように置かれていたファイルだった。


 智美に見せる前に自分で見てみよう。もしかしたら何も関係が無いかもしれないのだから。その時、僕は油断していた。このファイルは開くべきでなかった。ファイルの中に入っていたのは……。


 ()()()()()()()()()


 親の欄にはいつもの父親の名前。しかし、子どもの欄には見慣れない名前が載っていた。その養子縁組届の下には、『側頭葉及び海馬の仕組みの実験と解説、及び実験の副作用』と載っていた。中身を見るとそこには現実とは思えないことが書いてあった。

 人間の人格を、他人に移すことで人間のコピーを作ることができること。国家の権力を行使して全国の孤児院の子供たちの中から適正コードが高い子供を集め、脳に別の人間を移植する実験。どうやら子供は二十人集められたらしい。成功個体は三人。つまりこの実験は三人しか成功しなかった。そして、成功個体には副産物として目に異常が起こり、()()()()()()()()()()()目覚めている。成功個体はそれぞれ、植え付けられた人格の親に引き取られた。それぞれの成功個体は……。


 ・水書 晴人(旧:佐藤 勇太)


 ・岩代 美鈴(旧:鈴木 蘭 )


 ・青崎 乙姫(旧:田中 美琴)


 ……嘘だ。俺は両親の子だ。こんなこと、ありえない。


 * * *


 探し始めて二時間。何も収穫が無く残念に思っている。兄さんの方は何か見つかったかな?


「兄さん、何かみつ……」


 言いかけて私ははっとした。兄さんが震えている。手に持っているのは……ファイル? 兄さんの横には見慣れない養子縁組届もあり。私の中で状況が混沌としていた。兄さんの手からファイルを取ってみてみると……そこには衝撃与えるには十分な内容があった。養子縁組届の名前と照らし合わせると、兄さんの旧名と一致する。つまり。


「兄さんは、血がつながってない……」


 私は、心底ヒトという生き物を嫌いになった。これが黒い何かの正体。そして、知りたくなかった事実。

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