第一話:嫌われ者と妹
僕はあの日から、本当の意味で一人になった。
頼れる友人も、好きな人も。
そして、人としての感情も。
何もかもが無くなった。
僕はどうやって笑ってたんだろう?
どうやって悲しんでいたんだろう?
考えても考えても、その答えは出てこない。
あの日、僕がすべてを失ったあの日。
あの日についても記憶があやふやだ。
なぜ怒っていたのか。
なぜ、怒った相手を思い出せないのか。
なぜ……思い出そうとすると頭が痛くなるのか。
……相手を覚えてないのは、覚える必要のない相手だからだろう。
怒ったのもきっと僕を怒らせたからだろう。
そうやって納得するしかない。
思い出せないなら、納得すればいい。
そう思いながら、僕は自宅への帰路についた。
家に着き、玄関をくぐる。
「ただいま」
「おかえりなさい。兄さん」
リビングから顔をだして声をかけたのは、妹の水書智美だ。
「もう帰ってたのか。早いな」
「部活を引退したから。今日からは私がご飯作るよ」
「そうか、じゃあご飯は任せるよ。荷物、置いてくる」
智美は分かったと言ってキッチンに入って行った。
ひとまず、自室に向かう。
ご飯ができるまで自室で昼寝でもしよう。
そう考えた僕は荷物を置き、ベッドに飛び込むと沈んでいくように眠りについた。
* * *
兄さんが自室に入る音がする。
私は、それを確認すると料理の準備を始めた。
ここ最近、兄さんの表情から笑顔がなくなった。
全ては一週間前に遡る……。
私はその日、部活が早く終わったので兄さんよりも早く帰ってきた。
兄さんから晩御飯は入らない、と連絡があったので私はご飯を軽く済ませて、兄さんから借りたゲームをやっていた。
しばらくすると、玄関の鍵が開いてドアを引く音がした。
玄関まで行くと兄さんが立っていた。
いつもの兄さんらしくないことに気づいた私は、ひとまずリビングに兄さんを連れて行った。
その時の兄さんは両の目が蒼く輝いていた。
その目は、兄さんを怒らせた証。
テーブルで向かい合う兄さんから事の顛末を聞き出した。
全てを聞いた私の心は、怒りと呆れに染まっていた。
兄さんを怒らせた小日向という女も、麟弥さんも、みんなバカだ。
兄さんを理解できるのは、心の支えになれるのは私しかいない。
そう感じたのだ。
◇ ◇ ◇
今思い出しても腹が立つ。
……こんなことではダメだ。
私は冷静さを取り戻しつつ、料理を続ける。
そんな時、インターホンが鳴った。
モニターを見てみると、そこには女子高生が映っていた。
私はなるべく警戒心を見せないように出る。
「どちら様ですか?」
『私、岩代美鈴といいます。晴斗君のお宅ですか?』
本日より第二部スタートです。
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