勇者補正とは
「なあ、シロア。女神ってどれくらいの力を持っているんだ?」
今歩いているのは、辺り一面が生い茂っている大平原。さっきから度々、定型文の挨拶をして通りすぎていく商人を見かける。ゲームの世界にいるって本当のことなんだなぁ……。
「まあ、正しくいうとこの世界に入った地点で、既に女神では無くなっているんだけどね。その証拠に女神の時に使えた力のほとんどは使えなくなっている。今の立場は君達勇者と同じだよ。」
「えっ?じゃあ女神特有のチート魔術は……」
「使えなくはないけど莫大な魔力と時間を使わないといけない。負担なく撃てるとしたら、元の10000分の1位だろうね。」
「楽して英雄になれると思ったのに……。」
「ちなみにステータスも大幅に下がっている。君の妹と今の私では、戦いどころか遊び相手にもならないだろうね。まあその妹さんは現在、魔物を吸収しまくって手がつけられないことに成っているだろうけど……。」
「もしかして……そこらの魔物にボコられちゃうレベルか?」
「流石にそれはないよ。比べる相手が魔王だから駄目なんだ。」
「一体綾香のやつどれだけつえーんだよ……。」
「おっ?丁度私の強さを確かめられるやつが出てきたな。」
さっきまで魔物が出てこなかったため、この世界に来て初めての魔物との対面だ。シロアは嬉々とした表情をしている。弱体化しているとはいえ力を見せつけられるのが嬉しいのだろう。
「さあーって、どんな奴が出てきたんか……な………………。シロア。これは明らかにゲームオーバールートじゃないか……?こんないかにもなやつ全然求めて無かったんだけど……。」
目の前に表れた魔物は、全身が黒色の毛で覆われていて、体中からナイフのような刃物を生やしている。まるでサーベルタイガーのような魔物だった。まあ、サーベルタイガーっていっても全長10メートルくらいあるけど……。
「シロアさん。シロアさん。この子明らかに食べ物を見るような目でこちらを見てるんだけど。口から滝のようによだれをこぼしてるんだけど……。」
「まあ、そりぁそうだろうね。こいつはソードライガーって言って、この辺の王者のようなものだから。熟練の王国騎士でも負けることがざらにあるっていうしね♪普通にゲームをプレイしている人達は死んでも復活が出来るでしょ?だから序盤の負けイベントのような役割を担っているみたい。」
「まだ死にたくない、まだ死にたくない、まだ死にたくない。まだ死にたくない、まだ死にたくない、まだ死にたくない……。お父さん、お母さん。僕は異世界に骨を埋めることになりそうです。今までありがとうございました。さよえなら。」
俺はまともな神器を貰えず、手元には使い方のわからない指輪がある。戦闘に出るなんてもっての他だ。今の俺はその辺にいる雑魚敵を倒すだけの力も持っていない。つまり、シロアに頼むしかないのだが……。本人からの前評判が前評判だ。全く勝てる気がしない。俺はすでにグロッキーになりつつあった。
「落ち着けよ、俊。これくらいの相手にビビってちゃあ妹と顔も会わせられないよ?それに、私ならこいつくらい、一瞬で倒せるよ。」
そう言うとシロアは手を前に出して何やらブツブツと話し出す。
そんなシロアを見て、チャンス到来したと言わんばかりに、凄い勢いでソードライガーが突っ込んできた。目にも止まらぬ速さとはまさにこのこと。一瞬で俺達とソードライガーの間合いが0になる。
「もう、終わりだ……。」
ソードライガーは前足を大きく振り上げ、シロアめがけて一直線に降り下ろす!
「シロアーーッッ!!早く逃げろーーー!!」
引かない姿勢を取っているシロアの姿を見て、耐えられなくなり咄嗟に目を閉じる……。
どれくらい経っただろう。1秒だったかもしれないし1分以上瞑っていたかもしれない。体感時間は1時間ほどに感じられたが………。
凄惨な光景を見まいと閉じていた目をゆっくりと開ける。するとそこには、満面な笑みでソードライガーの体を指差すシロアが写っていた。
「どう?すごいでしょ。」
「ごめん。途中から怖くて目を閉じてた。」
「なんでーーーーー!!!まっ、元引きこもりなんだし仕方無いか。倒すところを見てなくても、そこに転がっている虎が私の強さを示してくれるしね。」
ソードライガーは体から蒸気をだし倒れている。火の魔術でも食らったんだろう。
「さっ、良い時間になってきたしご飯にしようか?」
「こいつを食べるのか……?そもそも食べられるのか?」
「その為に火の魔術を使ったんだよ?安心して。ちゃんと火は通ってるし、歯応えはあれかもしれないけど十分美味しいよ。」
腹が減っていたし、断る理由も無かったためソードライガーを頂くことにした。
「あれ?結構うまいな。」
「でしょ?」
初めて食べる魔物肉に感動しつつ気になることを切り出してみた。
「なあ、シロア。他の神器を取り出すことって出来ないか?シロアが強いことはわかったけど流石に戦闘全部を任せるわけにはいけないだろ?」
シロアは何にもないような淡々とした返事で答える。
「出来ないよ。だってもう女神じゃないもん。」
女神の力を手放しているため、神器を出すことは出来ないようだ。
「俊が戦えるようになるためには勇者としての補正に全力で頼るしかないね。まあ、その補正もまちまちだから頼りにならないかもしれないし、化け物みたいに強くなるかもしれない。」
「いずれ綾香を倒さなきゃいけないんだ。このままじゃ何時までたっても倒せない……。」
「まあまあ、そう焦るなって。そう言うと思ってダンジョンに向かっているんだぞ?レベル上げは大事だからね。」
「町に向かってるって行ってなかったっけ……?」
「怖じ気づくと思ってねーー。」
「怖くねーし!むしろ力が解放されるかもしれないっていう期待の方が大きいし!!」
「体がガタガタ震えてるよーー♪」
「シロアが助けてくれるならなんも怖くないし。」
「その発言、男としてどうなの……。」
「そう言えば勇者補正って結局のところどんなものなんだ?」
「あれ?まだ言ってなかったっけ?勇者補正っていうのは……」
割愛!こいつ相変わらず説明するのが下手くそだな!
まとめると、勇者は他のプレイヤーと違い能力値の伸びが尋常じゃないらしい。しかし、勇者の中でもその質はピンキリで、他のプレイヤーよりも伸びないやつとかもいるらしい。それと、スキルの習得が早いとかもあるとか……。以上、まとめ終わり!
結局こいつ、これだけの説明に1時間近く費やしやがった……。
「だから効率良くレベル上げをするためにダンジョンに行く……と。」
「それだけじゃないよ。なにしろそのダンジョンには、見たことがない財宝やら宝具があちこちに眠っているっていう噂があってね!」
「それもゲーム制作の人たちが作ったのか?」
「それがね。前代魔王が暴れてから色々と異変が起きていて、ゲームの世界が成長しているみたいなんだ。つまり、この世界はもう作られた世界じゃないってこと。君達が過ごしていた世界の様に、NPCとかも意思を持ち始めている。もはや、プレイヤーの方がイレギュラーな存在になりつつあるのさ。」
「ってことはその宝の山の中に神器が眠ってるかもしれないってことだな!!」
「そうゆうこと!」
「わかった!行ってやろうじゃないか、ダンジョンに!」
こうしてソードライガーを食べ終えた俊達はダンジョンに向かうのだった。
下手な文章ですいません。小説カクノムズカシイ。おかしなところや、読みづらいところは指摘して欲しいです。他に書いている小説も同様に支離滅裂なところを考えると本当に文章力がないんだな……。
次の投稿もいつもどおり不定期です。すいません。