第2話 盗賊のゴンゾウ
「なあ。いつまでも歩くんだ?」
俺達は、森の中をずっと歩いていた。たぶん、3、4時間ぶっ通しで歩いている。体力は減らなくても、精神的にキツい・・・・・・
『やっと半分くらいだよ。頑張ってね~』
お前・・・・自分が歩かないからって客観的だな。
はあ、どこかで休憩したいな~。
こんな感じでずっと愚痴りながら歩いていると、いきなりミルルが話し出す。
『15メートル先に生命反応確認~。魔素からすると、ブラックドックかな~』
「魔素で分かるのか?」
『そうだよー。魔物の大体は体から魔素が溢れ出てるんだよ。まあ、魔素出来てるから当たり前なんだけどね?それで、魔物によって発散される魔素が違うんだよ。ブラックドックは闇と少しの地属性が混ざってるんだよね~』
「なるほどな」
そんな事を話していると、いきなり茂みから飛び出す。それは真っ黒で異様な雰囲気をかもしだす犬だ。魔物はあんまり見たことが無いけどこんな感じなんだな。
『どうする?私が倒してもいいけど?』
「いや、良いよ。10年間の修行の成果を見せてやる」
そして、背中から大剣を取り出す。今までずっと握ってきた剣の柄。ある程度の重さがしっくりくる。
その瞬間、ブラックドックが飛び出す。それをしっかりと見極めて、技を繰り出す。
「白夜天山第8ノ門・・・輪円!」
その瞬間、ブラックドックの体から血が吹き出す。
この技は、剣の重みを活かして、遠心力で大剣を振り回す技だ。
『うん!なかなかいいね!流石は私の弟子だ!』
「ミルルってなんでこんな技が使えるんだ?こんな和な感じで」
『えっとね。私のおじいちゃんがこういう技の達人みたいでね~。確か、イフくんと同じ所の転生者だったらしいから、その影響なんじゃない?』
「ふうん。そうか。それから、ブラックドックの死体はどうするんだ?」
『魂の抜けた魔物の死体は魔素に分解されるから処理はしなくていいんだよ』
なるほどな、と返事をして、再び街を目指す。
すると、またまたミルルが言い出す。
『おっ?右方向2百メートル先に何個かの生命反応があるね。こんな森の中に住んでる人なんて変わり者だね』
「その変わり者の中に俺も入るんだけどな」
そして、その方向へと走り出す。スルーしてもいいが、少し気になるから行ってみよう。お金とかも欲しいしな。
そして、その場所に近づくと、何か見える。
さらに近づくと、小さな山の側面に穴が掘ってあり、その前には人が立っている。右手には剣を持っていて、周りをキョロキョロしている。
「ごめんくださーい・・・・・・。あのー、ここは何でしょうか」
と、門番のような男に聞くと
「ん?なんだ?女の子供が近づいたらいけないところだぞ。ここは盗賊ゴンゾウ様が制する森なんだ!」
女じゃないんだがな・・・・・・。それより盗賊だと?それは金を持っていそうだな・・・・・・。
『イフくん。顔が怖いよ~』
何かミルルが言っているが、それを聞き流して、男に話しかける。
「そのゴンゾウ様に合わせていただけないでしょうか」
「あ?・・・・・・女ならまあいいか」
そう言うと、後ろの洞窟の中に入ってさけぶ。
「ゴンゾウ様ーー!!なんか、女が用があるらしいんですけど」
そして、男が声をかけてしばらくすると、
ズン ズン
と地面が揺れる。そして、暗い洞窟から巨大な人影が左右に揺れながら、ゆっくりと出てくる・・・・・・・・・・・・
♢
「ゴンゾウ様ーー!!なんか、女のガキが用があるらしいんですけど」
そんな子分の声を聞いて目を覚ます。最近は子分たちが全てやってくれているので暇なのだ。
しかし、女のガキだと?
そして、ゆっくりと起き上がり、少しビビらせるように洞窟から出る。今の身長は2m40cmくらいか。
すると、洞窟の前にいたのはちょこんと立って、俺を見て驚いている子供がいる。
「なんだ?てめえは。俺様になんのようだ」
少し優しめで聞く。なかなか顔は良いから後で色々やれるかもしれんしな。
「お金が無い。貸してくれ。あと街のこととか教えてくれ」
その瞬間、一気に頭に血が上る。
ガキのくせに俺に金を貸せだと?
下手に出りゃいい気になりやがって
「あぁ?お前俺をなめてるのか?俺はこの近隣の森を制するゴンゾウ様だぞ?その俺にタメ口で金を貸せとはいい度胸じゃねえか!」
「うーんと。タメ口はすいませんでした。あと、お金はあるんですか?」
「あたりめえだろ!ここらじゃ有名な山賊なんだから金くらい大量にありゃあ。・・・・・・そうだな。お前の背中に背負ってる剣。なかなかのしろもんじゃねえか?戦えるんだろ?」
「まあ少しだけどな」
「なら、話は速い。俺が勝ったらお前に金をくれてやる。だが、お前が負けたらその剣と今日1日俺に付き合ってもらうぜ。グヘッヘッヘ」
「ああ。それならいいぞ。じゃあさっさとやるぞ」
「・・・・・・後悔するなよ?」
クソ。調子が狂うな。ここまで脅してビビらねえ奴は久しぶりだな。
すると、女は背中からスラリと剣を抜く。あんな大剣見たことねえ。かなりの魔力量を秘めていやがる。
魔力を持つ剣なんて滅多に手に入るもんじゃないからな。
「なあ、早く来いよ」
そう言って女は片手で大剣を振り回す。
それを観て少し冷静になる。あんな大剣を振り回すほどの力の持ち主なのか?体は細いのにどこに筋肉があるんだ?
一息はいて、俺も剣を抜く。
俺の剣『ガルザン』。剣先が反り上がった珍しい剣だ。しかも魔力を魂持ちの魔力持ち。
「ああ。今やってやるよぉっ!」
その瞬間に思いっきり土を蹴りあげる。大抵の敵は俺の巨体の見た目の先入観で鈍足だと思うが、それは甘い。この巨体は、ユニークスキル『巨大化』。体は大きくなるが、体重は変わらずに素早く動けて力も上がる。これを受け止められるやつはいねえ。剣で受け止めても剣ごと切り裂く最強のコンビだ。
ガギンッ
・・・・・・・・・・・・なに?!なんだこいつは!!
平手で受け止めやがった!!!
力いっぱい降り掛かった剣はそのまま一直線にイフリスの元に行った。そこまでは良かったのだが、イフリスは片手で受け止めたのだ。
イフリスは少し痛そうにして手を振っているが、ゴンゾウにはそんなもの目に入らなかった。
自分の力に絶対的な自身のあったゴンゾウにとって、人生で一番衝撃的なことだった。
「おい貴様!!どうやって止めやがった!!」
思わず叫ぶと
「あ?ただ手に魔力を纏って止めただけだけど?それよりお前強いな。剣で受けとめてこっちがダメージ受けたなんて久しぶりだぞ」
「いやいやいやいや、ありえないでしょう!?こっちは魂持ちの魔力持ちなんですよぉ?!素手で受け止めるなんて尋常じゃない魔力が無いと使えないでしょう!」
何故か敬語になってしまってることにも気づかずにまくし立てる。
だが、実際ゴンゾウが言っていることは本当だ。
まず、魂持ちとは、剣が魂を持っていることを指すのだ。物は魂を持つと、意識が宿る。喋りはしないが、所有者の経験度によって懐いたりして、威力が上がる。ゴンゾウ20年間使ってきた剣なので、懐きはかなりのものだ。
しかも魔力持ちだ。魂持ちの剣の一部が手にする能力で、剣に常に魔力を纏えるという能力だ。魔力をまとわせることは、かなりの魔術師しか出来ない。しかし、剣を使う戦士がそこまで魔法を極められることもなかなかない。
今の魔力変換は「力」。単純に威力を上げる魔力だが、その威力は絶大だ。
そんなものを手で受け止められるほどの魔力を手のひらに纏うなど、帝国魔導師級でもできない事だ。
「出来るんだから出来るんだ。教えて欲しいなら教えるぞ?」
こんな事を簡単にやり遂げるこの女。
それにゴンゾウは惚れ込んだ。
「姉貴!俺は姉貴に負けました!その凄まじい力に惚れました!是非!弟子にして頂きたい!!」
「いや、女じゃなくて俺は男だぞ?」
「へ?そんな顔で?」
「うん」
「そんな体で?」
「別に胸なんてないだろ?」
「・・・・・・・・・・・・なら兄貴ですね!お願いします!弟子にしてください!」
そして、そんなこんなでイフリスにゴンゾウという弟子が出来た。
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もう一本投稿します。




