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機械仕掛けと護衛の王  作者: 杉下 徹
一章  最強
8/67

1-7

会場は第一訓練場。

 これは学年の人数の半分の数ある模擬戦の初戦、その全てにおいて同じであり、初戦に限ってはその気になれば学年の全ての模擬戦を観戦する事が出来るという、エンターテイメント性にも配慮したような仕様になっている。実際のところは、模擬戦から情報を分析する能力、その対策までを実力に含めて順位とするためなのだろうが。

 ただ、その仕様上、初戦の中でも第一戦であり、おそらく注目度としても一番高いであろう暫定順位一位のヒースと二位の俺の模擬戦には、学年のほとんどが見物に押し寄せて来てしまっていた。戦う張本人としては、観客の多さが緊張を煽るようでどうかと思わないでもない。

「頑張れよ、シモン! お前だけが頼りだ!」

「俺は20000賭けてんだ、負けんなよ!」

「いけ好かないヒースの野郎を半殺しにしちまえ!」

 方々からの俺への声援は、そのほとんど、というより聞き取れる限りでは全てが男の声で。と言うか、教師もいる中で賭けの話をするなと。

「がんばってー、ワイアードくん!」

「俺は30000も賭けてんだ、負けんなよ!」

「キャー、ヒースくん、ヒースくん!」

 対するヒース側の声援は女子からの甲高い声が多い辺りも、若干俺の戦意を削いでくれる。もはや、あえて賭けの話には触れまい。

「逃げずに良く来たね」

「いや、これ一応は授業の一環だし。逃げるってつまりサボりだからな」

「サボらずに良く来たね」

「優等生にふさわしい台詞だ」

 訓練場の中央、向かい合ったヒースと言葉を交わす。流石のヒースも少しは緊張しているのか、やりとりがどこかずれている。

「さて、じゃあ離れるか」

「そうだね、離れよう」

 これから行うのは、試合ではなく模擬戦だ。ゆえに、反則行為などはなく、舞台は競技場の全て、それも至るところに壁や杭などの障害物が設置されている。開始の合図も規定の三分の間いつ鳴るかはわからず、それまでは互いに有利な位置取りを探す事が可能だ。

「……どうやっても無駄か」

 少しの間、良さそうな場所を探してみたものの、どうも上方に位置する観覧席から隠れられるような障害物の配置にはなっていない。せめてノヴァ辺りからだけでも見えないようにしようとしても、やはり上手くはいかない。

「隠れるつもりはないみたいだね」

「頑張ってはみたんだけどな」

 おそらく意味は伝わらないだろうが、ヒースの問いに言葉を返す。あちらも、少なくとも俺からは姿を隠すつもりはないらしい。

「小細工を弄して勝っても、君に敗北感を――」

 ヒースの的を外れた言葉は、鋭く鳴り響いた機械音に掻き消される。

 模擬戦が、始まったのだ。

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