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機械仕掛けと護衛の王  作者: 杉下 徹
終章  凡俗
64/67

5-6

 カウス従器工場の専属従者達への見舞いは、ごく簡潔に終わった。そもそも監督係のリーディアさんを除けば、俺達と専属従者の方々の繋がりは顔合わせを済ませた程度でしかない。更にその上、その場にいた三人が三人共ノーラを意識しているのがわかり、長居するのもかえって悪く感じられたというわけで。

「どうする? 工場に戻るか?」

 オルゴの提案に、皆がそれぞれに曖昧に頷きを返す。

 実際のところ、今の俺達は絶妙に微妙な立場だ。工場に戻ってもする事があるわけでもなし、むしろ邪魔だろう事を思うと、積極的にその選択肢を選びたいとも思わない。

「ちょっと、歩いてきてもいいか?」

 ふと、考えが頭をよぎった。

「歩いてって……ああ、まぁ、別に今なんかは自由行動でいいか」

 察した様子でオルゴとチャイを引き連れ離れていくクライフの推測は、ありがたいがおそらく今は少しだけ違う。

「じゃあ、ちょっと行ってくる。この後すぐ、用事があったりしないだろ?」

「うん、まだしばらくはシモンと一緒にいるつもりだけど……」

「それなら、工場に行くなりそこらで待つなり好きにしててくれ」

 今後の確認を取ってから、ノーラとも別れて病院の中を一人で歩き出す。先程まで来た方へ戻るだけなので、道に迷う事は無い。

「……来るかも、と思ってた」

「そうですか」

 待ち構えるように病室の前に立っていたのは、目当ての人物、インディゴさんだった。

「謝罪のつもりなら、要らないから。あなたに謝られても……いや、誰に謝られても、むしろ惨めになるだけ」

「はい、わかってます」

 ピクリ、とインディゴさんの眉が跳ねる。

「怒っているわけじゃない。ただ、焦れているだけなんですよ」

「何を……」

「従器、持ってます?」

 話したい事は、いくつもある。でも、それは同時に話したくない事でもあるから。

「決着、付いてなかったので」

 今は少しだけ、互いに憂さ晴らしをするのが最善だと思った。

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