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機械仕掛けと護衛の王  作者: 杉下 徹
終章  凡俗
63/67

5-5

「後は、インディゴさん達のところに行くか」

 少し沈んでしまった空気を紛らわすように、目的地を声に出してみる。

 昨夜の襲撃で負傷を負ったのは、何もヒースとノヴァだけではない。面の男に意識を飛ばされたのが二人、襲撃の協力者により負傷した者が一人、そしてインディゴさんにリーディアさんと、カウス従器工場の専属従者達は総力戦の末にかなりの被害を受けていた。

 掠り傷だから、と搬送を断ったリーディアさんを除いて、彼ら従者達もこの病院に運び込まれていた。世話になった俺達は、顔を出しておくのが筋だろう。

「それも、シモンの同級生?」

「いや、カウス従器工場の従者の人だな」

「ふーん、まぁいいや、行こっか」

 一瞬、それなら来ない、と言い出すかとも思ったが、どうやらそんな事も無くノーラも着いて来るらしい。

「たしか、そこを下りてすぐのところだな」

 従者の人達は皆それほど重傷ではなく、四人部屋にまとまって入院しているらしい。便利だ、と言うと言葉が悪いが、一部屋に顔を出すだけでいいのはありがたい。

「あっ……インディゴさん?」

 目的の病室に差し掛かろうかというところで、ちょうどその中から出てきたインディゴさんと鉢合わせた。

「あなた達は――」

 俺の声に反応したインディゴさんの声が、いや、それどころか全身の動きが一瞬だけ固まった。

「ノーラ……」

「ああ、私の事はあんまり気にしなくてもいいよ。プライベートだし、シモンとお友達の付き添いみたいなものだから」

 気の抜けたようなインディゴさんの呟きをどう取ったか、ノーラは微笑みを浮かべて軽く手を振った。

「とりあえず、あの人の傷は浅そうで何よりだね」

 そして、続いた言葉は俺へのもの。その時にはすでに、ノーラの目はインディゴさんを完全に視界の外に置いていた。

「……っ!」

 それを引き金に、インディゴさんは一目散にその場を走り去っていく。去り際にわずかに見えた、その表情が意味するものを、俺は嫌になるほど良く知っていた。

「どうかしたのかな?」

 一応は心配している類に入るであろう、呑気そうなノーラの呟きが、今はひどく残酷に感じられた。

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