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異能者ハンター  作者: 暖雪
異能者ハンター本部 A級編
9/20

凶報

 ライトは、多忙を窮めていた。


 親から引き継いだ、このハンターのトップとしての大きな責任を担う。


去年までは、上層部で父の補佐をしていた、父の後を継ぐ等は、当分先なのだろうと思っていたが、あっさりと父は引退し、息子に託した。

時折顔を見せるが、どこか放浪しているらしく、うんともすんともその事には一切口を一文字に結び開かない。


まだライトは現時点で27歳。


父に教わる事がまだ多かった、と痛感する毎日に溜め息が漏れる。


 米神を押さえ、自分の肩にのし掛かる重圧を少しでも和らげようと、硝子窓から外の景色を見て、物思いに耽る。


 だがそんな静寂は一瞬で破られた。


 部下の一人が慌ただしく、ライトのいる、オフィスの扉を乱暴にノックを繰り返す。


 突然の不愉快なノイズにライトは眉をしかめ、不機嫌に返事をした。


「大変です!!ライトさん!!」


この男は、S級の・・名前はトカルスだったな。


実直で冷製沈着な男だったが、取り乱すとは何が起きたのか・・?


「どうかしたか?」


ライトは自分から扉を開けると、トカルスの顔は顔面蒼白になっていて、酷く混乱しているようだった。


「何があった!?」


トカルスの肩を、がっしりと掴むと体が震えているのが分かった。


幾分、ライトの姿を見て平静に戻ったトカルスは、この絶望的な報せを口にする。


「ハリスが・・収容所から・・姿を消しました・・。私が・・先程気付きました・・」


とても目が合わせられず、トカルスは俯き、言った後も事の重大さに責任を感じていた。


 ライトは衝撃の事実に、硬直した。


「もっ・・申し訳ありませんっっ!!私の管理能力不足です!!」


トカルスは声の限りを挙げ、深々と頭を下げた。


何て事だ・・。

ライトは、トカルスへの言葉は出さず 

自分のデスクに座り、頭を抱えた・・。


 ハリスは父が捕まえた・・。

あっさりと自首して来たと言っていたが気まぐれだったのか・・はたまた目的があったのか・・考えが過るが、憤りしか残らなかった。


「ライト・・さん・・」


トカルスは、弱々しい声を絞り出し、眉が下がり、すがる様に、ライトに近付いてくる。


ライトはトカルスを睨む。


「早急に探しだせ!!そんな情けない顔をしている暇は無い!!絶対に見付けて収容所に戻すんだ!良いな!!」


ライトはトカルスを叱咤した。

この話している一分一秒も勿体無い!


トカルスは風のようにオフィスを出てハリスを探しに行く。





 この事を機にS級から上のハンターは一人残らずハリスの捜索に時間を費やす。



当然、この不自然な状況に、下の者達も何があったかどこから漏れたか分からないが、危険人物が世に送り出されてしまった事実を知りハンター本部内は騒然とし出す。



 S級より下の階級の者達は、待機命令しか下らなく、突然の休暇となっていた。

 


 暇を持て余したハンター達は、ダイニングに集まり、いつまでもだらだらと噂話を広げて、訓練にも身が入らず上司がいない状況に気が緩んでいた。


 

 そんな中でリニアが血相を変えてダイニングに飛び込んできた。


「どうしたの?リニアちゃん・・」


トキが雑談を止め、リニアの慌てぶりに驚く。


「こんな時にレ・・レンがいないんだけど!」


「ええ!?」


トキは腰掛けていた椅子を倒し立ち上がる。穏やかだった、ダイニングに波紋が広がる。


「あ、あいつも、探しに行ったのか?」


「で、でも・・いくらなんでも一人で行動するなんて危険だろ・・?」


「もう!!何してるのよ!レン・・!」



のんびり屋で食いしん坊のハンター、ボーアは食事を平らげていたが、ふと思いだし口を食べる事以外に使う。


「あいつなら~、城に呼ばれたみたいだぞ~?」


間延びする、スローペースの口調がテンポを狂わす。


「「「え?」」」



 

 その頃レンは皆の心配なぞ露知らず、城の用事を済ませのんびり道中を楽しんでいた。

城から何やら高級そうな土産を貰い、包み袋と共に本部に戻ろうとしていた。


 


 レンは足を止め、前方に待っていたかの様に佇む不思議な雰囲気の青年に出会う。


視線の圧力をまるで感じない・・覇気の無い変わった青年、がレンの第一印象だった。


 青年は発言する事無く、レンの目を一直線に見ていた。

目、というよりその奥の何かを見透かすような・・不思議な見方をする。


「俺の目に何か付いてるか?」


青年の不可思議な行動に動揺一つせずされるがまま。


目を少し開き、凝視する。


「・・・・」






 二人は大草原に腰掛け風にそよがれる。

レンは城からの土産を少し分けてやる。


珍しいお菓子で、あまりにも上手いので皆にも分けるのに持ってきた。


プニプニとした柔らかい食感で、口に含むと中から甘いクリームがトロリと溢れだす。


もにもにと咀嚼すると、滑らかな舌触りに爽やかな風味が鼻孔を刺激した。


飲み込むと、青年はボーッと口をあけたまま固まる。


「上手いだろ?」


コクりと頷くともう一個あげ、それももにもにもにもにとずっと噛み口の中で味を楽しむ。


うっすらだが、目に輝きが表れた。



「お前・・ろくな物食べて無いのか?痩せてるし・・」


「僕は・・毎日パン一個とスープを二回食べていた」


「・・それじゃあ痩せてくな・・」


本部に不用意に人も入れられないし、困ったな・・と頬をポリポリと掻く。


青年はレンが立ち上がったのを見て、服を掴み離れようとはしなかった・・。




 どうやら異能者の中の、危険ランク至上一の男になつかれてしまったようだ。


だがレンは知らない。

この男がどれ程の危険要素を持っているかに・・。

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