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機械仕掛けと護衛の王  作者: 杉下 徹
一章  最強
9/67

1-8

 先手を取ったのは、俺のつもりだった。

 奇襲用に背後で長く伸ばしていた従器を、最大限の高速機動に腕の勢い、更に踏み込みの速度を加えて突き出す。間合いを一気に詰める刺突は、しかし同じく距離を詰めようと前進したヒースの前、盾のように広がった従器の面に受け止められた。

 直撃の寸前で勢いを緩めていた従器を、後方に跳ねながら一般的な槍ほどの長さに縮める。従器の形状変化は自在だが、鋭利になればなるほど当然ながら物理的強度は下がる。

 ヒースは刺突にわずかに勢いを削がれたものの、従器を剣の形に戻しながら更にこちらに詰め寄ってくる。その足元を抉るように、射程で勝る俺の従器が突きを放つと、やっとヒースは一歩だけ後退した。

 そして、その隙を突いて、一気に攻勢に転じる。伸ばした部位を戻しながら、こちらの従器も剣を形作り、踏み込みと共に真っ直ぐに振り下ろす。対するヒースは振り上げた従器で迎撃するも、競り勝ったのは俺の方だった。

「……? ……っ」

 俺の従器を寸前で横に避けたヒースは、そのまま身体を一回転させ、ハンマー投げの要領で横薙ぎの打撃を振るう。先端に重心を寄せて歪となっていたヒースの従器を、俺は下がっていた従器を振り上げて弾く。勢いでは俺の従器に勝っていたものの、角度をずらされたヒースの従器は軌道を変え、俺の身体から逸れていく。

 互いに体勢を崩した隙に、従器から離した左手でヒースの胸部に掌底を加え、再び距離を取る。

「……ッ!」

 束の間の平穏は、しかし一瞬で終わった。

 ヒースの前傾姿勢の突進が、開いた距離を瞬く間に詰めていた。同時に俺の太腿へと突き出された従器は、左前方へと跳ねて避ける。

「……沈め」

 刺突は、完全に避けた。

 だが、それはあくまで第一撃に過ぎなかった。前方へ突きを放っていたヒースの剣状の従器、その柄尻が奇妙に伸び、本来の刃と反対の位置に第二の刃を形作る。

 交差する瞬間、背後の俺を見ずに、ヒースの引き突きが放たれた。位置は完璧、タイミングも絶妙、俺の如何なる防御も攻撃もその一撃には間に合わない。

 しかし、その状況は俺の敗北を意味しない。

「まぁ、なんて言うか、惜しかったな」

 ヒースの突きは、従器を床に弾いた反動で横に飛んだ俺の脇を擦り抜けて行き、完全に背を晒していたヒースにはそれに続いた反撃への対処法は存在しなかった。

 結果、怠慢にヒースの背を突いた俺の従器、そこに取り付けられた安全装置のけたたましい音が、模擬戦の終了、俺の勝利を告げていた。

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