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機械仕掛けと護衛の王  作者: 杉下 徹
三章  異質
37/67

3-13

最近になって、余計な事を考える時間が増えた。

 余計な事とはつまり、考えてもどうしようもない非建設的な事であり、かと言ってそれ自体に娯楽性のある妄想の類ですらない、漠然とした不安や過去の後悔。

 要するに、俺にとっての余計な事とはノーラ・アトリシアについての事柄に相違ない。

「……そう言えば、通知が来てたな」

 ノヴァの去った自室の隅、適当に置かれた携帯端末に手を伸ばす。昨晩届いていた通知を、今になるまでまだ確認していなかった。

「やっぱり、ノーラからか」

 予想に違わず、差し出し人はノーラで。いつもと変わらない近況報告や、どうでもいいような話が文章として届いているのみだった。毎度毎度、良くもまぁこうして書く事がある、と呆れながらも、口元が自然に笑みの形を浮かべる。

 ノーラ・アトリシアの名は、俺にとっては敗北の象徴だ。だが、それ以上にノーラは無二の友人でもあり、こうして絶やさず連絡をくれる事に対しては喜びの感情が大きい。

 だが、だからこそ、俺はノーラに負けたままではいたくないのだ。親しい友人だからこそ対等でいたいというのは、それほどおかしな理屈ではないだろう。

 返事をしようかと悩むも、特に書く事が思いつかず、そのまま携帯端末をベッドへと放る。寮生活の学生から学校についての事を除くと、ほとんど話題は残らない。

 俺はこれまで、ノーラに学校について話した事はない。それはすでに国家特別王石保持者となったノーラに対する、いまだ従者にすらなれていない学生の俺からの精一杯の強がりであり、例えるなら浪人生がそれを周囲に隠すのと似た、ちっぽけな虚栄心だ。

「……どうするかな」

 俺がノーラに胸を張って会えるのは、自分の事を話せるようになるのはいつになるのだろうか。いや、それは時間的な問題ではなく、俺がノーラと並ぶ、あるいはそれを諦める事ができるまでその時は訪れないのだと、なんとなく理解はしていた。

 強くなりたい。だが、その方法がわからない。

 ひたすらに従器を振って、目に見えて効果があった時期もあった。戦術論を学び、自ら練った時期もあった。従器の機能についての理解を深めようとした事も、その限界を試した事もあった。

 自分で考え得る方法は、全て試した。それでも届かないから、それ以上を求めて俺はこのリニアス高等学園に入学したのに。

「…………」

 考えても仕方のない事が、頭の中を堂々巡りする。最近になって、こんな事が増えてきた。そして、それはきっといい傾向ではないのだろう。



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