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3-5
「戦う? 俺とお前が、か?」
朝の呼び出し通り、放課後になるとチャイはすぐに俺の元へと掛け寄り、そのままこの第三訓練場にまで連れて来られたところで、ようやく用事を口にした。
「他に誰がいるのよ」
「すぐ近くに次の模擬戦があるだろ。その次も、その次も」
「……それじゃあ、遅いのよ」
苦虫を噛み潰したような顔で、チャイは吐き捨てる。
「御託はいいわ。戦うの、戦わないの、どっち?」
「それは、まぁ……」
俺は基本的に自分の手の内を明かすのを良しとはしていない。その観点で言えば、まだ模擬戦での対戦を先に控えたチャイを相手に、ここで下手に力量を図る機会など与えるべきではないのだが。
「……わかった、やろうか」
しかし、結果的に俺はチャイの提案を飲んでいた。
「へぇ、意外に素直じゃない」
「せっかくだからな。ここまで来て無駄足ってのも何だし」
今の俺にとって、チャイと戦う事はむしろ望むところだったから。
「それじゃあ、始めよう」
幸い、今は互いに従器も手元にある。
俺の言葉を合図に、俺とチャイはほぼ同時に構えを取る。それだけで、戦いの準備には事足りた。